ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~ 作:てらバイト
おおおおおおあああああああ!!キサマキサマキサマキサマ、碧の、碧の、碧の、ちくしょう、ぢぐ、ぐぎぎぎぎぎぎいいいい!!!
……食う
死霊術師と戦闘になった際、注意すべき点は何か。
答えは往々にしてあるが、その中で特に重要視されているのは〝距離を離さない事”である。
魔法を主に扱う術師の中で最も継戦能力が高いと言われる死霊術師は、召喚と再生にとにかく特化し、その性質を活かした戦い方を好む者が多い。
距離を詰められないよう相手の前に死霊の列を並べ壁役として扱うのはもちろん、魔法詠唱を阻害するために相手の周りを取り囲むように配置しての妨害もお手の物。
死霊が倒されても僅かな魔力で簡単に蘇生が可能であり、その質量に物を言わせた人海戦術を前に近づく事すら出来ず敗れる者も少なくはない。それ程までに厄介な支援職こそが、死霊術師なのである。
では翻って、弱点はあるのか?
一人で攻めも守りもこなせる死霊術師は、それだけで完結せしめる敵無しなのか?……否。これ以上無く明確な弱点が存在している。
代表的な例に、死霊召喚までのタイムラグが挙げられる。
これは魔術師にも共通して言える事だが、詠唱最中は非常に隙が多い。その弱点は死霊術師側も十分理解した上で対策を講じているパターンもあるが、いずれにせよ弱点である事には変わらない。
接近戦を得意とする者は死霊術師と戦う際、この弱点と先の間合い管理を特に意識して立ち回らねばならない。相手の詠唱が終わる前に、死霊に囲まれる前に、如何に迅速に術師本体の懐に潜り込めるかが勝負のカギとなるだろう。多少の怪我やリスクを恐れず突き進む勇気が何より肝要である。
他にも祝福や光魔法に対する脆弱性等も挙げられるが、最も採用されるのは下準備が不要のこの対策……〝距離を詰めて術師を真っ先に叩く”戦法が主流とされているのである。
が、この対策はあくまで〝急遽発生した遭遇戦”を想定しての前提。
これがもし、死霊術師側が死霊の召喚を全て終えた上で待ち構え、万全の布陣を整えていたとしたら?
距離を詰めて本丸を叩くという戦法は、果たして現実的と呼べるだろうか?
否。断じて否。
途方に暮れるような長期戦が身も心も削り、精神を擦り減らし、大いに苦しむ事だろう。
「無駄だよ。お前がみんなをどれだけ壊しても、るしあが全部治しちゃうから」
その言葉通り、るしあは倒された死霊を次から次へと再生させ自分に有利な展開を維持し続けた。自分の大切な死霊達を一時とは言え倒される事に腸を煮えくり返そうになりながら、しかしその表情に一切の不安は見られない。
どれだけ相手が強者であろうとも、規格外の膂力を誇る怪物であろうとも。少し手を翳すだけで頼もしい死霊達は何度でも立ち上がるのだから。途切れる事無く戦線を維持し、憎き女を窮地へ追いつめられるのだから。なればこそ、不安を抱く理由など、微塵も存在しないのだ。
(倒されるスピードが思ってたよりも早いけど…大丈夫。この程度なら、倒されるよりも治して、増やす方がずっと早い)
(あとは、アイツのスタミナが切れるまで続けて待つだけ……もう、焦れったい。早く諦めろよ。ボロ雑巾みたくズタズタにして、生まれてきた事を後悔させてやるっ……!)
集中力を要する魔術において、その時の
その観点から見れば、今のるしあのコンディションは最高潮と言えるだろう。それが死霊術師として卓越した才覚を有した者ともなれば、最早結果は火を見るよりも明らか。圧倒的物量で以て、憎しみをそのままに、怨敵を潰して、潰して、潰して―――!
