ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~ 作:てらバイト
…名残惜しいですが、ここまでですかね。
さて、そろそろ仕事をするとしましょうか。
ガシャァアアン、とガラスを突き破りながら教室に逃げ込んだぼたんは、机と椅子をなぎ倒しながら転がり込むと同時に窓際の壁に侵入対策のショック-Cを投げつける。早く身を隠さなければ、と肋骨の痛みを無視して素早く立ち上がり顔を上げた先には…ポカンとした表情を浮かべる奇抜な格好をしたフェネックが居た。
「…ッ!」
「うぉおおー!?ちょっ初手で拳銃取り出すとかアリか!?れ、れれrレイセイになれれ!」
「おおー、ピストルだ!黒くて光っててカッコイイ…ねねっそれ本物?ちょっと触ってもいい?」
「危機感ナシ!?おま、銃の興味よりも私の身を案じてくれよねねぇ!」
咄嗟にレッグホルスターから抜いたFive-seveNを向けるぼたん。ポルカを視認してから銃口を向けるまでに要した時間は1秒を切り、肋のダメージを感じさせぬ程の技術と瞬時の判断力はまるで衰えを感じさせない見事な動作であった。
一方、突如窓からダイナミックエントリーをかました侵入者に銃を向けられたポルカは、その非現実的な展開と光景を前に脳の処理が追い付いていなかった。先程自分とねねで首位独占だ、と意気込んでいた威勢はどこへやら、完全に委縮していた。然しもの未来のサーカス団座長も、本物の銃を前では正にお手上げ状態であった。…ねねが自分の心配よりも銃に釘付けだった事を割と根に持ち、バトロワ後に問い詰める事になるのだが、これはまた別の話である。
そんな相棒から恨めしい目で見つめられているとは露知らず、初めて目にした本物の銃に瞳を輝かせているねねは、どこまでも無邪気であった。良く言えばリラックスした自然体、悪く言えば危機感の欠けた立ち振る舞いであり…新たな敵が侵入してきたこの状況では、何処までも異質だった。子供のように楽し気にしている様は、まるでドラマや映画のワンシーンに立ち会った観客の様なリアクションを想起させた。
三者三様。
教室内は、一瞬で混沌に包まれた。
(まーじかー…早いとこ逃げなきゃいけないってのに…!)
ぼたんはポルカに銃口を向けながらも、内心では焦燥感に駆られていた。何故なら一刻も早くこの場から立ち去らなければ、中庭にいる恐ろしい狩人に追い付かれてしまうからだ。必死の思いで逃げ込んだ先に先客が居る不運を呪いながらも、ぼたんは即座に決断する。
ここで戦うのは得策では無い、と。
心の内の焦りを噯にも出さないよう、ぼたんは慎重に言葉を紡いだ。
「ねぇ、物は相談なんだけどさー…見逃してくんない?」
「……いやいや!それはこっちのセリフなんだが!?銃向けてる奴が言うのはおかしいだろ!ポルカは至急台本の添削を要求する!」
「あー、いきなり銃を向けたのは謝るよ。これは反射的っていうか職業病みたいなモノだからさ。でも見逃してって言ったのは嘘じゃない。私いま絶賛ヤバイのに目つけられちゃって、逃げてる真っ最中なんだよねー。……ホラ、仕舞ったよ。これでいいでしょ?」
「……嘘は吐いてないっぽいな。アンタが言うその、ヤバイ奴っていうのは下でドンパチやってた相手の事?」
「そうそれ、いやーほんと参っちゃうよ。狙撃は避けられるわ銃弾は弾くわ、奥の手のC4爆破でも仕留めきれないわでもう散々だよ」
「……もしかしてだけど、アンタの名前ってジョン・コナーだったりする?」
「ははっ生憎ターミネーターに命狙われるような人生は送ってないよ!…まぁ、ある意味ターミネーターよりもずっと物騒だけど…そういう訳だから、ポルカとねねだっけ?悪いことは言わないから二人も早いとこ逃げた方が良い。マイルズ・ダイソンみたいに巻き添えくらいたくないでしょ?」
