どうも、ワッタンです。
大変お待たせしました。
三週間振りの更新ですね、実はほかの作品は投稿してるから一応は毎週更新してるから書いていないわけではないんです(言い訳)
まあ、それに関しては本当に申し訳ございません。
それでは気を取り直して、最新話をどうぞ!!
新学期も始まり、またいつもの学園生活が戻ってきたトレセン学園。
夏の時より陽が短くなっても、練習場ではウマ娘達が一生懸命に練習に励んでいる。
アタシの次のレース目標は、『ホープフルステークス』。
デビュー戦を一位で勝利したとはいえ油断は出来ない、下手したら足元を掬われて負けてしまう。
次に勝負する子達は、勝負するという事を知らない子達じゃない、勝利の味を知っている子達ばかりだ。
だから夏休みの時の練習も手を抜くことはなかった、それは新学期になったからって変わらない。
逆に気を引き締め、今日のトレーニングを励もうと気合いを入れる....とこまでは良かったのだが、トレーナー室を開けるとその気持ちはどこか遠くへと行ってしまった。
何故なら。
「さぁ、早くこれを飲むんだ、トレーナー君....!! 」
「バカ野郎、普通に考えて飲む訳ないだろ.....!!」
「くっ、中々強情じゃないか。でもいいのかな、ウマ娘に力が敵うとでも....? 」
「日頃、理科室に籠ってる奴には負けるわけないだろ....」
「ほほう、言うじゃないか。でもその虚勢がいつまで持つかな....? 」
扉を開けるとそこには、アタシのトレーナーに怪しげな物を飲まそうとしているマッドサイエンティスト。
──アグネスタキオン
理科室に籠ってばかりの彼女が何故かトレーナー室に居た。
アグネスタキオンとトレーナーはお互いの両手のひらを合わせながら取っ組み合いをしていた。
そして徐々にトレーナーの方が劣勢となってきている。
何故彼女がここに?という疑問はさておき、トレーナー室を開けてその光景を見た瞬間。
正に瞬足と呼ぶべき速さで、彼女の白衣ごと服を掴み後ろへと思いっきり引っ張た。
「おわぁ!?」
案の定彼女は体のバランスを崩し、後ろに尻餅を着いた。
そしてゆっくりと彼女はアタシの方に恐る恐るといった感じで目線を動かす。
一瞬だけ驚いたような顔をしていたが、直ぐにいつものような何処か達観したような目つきに彼女は戻り、口を開いた。
「やあ、お邪魔してるよ、ナリタタイシン」
「....そう思うなら早く帰って」
そんな彼女を殴らなかったアタシを誰か褒めてほしい。
──────────────────────
「....で、何でアンタはここにいるわけ? 」
トレーナー室に置いてある来客用の椅子に座っている彼女に向かって、不機嫌という事を隠さないままにアタシは言い放つ。
不機嫌な理由は、さっきの件と早くトレーニングに行きたいというのもあるが、本当は、椅子なんかに座らせずに地べたに座らせてやりたかったが
それは流石にと、トレーナーに止められた。
「まあまあ、細かいことはいいじゃないか、それよりトレーナー君が入れてくれた紅茶、初めてにしてはいい出来じゃないか、でも欲を言えばもっと糖分が欲しいのだがね」
どうやら彼女はまだ帰る気はないらしい、タキオンはトレーナーが入れた紅茶を口につけていた。
そして言い方から察するに、明らかに何かを隠しているようだが、彼女は答える気はないようだ。
「....はあ」
このままでは埒が明かない。
トレーナーへとどういうことかと聞こうとしたその時、ポケットに入れていたスマホのバイブが鳴る。
何かメッセージがとどいたらしい。
取り出してスマホの画面を覗き込んだ、差出人は.....トレーナー。
──は? どういうこと?
何でそこに居るのにわざわざスマホから?