「飽きた」
轟、と。
暗鬱とした声と共に
土煙が晴れた視界の先を見ようとるしあが瞼を開く。
そこにあったのは、黒く変色しバラバラのまま倒れ伏した白骨死体と、その残骸。
そして、大鎌を肩に背負いながら死霊を踏み躙る、
「なっ―――お前、何をした!?なんでっ…
るしあは、突如発生した黒い波動に飲まれた死霊を指差し叫ぶ。死霊達が『死魂の術』発動中にも係わらず身動ぎせず沈黙するなど、今まで一度として起きなかった未知の現象であるからだ。
術自体には何ら問題や不具合が無いという点が、るしあの思考を更に惑わせる。意味が、道理が、何一つ不明瞭。であるならば、考えられる答えは一つ。
目の前の女が、白骨死体を黒く染め上げたアイツが、何かしたに違いないのだ。
「私ね、白よりも黒が好きなの」
されど返ってきたのは、意図不明の独白。
るしあの疑問を紐解くには、随分と程遠い解答。
「じゃあ嫌いなの?って聞かれるとそうでもなくて。この髪色だっておばあさまと同じ真っ白で、気に入っているもの。雪のように真っ新で、混じりっ気の無い綺麗な真白が」
「けれどね。薄汚れていたり別の色が混ざったような中途半端な白は大嫌い。色褪せて黄ばんだ白とか、灰色に近い白とかは特にそう……白骨なんて正にそれだよ。そんな色に囲まれた日には、もう何もかも滅茶苦茶にしたくなってもしょうがないよね?私は悪くないよね?」
「だから染めてあげたの。私好みの黒に。光さえ飲み込む漆黒の
「やり方?簡単だよ。ただ自分の影を解き放って染めたい対象を包み込むだけ。そうするだけでみーんな私色にする事が出来る。私好みに
「ねぇ、どうかな?さっきまでの人を馬鹿にしたようなどっちつかずの色より艶やかで、よく映えると思うのだけど」
「…?……っ!?」
たまらず、愕然とする。女の言動や動機もそうだが、一番はそこではない。
『自分好みに書き換えた』
何とはなしに零したクロエの一言に、今まで優位を保っていたるしあの心理的優位は容易に崩れ去った。その理由は、自分が呼び出した死霊が第三者に干渉されたからに他ならない。
通常、他者が使役する魔物や召喚したモンスターのコントロールを奪うのは至難の業とされている。召喚者、又は契約者と使役される魔物の間には術式による強固な繋がりが存在し、その繋がりを破棄させるには周到な準備と手順が必要になるためである。
つまり、片手間に繋がりを破棄、もとい塗り替える芸当など出来る訳がないのだ。
それも、見るからに魔術とは縁遠そうな怪力女には到底不可能……の筈であった。
しかし、現実はどうだろうか?数秒にも満たない僅かな
どれだけ念じようと、再生させようと魔力を送っても、何一つ結果は変わらない。当然だ、繋がりそのものが糸をプツリと切られたかのように無くなってしまっているのだから。念話も、魔力も、届かないのが正常なのだ。
それは、すなわち。
目の前の認めたくない現実が紛れもない事実であることの証明でもあった。
「このっ、瘋癲女がぁ!よくも……よくもみんなをっ……!」
「嘆くことは無いわ。すぐにみんなと同じ所に送ってあげる」
溜め込んでいた魔力に憎悪を乗せ、身体全体に迸らせる。
全ては、大好きな死霊との繋がりを塗り潰した阿婆擦れを葬る為。切り札を以てして、確実に息の根を止める為。その一心を胸に抱えて。
しかしそれは、あまりにも危険が伴う選択。諸刃の剣と同義でもあった。
るしあの胸中に、僅かな迷いが波打つ。
(呼び出せれば、絶対に勝てる。今までがそうだったんだから、今回だって……でも、呼ぶ前に邪魔されたら?奪われたみんなを操って、差し向けられたら?そしたら、るしあはきっと……)
大切な友達に、攻撃なんて出来る訳ない。
そんな躊躇いを、クロエは見逃さなかった。
その上で、優しく背を押すように、そっと声をかけた。
「安心して。足元の骸は使わない。……というより、頼まれても使わないから。そういう
「…趣味……?」
「そう、趣味。人形擬きを使った
(……何ソレ、どういう意味?みんなと一緒になって戦う姿が、コイツにはお遊びに見えたって事……?)
