転生したと思ったらなんか殺伐とした世界観で妖魔に生まれ変わったんや。
嫌だねぇ....。
しかも名前が邪淫で能力が人格排泄とかあぁ^~もう気が狂う!!

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姉ちゃんが、先に地面に自分の魂をドバァーと出したんや!



ブッチッパ!!(人格排泄)

夜の街。

歓楽街の喧噪の隙間を縫って、駆け巡る。

越前叡智、前の世界の名前だ。

今の俺は邪淫と呼ばれている。

マジで邪淫と呼ばれている。

前の世界の知識があると、岡山の県北のおっさんが頭を過ってしまうが本当に関係ない。

ないったらないんだ。

俺はこの世界で言う妖魔に当たる存在であり、人の魂を摂取しなければ生きてはいけない。

正直昔人だった分、人の魂を食べるのはまったく気が向かない。

それでも食べねば死ぬのだから嫌々食べているのだ。

それなのに....。

 

「追いついたぜぇ...クソ妖魔.....。」

 

ニヤリと勝気な笑みを浮かべて刀をこちらに向ける女子高生。

セーラー服には似つかわしくない長い太刀。

銃刀法違反ではないのかと思うのだが、この世界ではこれが普通だ。

彼女達は退魔師。

俺のような妖魔が一般市民に危害を加える前に祓うのが役目である。

 

しかし、だからと言って分かりました殺されましょうとはならないのだ。

それに、納得できない理由が一つある。

 

「...さっき、俺の捕食見てたら分かったろ?俺、魂全部食べない。食べたらその人死んじゃう。だから取り出して一部齧る程度にしてる。だから、見逃して。」

 

この姿になってから言葉の呂律が回しにくい。

自分の呂律と格闘しながらもなんとか自分の意図を目の前のJKに伝える。

ほらっ、流石に自分が死ぬからって魂取って食うとか無理だよ....

なんとか自分の命と人の命を間にとって、見出したのが少し齧るというものだ。

普通に食べるより多く人は襲わないといけないが、それでも俺の食事で誰かが死ぬことはなくなるのだ。

流石に自分の為に人を殺すなんて度胸はまだ俺にはなかった。

 

しかし、俺の努力も虚しく目の前の少女は俺の言葉を鼻で笑う。

 

「ハッ、何勘違いしてるわけぇ?別にお前が人を食っていようがいまいがどうでも良いんだよ。妖魔である時点で殺すわ。お前ら殺せば殺した分だけ私の成績も上がっていくんだよねぇ~。私、新入生だからさぁ?いっぱい妖魔殺して先輩方に一目置かれたいってわけ。」

 

ヘラヘラと笑いながらそう言ってくる少女。

どうやら戦うしかないようだ。

それにしてもコイツこそ悪役みたいなこと言ってんな。

もっと他者に思いやりとか持って、どうぞ?

まぁ俺も人間じゃないし、妖魔は結構人間を殺したりしているようだし、そんな思想には至らないのかもしれないが。

 

「だからぁ....私の為に、死んでくれやぁ!!」

 

刀を構えて、一歩踏み込む。

俺は、後退するように後ろに足を一歩踏み込んだ。

そして、さらに加速する風景。

頬に風を感じながらも、足を力いっぱい使う。

俺は今、高速でビルの合間を賭けている。

だが....。

 

「おせぇよノロマ!!」

 

背後から気配が消えたかと思えば、右斜め上から刀を振り上げたままこちらに迫る。

どうやら相手の方がスピードは上のようだ。

嫌なんだよなぁ....戦闘とか、苦手なんですけど。

そもそも元々争いのない現代日本社会の人間である自分、しかも喧嘩もろくすっぽしたことのない人間が人を殴るとかそういう行為はどこか無意識に抵抗が出て来てしまうものだ。

でも、戦わなければ殺されるなら...戦わないと。

 

身体全体を包む波のような物を感じる。

そして、それを腕に集めるように意識するとそのまま相手の斬撃を腕で止めた。

ガギリィと金属同士がぶつかり擦れるような音が鳴る。

霊力による腕の硬質化。

これで一撃は防げた。

 

防げたけど普通に痛いわ。

だって同じ硬さの鋭利な物が腕を引き裂かんとしているんだよ?

