あの、競争なんですが、結論から言います。
………圧勝しちゃいました。
女男に関しては、今まで一番遅くて勝てなかったハルウララに負けたことによるショックで、幼児退行してる。
スマートファルコンに関しては、8バ身差という結果を出してしまった。
「ううっ、フジお家帰るぅ!」
肝心のおハナさんは、某アニメのビリビリ神みたいに口を開けて固まっている。
似非ルチャ・ドーラは、体育座りをし、某ボクシングアニメの主人公みたいに燃え尽きている。
まあ、俺はその姿を見て指差しながらゲラゲラ笑っているんだけどね。
「いやぁ、良いもん見せてもらったわぁ。フハハ!」
おハナさんのチームリギルの面子も驚きが隠せていない状態だ。
「一体何をしたのですか?」
昨日の不憫なウマ娘が話しかけてきた。
「大したことはしてない。ただ、自分を見つめ直すトレーニングと走り方の矯正を叩き込んだだけだよ。」
「えっと、叩き込むって?」
褐色のウマ娘が聞いてくる。
「そりゃ、ね?」
当時の状況を知っているウマ娘は震え上がる。
スマートファルコンに関しては当事者だから、バイブレーションの様に震える。
「え? 怖いんだけど。本当に何したの?」
怖い様だが、興味が勝ったらしい。
「手と足に重りを着けて走らせる。」
「なんだ、それだけかい?」
俺は首を振る。
「疲れてくると姿勢が崩れてくるよね?」
「まあ、そうだね。」
「1回目は見逃すが、2回目姿勢を崩したら、本能レベルで怖くなる殺気を振り撒いて追いかける。」
「え? なにそれ? 怖っ!」
褐色のウマ娘は自身を抱く様にして震える。
「しかも、疲れてるからどんどん追い付かれていく。」
「え? 絶対に逃げられない恐怖から逃げてる様なものじゃん!」
更に顔を青くする。
当時の状況を思い出したのかスマートファルコンは更に震え出す。
「生きてる心地がしなかったよ。」
ついにスマートファルコンの目から光が消える。
「は、ははっ、はははははははは………。」
ついに壊れた。
「虐待みたいに思うかもしれないけど、1番効率がいいんだ。」
全員耳を傾ける。
「人もそうだけど、頭のどこがでブレーキを掛けてるんだよ。脳の稼働率ってどれくらいか分かる?」
全員に聞いてみる。
「確か10%じゃなかったかしら?」
流石おハナさん。
「そう言われてるね。でも、コレは知ってる? 脳の容量って、記憶で換算すると300年分あるって。」
「「「「「え?」」」」」
コレは知らないパターンか。
「おかしくない? 約60〜90歳までしか生きられないのに300年分だよ? どっかでセーブして使ってないって事だよね? だったら使える様に本能レベルに刻んでやれば良い。」
「それに、どう繋がるのか教えてもらっても良いかいトレーナー君」
お、良い質問だね。
「ふとした拍子に力を発揮できる時があるよね? その時の感情って分かる?」
「いや、分からないな。」
だよね。
そうそう、そんな経験があってたまるかってんだからさ。
「恐怖だよ。その時、生きねばって脳が働いて力が出るんだよ。簡単に言うと、火事場のクソ力って言うんだけどさ。」
「なるほど、ね。」
「色々あるよ。子孫を残したい、生き残りたいといった生まれながらに生物が持つ本能だね。それを呼び起こさせる為にやったんだよ。」
「確かに理にかなってる。」
「まあ、ちょっと可笑しくなっちゃうけど。」
「「「「「それはダメだろう!!!」」」」」
「まあまあ、それに成功したのが2人だからね。殆どは気付かずに押し込めたままなんだけど、あの2人は相性が良かったみたいだね。」
俺は、死んだ目をしているスマートファルコンと、いつも以上にキラッキラの笑顔を浮かべるハルウララを見る。
「まあ、コレで決着と。おハナさんはサポートを3日だけでいいよ。」
「1週間じゃなかったかしら?」
「日程弄っちゃったの俺だし、3日もあれば覚えれるからモーマンタイ!」
「そう、明日から早速取り掛かりましょ。」
「宜しく〜。あと、教えてもらうけど、暫くは担当持ちたくないから、訪ねて来ないでね。」
一気に空気が凍る。
「「「「「「はあぁぁぁぁぁ!!??」」」」」」
夕焼けのグラウンドに絶叫が響いた。