言われた通りに行くと、喫煙所があった。
俺はタバコを取り出し、火をつける。
「はぁ〜。」
紫煙が口から吐き出される。
「喫煙所がここだけというのも難儀だと思わないか? 色物チームのトレーナーさんよ?」
俺は双眼鏡でグラウンドを見る人物に声を掛けた。
「生憎と、俺は吸わないもんでね。」
そう言って、咥えていたアメを俺に見せる。
「そら失礼した。」
俺はもう一度煙を吸い込んで吐き出す。
「あんた若え割に様になってんな。一体いつから吸い始めたんだ?」
マジマジと見ながら尋ねてくる。
「ふむ、20歳からと答えたら信じるか?」
俺は尋ねる。
「信じはしねぇが、納得はする。」
「なるほどな。」
俺はそのトレーナーを観察する。
「なるほどねぇ。」
「何がだ?」
トレーナーは訝しげに聞いてくる。
「あんた。いや、沖野トレーナーと呼ばせてもらおうか。」
俺は首から掛けている沖野トレーナーの身分証を指差しながら言う。
「どんだけ目が良いんだよ。羨ましいを通り越して呆れるぜ。」
「まあ、目だけはかなり良い方だからな。」
俺はまた、紫煙を吐き出して答える。
「沖野トレーナーがかなり優秀なのは見ただけで分かった。腹が立つよな? 個性の強い奴らを納得させて、かつ効率の良い練習も考えなきゃいけない。でも、そのメニューは理解されない。」
「へぇ?」
双眼鏡を目から外しこちらを向く。
「しかも、殆どが言うことを聞かないときた。自主性に任せてるのは良いとするが、もうちょっと気を付けないと内部分裂を起こしかねないぞ?」
「それは意見か? それとも忠告か?」
俺は薄ら笑いを浮かべて答える。
「どっちに取ってもらってもいいさ。ただし、頭の片隅には置いておいた方が良いかもな。」
俺は最後に紫煙を吸い込み吐き出す。
そして、火を揉み消す。
「アドバイス、ありがとよ。」
俺は薄らと笑う。
「ま、俺も過去に癖の強い奴らを育てたりしたからな。」
俺は思い出しながら苦笑する。
思い出すのは殆どが俺の部下たちだけどな。
かなりの曲者ばかりだったなぁ。
キレて上官殴り飛ばした奴、遅刻の常習犯、命令違反の常習犯、性格の変わるトリガーハッピー、1日の3分の2は寝てる狙撃手、フリーフォールをパラシュート無しで飛び降りるアホ、熱中したら銃で撃たれても気付かない爆弾魔とか。
あれ?
思い返してみると曲者というより、問題児ばっかじゃね?
「そうか。お前にもそういう時期があったんだな。」
「あるとも! こう見えて20代後半なんだぜ?」
トレーナーは驚いた顔をする。
「ま、アドバイスと思ってくれよ?」
俺は去ろうとするが、トレーナーに腕を掴まれる。
「俺何かした?」
「お前、受験生だよな?」
少しトレーナーの目つきが鋭くなる。
「そうだが?」
「すまないが、理事長室にお呼び出しだぜ。」
トレーナーは、受信したメールの画面を俺に見せてきた。
内容は、『至急! この者を見つけた者は私の所まで連れてきて欲しい!』とあり、ご丁寧に写真まで添付してあった。
「なるほどね。では、案内を頼めるかな?」