ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~    作:てらバイト

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さて、お手並み拝見といきましょうか。


幼き天才

「ひいぃ!ま、待ってくれっ降参!降参するから!」

 

 

 

 

ピタリ。

怯えた声に反応して静止する。視線を向けると首に触れる寸前の大鎌が所在なさげに止まっていた。…止めたのは私だけど。

 

 

目の前で降参した男の子が安堵の表情を浮かべながら転送されていく。その様に僅かな苛立ちを覚えた私は、思わずため息を吐いてしまう。……物足りないなぁ、全然……。

 

 

周りには既に私以外誰もいない。それもその筈、グラウンドにいた人たちは私が全て倒したのだから。降参させた人を含めると合計で20人ちょっと倒したことになるのかな?出だしとして悪くは無いんだろうけど…正直拍子抜けだなぁ。ハザマさんと比べるのは悪いとは思うんだけど、それにしたって

 

 

「拙いんだよねぇ…こっちの初動を見切れてないからそもそも勝負にもならないし…」

 

 

どうしたもんかなぁ。そんなことを考えていると、ふと周りの静けさに気が付いて辺りを見回す。1分前に20人近くいた空間から一気に人が減ると、何だか私一人だけ別世界に放り込まれたような錯覚をしてしまう。

 

 

 

 

 

 

………? どうしてだろう。何だかとても懐かしい感じがする。ただ広い場所に私一人だけ…頭が痛む。確か、前にも……わたし、ひとりだけ……いったいどこ、で。あたまいたい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、また私を置いてどこかに行ってしまったのね。痛い。私だけ除け者にして。私は化け物じゃなくてあなた達と痛い同じ人間なのにどうして私だけ許されないのどうしてわたしを痛い恐れるのどうしてわたしをみすてたのおとうさまおかあさまいたいいたい絶対に許さない許さない痛いイタイ許さないゆるさないゆるさナイユルサナイイタイイタイイタイイタイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何を呆けているのクロエ。疾く起きなさいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ボーっとしてた。えっと、何考えてたんだっけ?…そうだ、グラウンドにいた人は全員倒したから別のエリアに移動しないと。速く移動しなきゃね。…そういえばノエルとフレアは何処に転送されたんだろう?近くにはいないみたいだから校舎エリアか体育館エリアのほうにいるのかも。

 

 

あぁ、早く会いたいなぁノエル。あの心躍る一時をもう一度味わいたいよ…!フレアも見ただけで分かるくらい鍛えられてたから、きっと強いんだろうなぁ…!どこかな、どこにいるかなぁ!あはっ想像したら昂ってきちゃった!ねぇおばあさま、どこいるかわか……あっそうか。まだ朝だから起きてないんだったね。ごめんねおばあさま。ゆっくりおやすみ。自分で探すね?

 

 

よし、それじゃあ次に向かう場所は……やっぱり、人が多そうな体育館がマストかな?場所は確か…

 

 

 

 

 

 

 

 

首筋に寒気が走る。考えるよりも先に身体が横に跳んでいた。

 

 

 

 

 

バチイィィィ!

 

 

直後、私が立っていた場所に雷が轟音を鳴らしながら落ちた。

 

 

…危なかったぁ。あと少し遅れてたら黒焦げだ。魔法耐性ほとんどないから当たると痛いんだよねぇ。

 

 

 

「うっそ、今の避けんの?どんな反射神経してんのよ、あんた」

 

 

声のする上空へと顔を向けると、魔法少女然とした女の子が浮遊しながらこっちを見下ろしていた。人間…いや、あの魔力の質は魔族かな?どちらにせよあの威力の魔法を放って余裕な感じを見るにかなりの使い手。いいねぇ、ようやく戦いになりそうな相手が来てくれた…!

 

 

…それはそうと……う~~ん、見づらい。もうちょっと降りてきてくれないかなぁ…。あと少しで見えそうなのに(・・・・・・・・・・・・)……

 

 

 

目を細めて全神経を視覚に集中する。あともうちょっと…もうちょっとで…

 

 

 

「グラウンドにいた生徒全部倒したのってあんた?…あ~もう出遅れた~!集合前にグラウンドに群がった奴らを大魔法で一気に仕留める作戦がパアじゃん!新しく作った魔法の試し打ちしたかったのに~!」

 

 

「…」

 

 

「こうなったら、責任取ってあんたが実験台になりな!この天才ハバ卒魔女の紫咲シオンの超絶凄い魔法をくらっ……ねぇ、ちょっと。聞いてる?」

 

 

「……ん、ごめん。今ちょっと話しかけないで?見るのに集中してるから」

 

 

