ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~ 作:てらバイト
さもなくば死にくされ。
夜の静まり返った住宅街から1km程離れた街はずれ。つい数時間前まで寂れた廃墟が点々と連なるだけの空間だった其処は、見るも無残に荒れ果てた荒野へと様変わりしていた。
地は罅割れ、所々に何か大きな質量で潰したかのような歪な窪みが点在しており、地形は凹凸でない所を探す方が困難という有様。ぽつぽつと点在していた人気の無い廃墟なども軒並み破壊され、建物の形を保っているものは一つとして存在していない。
化け物が縦横無尽に暴れ回った跡地とはこういうものなのだろう、という原始的な恐怖を呼び起こさせる凄惨な世界がそこには広がっていた。
きっと誰もが思うだろう。これは、巨大な魔物の仕業に違いないと。
「まだ立てるんだ。ほんっとにしぶとい……まるでゴキブリみたい」
けれど、“現実とは小説よりも奇なり”という言葉があるように。
まるで予想だにしない出来事がままあるのが、現実というものなのである。
この惨状を作り上げた小さな少女――潤羽るしあは、血が一切通っていないような冷たい目で眼下を見下ろす。
視線の先にいたのは、大鎌を支えにかろうじて立っている満身創痍の少女――クロエ.A.ラヴラック。
荒い息遣いに、自身の血で真っ赤に染められた体躯。戦いが始める前に見せた悠々とした余裕は、最早見る影も無い。
「ねぇ、なんで粘るの?もうわかってんでしょ本当は。どれだけ足掻いてもるしあ達には絶対に勝てないって。なのにそんなボロボロになってでもしぶとく生き残って……何がしたいの?何を待ってんの?」
心底理解できない。そう言いたげな表情でクロエを睨む。
るしあの見解は概ね正しい。
純粋な破壊力、魔力残量、手勢、その他全てにおいてこちらが勝っているのは明白で、相手にはほぼ瀕死状態の死に損ないが一人いるだけ。更にはアンデッドの使役を上書きする厄介な術も時間経過により解除済み。そんな状況の中、相手の心が未だ折れないのに対し疑念を抱くのは当然の事である。
すなわち、切り札や増援の有無。この形勢を一気に覆す“何か”を示唆するような女の行動が、つかず離れず脳裏にチラつくようで―――
「どうでもいいよ。何をしたって無駄だから」
されど、るしあの思考に一切の迷いは無く。
それを示すかのように、その確固たる
立ち塞がる障害ごと叩き潰すと言わんばかりの気迫がるしあから放たれた。
「まだ見せてない切り札があるなら、その小細工ごと。駆けつける増援がいるなら、その仲間ごと」
そっと右手を掲げる。それを合図に、るしあの背後に控える二体の巨大アンデッドが口を開き、負のエネルギーを充填する。
その一撃に込められたるは深き憎悪。底知れぬ殺意。
絶望という名の死が具現化した瞬間であった。
「お前が持てる希望全てを手折ってから、殺してやる」
るしあの見解は
現に自分と相手、どちらが優勢であるかの戦力分析に一切の贔屓目は無く、それでいて正確であったからだ。ただ唯一間違いがあるとすればそれは、相手の心理分析。
クロエの戦意は、闘志は、まだ燃え尽きてなどいなかった。肌は擦り剝け痛々しい痣に塗れ、身体の至る所から感じられる骨の折れた感触が脳に電気信号を送り、身を裂かれるような痛みが全身から絶えず発せられている。そんな瀕死の最中、クロエは一つの感情を抱いた。
それは、与えられた痛楚による憤怒や、自身を追いつめた者への恐怖ではなく。朗らかな表情と共に芽生えたその心の揺らぎは、紛れも無く感謝の念であった。
(痛みは良い。痴れた脳髄に、刺激と生の実感を与えてくれる)
クロエは、痛みを求めている。
その性質は
