どうも、ワッタンです。
お待たせしましたー。
ネタが降ってきたので今回はそんなに苦戦はしませんでしたー。
それでは、最新話をどうぞ。
「....落ち焚きでもするの? 」
この場所に連れてきたトレーナーにそう尋ねた。
九月も終わりかけ、秋が深まってきた今日この頃。
年末の『ホープフルステークス』に向けて、そろそろ最終調整を始めていかないといけない時期。それが今日のような休日でも当たり前にアタシ達、ウマ娘は練習に励む。
お昼を済ませ、午後からの練習をこなしそろそろ本来なら休憩を挟み、今日最後のトレーニングメニューをこなす為の準備をする為の時間帯。そんな時間帯にトレーナーから急に手伝ってくれと言われ、トレーナーに案内されたのはかき集めた落ち葉の前だった。
「おー、その言葉知ってたのかタイシン、やった事でもあるのか落葉焚き? 」
「実家に居た時にね。というかトレーナー、なんで急に落ち葉焚き?アタシ、練習したいんだけど?」
「いやさ、たづなさんから頼まれたんだよ、学園の落ち葉を集めたから処理しといてくれないか...ってさ。でもこれを流石に一人でやるのは.....」
トレーナーがそう答え、アタシは視線を集めた落ち場に戻す。
まだ九月だからか、枯れ葉というには完全にはまだ言えないような、明るい色の葉の方が集められた落ち葉の中でも、比率が多いような気がする。でもそれ以上に気になるのは......
「.....これは流石に多くない?」
落ち葉の量だ。
この場所に集められた落ち葉の量は、普通の落ち葉焚きに使う落ち葉の量の軽く十倍はある気がする下手すればアタシの腰まであるんじゃないか、この量は。
「だよなぁ...聞いたところによると、これ全部学園中から集めてきたらしいぞ?」
「学園中!? 」
そのトレーナーの言葉に驚いてしまう。と、同時に納得してしまう自分もいた。確かにこの量は、学園中から集めてこないとこんな量にはならないだろう。
「まあ、驚くも無理ないよな、俺もタイシンと同じ反応したよ.」
「いやまあ、この量に驚かない人は居ないと思うんだけど......というかトレーナー」
トレーナーの言葉に同意を返したが、すぐに話の話題を切り替え、アタシが思った疑問をトレーナーにぶつける。
「これってトレーナーがしないといけない事なの?」
トレセン学園にはトレーナー以外にも勿論、教師や事務員といった普通の学校にも居るような人達から、2000人ものウマ娘の胃袋を支える、食堂の料理人等や広大なトレセン学園の敷地を清掃する為の清掃員といった、色々な職員が所属している。
それを踏まえた上で、いくらトレーナーがトレセン学園所属の職員とはいっても、明らかにこれはトレーナーの仕事内容から逸脱しており、こういう仕事はトレーナーではなく、清掃員とかが本当にしないといけないのでは? そう思ったのだ。
「あー、それは......本当はやらなくてもいいんだけど......」
トレーナーの答えは、アタシが予想していた答えではあった。だけど、その言い方はどこか歯切れが悪く、首を傾げる。
「けど?」
「ほら、トレセン学園って採用厳しいだろ?」
「...他の職種よりかは厳しいとは聞いた事があるけど......って、まさか」
「そう、そのまさかだよ。人手が足りてないんだよ」
トレセン学園に勤務する、または入学するには、それこそ厳しい試験や面接をこなす必要がある。学生はともかく、トレーナーや教職員といった人達は、普通の入社試験とは別にウマ娘の事を人並み以上には知っておかないといけない。
逆に事務員などといった、ウマ娘達とは関わらない人達にはそんな必要がないのだが、そんな彼らにも厳しい制約がある。
それは、トレセン学園を管轄している組織。
『URA』からの許可が無いと、学園に立ち入ってはいけないという制約、ちなみにこれはトレーナーや教職員にも同様にだ。
何故、ここまで厳しくないといけないのか、それはつまりウマ娘......アタシ達の存在。
未だにウマ娘という存在が一体なんなのか、というのは全て解明されておらず、分かっていないことの方が多く、それこそアタシらウマ娘の人権を無視してもウマ娘を研究したいという輩が居ないとは言いきれない。だから、こういった厳しい制約が必要なのだ。
「大半の人が厳しい審査で落ちるからな、だけど人手が少ない分、給料はいいんだけどな」
そう言いながらトレーナーはお金のマークを右手で作った。
アタシはそれを華麗にスルーし、置いてあった軍手をはめる。
正直納得はいかない。
本当なら、今この瞬間にでも練習をしに行きたい。だけどトレーナー、一人でこの量を終わらせようものなら、絶対に今日中には終わりそうにないだろう。下手すれば明日の練習にも差し支えがあるかもしれない。