「は?見るってなに……あ~!?あんたまさか、シオンのパンツ見ようとしてんの!?ぷふっざ~んねんでしたぁ~wwwあんたみたいな変態に覗かれないように魔法でバッチリ対策済みで~す!ねぇ今どんな気持ち?簡単に見れると思ったぁ?甘いんだよば~か!アハハハ「へえ、白なんだ。そこは紫じゃないんだねぇ」ハハハハ…………は?」

 

 

 

 

 

「対策って、闇魔法の応用でスカートの中を暗くしてるだけでしょ?私って生まれつき夜目が利くから多少の暗がりなら普通に見えちゃうんだよねぇ。……あぁ、それで今の気持ちだっけ?そんなの…」

 

 

 

 

眼福に決まってるよね♡

 

 

 

そう告げた直後、目が眩むほどの魔力の奔流がシオンから放たれる。私を睨み魔法陣をいくつも展開しながら手を向けるシオンの姿は、大魔法使いと呼んでも差し支えないほど、様になっていた。

 

 

 

 

まあでも

 

顔真っ赤にしてスカートを押さえてなければ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、満点だったかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっっっ殺す!!!!!」

 

 

 

 

あはっ。からかいすぎた?

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「マジックミサイル!サンダーウィップ!ああもう、さっさと当たれよ変態!このっ避けんな!」

 

 

絶え間なく降り注ぐ魔法の連弾。シオンから繰り出される魔法は次々と地表に叩きつけられグラウンドの地形を変えていく。魔力の矢が、炎弾が、雷の鞭が、氷塊が。ただ一人、クロエの身体を貫ぬくためだけに放たれる。頭に血が上った状態で放たれるシオンの魔法は精密さに欠けており時折あらぬ方向に飛んでいくものの、その分一発一発に籠められた魔力量は甚大。空中から魔法を打ち続けるシオンは、その威力も相まって戦場に鎮座する固定砲台となりグラウンドを破壊しつくしていた。

 

 

 

そんなシオンの魔法の嵐を掻い潜りながら駆け回るクロエは、攻め手に欠けている現状をどうにか打破しようと思考を巡らせていた。

 

 

 

(う~~~ん…近寄れない。魔法職との戦いはこれが面倒なんだよねぇ…一般的な魔法使い相手なら魔力切れとか集中乱れるのを待つんだけど……あの子、全然疲れないや)

 

 

(きっと生まれ持った魔力保有量が常人よりも多いんだろうけど、一番厄介なのは魔力操作の精密さ。怒り任せに見える今も、自分の放つ魔法が暴発しないギリギリまで魔力を込めてる。類稀な魔法センスが無いと到底出来ないテクニック。一発二発だけなら偶然で済ませられるけど……今まで撃ってきた魔法23発(・・・)、全部がそうなら……それはもう、蓋然だよねぇ)

 

 

大鎌で氷塊と炎弾を切り裂きながら少し前に進む。雷の矢は受けられない。跳んで避ける。

彼我の距離は、残り20m。

 

 

(現状での勝ち筋は、目の前まで近づいて一撃当てること。けどそれをするためには魔法をどうにかしなきゃ近づけない。……こんな序盤で手札を晒したくはないけど、蛇境滅閃牙なら魔法を無視して攻撃が届く。でも…それをする前に確認しなきゃならないことが二つある。まずは……魔法障壁の強度!)

 

 

クロエは急遽足を止め、その場で上半身を捩じるようにして力を溜める。限界まで捩じり、引き絞り、そして……シオンに向けて大鎌を放り投げた。

 

 

クロエに向かっていた魔法の弾幕を切り裂きながら、大鎌がシオンの首を狩りとらんと風を切りながら迫る。

 

 

(はぁ!?ぶん投げたぁ!?……舐めんな、そんなん当たるかっての!)

 

 

クロエが自分の武器を放り投げたことに一瞬動揺したもののすぐに立て直し、浮遊で飛びながら回避する。標的を見失った大鎌は、無情にも空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 

「…ねぇ、何のつもり?シオンの魔法でいつまでも近づけないからって、あんな雑な投擲して当たる訳ないじゃん…」

 

 

この時点でシオンは自分の勝利を確信した。何故なら眼下の変態女が唯一の武器を投げたことで、空中にいる自分に対しての攻撃手段を完全に失ったからだ。あとは横槍―ここから遠く離れた場所からの狙撃など―に注意しながら、自分に対して舐めた態度を取った後輩を分からせてやればいい。既に勝負はついたのだから。

 

 

 

