俺は空になった鍋を持ちながら理事長室に向かっていた。
理由は結果を知らせる為と、今後の予定を話す為だ。
「理事長入るぜ?」
「了承! 入ってよし!」
ちっちゃいながらも、椅子に座り威厳を保とうとしている子供理事長の声が響いた。
扉を開けて入る。
いつも通りの2人がいた。
俺は本題を切り出した。
「4日後って言ったけど、もう競争しちゃった☆」
「「はい?」」
理事長と秘書は見事なアホ面をした。
「い、今何と仰いましたか?」
この際だ。
まとめて伝えるか。
「いや、4日後って言ったけど、2人が仕上がっちゃったから、今日やってみたら圧勝しちゃった☆」
理事長はこめかみを抑えながら溜息を吐く。
「了解、誰と走ったのか教えてもらえるか?」
「確か、女男と似非ルチャ・ドーラだったぞ。」
「「は?」」
信じられないというか、状況が飲み込めないといった返しだった。
「すみませんが、その2人に勝ったと言うことですか?」
「おん。嘘だと思うならおハナさんに聞いてみたら?」
「では失礼して」
秘書たづなは、早速電話をかけ出した。
少し話した後、こちらを向いてきた。
頭を押さえて。
「話は本当のようですね。理事長、勝った相手は『フジキセキ』さんと『エルコンドルパサー』さんです。」
「なっ!?」
信じられないと言った表情だ。
「女男は幼児退行して、似非ルチャ・ドーラは真っ白に燃え尽きてたぜ?」
アレは傑作だったな。
その後に追い討ちで、おでんを口の中にねじ込んでやったがな。
去り際には、『ピンクとおでん怖い』しか言ってなかったな。
「どうよ? 理事長さん? 育てるのには自信があるんだぜ? 4日もいらなかったな。」
「ふむ………確定! 貴殿をトレーナーとして迎え入れよう! そして、トレーナーになるからには、この学園のトレーナー寮に入ってもらう!」
よし、第一関門突破だな。
「それはありがたい。が、もう1つある。」
「確認! 何だ?」
「俺は担当を取る気はないぞ?」
それだけ言うと2人は固まった。
少しして理事長がプルプルと震え出した。
「憤怒! 何故そうなる!!」
「ちゃんとした理由はあるよ。」
俺は理事長を一旦落ち着かせる。
「俺が育成するのはいい。たが、それをすると他のトレーナーの仕事が無くなる。で、その分が俺に押し寄せてくる。それだけは勘弁してほしいな。」
「そうですね。教えを受ければ、必ず勝てるようになるということですからね。」
秘書たづなは理解してくれている。
「そうだ。だから担当は持たない。だが、俺の元に自ら訪ねてきた者は必ず担当する。その為にも、おハナさんを通じて噂を流してもらう。」
「どういったものでしょうか?」
俺はニッと笑い答える。
「教えを受ければ必ず勝てるようになるが、性格が変わると言ったふうに流してもらう。」
「何故そのように?」
俺はリギルのメンバーに話したことと同じことを伝えた。
すると2人の顔が引き攣っていた。
「こ、個性的な女性の方ですね……。」
「困惑、随分と個性的なのだな?」
2人はリギルのメンバーと同じ反応をしていた。
「それもあるから、俺からはスカウトしないし動かない。」
理事長は、顎に手を当て考えている。
「了承!! そう言うことなら理解した! 本当にその噂でいいのか?」
「勿論! まあ、来ると考えるのは相当切羽詰まってるか、本気で伸び悩んでる奴だけだろうからな。」
「では、こちらで手続きをしておきます。」
秘書たづなはそこに、『では』と付け加えた。
「歓迎!! トレセン学園へ!!」
「ようこそ、トレセン学園へ!!」
2人から歓迎された。
まあ、言葉は揃ってないが、タイミングが揃っていたのが気に食わなかったので、マズイと言われているジンギスカンキャラメルを、2人の口の中に捩じ込んだ。
2人は青い顔をして理事長室を飛び出していった。
まあ、その後めちゃくちゃ怒られた上に、1週間の謹慎になった。
それもそっか。