ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~ 作:てらバイト
どこもかしこも獣ばかり…
動物園かなにかですか?ここは
「えっ、もう残り30人?なんかペース早くない?まだ始まって30分も経ってないよな…」
「わかった!どっかの誰かがめちゃ張り切って一人で倒したんだ!こりゃねね達も負けてらんないよ、おまるん!」
「いや一人で100人以上倒すは言いすぎだろ…無双ゲーじゃあるまいし」
第一校舎3階のとある空き教室で、二人の少女が椅子に腰掛けながら雑談に興じていた。
二人はバトルロワイヤル前に教室で初めて会った仲にも拘わらず僅か数分の会話ですっかり意気投合し、バトルロワイヤルでもタッグを組みお互いの背中を預けるほど相性が良かった。その結果、二人は転送位置であった第一校舎内に居た生徒との戦いを全て制し、見事勝ち残ってみせた。現在二人は近くに敵がいない事を確認し、ちょっとした小休止中である。
(しっかし、残り30人ねぇ…まさかポルカがここまで残るなんて思ってもみなかったわ…)
サーカスの演者のようなカラフルな格好をした獣人の少女、尾丸ポルカは直接的な戦闘が苦手な自分が残り30人の段階まで生き残れるとは思っていなかった。一応ナイフ投げやジャグリングといった戦闘で使える技もあるが、この魑魅魍魎が跋扈する(ポルカ目線)ホロライブ学園ではこの程度は通用しないだろうとポルカ自身理解していた。
それに加えてバトロワで上位に入りたいという熱意も、強敵との死合を求める闘争心もそこまで持ち合わせてなかったポルカは、“しゃーない序盤で脱落かなぁ”と現実的な予想を立てていた。
しかしポルカのこの半ば諦観的予想は、偶然同じ転送位置に居た桃鈴ねね(交友時間5分)の存在により大きくズレていく事となった。
「あっおまるん!転送位置一緒なんてラッキーじゃん!よーしっ、じゃあラッキーついでにねねと組も!」
ポルカは内心で何が“じゃあ”なんだろう、とツッコミかけたが、深く考えずに黙って組むことにした。この桃鈴ねねという女に常識は通用しねぇということは、教室での会話で既に察していたからだ。何よりポルカ自身、一人で戦場に飛び込むよりも友達と一緒の方が幾分気が楽になると思ったのも大きい。…単に心細かった、とも言えるが。
そんな成り行きで結成した即席タッグは、意外にも第一校舎エリアでの戦いを破竹の勢いで制していった。
接近戦が得意なねねを前衛に据えて、ポルカが中距離で支援や撹乱をするという布陣は見事にハマった。第一校舎に転送された生徒のほとんどが遠距離攻撃を持っていなかったことも幸いして、二人は有利に戦闘を進めていった。
途中、俊敏な蹴り技を仕掛けてくる兎の獣人や、小柄な身体に似合わぬパワータイプの天使と強力な突進を繰り出す羊の獣人コンビなどの強敵とも遭遇したが、二人の連携でその悉くを撃破していった。
ポルカはその数十分前の激闘を振り返りながら、しみじみと思う。
絶対に自分一人じゃ勝ち残れなかったな、と。
(ほっとんどねねが倒したからなぁ…何だっけ、「ねねの家に代々伝わる秘伝の拳法アル!」とか言ってたっけ…言動はアホのそれなのにしっかり強いのが何とも言えねー…てか秘伝の拳法ってそんなポンポン見せていいもんなのか…?ポルカガッツリ見ちゃってるけど、大丈夫…?後で口封じに殺されない…?)
頼む、見逃してくれ桃鈴家!