「大鎌を投げて(・・・)、勝負も投げた(・・・)って…?アハハハハっ洒落が利いてんねぇ!ギャグセンスあるよ!ハハハ!あーっ、おもしろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、だからって容赦はしないんだけどさ

 

 

 

 

 

 

シオンの右手に魔力が集う。その魔力量は、今まで放っていた魔法が児戯に思えてしまうほどの圧迫感を携えていた。その膨大な魔力は次第に形を変え…紫電を纏った大槍に姿を変えた。

 

 

「これ、『ライトニングスピア』っていうんだけどさ……一対多の状況で戦況を覆せるようにって作られた魔法なんだよね。だからこうやって一人に対して撃つとか、威力も範囲も使う魔力も、ぜーんぶ過剰なんだけどー…今回は特別。これで跡形もなく消し飛ばしてやんよ!」

 

 

紫電の大槍は術者の感情に呼応してか、次々と籠められる魔力に反応して大きくなっていき、その大きさは術者のシオンの3倍ものスケールとなっていた。シオンはこちらを見上げているクロエと視線を合わせながら、最後の問いかけをする。

 

 

「最後になんか言いたいことある?あっ命乞い以外ね?あんたをここで消し飛ばすのは確定だから」

 

 

「……う~ん。あっそうだ!それじゃあ訂正を一つだけしようかな?」

 

 

クロエが今思いついた!と言うように両手をパンっと合わせた。柔らかな笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

 

 

 

 

「私は勝負を投げたつもりはないよ?むしろここからだよ、シオン」

 

 

「……あ~はいはい、つまんない負け惜しみね~。…もういいよ。シオンも早く終わらせてあくあちゃんと合流しなきゃだしさっさと……え~っと、そういえばあんたの名前って」

 

 

 

何だっけ。

そう言い切る前に、シオンの耳がおかしな音(・・・・・)を拾った。

 

 

(…?何この音…何かが回ってる音…?紫電の大槍のバチバチいってる音とは別。どっちかって言うと、…風切り音(・・・・)だ。……あれっ。この音ってさっきも聞い、て)

 

 

嫌な予感がシオンの全身を包む。直観に従い勢いよく振り向くと

 

 

 

 

 

 

 

 

シオンの眼前に、飛んで行ったはずの大鎌が迫っていた。

 

 

 

「ーーーッ!!二重障壁ッ!!」

 

 

紫電の大槍を即座に解除、急造で魔法障壁を展開。

常に張っている自動型の障壁では自分諸共真っ二つにされる。その予感めいた直感が、功を奏した。二重障壁と大鎌が衝突し…障壁が大鎌を弾き。砕け散った。弾かれた大鎌は重力に従いグラウンドへ落ちていった。

 

 

冷や汗が噴き出す。あと一瞬でも振り返るのが遅かったら。紫電の大槍の解除が間に合わなかったら。二重障壁以外の防御魔法を選択していれば。自分の身体は今頃…放った魔法を悉く切り裂いた大鎌の威力と切れ味を思い出し身震いする。一度でも当たったら、そこで終わりだ。

 

 

シオンはそこまで考え、ハッとする。

そうだ、アイツは!数秒とは言え目を離した。すぐさま距離を詰めてくるに違いない。シオンは振り返り目線を下げ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分のすぐ傍で拳を振りかぶる変態と目が合った。

 

 

 

(は?何でこんな近くに、10m以上離れて、てか高さ、まさか一気に跳んで)

 

 

(……あれ。なんか動きおっそ。やけにゆっくりして…なのに意識はハッキリしてる。……まさか、走馬灯ってやつ?)

 

 

シオンとて理解している。このバトルロワイヤルで死に直結するようなダメージを受けても、その瞬間に転送され後遺症の無い状態で復活することは。転送システムに不具合が起きない限り、身の安全は保障されている。そんな事は言われずとも分かっている。何せ過去に何度も経験しているのだから。

 

 

しかし頭でいくら理解していても、本能は別。今まで経験した事のない濃密な死の気配を前にシオンの生存本能は悲鳴を上げ、それは走馬灯という現象を引き起こした。楽しかったこと、悲しかったこと。様々な記憶が浮かんでは消えていく。その流れゆく記憶の映像を、シオンはどこか冷めた目で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

(あ〜あ、シオンの負けかぁ。こりゃ挑む相手間違えたかなぁ。こんな華奢なナリして中身ゴリラとか誰も予想出来ないっての)

 

 

(……ま、いっか。正直こんな呆気なく負けんのはめっちゃ悔しいけど、次に勝てばいいし。この変態女の手札も粗方分かった。…そう、次。次で勝てればいいんだ。だから…今回は負けてもい)

 

 

 

 

 

 

 

ね、ねぇシオンちゃん。次のバトロワなんだけどさー、そ、その…さ……あっあ、ああああてぃしと組まない⁉︎

 

 

(―――)

 

 

ほらっ前回のバトロワ!最後の方で二人で組んだ時、結構相性良かったじゃん!ね⁉だからさ、今回は最初から二人で…え?めんどい…?もう組む人決めた…?ッスゥーーーー…

 

 

…え?冗談…?……だ、だよねー!あてぃしのこと大好きなシオンちゃんが私以外と組むわけないもんなー!はー辛いわー愛されすぎてつらっ…あっすみません調子乗りましたお願いだから行かないでぇ!