引き裂かれないとしても引っかかれるくらいの傷はつく。

痛っい痛い痛い痛いィ!!と騒ぐ程でもないが普通に痛いのだ。

 

ただ相手は刀を使うということは普通に強い使い手ということ。

だったらさっさと勝負を付けに行かせた方がいい。

兄貴面している他の妖魔に教えてもらったのだが、退魔師と戦う時はまともに戦わせずに理不尽に負かすつもりで行った方が良いらしい。

 

爪を逆立てて、相手に腕を突き出す。

頬を爪が掠める。

よし、当たった。

これで一安心。

 

「っチィ、女の顔に傷付けてんじゃねぇよ!!!」

 

すると、顔に傷を付けられたのがそんなに堪えたのかあからさまにキレながら、俺の腹に蹴りを入れる。

霊力を集めて硬質化したので、そこまで痛くはないがそれでも距離を開けられた。

その瞬間、彼女の手元を目で追う事が出来なくなる。

 

「何を....!?」

 

彼女の手の動きが止まる。

直後、視点が下に下がっていく。

腕と足の感覚がない。

見れば、俺の四肢が切り落とされて胴体が地面に落ちようとしていた。

あんな速度で...四肢を的確に切り落とすなんて、なんて腕前なんだろうか。

普通にマジで戦いたくない。

まぁ、もう終わりなんだけどね。

 

胴体が地面に乱暴に叩きつけられる感覚。

そして、それを見て頬の傷を撫でながらこちらに三日月のように凄惨な笑みを浮かべながらにじり寄る女。

 

「私はこれでも心明流っていう流派の担い手でさぁ...今のは心明流の技の中では名前のない...それほどに当たり前の技術だ。分かったかよ、チンコ頭....お前なんぞ、それほどに取るに足らないってことにさぁ...何も出来ずに死んでいけ、害虫が。」

 

そう言って刀を振り上げる。

未だ、彼女は気づいてすらいない。

俺はもう、既に手を打ったということに。

後は、発動するだけだ。

 

「邪淫って...知ってるかな?」

 

「あ?」

 

俺の言葉に、疑問符を浮かべる女。

そりゃ、俺だってそうなる。

彼女の場合は、今から殺す相手が意味不明なことを言い出したので聞き返しただけなんだろうが。

俺の場合は普通に変態糞土方が過るからなんだが。

まぁ、そこはなんにせよ言葉を続けるとしよう。

せっかく関心を持ってくれたのだ。

無視し始める前に全てを言い終えないといけない。

 

「邪淫というのはね例えばおしっこするところを触ると気持ちがいいとか、あるいはおしっこするところを擦り付けると気持ちがいいといったことを邪淫っていうんだ。」

 

「へぇ?それでそれが何か?それが何か、今の死にかけているお前に関係があるのかよっ!?」

 

愉快と言った表情でそう詰る彼女。

しかし、そんな言葉も無視する。

だって正直、もう勝負ついたようなもんだし。

 

「魂は心臓の方にあるんだよ。そして心臓とおしっこする所はどちらが上かな?もちろん心臓のほうが頭に近いから上だよね? 」

 

「へぇ、面白いねぇ。極限状態に陥ると妖魔でも錯乱するんだってさぁ!!」

 

どうやら彼女は俺の言葉を取るに足りない戯言と受け取ったようだ。

だが、それならそれで構わない。

もう、詠唱は終わる。

 

刀を振り上げる。

首を刈ろうと言うのだろうか?

しかし、それよりも早く言葉は紡ぎ出された。

 

「身体の下の部分に魂が集中するとね、その子は下の世界に生まれ変わるんだって。」

 

彼女の目を見据えて、仕上げの言葉を放つ。

 

「ーーーー嫌だねぇ。」

 

「っ、....あがっ....お、まえ....。」

 

その瞬間、音を立てて刀が地面に落ちる。

刀を構えていた姿勢のまま、獲物を滑り落とした彼女の額には脂汗が浮かぶ。

そしてゆっくりと後ずさりながら腹を抑えだした。

 