そんな突拍子も無い心の叫びは一旦置き、ポルカは教卓に腰掛けているねねに先の戦闘での感謝を伝えようと向き直る。
「改めてありがとな、ねね。ポルカ一人だったら多分…いや、絶対ここまで残れなかった。全部ねねのおかげだよ」
「なーに言ってんのおまるん!確かにねねはスーパーウルトラミラクルつよつよ美少女ねねちだけど!」
「自意識えぐいな」
「けど!おまるんがいたから、ここまでねねは勝てたんだよ!ねねとおまるんだから、ここまで残れたんじゃんか!」
「え…でも、ポルカがいなくてもねねなら一人でも勝てたでしょ?実際強いし…」
「はぁ~~ん、素直に褒められてうれしい!ありがとっ!…でも、“ねね一人でも勝てた”ってとこは違うよ。そこだけは譲れないアル」
「途中で会ったもんの凄い速さでピョンピョン跳んでた兎さんとか、力こそパワー!って感じの二人組は、ねね一人じゃ勝てなかったよ。もし勝てても、こうやっておまるんとお喋りする余裕は無かったと思う。…おまるんが出したあの“
「……」
「おまるんはさ、もっと自分に自信持っていいと思う!あんな凄い技使えるんだよ?どんどん前に出してこーよ!履歴書の特技欄とかにも書いてこっ!」
「書かんわ!……まぁでも、ねねが言いたいことは伝わった。…ありがと」
「うん!おまるんも、ねねと組んでくれてありがとね!よ~し、この調子でどんどん勝ち残るぞー!おー!」
教壇の前で気合を入れるねねを見ながら、ポルカは自身の中で芽生え始めた不思議な高揚感に戸惑いながらも妙な居心地の良さを感じていた。今まで経験したことの無い未知の感覚。ポルカはそれに首を傾げながらも“まぁ悪くはないか”と独り言ちた。
半ば無意識ではあるが、既にポルカの中で桃鈴ねねという存在は大きくなっていた。今日初めて知り合った二人は、まだ互いがどんな性格なのか、何を優先して物事を考えるのか、好きな音楽は何なのかすらまだはっきりと分かっていない。一緒に行動を共にした時間も1時間を切るだろう。
しかし、二人の息の合ったコンビネーションは何も知らない第三者が見れば長い年月をかけて編み出したものと見紛うほどの仕上がりを見せている。戦闘中でも互いに名前を呼ぶだけでなにをするべきなのか瞬時に判断できるレベルとなっていた。
これも偏にポルカとねねの相性の良さが生み出した結果であり、必然。
互いが互いをフォローし合う戦いを経験したことで、二人の間には時間を超越した確かな絆が芽生えていた。
(…もしかしたらこれ、あたしとねねでワンチャントップ狙える…?)
底抜けに明るくて前向きなねねに触発されてか、ポルカの中にほんの少しの野心が顔を覗かせたその時
一階から銃声とガラスの割れる音が鳴り響いた。
「うひゃあ!?すみません調子乗りましたぁ!」
「おぉ!?敵襲だぁ!……おまるん、急に謝ってどしたの?」
「いや、急に桃鈴家の皆様に謝りたくなって…って、ねねどこ行くの!?」
「え?下にいる人達をやっつけに行こうかなって」
「ちょっ待て待て待て!今ここであたし達が混ざりに行ったら乱戦になって二人の陣形を組めなくなるだろ!ここは下の戦闘が終わるまでおとなしく待ってようって!」
「えぇ~?ねねもそろそろ身体動かしに行きたいのに~…」
「……はぁ、わかったよ。じゃあ後3分!3分経ったら戦闘が終わってても終わってなくても下に降りる!これでいい?」
「! オッケー!それならモーマンタイ!」
(よしっ何とか説得できた…あとは3分以内に戦闘が終わるのを祈るばかりだぜ……)
ポルカの提案により3分間待機することとなった二人は、ただぼんやりと待つのではなく下で戦闘中の生徒の武器を特定しようと耳を澄ませていた。
特に聴覚を含めた五感が人間よりも優れている獣人のポルカは、少しでも情報を手にして戦闘を有利に進めるべく必死に聞き耳を立てていた。
(……音の発生源は真下の一階…の隣の中庭から聞こえる。銃声と、何かを弾くような金属音に…うおっ!炸裂音と爆発音!?中庭で戦争でもしてんのか!?物騒すぎるだろ…)
(あと聞こえるのは…物が壊れる音、か?う~ん、今わかるのはこれくらいか…)
(とりあえず、どちらかに銃持ちがいるのは確定か…は~ついに来ちゃったか~遠距離攻撃…
ポルカが銃の対処に頭を悩ませている間にも時間は進む。結局、紛争地域もかくやと言わんばかりの銃撃と破壊音は留まることを知らず、ポルカの祈りも空しく約束の3分が経ってしまった。
戦闘音は、より一層激しさを増していた。
「はい3分経ったー!行くよおまるん!まだ見ぬ強敵がねね達を待っている!」
「ガッデム!神は死んだ!ちくしょう、ポルカは今日から無神論者になるぞねねぇーッ!」
「お、気合入ってんねぇ!その意気だよおまるん!やれば出来る!ネバーギブアップ!」
ポルカは激怒した。必ず、かの騒がしい侵入者共をぶっ倒さなければならぬと決意した。
“ここまで来たからには、ねねと二人で一位二位獲ったらぁ!”