傷を負い痛みを感じれば感じるほど、命という不確かなモノをより鮮明に感じられ、“自分は今ここにいる”という強い安心感を得られる。痛みでしか味わえない特別な感覚を常に欲していた。
だからこそ、強者との戦いをよく好んだ。純粋な闘争欲も同時に満たせられ、そして容赦なく痛みを与えてくれるから。この瞬間のひりついた感覚だけが、嫌な記憶全てを忘れさせてくれるから。
故に、今のクロエに怒りという感情はまるで無く。むしろ自身をここまで追いつめてくれたるしあには心の底からの感謝しか浮かばなかった。
(打撃も魔法も、たくさん貰っちゃったなぁ……うん、そうだね。その分しっかりお返ししてあげなきゃだね)
『
それは幼い頃から聞かされてきたラヴラック家の家訓であり、おばあさまがよく口にしていた言葉。
成すべき事はわかっている。
あとは、それを成すに
「 術式暗転 」
―【奈落迷彩零式】解除
その瞬間、音が消えた。
アンデッド達の魔力充填の余波により吹き荒れていた風も、舞い上がっていた砂塵も。まるで忽然と消え失せてしまったかのような静寂が辺りを包み込む。実際に消えたわけでは無くとも、そう錯覚せざるを得ない程の不気味な静けさだった。
相対したるしあは、突然訪れた無音の世界に狼狽えながらも警戒を一段階引き上げた。目の前の死に損ないが何をしようとも対処できるよう、集中を高めながら“見”の選択を取ったのだ。
―【
しかし、その選択は悪手であった。
るしあが本気で勝利を掴みにいくのであれば、なりふり構わず全力でとどめに行くべきだったのだ。時間を、猶予を、与えるべきではなかった。
―【奈落迷彩壱式
全てを飲み込まんとする漆黒の“ナニカ”が急速に膨張し、やがて中心へ吸い込まれるように収束してゆく。
瞬間的に膨れ上がった黒い波動の暴威によってもたらされた粉塵と闇が晴れ、視界が開ける。その先から現れたのは、四肢を真っ黒に染め上げた一人の少女であった。
「……なに、ソレ。何が始まるのかと思えば、手足が黒くなっただけ……まさかそれが、そんなのが切り札だっていうの?」
あまりにも拍子抜けだ。るしあはそう言外に言い含めるよう忌々しげに吐き捨てた。
魔力が膨れ上がる直前、身の毛がよだつ悍ましい気配を感じたもののそれも一瞬。蓋を開けてみれば、そこに居たのは魔力を使い果たし傷を負ったままの血塗れの女が一人。唯一の変化も身体の一部分が黒くなっただけであり、これで警戒しろという方が無茶というもの。
はぁ、と思わずため息が零れる。手負いの相手に向けたるしあの視線は、どこまでも冷たかった。
「くっだらないなぁ。必要以上に警戒した私が馬鹿みたい……もういい、これ以上は時間の無駄みたいだし、さっさと終わらせるから」
ちょうど充填も終わったし、と告げながら挙げていた手を振り下ろす。
主の命を受けた左右のアンデッドは、寸分違わぬタイミングでソレを解き放った。
命あるもの全てを憎み殺す負のエネルギー……冥烙の一撃を。
「塵の一つも残さない……!」
―死穢の嘆き
放たれた二条の黒閃は、触れた地形を溶かしながら驚異的な速さで標的へと突き進む。
弾速、大きさに於いて、瀕死の少女に死の黒閃が避けられる道理は微塵も無く。
―――故にこそ、
―
ただ振り下ろしただけの足刀で必殺の一撃が掻き消されるという光景を、受け入れることが出来なかった。
「――――――は?」
直後、吹き抜ける一陣の風。
顔を打つ突風で我に返ったるしあは瞬きを二、三度。何度瞬いても変わらない結果を再認識し…ぶわっ、と冷や汗を噴き出した。
「うそ、嘘ウソ、なんでっ……」
ありえない。あり得ないはずだ。
生者への仄暗い羨望と強い憎しみを混ぜ合わせたあの一撃が、あろうことかただの蹴りで相殺される訳が…そんな不条理、あっていい訳がないのに!