狙い通りだ。

これで奴はこちらに攻撃を仕掛ける余裕はなくなったはず。

地面に転がる両腕に意識を向ける。

えーと。確かこういう感じで....おおっ、上手く行った。

指でこちらに向かってくる腕。

海底とかで這いまわってそう。

こちらに這い寄って来た腕がくっつく。

なんか接合が緩い気がするけど、まぁどっかで魂を摂取したらちゃんとくっつくだろうし....。

 

「てめぇ...何を...お”っ”...おなかが...っ!」

 

そう考えながらも足をくっつけていると前に居る彼女が声を挙げる。

その顔はまるでうんこを我慢しているような顔をしていた。

まぁ、別段間違いじゃないし....。

 

「俺の妖術。こちらに意識を向ける前に腹に霊力を集中させた方がいい。じゃないと魂がケツから抜けるぞ。」

 

これが俺の妖術『壱慈苦姦腸』。

爪から魂を固定化する毒を注入し、言霊に作用して排泄物と同じように肛門から魂を抜く。

....人格排泄かな?

なんだろう...正直転生したっていうのにこんな能力が目覚めるのは少し複雑な気分だった。

まぁ使い勝手が良い術だから別に良いのだが。

俺の言葉を聞くと、彼女は忌々し気にこちらを睨む。

 

「て”め”ぇ....ぞういうごどっ...!おっ...おごっ....!あぐぅぅぅ....クソしょうもねぇ術使いやがってぇぇ....っ!!あぎぃ!で、でるぅぅ....ま、負けないぃ.....!こ、こんなふざけた..じゅつでぇぇ...じんでぇ、だまるかぁぁぁ!!」

 

歯を食いしばりながら、脂汗を浮かべて耐える彼女。

どうやら霊力を下腹部の方に集めて、耐えているようだ。

見上げた根性である。

いくら耐えた所で無駄だと言うのに。

あと、別に殺すつもりないんですがそれは.....。

しかし、それにしても....。

 

「お前、脳筋だろ?以前出くわした奴は常に霊力で自分を守っていたから、毒を入れても固定化するまで時間が掛かってもう少し手ごわかったぞ。」

 

「でめ”ぇ”...っ!わだじをぉぉ...こけにじやがっ..あぁあああ!!っぐぅっうぅう!!!ころ...しゅぅ...ぜったいにごろじで...やりゅぅ....。」

 

なんとなくポロッと本音を出してしまったが、どうやら彼女にはその言葉が侮蔑に聞こえたようでこちらを睨みながら呪詛を吐く。

こえぇ...。

 

「おごっ!や、やば...ちょっと、私が外に出てる...だ、駄目ぇ...出ちゃダメぇ....あぁぁあああぁ!っぎぃぃいぃぃいぃ!!わだじは!じんめいりゅう”じはんだいぃ!まどうだぁ!ひずいぃだ!!こんなクソ妖魔に負け...ん”に”ゃ”ぁ”ぁ”抜けりゅぅ!!わたじがぎえちゃぅううぅ!くそっ!クソッぉ!!ふじゃけるな!ふじゃけりゅ..あぁあああぁぁぁ!!!」

 

どうやら少し魂が顔を出しているっぽい。

あれはもう待っていたら、いづれ勝手に落ちるな。

しかし.....。

 

「そういえば、お前さっき人の頭について何か言ってなかったか?」

 

だが、流石にさっきまで半分で済ませていると言うのに追いかけまわされて、害虫呼ばわりされて四肢を切り落とされたのだ。

そしてあの暴言。

それなら少しくらい、痛い目見せたいという気持ちになる。

彼女に対して一歩踏み出す。

すると、彼女は青い顔をして一歩退く。

 

「にゃ...にゃにが...あぎゅぅぅぅ!!ふんぬぅぅぅぅぅ!!!い、やだ!うんこみたいに魂ひり出してじぬぅ...なんて、ぜったいぃぃぃぃ....!!あぁっ!?ま、またぁ...やめろぉ...こ、こちらに来る...おほぉぉお!んぎぃ!!!が...まん....!!」

 

肉迫する俺を見て、徒手空拳しようとするも少しでも手を腹から話すと霊力を下腹部に維持することが出来ずに更に顔を出したのだろう。

酷い顔をしている。

そんな彼女を見ながら拳を握りしめる。

そして手を掴んで、無理やり引き剥がす。

 