やけくそ気味に自分を奮起させ、いざ戦場へと教室のドアに手をかけた瞬間
教室の窓を割りながら、銀髪の獣人が躍り込んできた。
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<3分前:中庭>
ぼたんは中庭を縦横無尽に駆け回りながらも正確に照準を合わせてクロエを撃ち続けていた。身を隠すような遮蔽物は景観用に植えられた木々しかない中庭は、銃器を扱うぼたんにとっては独擅場であり、遠距離武器を持たない相手に対しては絶対的有利を取れるフィールドである。元々予定していた校舎内よりも、遥かに銃が活かせる領域であることは間違いない。
しかし、SCARの引き金を引くぼたんの顔色はお世辞にも優れているとは言えない様相だった。
額には疲労、或いは緊張から流れた汗が垂れ、その表情には一切の余裕が見えない。
そう、予定していた校舎内ではなく中庭を戦場に選んだのは、ぼたんにとっては苦肉の策であった。
何故なら、天井や壁の無い中庭ではクロエの主武装である大鎌を封じることが出来ないからだ。あの驚異的な身体能力を有するクロエを相手にするには、少しでもクロエのリーチを縮めて銃の圧倒的射程を活かしながら戦うのが本来の作戦だった。それに加えて建物内の死角を利用したトラップや奇襲を絡めていくのが、今回ぼたんが対クロエ用に考え付いた上策であった。
では何故、ぼたんは校舎内に入らず中庭に留まったのか?答えは単純、時間が足りな過ぎた。
(せめてあと20…いや、10秒あれば、最低限の罠の設置と校舎の構造把握できたんだけどなぁ!ははっ、グラウンドからここまでひとっ跳びとか、予想しろって方が無茶でしょ!)
ぼたんにとっての最大の誤算は、クロエの身体能力を甘く見積もっていたこと。
…いや、この場合誤算というのはあまりにも酷だろう。グラウンドから100m以上離れた場所へ飛行能力の無い人間種が僅か数秒で辿り着く可能性を見いだす方がおかしいのだから。
ぼたんはクロエを…『宵狩り』の実力を甘く見た訳では無い。侮った訳でもない。
ただ、喧嘩を売った相手がぼたんの想像を超える理外の怪物であった。
その理不尽ともいえる僅かな読み違いが、ぼたんを窮地に追い詰めていた。
最悪の狩人が、若き獅子に迫る。
大鎌を目の前で高速回転させ弾丸を弾きながら直進する。
白刃の鎌が狙うは、ぼたんの頸…ではなく、右耳。
クロエは先の宣言通り、おばあさまからの言いつけを守るため、戦闘が始まってから執拗に狙いを右耳一点に絞り大鎌を振るっていた。
大鎌の間合いまで近づき、振るう。狙われる箇所が分かっているぼたんは、首を少し傾けて躱し、距離を取りながらSCARを発砲。放たれた弾丸をクロエが身を翻しながら回避。
既に都合3回。互いの手の内を探るかのように同じ攻防を繰り返していた。
そして3回目、二人の距離が十分離れた後、まるで示し合わせたかのように二人はその場で静止した。今の戦闘で得た情報を一度整理するためだ。その間、隙を晒すような愚行はしない。二人は一度の瞬きもせず、互いの身体を視界に収め続けた。
ぼたんはクロエの初速、大鎌の振るう速度、動作の癖を見極め、有効な戦術を脳内で模索。クロエのスピードが更に上がることを想定しながら戦闘シミュレーションを行った。
対するクロエの思考は…
(どうなってるんだろう、あれ……ん~、どう考えてもおかしいよねぇ…)
1人で唸ってても答えは出ない、と早々に見切りをつけたクロエは、直接本人尋ねることにした。餅は餅屋。分からないことは専門家に聞いた方が手っ取り早い。
「ねぇぼたん。一つ聞きたいことがあるんだけど」
話しかけられるとは思わなかったぼたんは、思わず数回瞬いたがすぐに思考を切り替え会話に応じた。戦術構築の時間を稼げるのであればぼたんとしても渡りに船だからだ。
「いいよ?答えられることであればね」
「…私、あまり銃器だとか爆弾とかに詳しくないんだけどね、それでもハンターとして活動してるからかな?最近は傭兵が使う装備のレベルが上がってるっていう話自体はよく聞くんだよねぇ」
「スイッチ一つで起爆できる小型爆弾とか、遠隔操作できる戦闘用ドローンとか…最近の技術は本当に凄いよねぇ。それを聞いて私感心しちゃったよ。人を殺せる技術はここまで成長してきたんだなって!」
「…でもね?そんな色々な武器とか装備を見てきた私でも、流石に見たこと無いんだよ…弾丸を無限に撃ち続ける銃なんていうのはさ」
クロエは戦闘が始まってすぐにその異常に気が付いた。何故なら、クロエはぼたんの弾幕が無くなる瞬間…すなわちリロードのタイミングをずっと待ち続けていたのだから。
銃を扱う以上、弾の消費は絶対に免れない。カートリッジに込められる弾の上限も存在する。クロエはその致命的な隙を見せるリロードタイムを狙って、この戦闘を早々に終わらせる腹積もりだった。
しかしいつまで経ってもぼたんは
ぼたんは私も知らない特殊な装備を身に着けている、と。
(まぁそら気づくわな…リロード無しでアサルトライフル100発以上連射してたら)
しかし対するぼたんは動揺を見せない。遅かれ早かれ指摘されると想定していたからだ。
当然、それに対する回答も用意してある。
「ふ~ん、気になる?リロードしなくてもいいカラクリが。…別に教えてもいいけど、私だけ秘密明かすのは不公平じゃない?クロエがまだ話してない秘密を教えてくれたら、こっちも種明かしするよ」
「…二人だけの、秘密の共有……?