「…だってよ、ねね。どうする?ポルカはさっさとここを離れるに一票。ここまで来てそんな化け物に
「おまるん……そうだね、ねねも同じこと考えてた。…よし!じゃあ探しに行こっか、溶鉱炉!」
「ちっげーよ逃げるんだよ!いい加減シュワちゃんから離れろ!そもそもターミネーター云々は比喩だからT-800はいないんだよ!」
「えっそうなの!?…なーんだシュワちゃんいないんだぁ…せっかく生アイルビーバックが見れると思ったのにぃ…」
「あのー…お二人さん?漫才の練習は程々にしてさ、そろそろ移動しない?私の勘だともうじき跳んできそうなんだよねー…」
「誰が芸人だ!…って、跳んでくる?それってどういう…」
「どうって、そのまんまの意味だ、よ…――」
ぼたんが教室の移動を促した瞬間、ポルカのすぐ後ろ。扉の覗き窓に
此方に手を振る『宵狩り』が映り込んだ。
「…ッ!危ない!」
即座に駆け出し扉の近くに居たポルカの手を引いてそのまま横に倒れこむ。
直後、響く破壊音。それが扉の断末魔であることは最早言うまでも無い。
ポルカは、くの字に曲がった扉が猛スピードで割れた窓から中庭に落ちていく光景をはっきりと目にした。そして…ゾッとした。自分に覆い被さるように倒れこんでいる獣人が咄嗟に手を引いてくれなければ、今頃扉と共に愉快なオブジェに成り果てていただろうからだ。
ポルカに戦慄が走る。まさか、今の一撃を放ったのは、この獣人が言っていた追手…
「~~~ッづぅうう!肋いったぁ…!……クソッ時間切れか…!」
苦悶の声が聞こえ、思考を中断する。
声の発生源は自分の目の前。たった今自分の危機を救ってくれた獣人から聞こえたものだった。肋骨辺りを押さえながら、痛々しい表情で脂汗を流していた。
「おまるん!と、ライオンさん!大丈夫!?」
「わ、私は平気!けど、ライオンさんが…!まさか、ポルカを庇ったから怪我を…」
「ライオンさんは、やめーい…獅白ぼたん。ぼたんでいいよ。あとこれはさっきの戦闘で負ったやつだからポルカが気にする事は無いって」
「んな辛そうな顔して気にしない訳ないだろ…!なんでそんな無茶してまでポルカを庇ったんだよ…敵同士だろ、私たち…」
「さぁね…正直な所、私自身よくわかってないんだよねぇ。気づいたら勝手に動いてたし。まぁ、強いて理由を挙げるなら…“同族のよしみ”ってやつなんじゃない?知らんけど……それよりも、二人は早く逃げなって。『宵狩り』のターゲットは私だけなんだからさ」
「はぁ!?何馬鹿な事言ってんだ!早く立って一緒に逃げ」
「ほんと、焦らすのが上手いよねぇぼたんは」
3人しか居ない教室に招かれざる訪問者の声が響く。
ポルカは想像していた恐ろしく屈強な追手のイメージからかけ離れた、まるで鈴が鳴るような軽やかな声に強い違和感を覚えた。コツ、コツと足音が近づく。
「あのまま私の胸に落ちてくれば
愉し気にぼたんへの愛を口ずさみながら現れたのは、所々焼け焦げた黒いドレスに身を包んだ白髪の少女だった。華奢な体躯と服装・独特な雰囲気から、どこか深窓の令嬢を思わせる少女の容姿にポルカの違和感は更に加速する。
自身と比べても大差無い背丈でありながら、一体どのようにして扉を破壊したのか。
魔法を使ったのか、単純な技術によるものなのか。
或いは…自身と同じような生まれつきの異能を用いたのか。そういった知識に明るくないポルカには見当がつかなかったが、目の前の少女がバトロワ中に出会ったどんな相手よりも強いということは感覚で理解できた。
ふと、件の少女、クロエの紫目が動き、ポルカを一瞥する。
まるで観察するかのような視線を向けられ、思わず後退る。
一瞬の静寂。
誰かの唾を飲む音がいやにはっきりと聞こえる。
「…ところで、ぼたん。そこの二人と随分仲良さげに話してたみたいだけど友達?」
「いいや?今さっき会ったばかりだよ。二人と私の間には何の協力関係も無い…
敵同士。
