ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~    作:てらバイト

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私は、この世に御座す全ての者を愛します。




お前以外は。


同族唾棄

 

 

 

 

「漸く見つけたのです……この人殺し」

 

 

 

 

ワンピースを纏った小柄な少女…潤羽るしあは、確信を得ているような強い口調でそう言い放つ。その目に宿るは憎悪の色。忘れぬように網膜に焼きつかんとする鋭い眼差しがクロエを捉えている。

 

 

 

 

「そうだね、私は人殺しだよ。…ねぇ、そんな事より、貴女の事を教えてよ。貴女だけが一方的に私を知っているだなんて、不公平じゃなくて?」

 

 

 

 

 

しかし一方、〝人殺し”と面と向かって言われたクロエは、まるでどこ吹く風と言わんばかりの態度で肯定し、毅然として言葉を返す。

 

 

少なくとも、狩人であるクロエにとって〝人殺し”というワードは、別段隠す必要のない純然たる事実でしかなく。だからこそ、そんなどうでもよい話より負のオーラと大量の死霊を引き連れたるしあへの興味が勝るのは、ある種必然であった。

 

 

倫理観の欠如など微塵も憚らない異常性。

もし、此処に常人が立ち会えば。クロエから発せられる不気味な雰囲気に呑まれ、異常性に気付き、すぐさま踵を返す事だろう。誰であれ、理不尽に巻き込まれて命を落としたくは無いのだから。

 

 

 

 

されども。

この場において常人など、一人として存在しない(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

「…は?知らないよ、お前のことなんて。名前もね……るしあは、三日前にお前があの場(・・・)に居たみんな(・・・)の想いを踏み躙った人殺しの墓荒らしって事しか知らないのです……変な勘違いしないでよ、気持ち悪い」

 

 

 

 

場数を踏んだ戦士であろうと怖気づくような気配でさえ動じる事なく、るしあは即座に言い返す。その声は低く冷めきっており、いっそわざとらしさを感じさせる険悪さを内包していた。

 

 

そんな憎しみに満ちた罵声を受けたクロエの脳内では困惑の二文字が広がっていた。何故か?それは、るしあの発言に幾つか不可解な点(・・・・・)があったからだ。

 

 

目の前の女子が自分に対し、強い恨みを抱いているのは分かった。

では何故、恨みを向ける相手の名前を知らないのか。

碌に素性を知らない相手を、何故〝人殺し”と断定出来たのか。

そして少女が口にする〝みんな”とは、〝あの場”とは、一体何の事を指しているのか。

 

 

人殺しという剣呑なワードに関する直近の心当たりが無いクロエは、それは大いに混乱した。

「まさか自分は、違う誰かと勘違いされているのでは」と鎌首をもたげる程には。

 

 

そんな態度のクロエに焦れを切らしたのだろう。

軽い深呼吸の後、るしあは答え合わせをするかのように思いの丈をぶちまけた。

 

 

 

 

「ここまで辿り着けたのは、みんなが教えてくれたおかげ。あの墓地に残ってた僅かな残滓が、るしあをここまで導いてくれた……」

 

 

「墓地に…残滓……?」

 

 

「そう、墓地だよ……あの閉ざされた森の奥深くにあった、みんなの拠り所……」

 

 

「ぐちゃぐちゃに荒らされた無尽墓地(・・・・)の、魂の残り火がッ!お前の居る方角を示したんだよッ!!!」

 

 

「答えてよ…何であんな真似ができるの!?みんなはただ、あの薄暗い墓地で安らかに眠っていただけで誰にも迷惑なんてかけてなかったのに!それなのに……どうして!!!