あぁ、素敵な響き…!なんだか凄くイケナイ事をしてるみたいで、昂るね…!いいよぼたん、私の秘密教えてあげるっ!!」
(やっべ、変なスイッチ入ってるわこれ…まぁ、これで口を滑らせてくれれば御の字かな)
ぼたんはそこはかとない地雷臭を感じ自分の発言を撤回したくなったが、情報を手に入れるためと割り切る。全ては目の前の怪物に勝つため、多少の犠牲には目を瞑ろうと不満を飲み込んだ。
そして、クロエの左肩を睨みながら口を開いた。
「それじゃあ教えて貰おうかな……この短時間で抉れた左肩を治したカラクリをさ」
クロエがぼたんのリロードについて疑問を持ったように。
ぼたんもクロエの左肩の傷を無視するかのような立ち振る舞いに疑問を持っていた。
(魔法が当たった位置から見て肩関節は間違いなくイってる。仮にクロエが痛みを無視して動かそうとしても、人体の構造上動かせなくなる筈。…けど、当のクロエは何事もなかったかのように両手で大鎌を振り回している…どう考えても、人間の回復力じゃありえないんだよ)
ぼたんの脳裏に、『宵狩り』が自身の種族を偽っている、という噂がチラつく。
目の前で異常な回復力を見せつけられたぼたんは、その噂の真偽が分からなくなっていた。
「左肩…そっか、ぼたんからしたら治ってるように見えるよね…いいよ、それじゃあちょっとだけ見せてあげる」
クロエはそう言うと、右手で指を鳴らす。
すると、焼け焦げたドレスの左肩部分から露出した肌の色が段々と黒ずんで行き…抉れた左肩に敷き詰められたかのような黒いナニカが顔を覗かせた。
「…ッ!!」
「見える?これが私の左肩を動かしているモノの正体だよ。原理は簡単、自分の影を凝縮して損傷した部分にあてがうだけ。そうすれば、私の影は自動的に傷ついた部分を補うように形状を変化させて欠けた部分の代わりになる。これのおかげで私は損傷する前と同じ動きが出来るようになるの。あとは影の色を肌色に変化させれば完成!ね、素敵でしょ?」
「……平然としてるけどさぁ…それ、痛くないの?」
「あははっめちゃくちゃ痛いよ!特に今なんて欠けた関節と神経と骨と肉を無理やり影で繋げてるから、少し動かすだけで激痛だねぇ!」
無邪気にカラカラと笑うクロエを見たぼたんは、無意識の内に一歩後退りした。
常人ならのたうち回る痛みを感じておきながら事もなげに笑うクロエを見て、ぼたんはまるで真夏に降る雪を見てしまったような、そんな薄気味悪さを感じ取り本能的に恐怖してしまったのだ。
そんな弱気になっている自分に気付いたぼたんは自嘲し、頬を叩き気を引き締めなおした。
(吞まれるな。恐れるな。たとえどんなに化け物じみてようが、頭に鉛弾ぶち込めば終わり…イケるでしょ、私なら。……それに、)
「ついでに右耳も……よしっこれで元通り。それじゃあぼたん。約束通り今度はぼたんの秘密を教えて?……二人だけの秘密の共有…しよ?」
クロエが数分前に自分が抉った右耳を影で修繕しているのを確認し、ぼたんは笑みを深めた。
(舐められっぱなしは性に合わないんだよねー…その余裕、崩してあげるよ。『宵狩り』)
「いいよ、じゃあ教えてあげる……これを凌げたらね!」
そう宣言し、ぼたんはグレネードのピンを抜いた。
思いついた展開詰め込めるだけ詰め込んだろ!てなったらししろん戦が予定よりも長くなりそう…
まぁバトロワはいくら長くなってもいいか!とりあえずヨシ!