そう言ったぼたんの背後にいたポルカとねねは、ぼたんが後ろ手に指したサインを目にした。親指を上、人差し指を廊下の方に向けピストルの形にした手を軽く上下に振っている。
“今の内に廊下へ走れ”
二人はぼたんが出したサインの意図をしっかりと汲み取り…決意を固めた。
「……ふぅん?その割にはその子を庇ったように見えたけどなぁ…ま、いいか」
クロエはふわりと笑い…その身に漆黒のオーラを纏わせた。
身体が闘争を求め、これより巻き起こる戦いを想い歓喜に震える。
生粋の戦闘狂の姿がそこにはあった。
「さぁ、早く立ってぼたん。第2ラウンドを始めましょう?これ以上焦らされたら私…どうにかなっちゃいそうだよ」
「…オッケー。休憩は充分出来たし、そろそろ始めよっかー……楽に勝てると思わないでよ?」
ぼたんはゆらりと立ち上がり不敵な笑みを返す。
―最低でも、巻き込まれた二人を逃がす時間は稼がないとね
最後の最後まで足掻いてやる。不屈の覚悟を胸に抱き、拳銃を抜こうとした、その刹那
「ちょぉおーーーっと待たれーーーい!」
クロエとぼたん。二人の間にポルカとねねが身を滑らせた。
「は……!?ちょ、何してんの!早くここから離れ」
「獅白ぼたんッ!…長いな。えー、ししろんッ!勘違いすんなよ?ポルカはただ借りを返したいだけ。返せるときに返すタイプの女、それがこの尾丸ポルカ様よ!……まぁその、なんてーの?言葉を借りるんなら、“同族のよしみ”ってやつだよ。助けてもらった恩を返さずに逃げるっていうのは、なんか違うじゃん?」
「そーだそーだ!同族のよしみだぞ!よしみの力を甘く見てると、なんか、こう…すごいんだぞ!」
「…ねねお前、よしみの意味知らないのに便乗するなよ…というか、ねねは人間だろ。由緒正しい人間の純血種じゃん」
「もう、細かい事は気にしなくていーのっ!ししろん!確かにねねは獣人じゃなくて人間で、同族のよしみっていうのもよくわかんないけど、ねねはおまるんを助けてくれたししろんを助けたいって思ったんだ。…ありがとね、ししろん!今度はねねがししろんを助けるからね!」
「……!」
ぼたんは一つだけ思い違いをしていた。
それは、ポルカとねねの二人がクロエの圧倒的な力に吞まれてしまうと無意識に思い込んでいたことだ。そんな二人が自分のせいでクロエとの戦闘に巻き込まれてしまうのは余りにも忍びないと感じ、ぼたんの中で二人を守るべき対象と錯覚してしまっていた。
だが実際の二人はぼたんの予想を大きく裏切った。
クロエの人外染みた力を目にしても臆するどころか、負傷したぼたんを守る為にクロエの前に立ち塞がってみせた。自分が一度敗走した怪物相手に怯むことなく相対して見せたのだ。
そんな二人の後姿を見たぼたんは、嬉しさと気恥ずかしさが混ざったような、どこかぎこちない笑みを浮かべた。
(ダッセーの……クロエの事を一番怖れてたのは、他でもない私ってことじゃんか)
自嘲気味に薄く笑いぼたんは顔を上げる。心の内にあった迷いや後悔は、いつの間にか消えていた。
「二人ってさぁ、よくお人好しって言われない?こんな事まで首突っ込んじゃってさ…一応忠告しとく。引き返すなら今だよ?」
「ハッ、見くびんなよししろん!キツネ界の中でも最も情に厚いとされるフェネックの底力、見せてやんよ!」
「モーマンタイ!大丈夫だよししろん!だっておまるんとねねは、サイキョーだからね!」
急遽増えた仲間の頼もしい返事を聞き、ぼたんはクロエと視線を交わす。
今度こそ、勝ってみせる。
―
「いくよクロエ、
ひっさびさに会話メインの回だからか、執筆が進まんのなんのって!
気付けばギリギリの投稿になってしまった…もっと早く書けるようになりてンだわ(切実)
それにしても回を追う毎にししろんが主人公に見えてくる…おかしい…この小説の主人公はクロエちゃんだというのに…何故…?
主人公の 法則が 乱れる!