「ひっ!ま、まさか...やめてやめてやめでぇぇ!!あうぐぅぅうう!!!お、お願い...な、なんでもする....なんでもしますぅ...だから、これ解除してぇ!ゆるしてくだしゃいぃ....私がバカでしたぁ、妖魔様ぁ....!うんこ我慢するみたいにじにだぐないですぅぅ...おぉっぉおぉっ!!どんっ..どんっでてりゅぅぅぅ!!」

 

魂を抜かれる恐怖にこちらに命乞いし始める彼女。

情けない様子、さっきまでの勢いは嘘のようだった。

だが、こちらに意識を向けるたびに霊力が緩んで出て行ってるようだ。

どうにも霊力運用に関してはあまり得意な子ではないのだろう。

それに、そもそも俺は魂取った後も殺すつもりは別にないし...遠慮する必要もないだろう。

 

「知るかトドメさしたる。....誰がっ、チンフェだゴラァァァ!!」

 

そう叫びながら彼女の腹に腹パンする。

人の頭チンコ呼ばわりしやがって!!

世の中には言ってはいけないことがあるんだぞメスガキが!!

分かったかオラ!!魂ブリブリ出しながらまんじりともせず後悔しろっ!!

 

腹に拳がめり込む。

すると、彼女は口から空気を出すと共にゆっくりと後ずさっている。

 

「そ、そんにゃぁぁ...い、いやだ...やだぁぁ!おごっ!どうして...どうしてぇぇえ”ぇぇぇぇ!!あぁぁぁぁぁぁ!!私が出て行くゥゥゥ!!!消えるゥゥゥゥ!!!あぎゃぁぁああぁぁああ...おぴょっ☆」

 

珍妙な声と共に、間抜け面...所謂アヘ顔をする彼女。

はえ~、前の世界ではよくお世話になっていたアヘ顔も、現実ではただのきつい変顔なんですね。

彼女は膝を突くと、まるで糸を斬られた人形のように倒れてしまう。

そこに、彼女の人間らしい意識は感じない。

 

倒れ伏した彼女のスカートなどを脱がすと、そこには白い魂魄がふよふよとしている。

これが奴がケツからひり出した魂か。

掴み上げると、手の中でプルプルと震える。

彼女の魂が俺を拒絶しているんだろう。

すると、腹パンした方の手がぽろりと落ちる。

 

「...やはり魂を食べないと完全にはくっつかない...か。」

 

腕を切り落とされたし、この子は半分くらい頂くとしよう。

そう決めると、口を大きく開けて魂魄を口に運ぶ。

そして魂魄を半分齧って咀嚼する。

グチャグチャとした食感は控え目に言ってグルテン噛んでるような感じ。

それなのにうまく感じるのが嫌になる。

そしてゆっくりと飲み込んだ。

 

すると、身体から跳ね上がるほどに活力が湧いてくる。

腕の断面がうにょうにょとくっつく先を求めるように蠢いている。

退魔師の魂は結構うまいし、それに霊力も多分に含まれている。

妖魔として成長するのに、必要だ。

 

「じゃあ返すよ。ほらっ、死ななかったろ?次会った時は見逃してくれ。」

 

そう祈るように言いながら、元あった場所に魂魄を戻す。

戻すっていうか突っ込むって形だが。

これで暫く経ったら固定化が溶けて、また再び意識を取り戻すはずだ。

...俺以外の妖魔から目を付けられない限りは。

 

突っ込んだ後はやっぱ手を洗いたいな....。

消毒液でも持ち歩くか?

そう思いながらも、落ちた手を腕にくっつけると完全にくっついた。

 

さて、もし彼女を探している他の退魔師が居ると面倒だしここでとんずらこくか。

せっかく死なないように半分だけにしたのだ。

死ななければこちらを脅威視することもないだろうし、平穏に暮らしていけるはず。

しかしここで見つかれば確実に追い回されて攻撃されるだろう。

それはあまり望ましくない。

そう思って、足に力を入れるとビルの合間を駆け抜ける。

 

俺は妖魔、名前は邪淫。

いつもこうやって相手のケツからぶっこ抜いた魂を食って生きている。

....やっぱ、これって糞土方じゃないかな?