混乱する思考が更なる焦燥を掻き立て、その焦りは精神的余裕を蝕み……それは、るしあの顔から血色を奪ってゆくには十分すぎる脅威であった。
「零式は、身を隠す為の鎧。
音の無い静寂がすぎる空間の中で、鈴が鳴るような少女の声だけが木霊する。
「けれど、その代わりにとても重い。少し身体を動かすだけで一苦労だし、おまけに攻撃した時に威力の大半を吸収してしまう。性質としては、鎧というより枷に近い」
邪悪な気配と妖艶な笑みを携えながら淀み無く口ずさむ。瞼を閉じながら話すその語り口は向き合うるしあにではなく、自分自身にそう言い聞かせ、再確認しているようにも見える。
「壱式は、その窮屈な枷を取り払う鍵の
「言うなれば諸刃の剣。一手でも見誤れば絶体絶命。だからこそ、使いどころはよく見極めること……そうだよね、おばあさま?」
締めくくるように、嚙みしめるように言い終えたクロエはゆっくりと目を開ける。目を細め楽し気に微笑み、哀れなる犠牲者を視界に収めた。
「許しが下りて、
「――ッ!今度こそ、微塵に潰れろ!【ネクロバースト】ッ!!」
先手を取ったのはるしあだった。
主の感情を読み取ったアンデッドが攻撃を繰り出すまでのスピードは、驚異のコンマ一秒。
圧倒的なまでの速さで繰り出された負のエネルギーを乗せた掌打は、回避も防御も到底不可能な必殺であり―――
パシンッ
「あら、軽い」
けれど、響いた音はあまりにも軽く。
「あ、ぇ………?」
「ダメじゃない、
まるで言う事を聞かない子供を諭すような声音で少女が告げる。
「たくさん私を痛めつけて、もう十分楽しんだでしょう?だから次はこっちの手番。今度は私が貴女を
剣呑な殺気にるしあは身震いした。
可愛がる。おどろおどろしい気配を発する女が口にするそれを、素直に言葉通り受け止められる筈もなく。危険を察したるしあはすぐさま受け止められたアンデッドの腕を引き、少女の射程範囲からの離脱を試みる。
(お、重…!離せない……!?)
けれど、一向に離せない。感覚共有を通して伝わる感触は正しく異質で、まるで接触した少女の指にピタリと張り付いたかのように張り付いて、押しても引いても全く動かせない。
これが意味するところはつまり、一方的な力負けに他ならない。
百数十体に及ぶアンデッドの魔力とるしあの魔力で強化された巨大アンデッドの膂力より、それに比べれば遥かに小さな少女の腕力の方が優れているという不条理な結果の表れであった。
(全力で、本気で引いてるのに…なんで動かないの!?一本芯が通ってるみたいに強固で、ビクともしない。こんなっ、こんなのまるで―――)
るしあは想像した。してしまった。
見上げるまでもない巨大な山を懸命に動かそうとする哀れな自分を。
「おイタはぁ、ダ~メ♥」
そんな驚愕の真っただ中のるしあを余所に、スナップの効いたビンタが振るわれる。
悪さをした子供への
バギャリッッ
「ぎ、ぁぁあああッ!?」
粉砕、そして絶叫。
僅かな拮抗も許さない無慈悲な暴力で、アンデッドの巨腕が中程まで砕け散った。
術の反動による激痛が走る左腕を抑えながら大きく距離を離するしあ。その瞳は痛みと動揺に震え、視線がまるで定まらない。
(なんでッ!?なんであんな撫でるような一撃で、こんな……!)
まとまらない思考で答えを必死に求めても、頭に浮かぶのはあらゆる“何故”の二文字だけ。
何故あんな馬鹿げた力を出せたのか。まさか手足が黒くなっただけであそこまでの力を発揮したとでも言うのか。
もし仮にそうだとして、その力の源は何なのか。魔力が全く通っていない黒い手足に、百を超えるアンデッドの集合体が力負けするとはどうしても思えない。
何故、何故、何故。
どれだけ頭を捻っても、意味不明という答えにしか辿り着かなかった。
そして当然の如く。
黒い少女は、その解答を待ってはくれない。
「あはっ、どうしたの?そんな小鹿のように震えて。さっきまでの威勢は何処へ行ってしまったのかしら」
「ひっ……」
背に羽が付いたような軽い足どりで、少女が歩み寄る。
その光景が、るしあの目には得体の知れない化け物が舌なめずりをしながら近寄ってきているようにしか見えなかった。