投げかけられた言葉の意味を、一瞬理解できなかった。その言葉があまりに唐突で、脈絡が無く、無遠慮であったが為に。
だがその意味を飲み込むと同時に、腹の底から沸々と煮えたぎった何かが昇ってくる感覚をるしあは感じた。そして理解する……
(みんなと仲良くなる為に鍛えた『死魂の術』を…一丸になって巨悪に立ち向かうるしあ達の想いを…コイツは今、馬鹿にした……?)
努力の否定。尊厳の否定。在り方の否定。
それに気が付いた時、るしあの胸中に迷いは無くなっていた。
後に残ったのは、激情と研ぎ澄まされた殺意だけ。
るしあは、一切の躊躇なく……手にした包丁で掌を刺し貫いた。
血が噴き出し、地面を真っ赤に染め上げる。
鮮血と痛み。必要な代償は、これにて揃った。
これで思う存分、縊り殺せる。
「楽には死なせない……殺して殺して殺して、殺し尽くしてやるッ!!!」
叩きつけられる憎悪と殺意の暴威に晒される中、クロエは静かにほくそ笑む。
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「無為。どれ け抵抗して 、結果は変わら 。ワレ 食わ る結末 変 らない。変わらない変わらない……変わらないんだよ!キ、キヒャヒャヒャヒャヒャ……!!」
「あ~も~鬱陶しいなぁ。数が多くて全然近づけないや…フブキちゃん、そっちは平気~?」
ザシュッ ズシャッ
「今のところは、ね!はぁっ……でも、このままじゃちょっと、マズイかも……!」
真横から跳んできた大きな
つくづく初手で決めきれなかった事に後悔する。あの時、呆気に取られて攻撃の手を緩めたせいで、あの黒いヘドロみたいな奴に蟲を呼ぶ隙を与えてしまった。その対処に追われたせいで、やっと見つけた犯人の逃走を許してしまった。
何もかもが上手くいかなくて、苛々して。刀を振るう腕に余分な力まで乗せてしまう。斬っても斬ってもわらわら湧いてくる蟲に、過剰な悪意を向けてしまう……!
そんな時、私の荒んだ心の内を見透かしたかのような落ち着き払った声がした。
「このままじゃジリ貧だでな………はぁ、しゃ~ねぇ。道はこぉねが開ける。そんで、強行突破すんぞ」
「!」
ころねの声に我に返りながらも、その発案に内心で同意する。この膠着状態が長引けば長引く程、自分達にとって不利な状況が着々と構築されるのを察していたから。
あのヘドロが呼び寄せる人の頭サイズの蟲に、恐らく際限は無い。機械の陰から、支柱の後ろから、天井から……そして
だからころねの強行突破案に異論は無い。無い、けど……一つだけ
「強行突破かぁ。それはアリかもだねぇ……でも、ころさん。それだとあのヘドロを野放しにしちゃわない?誰かが残って釘付けしとかないと、エサを求めて隣の街に向かって行っちゃうと思うんだよね」
……そう。おかゆが今言った懸念こそが、正に私が思ってた内容と一致する。起こるかもしれないという不安材料。人を襲う化け物が野に放たれるかもしれない。そんな悍ましい
(……やっぱりダメ!あのヘドロが絶対に人を襲いに行かない確証が無い限り、ノーマークになんて出来ない!もし誰かをこの場に残したとしても、三人がかりでやっとの状況で戦力分散は―――)
「だぁから、二手に分けんのよ。あたしとおかゆが残って、フブキちゃんがトンズラかました糸目をヤる。それで万事オーケーよ」
「あ~なるほど…いいね。じゃあそれでいこっか」
「………え?」
……聞き間違いかな。なんか白上抜きで勝手に作戦立てられた気がする。
まさかとは思いつつ振り返れば、腹を括った表情のころねがこっちを見つめていて。
「
握りこんだころねの拳から、ミヂりと空気の潰れる音が鳴る。
「ホントはよ、今すぐにでも逃げたクソ野郎追っかけて、ボッコボコにしてやりたいの。絶対に捕まえて、豚箱にぶち込んでやりたいって思ってる」
