「そこに隠れてるの出てきな。」
………出てこないか。
「言葉を掛けられて、尻尾が逆立ったせいでモロバレなんだが?」
茂みから出てきたのは、小柄な黒っぽいのだった。
「うん、出てきてくれただけでもいいよ。前の職場だと鉛玉か、刃物が飛んできたからね。」
「ヒッ!」
そう言ったら怯えられた。
………解せぬ。
「喋るのが苦手なら喋らなくていい。首を振ってくれるだけでいいから。」
黒は頷く。
「こちらを見てたのは、強くなりたいからか?」
頷く。
「ふむ、今は手一杯でお前を見る余裕がない。」
そう言うと、耳と尻尾が垂れる。
やべ、言葉の選び方間違えたか?
でも、事実だしなぁ。
「だが、アドバイスだけは言える。」
尻尾は垂れたままだが、耳はピンッと上を向く。
「お前、他のウマ娘以上の強心臓の持ち主だな。だったらそれを生かしたトレーニング、主に超過負荷のスタミナトレーニングを行った方がいい。」
コクコクと頷く。
「ただし、トレーニングをするなら、トレーナーかトレーニング仲間に見てもらいながら実施することだ。何故なら、そのトレーニングをすることによって、スピード、スタミナは勿論のこと、ここぞっていうときの気持ちの強さの向上もなる。ただし、怪我をしやすいトレーニングだ。1人でやると確実に怪我をする。だから、トレーナーかトレーニング仲間と必ずすることだ。強心臓のお前なら、すぐに効果が出てくる。」
真剣な眼差しでこちらを見返すが、その瞳の中には不安が宿っている。
「はっ、周りの目なんて気にするな。逆にそう言ってきた奴には睨み返してやるんだよ。『テメェが私を決めるな』って言う目をしてな。付け加えると『ぶっ殺すぞ』位の睨みでいいぞ。」
「えぇ!?」
「実践してみた方がいいか?」
何処かに手頃なのいないかなぁ?
周りを見渡す。
お、いたいた。
鹿毛の長い髪のウマ娘がいた。
「おーい、そこのちょっと来てくれないか?」
俺は大声で呼ぶ。
気付いたのかこちらにやってくる。
「はい、なんでしょうか?」
「ちょっと、この黒にお手本として見せてやりたいんだけどいいか?」
「はい、私でよければ。」
許可も出たことだしやるか。
「最初に謝っておく。かなり怖いと思うから。」
「え?」
返答は聞かずに、俺はかつての理不尽な上官を思い出して、一気に睨みを効かせる。
「ヒッ!!」
萎縮してしまった。
これを受けた鹿毛のウマ娘は、目を見開き、耳はぺたりと、尻尾は丸め、呼吸するのを忘れているようだ。
やり過ぎたと思いつつ、肩に手をおく。
すると、ビクッと跳ねた後、ゆっくりと呼吸し出した。
「悪かったな。非常に怖かったな。」
安堵からか涙目になりながら震え出す。
「ほ、本当に死んだと思いました………。」
「ああっ! 頼むから泣かないでくれ! 俺が10割で悪かったから!」
とりあえず鹿毛のウマ娘を日陰に座らせる。
「黒、これはやり過ぎたけど、相手を怯ませる事くらいはできる。レースにも生きてくる。」
「できるか分からないけど、練習してみるね!」
「そうか。」
「あのね、アドバイスありがとう! またね、お兄様!」
「はいはい、ん? お兄様?!」
もう走り出した後だったから呼び止めることは出来なかった。
それよりもこっちだ。
「本当に悪かったな。」
「………もう怒ってはいません。」
いやいや、ガッツリ怒ってんじゃん。
まあ、全面的に俺が悪いが。
「怖かったですが、今後の為にはなりました。」
「ん?」
「レースの時、アレよりは弱いですが、ああいったものを向けられることはありましたので、あれ以上に強い圧はこれから先向けられることはないと思ってます。」
今後の為ねぇ?
「為にはなりましたが、これは別です。貸し1つと言うことにしておきます。」
それはそれで助かるが。
「アレくらいの圧は、コイツらが4日後にできるって言ったら?」
何を馬鹿なことをって目で見てるな?
「まあ、練習を見ていくといい。今は腰が抜けて立たないだろ?」
俺はもう一度ハルウララとスマートファルコンを見る。
ハルウララは眠ってはいないようで、しっかりと瞑想している。
良きかな良きかな。
しっかりと己と向き合っているようでいいことだ。
スマートファルコンは………アイツ姿勢を崩しやがったな?
「ちょっと行ってくる。」
俺は鹿毛のウマ娘の横から立ち上がる。
「スマートファルコン! 姿勢を崩すなって俺、言ったよなぁ!!」
「すみません〜!!」
「宣言通り、全力で追いかける。」
俺は殺気を全開にして追いかけ出した。
昨日は夜勤で投稿できずでした。
仕事が忙しくなってきているので、投稿もまちまちになるかもです。