 

 

(―――)

 

 

シオンちゃんのことだから心配いらないと思うけど、集合前にリタイアとかしないでよねっ。転送されたら校舎の玄関前に集合!ハイ決定!約束だからねっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(負けてもいい?…ちがう)

 

 

(次で勝てばいい?…ちがう)

 

 

(あくあちゃんとの約束ほっぽり出して、勝手に脱落するのが、正しい…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うに決まってんだろッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

―テレポートッ!

 

 

「!」

 

 

 

拳が空振る。絶好のタイミングで繰り出した一撃が不発になったにも拘らず、クロエの表情に焦りは見られない。元から予想していた結果だからだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

(やっぱり使えたかぁ転移魔法。まさかあの僅かな瞬間で発動できるとは思わなかったけど…。でも、これで検証はお終い。向こうの手の内は大体明かせたかなぁ?)

 

 

 

クロエが落ちながら考察をしている最中、背後から迸る魔力の圧に肌が粟立つ。すぐさま反転、身体の前方に闇の盾(・・・)を展開し衝撃に備える。

 

 

 

―ライトニングスピアッ!!

 

 

「ーーーッ!!」

 

 

放たれた紫電の大槍は主を守らんと広がる闇を物ともせず貫き……クロエの左肩を抉りグラウンドに着弾。凄まじい轟音を立てながら地表に雷を撒き散らした。

 

 

身体を回転させながら地面に降り立つ。

クロエは足元の大鎌を拾いながら紫電によって焼き焦げた左肩を見ると、うっとりと微笑む。それはまるで愛しいものを見るような、慈愛に満ちた表情であった。痺れる左腕を気にすることなくシオンへと向き直る。視線の先には浮遊しながら息を整える魔女の姿があった。視線が交わる。

 

 

「まさか転移してすぐに反撃がくるなんてね…来ても精々初級魔法レベルだと思ってたから、油断しちゃったなぁ…ねぇ見てシオン?私の肩、掠ったところ焦げて煙上がってるよぉ…!ふふふっ…痛いなぁ…楽しいなぁ…

 

 

「はっ……はぁっ……!…うぇ、気持ちわる。そんなの見せつけんな…!シオンにそういう趣味は、無いんだよ!」

 

 

(ちくしょう、逸らされた!大槍があの闇の盾みたいなのに当たった瞬間に方向を捻じ曲げられた…!魔力反応は無かったから魔法じゃない…なら固有能力?それとも武器に付与された特殊能力?でもアイツ、さっきは武器持ってなかったし……あーもう、わかんない!魔法だったら見ただけで大体分析出来んのにぃ!)

 

 

シオンはライトニングスピアを逸らした不可解な闇を魔法ではないと断定し、歯噛みする。シオンは物心ついた時から魔法の道を志していた生粋の魔導者。魔法に関することなら自他共に認める天才ではあるが、それ以外の技術や知識はからっきしであり門外漢。

 

 

好機を狙った渾身の魔法が未知の力によって容易くいなされた事実は、シオンに二の足を踏ませるには十分すぎる脅威であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………しゃ~ない。アレ使うかぁ」

 

 

 

しかし、シオンの表情に絶望は無く。

その顔に不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと地面に降り立ち、魔力を循環させた。

 

 

クロエはその笑みを、悪足搔き故に浮かべた表情とはとても思えなかった。

あれはむしろ、自分にとっての切り札を切る時。まるで自身の勝利を確信しているかのような……

 

 

 

 

 

「ねぇ、なんで浮遊止めたと思う?答えは~…今から使う魔法が強力すぎて、地面に向かってなんて撃てないから、で~す!……シオンの本気の魔法、見せてあげる」

 

 

 

 

 

 

クロエは内心で驚嘆し、そして歓喜した。

 

 

まだ底があるの?

紫電の大槍以上の切り札があるの?

もっと私を愉しませてくれるの!?