妖術というのは生来の資質に左右されるらしい。

ということは俺の資質は変態糞土方....ってコト!?

やめてくれよ....(絶望)

 

そんな思考を頭から振り払って、前を向く。

どうしても、そのことを認めたくない自分が居た。

 

 

 

 

 

 

古くから存在し、人々に仇なす存在『妖魔』。

しかし人々はただ彼らの為すがままに怯えていたわけではない。

平安時代から出現した陰陽師。

その系譜を継ぐ彼女達。

彼らは退魔師と呼ばれる。

 

そんな退魔師を養成する機関、私立修禊学園。

その生徒会室では3人の女子生徒が顔を突き合わせて難しい表情をしていた。

真ん中には一人の少女が座っている。

 

「本当に....、やるんですか?」

 

そう聞くと、真ん中に座っていた少女がゆっくりと立ち上がると木刀を彼女に手渡す。

 

「えぇ、これは検証の最終段階だからな。自信がないのか?貴様は...心明流の師範代なのだろう?纏田翡翠。」

 

そう言われて、じっと木刀を見つめる纏田という少女。

そして立ち上がると、彼女は木刀に手を伸ばす。

 

「そうだ、私は心明流師範代、纏田翡翠....今まで確かに、鍛錬を積んで....。」

 

木刀を掴む。

そして、立ち上がると構えを取ろうとする。

しかし、その構えはどこか腰が入っておらずまるで素人同然だ。

彼女の顔が一瞬引き攣る。

 

だが、その事実を振り払うようにへっぴり腰のまま刀を振るおうとする。

しかしその瞬間。

 

「あっ....。」

 

刀が手から滑り落ちた。

こんなことは、以前の彼女ではあり得ないことだった。

そして、その瞬間彼女の目に涙が滲む。

 

「駄目..です、先輩。私....刀、振れません.....。昔やって来たことが全部、頭から抜け落ちて....私の、今までの日々が...刀が振るえないなんて...私、もう師範代なんかじゃ....ッ!」

 

涙が床を濡らし、彼女の表情が曇る。

それを見て、左側に居た少女が彼女の手から優しく木刀を取り上げる。

そして右側の少女は口を開いた。

 

「検証は以上です。....心情は察します、生徒会としても最大限のサポートは行うつもりです。」

 

「....っ!!」

 

唇を噛み締めると、彼女は何も言わずに部屋から出て行く。

残された三人は、顔を見合わせた。

 

「...また一人、有望な一年が犠牲になったな。」

 

真ん中の少女は、物憂げな表情でそう呟く。

すると、左側の少女がそんな彼女に声を掛ける。

 

「魂の一部被食による記憶や経験の部分的喪失。前回の子と同じです。しかし、今回の聞き取りによって相手の名前、そしてどのように魂を喰らっているか分かりました。これは大きな一歩です、会長。彼女が相手の特徴を覚えていてよかったですね。」

 

「良かったって....なんですかそれ。」

 

すると、右側に居た大人しそうな少女が口を開く。

そんな彼女を見ながらも、淡々と左側の少女は口を開いた。

 

「....彼女のお陰で妖魔の情報を得ることが出来たと言っているのですが、それが何か?」

 

「相手の妖魔の情報を覚えているからなんだっていうんですか...彼女は、今まで積み重ねていた鍛錬による技能や流派の技を喪失してて、家族や自分についての記憶も一部欠落してるんですよ!!そんな言い方.....!!」

 

「...いや、今回は左近寺君の言い分が正しい。」

 

睨み合う二人の少女。

その瞬間、真ん中に居た少女。

元修禊学園生徒会長、藤堂統華が口を開いた。

 

「正しいって....会長!」

 

「宇内君には悪いが、我々退魔師は妖魔を滅することで昔のように闇に怯えることのない暮らしを維持すること。それは学生である現段階でも変わることはない。だからこそ同胞の犠牲を残念に思いはすれど、その妖魔に繋がる手がかりを手に入れたのなら喜ばねばなるまい。妖魔に対する対策が用意出来れば、それだけ彼女のような犠牲を未然に防ぐことが出来るのだから。違うかね?」