 

 

 

 

 

猛り狂うるしあの怒号は、夜の静寂を引き裂くように周囲へと伝播してゆく。

小柄で華奢な体躯からは想像できない苛烈な豹変ぶりは、故にこそ、るしあの嘘偽り無い純粋な怒りを表していた。

 

 

 

 

 

 

 

るしあは、死霊術師として数多くの霊や死者と苦楽を共にしてきた。その中で死者という存在は、頼れる仲間であると同時に、理解ある良き隣人でもあった。

 

 

悲しいこと、辛いことに耐えかね一人で涙している時、いつも傍で支え励ましてくれる唯一無二の存在。幼少期に一人でいる事の多かったるしあがその信頼を向けたのは家族ではなく、如何なる時も傍に居た死者たちであった。

 

 

死者に傾倒し過ぎているるしあを見兼ねた両親から「常世の者に深入りしてはならない」と言いつけられてもその気風は変わらず、るしあは歳を重ねる毎により深く親愛の情を注いでいった。

 

 

結果、主従の結びつきが強まり、るしあの死霊術が大幅に強化される事と相成った……しかし、その代償は大きかった。

 

 

価値観と倫理観の変容(・・・・・・・・・・)

ある日を境に、るしあは死者を命あるものとして接するようになり、強固な依存を示すようになった。

 

 

付き従う死者への他愛ない挨拶から始まったそれは日に日にエスカレートし、周りの人間がその異常性に気が付いた時には既に遅く。るしあは直々に愛称を与え強い縁で繋がった死者達と寝食を共にするようになり、家族よりも死者優先の日々を送るようになっていった。

 

 

とは言え、自分の価値観が歪であるという自覚はあったのだろう。るしあは自分の価値観を他人に強要したり、理解を求めるというような事はしなかった。自分と同じ価値観を共有できる人など現れないという諦観の念と、マイノリティとしての立場の弱さ。それらがるしあにとって一線を越させない最後のブレーキとなっていたからだ。

 

 

ただし、感情が昂った時…主に強い怒りを覚えた時はその限りではなかった。今のように、彷徨える霊魂の消滅を友の死のように悲しみ、その原因を作った張本人を見つけだしては仇の如く怨嗟を向ける。向けてしまう。向けずにはいられない。

 

 

そして、己の健やかなる隣人を殺した者に指をさし、こう叫ぶのだ。

人殺しと。

 

 

潤羽るしあは、狂っている。

行き過ぎた愛故に、だけではない。消えぬ孤独感、強い依存心、放任的な家庭環境。歪な素養が芽吹くには十分な下地があったのだから。

そう、彼女は、狂うべくして狂ったのだ。

 

 

 

 

「……ねぇ、どうして黙ってるの。聞こえてるんでしょ……何とか言えよ、人殺し!!

 

 

 

 

悲痛な声が夜に木霊する中、クロエは遅れて理解する。

るしあと名乗る少女が自分に訴えたい事は何なのか。何に対して糾弾しているのか。何を以て〝人殺し”と決めつけたのか。その全てを。

 

 

それを十全に理解した上で飲み込み、素直な気持ちを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだぁ、そういう事。もう少し正確に言葉を使うべきだわ、貴女」

 

 

 

落ち着き払った平坦な声音はまるで人形のように冷たく、そして無機質だった。

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

「おかしいとは思ったんだよ。私が殺した犯罪者の仇討ちにでも来たのかと思って記憶を遡っても、一番新しいので一ヶ月前(・・・・)でしょ?それだとね、三日前に私を知ったっていう貴女の発言とはどうしても嚙み合わない。だから、人殺しなんて言われてもまるでピンとこなかったんだ」

 

 

「けど、『無尽墓地』って言葉で確信した……貴女、死霊の類を人と同列に語ってたんだね。もうっ、まどろっこしい。ダメじゃない、死者と生者はちゃんと区別しなきゃ」

 

 

「貴女のその考え方にどんな思い入れがあるのかは知らないし、どうでもいい(・・・・・・)けれど…最低限、初対面の人間と話す時は止めた方がいいよ、それ。分かりにくくて、理解に時間が掛かるだけだもの」

 

 

「言葉の意味が伝わりにくくなるだけで何のメリットも無い……ハッキリ言って、時間の無駄(・・・・・)だよ?」

 

 

 

 

たとえ敵対者であっても、基本的には楽し気に振舞うクロエがここまで冷たい態度を取る理由はただ一つ……テルミに指示された集合時間に遅れてしまうかもしれないという焦り。苛立ちにも似た焦燥感が原因であった。

 

 

本来のクロエであれば、殺意剥き出しのるしあを〝合法的に戦える都合の良い相手”と見なし、諸手を挙げて襲いかかった事だろう。ただし、それはあくまで予定の無いオフ前提の話。