 

(なら、こっちも応えなきゃ♡)

 

切り札には切り札を。

クロエの身体を覆うようにして、闇が轟く。

 

 

 

 

 

 

「アンタの闇の盾を通った魔法が全部逸らされるならさぁ…それよりも巨大な魔法で!闇ごとぶっ飛ばせばいいってことだよなぁ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!?

 

 

シオンは紫電の大槍の倍以上の魔力を練りながら宣言する。

作戦は単純明快。点でダメなら面で潰す。一見荒唐無稽な強硬策に見えるが、この状況に於いては間違いなく有効な一手であった。

何故ならクロエが展開した闇の盾の効果は、シオンの予想通り闇を通ったもの限定での軌道変更だからだ。闇の展開範囲は最大でクロエの身体を隠せるほど。それよりも質量の大きな魔法に対しては全くの無力である。

 

偶然か、将又天才故の直感か。シオンは闇の盾に対する最適解を導き出した。

 

 

 

 

 

 

そして遂に魔力が満ちる。

天才魔女の本気が、放たれた。

 

 

 

 

 

―ディストラクション・レイッ!!!

 

 

 

 

破壊の極光が空気を、地面を、空間を飲み込みながら音速を越えて突き進む。

グラウンドの半分を埋める程の質量が轟音と破壊を伴ってクロエを飲み込もうとする直前、無手となった(・・・・・・)クロエは切り札の一つを切った。

 

 

 

 

 

―蛇境滅閃牙ッ!!!

 

 

 

闇で全身を覆ったクロエが破壊の極光と衝突…すること無く、悠々と極光の中心をすり抜けた。

 

 

銃弾、弓矢、魔法。肉体を介さない攻撃であればどんなものでもすり抜ける遠距離殺しの秘技は、天才の一撃を上回った。

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

思考停止。

シオンは目の前で起きたことに理解が追い着かなかった。自身の切り札が呆気なく突破されるなど、誰が予想できようか。完全にフリーズしその場から一歩も動けずに、ゆっくりと顔に迫る魔の手を認識し…

 

 

「……ッ!!」

 

 

思考が浮上する。

手が触れる直前で何とかテレポートを発動し、先程のようにクロエの後方に転移(・・・・・・・・・)。シオンの心は、まだ折れていなかった。

 

 

(今のでほとんど魔力使ったけどっ…あくあちゃんと合流すればまだなんとかなる!一旦引いて態勢を立て直してから…コイツを泣かすッ!!)

 

 

不利を悟っての撤退。

負けず嫌いのシオンからすれば屈辱でしかない選択だが、背に腹は代えられない。ここで意地を張っても敗色濃厚。今決着にこだわる必要は無いのだ。シオンは自分にそう言い聞かせここから離脱するべく転移を発動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ……!?」

 

 

 

その直前、上空から降ってきた大鎌がシオンの胸を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な…にこれ、……なんで、上から)

 

 

全く予想していない認識外からの攻撃は、シオンを大いに混乱させた。

大鎌の刃が自身の胸から生えるように突き出た非現実的な光景を前に、シオンはただ茫然と

立ち竦むことしか出来ない。気づけば足先が光の粒子に変換されて消えていく。リタイアした証である転送が始まった。

 

 

 

 

「シオンって咄嗟の状況でテレポートするとき、相手の後ろに転移する癖があるよねぇ。直した方が良いよ?それ。結構分かりやすかったから」

 

 

クロエは蛇境滅閃牙をする直前、手にした大鎌を上に空高く放り投げていた。それも自身がシオンに再接近した際に再び転移で回避するであろう場所を予測して。もし仮にシオンが直前で大鎌の接近に気付いて障壁で防ごうとも、その隙に蹴撃の一つ当てればどの道クロエが勝っていた。

 

 

とどのつまり、シオンが破壊の極光を放った時点で勝敗は決していたのだ。

 

 

 

 

 

(…こんな変態女なんかに、負けるなんて…ごめんあくあちゃん……約束、守れなかった)

 

 

 

(………そう、いえば……コイツの名前、きいてない、や……)

 

 

 

 

シオンの意識は、転移と同時に闇へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わったよ、おばあさま。紫咲シオン……強かったなぁ。次はバトルロワイヤルじゃなくて、実戦でヤリたいなぁ…ふふっふふふふふ!

 

 

クロエはそう独り言ち、荒れ果てた戦場と化したグラウンドを後にする。次なる獲物を求めて。更なる強者と出会うため。その足は体育館へと向けられた。

 

 

 

 

 

 

左肩の傷は、既に癒えていた。

 












これもうどっちが主人公かわかんねぇな…
何故ウチのクロエちゃんはこんなにも悪役ムーブが似合うのか…コレガワカラナイ
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