ころねの視線の先には、醜悪なヘドロがしゃがれた声で嗤っている。
蟲を増やし、ゆらゆらと愉しそうに揺れ、無感情な面をこちらに向けながら。
「でもよぉ、だからこそ私情で動いちゃいかんのよ。感情じゃ無くて、こん中で一番速くて強いやつが行かなきゃならんの。だから、フブキちゃん……」
ゆっくりと振り向くころねの目を、瞳を見る。
こちらを貫かんばかりの真っ直ぐな瞳の奥には、覚悟と悔しさと…信頼の火が灯っていた。
「ここは任せて先に行け」
「食 う、食ら う……!キサマラ 亜人 全部残さず食らってやる!!ああああああ!!」
歪な奇声を合図に、百に届くかという数の蟲が一斉に跳びかかる。けれどその攻勢は、ころねが大きく振りかぶった拳を振り下ろすよりもずっと遅くて。
―ターンパンチ
「―――おらよぉッ!!!」
立ち塞がった重厚な蟲の壁は、僅かにも拮抗する事無く爆散した。そうすれば必然、人ひとりが十分に通れる隙間が生じる。
(……わかったよ、ころね。この好機…無駄にはしない!)
後はそこ目掛けて駆け出し、通り抜ける。それだけでいい――!
―
氷塊の上に乗り勢いを付け加速。弾丸みたいに跳び出して男の後を追う。ころね達の頑張りを無にしない為にも、絶対に追い付く……!
その時、後方から頼もしい声が背中を押した。
「行けぇフブキちゃん!こぉねの分までぶっ飛ばしてこぉい!!」
「こっちは任せて~!あ、あとボクの分もついでにおねが~い!」
心強くて、同時に親しみもある仲間の応援は、確かに私の力となって。
だから、戦闘中に頬が緩んだのは、きっと私の所為じゃない……ないったら、ない。
(……だから、こんなにも頼りたくなっちゃうのかな)
そんな事を考えながら進んでいると、ガラス張りの玄関が遠目に見えてくる。
出口まで近い。そう思った矢先、
背広を着た男の後姿を、視界に捉えた。
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「
木々に囲まれた道中、ふと思いついた想像を口走る。しかし、即座に〝ありえない”と頭を振った。
確かにあの
「
まぁ相手が弱いに越した事はないので私個人としては全然構いやしませんが。
そも、アレの戦闘データが欲しがったのはテルミさんですし、どっちに転ぼうが知ったこっちゃありません。人事は尽くし終えたので、後は天命とやらをおとなしく待ちましょう。
……っと、そうだ。テルミさんに一報入れておきますか。
『餌役が想定を下回る弱さだったので監視は不要』……後はアレが食い終わった頃を見計らって回収すれば行動終了。いやぁ楽だなぁ。いつもこうであってほしいものですよ、ホント。
さて、浮いた時間はどう使いましょうかね。まだ鬼と戯れてるであろうテルミさんの方へ加勢に行くか、或いは仕事ほったらかした
……では、ここはクロエさんにしましょう。こんな夜半に鬼と踊るより、クロエさんの方がいくらかマシなのは明白。厄介な呼び出しが来る前にさっさと―――ッ!
「―――飛べ、『
廃墟入り口より飛来した透明な何か。
それを寸での所で躱せば、すぐ後ろにあった木を瞬く間に凍らせてゆく。見間違いであってほしいが、今見たのは間違いなく見覚えのある氷……かつて何度も見た技、そのもの……!
……はぁ。お迎えは後回しだ。今はそれよりも……
目の前の
「漸く、追い付いた……!絶対に逃がさないから!!」
物はついで、技の出所も聞き出しますか。
殺処分は、その後だ。
るしあ「お前、何をした!?なんでっ…なんで再生しない!?」←悪役が言いそう
クロエ「嘆くことは無いわ。すぐにみんなと同じ所に送ってあげる」←悪役が言いそう
ハザマ「殺処分は、その後だ」←悪
なんだこの小説…悪役しかいねぇ……(今更)