 

 

クロエは、大恩あるテルミからの指令を無視できるほど不義理でも、命知らずではなかった。約束の時刻に遅れた自分がどの様な目に合うかなど、火を見るよりも明らか。であるならば、選ぶべき答えはただ一つ。

 

 

 

 

「悪いけど、言いたい事があるなら日を改めてもらえる?私、こんなことに時間を割いていられるほど暇じゃないの」

 

 

(そう、急いでるの。テルミさんの折檻もイヤだし、何より……久しぶりに下りたストレス発散許可を、こんな形で台無しにされる訳にはいかないんだよ……!

 

 

 

 

若干私情の混ざった心の叫びを胸に、クロエは先を急ごうとこの場からの脱出を図る。随分と棘のある投げやりな口調は、普段の彼女を知る者であれば即座に焦りによる失言であると気付けたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでもいい……?時間の無駄……?」

 

 

 

 

しかし、初対面であるるしあにクロエの内情が察せられる筈も無く。

るしあの堪忍袋は、物の見事にはち切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「謝ったら許そうと思ってたけど……もういいや」

 

 

 

 ここで死ね 

 

 

 

 

 

ただ、一言。

嚙みしめるように呟いたか細い一言で、幾千の呪詛に匹敵するが如く濃厚な殺意がるしあから放たれる。計り知れぬ恨みを乗せた漆黒の波濤は、斯くも悍ましく、そして悽愴であった。

 

 

殺意を浴びたクロエの足が止まる。しかし、それも一瞬。何事もなかったかのようにまたゆったりと動き出す。

臆して反射的に足を止めたのではなく、湧き出た好奇心が為にわざと止めたのは、戦闘狂の性故か。再び歩み出した足取りには、一寸の揺らぎも見受けられなかった。武者震いを抑えながら、歩を進める。

 

 

 

 

「それじゃあ、ごめんあそばせ。貴女の相手も非常に魅力的だけれど、生憎と外せない先約があるの」

 

 

 

そう言い残し、るしあの横を鷹揚と通り過ぎた。

 

 

 

 

「ふーん……逃げるんだ」

 

 

 

 

すれ違いざまの一言すら聞き流し、歩を進める。

 

 

 

 

「でもいいのかなぁ。今ここでるしあを無視していったら、後悔する事になるよ(・・・・・・・・・)?」

 

 

 

 

つまらない挑発だ。聞くに値しない。

歩を進める。

 

 

 

 

「たくさん殺してきたんでしょ?今も昔も……人も獣も魔族も、そして家族(・・)も。バレないとでも思った?るしあには全部お見通しだよ。だって、視えるから(・・・・・)

 

 

 

 

家族殺し?確証も無く囁かれた只の噂だ。下らない戯言。

歩を進める。

 

 

 

 

「ねぇ、聞かせてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さんとお母さん、どっちから真っ二つ(・・・・)にしたの?」

 

 

 

 

「 しね 」

 

 

 

 

 

瞬時、反転。

音速に迫る拳はるしあの喉元目掛け突き出され…それよりも早くせり上がった白骨の塔(・・・・)に行く手を阻まれた。

 

 

 

幾重もの骨の破砕音が辺りに響いた。見上げる程の巨躯を誇る魔獣すら屠るクロエの殴打は、たったの一撃で塔を崩壊寸前まで追い込むも、崩落はせず。白骨の塔は、主を守る為の壁の役目を最後まで全うせしめた。

 

 

何たる堅牢さか。その驚異的な硬度を示すかのように、激突の衝撃で皮膚を突き破るように噴き出た鮮血が塔の窪みから滴り落ち、白骨を朱色に染める。

 

 

けれど、クロエは利き手の損傷には目もくれず。

立ち塞がる塔の隙間から、限界まで見開かれた双眸でるしあを睨み据えていた。

 

 

 

 

 

 

気が変わった。余計な事口走る前に今相手してあげる

 

 

言葉は正しく使ったら?〝してあげる”じゃなくて、〝して下さい”、でしょ

 

 

 

 