そうなったら、流石にアタシとしては看過できない。だからこれは仕方なくだ。
「......ほら、さっさと終わらせて練習するよ」
「あ、はい」
トレーナーは未だに、右手でお金のマークを作っていた。その様子にアタシはため息を着いたのだった。
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「それで薪はどこなの?」
「ああ、ここにあるぞ」
「そ、じゃあアタシが薪を組んでいくからトレーナーは水を組んできて」
「りょーかい」と、トレーナーはそう言うと水を組みに行く。
アタシはその間に薪で土台を組んでいく。
落ち葉焚きというのは、落ち葉だけではそんなには燃えない、だから一般的なやり方は薪を土台にしてそれに火を付け、その上から落ち葉を掛けて燃やしていくのだ。
と、黙々と作業をしているうちに土台も組み終わった、と同時にトレーナーが水を入れたバケツを持って帰ってくる。
「おー、いい感じじゃないか?」
「やった事あるからね」
トレーナーにそう返し、木の上から落ち葉を掛ける。
後はこれに火を付けるだけだ。そう思った瞬間、アタシの視界にトレーナーの手が映る。その手にはライターが握られていた、使えと事なのだろう。トレーナーからライターを受け取る。
「ん、ありがと」
「流石に、この量だから二人で手分けしてやろうか」
そう告げたトレーナーのもう片方の手にはもう一つライターが握られていた。
「分かった.....でも水足りるかな? 」
「多分、大丈夫だと思うけど...まあ、足りなくなったら組みに行けばいいさ、じゃあ俺はこっちでやってるから、何かあったら呼んでくれ」
「分かった」
そう言うと、トレーナーはアタシと丁度、集められた落ち葉を挟んで真反対側に消えて行った。
トレーナーの後ろ姿を見届けると、目線をを外し組んでいた薪に火を付ける。
だがその時、アタシの予想以上に大きく火が燃え上がった。
「うわっ、水、水」
慌てて葉の上に水を掛ける。
熱い物に水を掛けた時に出る、蒸発音が鳴り響いた。
メラメラと燃えていた葉っぱから出ていた黒い煙が、徐々に消えていき白い煙となっていく。が、火は全て消えた訳ではなく、落ち葉に這うようにして残っていた。
「よし、取り敢えずこれで大丈夫な筈....」
落ち葉がそれ以上に燃え広がらない事を確認すると、その場にしゃがみ込み、燃えている落ち葉に視線を落とし、じっと見つめる。
アタシが落ち葉焚きを知っていたのは、実家でもやっていたのもあるが、ただ単にアタシが落ち葉焚きをするのが好きだったからだ。
ゆらゆらと揺れる炎や木が爆ぜる音とか、そういった物がなぜだか分からないけど、小さい頃から見たり聞いたりするのは飽きなかった。自分でもそれに関しては変わっていたなとは自分でも思う。落ち葉焚きをするってなったら、アタシは率先して親の事を手伝たい、落ち葉焚きの番をしていた。
親から帰るよと言われるまでずっと。
そうして番をしていると、時たま嬉しい事もあった。季節も丁度秋だから、お母さんがこれも焼いてみたらどう?、って言いながらアタシにある物を....
「....うん? 」
落ち葉焚きをするのが懐かしく、遠い思い出を思い出していると、違和感を感じた。
それはこの匂い。
さっきからこの場所は落ち葉が焼ける匂いしかしていなかった、だけど今ここに漂わせてる匂いは....アタシがよく知ってる匂いだ。
そう思った瞬間、向こう側からトレーナーがこっちへと向かってくる。
甘い匂いの元凶を持って。
「トレーナー、それって...」
「ああ、落ち葉焚きをやってくれって、頼まれた時から、これも一緒に焼こうと思ってさ。丁度、焼けたからさ、タイシンにもあげようと思ってな」
そう言いながらアタシに甘い匂いの元凶──焼き芋を渡してくる。
「.....ありがと」
普段のアタシならトレーナーに蹴りを入れるだろうが、今回は素直に受けとることにした。そんなアタシの普段とは違う様子を見ていたトレーナーはというと。
「.....タイシン、何かあった? 」
目をパチクリしながら驚いていた。
「何? そんなにアタシが受け取るのがおかしい? 」
「ああ。てっきり、タイシンの事だから、『このバカ』って言いながらいつものように蹴られると思ってた」
アタシの質問に即答で返すトレーナー。
思わずそのレスポンスの早さに蹴りたくなるが、グッとこらえる。
今日だけは、この思い出に免じてトレーナーを許すことに決めた。
「よく分かってんじゃん。でもそんなことするより今はこれを片付けるのが先、ほら、食べながらでもやるよ」
トレーナーにそう言うと、焼き芋を一口頬張る。
その味は思い出の中にあるあの味で懐かしくなる。
そのままアタシは、焼き芋の美味しさと思い出に浸りながら、作業を続けた。