思わずトレーナーの方に視線を向ける。
トレーナーはいつもの定位置に座っており、パソコンで何かの事務作業をしている。
そんなトレーナーは、どこか含んだ笑いをしてスマホを指差している。
とりあえず見ろということなのだろうか、疑問に思いながらもスマホに目を落とす。
「.....なるほど」
「うん? 何か言ったかい? 」
「いや、ただの独り言」
タキオンの問いに素っ気なく返すが、内心は気付かれないかと思って少しだけヒヤヒヤしていた。
送られてきたメッセージからトレーナーの意図が読めた、そして今アタシがやるべき事は時間稼ぎだ。
正直こんな事をするより首根っこを掴んで追い出した方が早いだろうが、目の前のマッドサイエンティストは恐らく反省しない。
なら確実にお灸を据える方法があるなら、この方法を選んだ方法がいい。
「ふむそうか。実は『独り言』の多さというのは、無意識にストレスを溜めていたり、言葉を発することで安心感を求めているような場合があるとされてるらしい」
「じゃあ、恐らく前者だね、絶賛アンタのせいで現在溜まり中」
「言うじゃないか、流石はあのナリタタイシンだ」
「それどういう意味?」
どこか意味深な言い方をしたタキオンに聞き返す。
それを聞いたタキオンはどこが面白かったのか顔に笑みを浮かべる。
「どうもこうも、そのままの意味だよ....にしても君は随分変わったようだね」
「何が? 」
「おや、気づいてないのかい? 」
無言で頷く。
対するタキオンは、少しだけ何かを考えた素振りを見せるが直ぐに口を開く。
「まあ、それは自分で考えてみたまえ、そこまではモルモット君や君のトレーナーのようにお人好しじゃないんでね」
そこまで話すとタキオンは再び紅茶に口を付ける。
モルモット君というのはタキオンのトレーナーの呼び名だ、仮にも自分のトレーナーをそんな実験対象のような呼び方をするのは、どうかと思うんだけど。
「というか薬を飲ませたいなら、アンタのトレーナーに飲ませればいいじゃん」
「ふむ、そうしたかったのは山々なんだが...ちょっとした事情があってだね....」
「.....あ、そ」
そっけなく返す。
「ふむ、でも弱ったなあ。これじゃあ、実験に遅れがでるな....そうだ、代わりに君が飲んでみないか、タイシン君? 」
「ふざけてるの? 」
流石にこれにはこいつの神経を疑った。
と同時にやっぱりこいつにはお灸をすえなければいけないと再確認する。
「まあ聞き給え、君のトレーナー君に飲ませようとしたのは『筋肉の質量を高める薬』だ。これを服用すれば通常のトレーニングでするより筋肉がつきやすくなるという代物だ。強くなりたくて肉体改造を望む君にとってはメリットしかないと思うのだが? 」
タキオンがポケットからその薬を机にコトっと置く。
見た目は普通な錠剤だけど、タキオン製ってだけで好き好んで服用はしない。
というかそもそもアタシは。
「そんなの飲むわけないでしょ、アタシは自分の力で強くなる、だからそんなものには頼らない」
「.....ククッ、アッハッハッハァ!! 」
「何が可笑しいの? 」
アタシの答えに、突然笑い始めたアグネスタキオン。
「いやいや、本当に君は変わったんだなって再確認しただけだよ。 以前の君だったら『強くなる為だったら、利用出来るものは利用する』みたいな感じだと、思っていたんだけどね」
ら、利用出来るものは利用する』みたいな感じだと、思っていたんだけどね」
そう言いながらタキオンは薬をポケットにしまう。
「まあ、君が頷いたとしてもこれは飲ませなかったけどね」
「じゃあ、何で聞いたの? 」
「ふむ。 個人的に気になったからだ、特に意味はないよ」
「.....あ、そ」
タキオンにそう返した時だった。
トレーナー室の入り口の扉がノックされる音が部屋に響く。
──思った以上に早かったな
「おー、来たみたいだな」
パソコンでの作業をしていたトレーナーが立ち上がり部屋の入り口へと行く。
「おや、お客さんかい? 」
タキオンはというと、最もである疑問について呟いていた。
そんな彼女に、アタシは真実を教える事にする。
「ねぇ、タキオン。アンタはおかしいとは思わなかったの? 」
「何がだね? 」
「もし、アンタがアタシの事を分かってるのならこう思わなかったの? どうして、無理やりに追い出されないかのって? 」
「そ、それは.....」
「アンタ、自分で言ってたよね。『アタシは利用できるなら何でも利用する』って。それは間違いじゃないよ。アタシは今回はアンタを利用させてもらったよ」
「な、....ま、まさかさっきの通知は.....!! 」
流石の頭の回転力、アタシのスマホに来た通知で全てを察したのか、タキオンの顔が徐々に青くなっていく。でもこれは完全に自業自得だろう、何故なら。
「そもそも、アンタが理科室で実験して理科室を爆発させたのがいけないと思うけどね」
「.....ふ、全てお見通しというわけだったか....」
スマホのメッセージに書かれていた、そもそもタキオンがここに来た理由は理科室を爆発させたというもの、そしてメッセージにはタキオンを逃さないようにと書かれていた。
「そういうこと、大人しくした方が身のためだよ」
そう言った直後、トレーナー室の扉が開かれる。アタシにとっては聞きなれた音だけど、まあ彼女にとっては宣告の音と同義だろう。
タキオンがギギギと、入り口の方へと振り返る。
「見つけましたよ、タキオンさん。 さあ、観念してください」
そこに居たのは、いかにも怒ってますというオーラをしたマンハッタンカフェと生徒会のメンバー。
数秒後、タキオンはゆっくりと膝から崩れ落ちた。
「タイシンありがとな、作戦に協力してくれて」
「ん、別にいい。 それより怪我とかはなかったの? 」
「ああ、大丈夫大丈夫。一応、あんなことをされても、力はセーブされてたよ」
「.....そ、じゃあトレーニング行くよ、トレーナー」
「おう、そうだな、時間もないし今日は軽めだな」
「ん、分かった」
そんなやり取りをした後、大分時間は経っていたがトレーニングへと向かったのだった。
これは後から聞いた話だけど、あの後タキオンはこってりと絞られた挙句、暫く理科室使用禁止を言い渡され、毎日マンハッタンカフェが淹れた、特製の苦いコーヒーを飲まされたという話だ。