薄暗い街はずれの一角にて、狂気と狂気の鬩ぎ合いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……はぁ~!?まだ来てねぇ(・・・・・・)だと!?」

 

 

『えぇ。10分前になってもまだ姿を見せないので連絡しても音沙汰なし。う~ん……これは手遅れですねぇ』

 

 

「……おい、そりゃつまり何だ……まさか連中(・・)がもう来た、とか言わねぇよな?」

 

 

『そのまさかです。数は三、全員が獣人(・・・・・)。装備から見るに、たまたま迷い込んだ一般人の線は薄いでしょう……はぁ、獣臭くて嫌になる。こんな事なら換気でもしておくべきでしたねぇ』

 

 

「クソがぁッ!!あのメスガキ、どこで油売ってやがる……!」

 

 

『ちょっ、大きな声出さないでくださいよ!声で気取られちゃうじゃあないですか』

 

 

 

 

端末を起動してあのガキの居場所を探れば、すぐに見つかった。

位置は……指定した廃墟とは別の廃墟付近(・・・・・・)。仕込んだ発信機のバイタル反応から察するに、予期せぬ敵との戦闘中ってトコか……オーケーオーケー、何となく見えてきたぜ。

 

 

 

 

ほんとによぉ…どいつもこいつも(・・・・・・・・)、俺様を苛立たせてくれやがる。

 

 

 

 

「なぁハザマちゃんよぉ。一つ聞きてぇ事があるんだが」

 

 

『はいな、何でしょう。例の性能テストの準備を進めたいので出来れば手短に―――』

 

 

 

 

「テメェ、あのガキにわざと別の位置情報送ったりしてねぇだろうな」

 

 

 

 

『……これはまた唐突ですねぇ。その質問の意図は分かりかねますが…ここは迷わずノーとお答えします』

 

 

『考えてもみてくださいテルミさん。私がわざわざ手間をかけてまで、自分の首を文字通り絞めるような真似をする間抜けに見えますか?冗談じゃない、私は我々の不利益となる事など一切しておりませんよ。誓ってもいい』

 

 

 

 

我々の(・・・)不利益ねぇ……随分と含みのある口ぶりじゃねぇの。

だが、偽ってもいない、か……仕方ねぇ、今回は見逃してやる。

 

 

 

 

「……だよなぁ!んなバカな真似する筈ねぇよなぁ!いや~悪ぃなハザマちゃん。どうやら俺様の早とちりだったみてぇだな。集合場所間違えたポンコツはこっちで回収すっから、そっちは引き続きよろしく頼むぜ」

 

 

『承りました。しかし、大丈夫ですか?もうそろそろ活動限界のリミットが近い筈では』

 

 

「問題ねぇよ。ガキ一人連れ戻すだけだ、然程時間はかからね―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

血生臭いなぁ…匂い立つなぁ…

 

 

 

 

「…………あ~、悪ぃ。もう切るわ。めんどくせぇ鬼が出やがった(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

『……おや、件の小鬼が。それはそれは……ご愁傷様です。それでは…』

 

 

 

 

乱暴に通信端末を仕舞い込み、昨日盗って(・・・・・)錬成したばかりの鎖と入れ替える。ウロボロスが手元に無い以上、この急造の模造品を使う他ねぇ。試験運用もまだだっつーのに……

 

 

 

 

救援に駆けつけてみれば、こんな大物と出くわすとは……僥倖僥倖、余はツイてるなぁ……!

 

 

 

目の前の茂みを掻き分けながら見たくもねぇ剣鬼(・・・・・・・・)が姿を見せる。

愉しそうに声弾ませやがって……よし決めた、コイツで鎖の試運転だ。始末も兼ねて一石二鳥ってかぁ?キヒッ、キヒヒヒ……

 

 

ぶっっっ殺す

 

 

 

 

 

 

 

待ち侘びたぞ、よ…!此処で会ったが何かの縁!さぁ、存分に死合おうではないかッ!!!

 

 

奇遇だなぁクソ鬼ぃ……奇遇ついでに地べたの染みにしてやんよ……!!

 

 

 

 












日中、何の前触れもなく目を中心に謎の圧迫感が襲うようになりました。
おや……?ボク死ぬのかな……?(ヒソカ)
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