 

「っ....!いえ、その通りです。」

 

宇内と呼ばれた少女は唇の端を噛み締める。

認めたくはない、しかし道理は間違っていなかった。

 

「しかし、そんなことよりも私が気にかかるのはその邪淫なる妖魔の行動だ。魂を取る妖魔は他にも居るが、敢えて魂を一部齧ってそのまま元の肉体に戻すなんて、今回が初めてだ。」

 

「なにか理由があるのでしょうか?習性とか....。」

 

左近寺と呼ばれた少女が口を開くと、それに統華は答える。

 

「現状、情報が限られている以上断言はできない。だが...妖魔はどれも底意地が悪く悪辣非道で陰湿な連中ばかりだ。私としては...魂を一部、戻すことで記憶や経験を喪失して弱体化し、絶望させる為ではないかと思う。」

 

「...なんて、悪趣味な。」

 

「あぁ。反吐が出るほどの下衆だ。これまでの妖魔の中でもかなり陰湿な奴だ。第一種妖魔に該当する程の悪辣さだ....。」

 

宇内の言葉に同意する統華。

その顔は不快さに歪んでいた。

 

「もしそうであるならば、我々退魔師に対する挑発なのかもしれないな。なんにせよ、その邪淫なる妖魔の掃討を派遣する必要がある。姉妹校である聖バチアンとも情報共有しなければ...。」

 

「ですが相手の力量が割れていない以上、徒に差し向ければこちらの被害が拡大するのでは?」

 

左近寺がそう言った瞬間、生徒会室の扉が開かれる。

そして、軽く宙を踊るかのような声が部屋の中を響いた。

 

「話は聞かせてもらったわ。それウチが行ってもい~いぃ?」

 

そこには制服を着崩したどこかチャラチャラした雰囲気の少女。

メイクはばっちりと決まっており、片耳にピアス。

そしてピンクに染められたツインテールが特徴的な少女が立っていた。

 

「蘇芳花.....貴様....、なんのようだ?」

 

「盗み聞きとは感心しませんね。いや失礼、外様ではそれが礼儀ですものね、申し訳ありません...こちらが合わせるべきなのでしょうが如何せん野蛮で理解できず....。」

 

統華は彼女を睨み、左近寺は皮肉を飛ばす。

そして、そんな彼らの後ろに宇内は隠れる。

しかし、芳花は気にしない。

ヘラヘラと笑いながらも言葉を続ける。

 

「いやぁ?生徒かいちょーサマが困っていらっしゃるようなので、少し助力をしてあげようかなーって。」

 

「助力?貴様が?....何を企んでいる?」

 

統華は助力を申し出る彼女に訝し気な目線を送る。

しかし、彼女はそれを受けても気にした様子はなく笑顔で頷く。

 

「べっつにぃ~?ただ、どうにも人を差し向けるのが惜しいみたいだしぃ?ウチが代わりに行ってやっても良いかな~って。それならお前らも納得っしょ?だって、ウチみたいな外様がどうなろうがアンタらは知ったこっちゃない。寧ろやられてくれた方が万歳って感じなんだしぃ~。」

 

軽い様子でそう言う彼女。

その発言を受けて、左近寺は隣の統華に耳打ちをする。

 

「どうします....会長。」

 

「...奴の言い分は最もだ。それに現状取る手段では最もこちらの損害は少ないだろう。外様一人失ったところで、学園にはなんら影響はない。」

 

そう言うと、話し合いを止めて統華は芳花を見据える。

 

「...良いだろう。貴様に邪淫掃討を命じる。」

 

「りょうか~い!話が速くて助かるわぁ~。じゃ、ちゃちゃっと終わらせるとしますかぁ!」

 

そう言うと、彼女は軽い足取りで生徒会長室を出た。




邪淫の名前を持った主人公。
平穏を望んで下手に魂残した結果、目を付けられる模様。

後半登場したギャル。
名前が蘇芳花ですがこれは花蘇芳という花のアナグラムです。
そして、その花言葉を調べればどんなキャラか大体わかります。

健全な人格排泄が書きたかった。

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