どうも、ワッタンです。
お待たせしましたー。
今回は前回の通り、あの子のお話です。
それでは、最新話をどうぞ。
「よー、タイシン」
寮の一階の談話室に降りた時、そんな声が背中から聞こえてきた。
思わず反射的に振り返った、その瞬間振り返った事を後悔した。
「げっ...ゴールドシップ...」
振り返った先に居たのは、何故か学生寮の中で着物を着込んだゴールドシップ。床のカーペットの上にわざわざ持って来たであろう畳を敷き、茶碗を左手で持ってよくテレビとかで見掛ける。お茶をかき混ぜる道具を左手に持って、お茶を淹れていた。
「...何やってんの? 」
「茶道」
アタシの質問にそう答えたゴールドシップ。
そしてかき混ぜていた道具を足元に置き、淹れたてのお茶をアタシの前に差し出してくる。
「粗茶ですが、どうぞ」
「いや、要らないんだけど」
「......つれないなー、タイシン」
そう言うゴールドシップだがこれに関しては当たり前の反応だと思う。
突然、寮の一階の談話室で茶道をし始めている人から、お茶を進められて、「はいそうですか」と飲むやつは居ないと思う。
だから、これ以上の関わりはしない方が賢明だと判断し、その場を後にすることを決め、談話室を後にすることを決める。
「あっそ」
「おーい、待てよタイシン」
「...何?まだ何かあるの?」
また背中からゴールドシップの声が聞こえてくる。無視しようかと思ったが、何となくこのまま無視をしているとついてきそうな感する。
──めんどくさ
そう思いながら振り帰る。
振り返るとゴールドシップは入れたてのお茶を、上品に飲んでいた。黙れば美人というのはこういう事なんだろう、ゴールドシップのその姿は中々に絵になっていた。
「...ぷはぁ、うめぇ。 そういやタイシンにあん時のお礼を言ってなかったからな」
「あの時?」
そう言われて記憶を探ってみるが全く心当たりがない。少し考えていたが、思い出す事が出来ず首を横に振った。
「......ごめん、覚えてない」
「そうか、なら仕方ないな。ほらあれだよ、アタシがタイシンのトレーナーを拉致った時のやつだ」
「...あー、そんな事もあったね」
ゴールドシップにそう言われてようやく思い出す。約一ヶ月前の出来事、確かにあの時になんか情報提供料をやるとか、言われた気がする。
「それで?もう別にお礼とかいいんだけど? 結構前だし」
「いやいや、アタシは約束を守る主義だからな、ちゃんとお礼はしてやるよ」
その言葉に不信感を募らせる。
ゴールドシップが約束を守る?
何かの冗談だと思いたい。いやまあ、別に悪いやつでは無いとは思うのだけれども、如何せん普段の行動からは想像出来ない事は確かだ。
「......どの口が言うんだか」
「酷くないか本人の前で......まあ、確かに打算めいたことはあるけどよ。ほれ、受け取れ」
ゴールドシップがそう言いながら自分の服をまさぐってある物を取り出し、それをアタシへと急に投げてきた。
「えっ、ちょ!? 危ないじゃん」
反射的に落とさないようにしっかりとキャッチする。キャッチした手の中にあったのは四つ折りの紙。
──何故、急にこんなものを?
ゴールドシップの方を見ると、まるで「開けて確認してみろ」言うな目線をアタシへと向けていた。目線を手の中の紙へと戻し紙を広げてみる。そこに書かれていたのは。
「地図?」
ゴールドシップが書いたと思われる手書きの地図だった。目を一瞬だけ通し、ゴールドシップの方を見る。彼女はというと、用意していた畳を片付けているところだった。
「そ、その場所が情報提供料だ」
片付けながらそう答える彼女。
「その場所って...というかこの書かれてる場所って学園? 」
「ああ、そうだぜー。といってもこの広いトレセン学園だからな、その場所を知ってるやつはアタシ以外にはほとんど居ねーよ」
「ま、知ってるのは事務の人くらいかなー」とか言ってるゴールドシップから視線を外し、手の中の地図を見る、よくよく見てると書かれてる場所はトレセン学園の西側──ニンジンが育てられている大農園の端だった。
......確かに、この場所は普通に過ごしているアタシらにとっては知らない場所だ。そもそもが農園になんて用がない。恐れくこの場所を知っている人間は学園サイドの人間くらいなものだろう。
「それで、アンタさっき打算めいた事があるって言ってたけど、この場所とアタシに何の関係があるの?」
「よっと、それはだな。その場所にな、あるウマ娘が毎日のように訪れているんだよ」
ウマ娘がこんな、何も無い場所に?
正直な話、信じられなかった。
「信じられないんだけど」
「まあ、普通は信じられないだろうな、かくいうアタシもソッチ側だったろうしな。けど事実なんだよなーこれが」
あたしの疑問にそう答えるゴールドシップ。そう答える彼女の表情は、いつものヘラヘラした顔ではなく、少し笑ったりはするものの、真剣な顔そのものだった。どうやらアタシを騙しているわけではないらしい、だけどまだ
、ゴールドシップの言っている事には半信半疑だった。
「...一応は信じてあげるけど、そのウマ娘とアタシに何の関係があるの」
「実はそいつな、どうにも内気なもんで、個人的に結構気に掛けてるんだよな。それで、あいつにもっと自信を持って貰いたいくてな、だからタイシンと話せば何か変わるかなーって思ってさ」
「つまり......アンタの要求はアタシがそいつと話せば良いの?」
「おう」
アタシの質問に頷くゴールドシップ......とは言っても、「悩みを聞く」のが条件だったとは。もしかしたらこんな真面目な顔をして、「トレーナーを1週間貸す事」が条件だ、とか言いそうだったから少女身構えていたのだが杞憂だった。
「ただそれだとアタシの一方的にメリットしかないから、タイシンがその場所へ行ってくれたら、アタシはその場所の事を誰にも話さないし、教えない。その後のその場所はタイシンが好きにしてくれ」
「・・・アンタじゃ、その子の悩みを解決できないの?」
「ああ、カンだけどな、アタシじゃあ、あいつの心に深くは寄り添えない気がしてな・・・それに今のタイシンなら、あいつに掛けるべき言葉を持ってるはず、そう思ったわけよ」
──今の自分...か。
ゴールドシップのその言い方には聞き覚えがあった。この前のアグネスタキオンの件、彼女にも今のアタシが随分変わったと言われた。アタシ自身にはどのように変わったのか、その自覚はないが・・・もし自分が変わったと言われるのはその原因はきっとアイツのおかげという事、それが最近気付けた。
もし、その子と話すことで、アタシのその変わった部分を見いだせるなら・・・。
「・・・分かった、その子の悩みを聞いてあげるよ」
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ゴールドシップにそう答えて、その例の場所付近までに来たものの、見事にニンジン農園しか何もなかった。
とは言っても、指定された場所は地図によりとこの農園の奥。
横目に農園の方を見つつ、足を進めていく。
やがてゴールドシップの指定した場所に辿り着いたアタシは、それを見て驚愕する。
「すごっ・・・これ全部、コスモス?」
アタシの目に映っていたのは一面ピンク色のコスモス畑だった。
そしてその花畑の中央にある人影が見える。きっとその人影がゴールドシップの言っていた人物だろう。そちらの人物の方に足を進める。その子との距離が十メートルになった時点。流石ウマ娘、アタシの足音に気付いたのだろう、アタシの方へと振り返った。
「えっ・・・タイシンさん・・・?」
そこに居たのはいつかのデパートで出会ったウマ娘だった。