「手足もある。魔力も十分。従僕も未だ健在。なら、まだ戦えるでしょう?もっともっと、私を楽しませてくれるんでしょう?」
「ひぃ……!や、ヤダ……。来ないで……!」
一歩。また一歩。
実体を持った恐怖の象徴が迫り、距離を詰めてくる。
「ここまで来て折れるだなんて許さないわ。縛りを解かせた貴女には私を、私達を満足させる義務があるのだから。ほら、早く……早く早く早く早く早く」
苛烈に、そして執拗に。
まくしたてるように追いつめられたるしあの緊張の糸は限界を迎え―――
「蕩かすくらいに、興じさせてよ」
プツン、と千切れ飛んだ。
「―――来るなぁぁあああッ!!」
―
張り裂ける叫びと共に発動したのは、行動阻害の一手。掌を地面に叩きつけると、
地中へ引きずり込まんとする腕は、一度捕まれば脱出は極めて困難。それは例え少女であろうと例外ではない…筈だった。
「なぁにその顔。引き攣って、必死で、かわいいじゃない。誘ってるの?」
けれど、少女は意にも介さず悠々と歩を進めた。
足に絡みついた死者の腕をブチ、ブチと千切り、引き摺りながら悠々と。
「―――ッ」
何も出来ず、次々と消えてゆく死者達の無念の呻き声を聞いたるしあは術を解いた。その判断は“正攻法では決して敵わない”という、ある種の諦めに近い感情によるものだった。
「「ォォォオオォォオオオオオオオオオオオッ!!」」
それと同時に、身体の内から震えるような巨大アンデッド達の雄たけびが大気を震わす。
それが意味するのは、警戒の意思表示。強大な自分達をも害する事のできる敵対者への、最大限の
しかし尚、少女の笑みは崩れない。
耳を劈くような死者の叫びでさえ涼しい表情で聞き入り……そしておもむろに両手を顔の前で広げた。
「あと十秒」
その声音は、優しかった。
戦いの最中である事を一瞬忘れさせるような、不気味で不吉な優しさで―――
「それくらいは、耐えられるでしょう?」
怖気が走る程の、凄惨な笑みだった。
少女の笑みに触発されたかのように巨大アンデッド達が腕を振るい、周囲の地形を抉ってゆく。主の制御を離れたアンデッド達の動きは精彩さこそ欠くものの、魔力の消費を度外視にした攻めはより苛烈さを増していた。
暗澹とした負の魔力を存分に纏った拳打の破壊力は甚大。硬い地盤を軽々と塵に変えるそれは、眼下の少女に当たれば瞬時にミンチへと変換するであろう威力だった。
そして、それが一発ではなく連続で。
豪雨の如く降り注ぐ拳の爆撃は、晒される少女にとっては死の嵐と形容出来るものであった。
「もっと、激しく……凄惨に……!」
だが、そんな脅威程度では止まらない。止まる訳がない。
狂い果てた少女からすれば、死の脅威などただの些事。闘争をより楽しむ為のスパイスでしかない。
口角を吊り上げ、全身を震わせ、紫の瞳を爛々と輝かせて。
故に、少女は狂気と本能に身を委ね。
嬉々として暴力の渦に身を投じられるのだ。
「あはっ、あははははははは!」
横薙ぎの平手を、ギリギリまで引き付けてから身を捻り。
正面から迫りくる掌底を、あえて指の隙間から縫うように通り抜け。
頭上から降り注ぐ拳の雨粒を、目を閉じながらくるくると回りながら潜りぬける。
楽し気に笑いながら行われる死と隣り合わせの狂気染みた動作は、明らかに常人のそれとは一線を画すものであり―――
「飽きた」
だからこそ、変化は劇的だった。
スン、と表情を落としたかと思うと、何を思ったかその場で大きく跳躍。
身動きの取れない空中へ、自らその身を投げた。
必然、生者の抹殺を旨とするアンデッド達がこの好機を見過ごす訳も無く。
「―――ォォオオオオオオオオオオオオオ!!」
―死穢の嘆き
蓄積した魔力を基に放たれたのは、二度目となる死の光線。それは月明かりの無い真っ暗な夜空へ溶け込むように伸びる一条の軌跡となり、飲み込まんとする勢いで少女へと差し迫る。
一瞬の隙を見抜き、間髪入れずに致命の一撃を放ったアンデッド達に落ち度は無い。相手が犯したミスを突くという行為は戦いの初歩であり、主の指揮下にあった時でも、きっと同じ行動をした事だろう。当然だ、自ら隙を晒した敵を見逃す阿呆が何処にいる。
だからこそ、アンデッド達は見誤った。
翼や魔法による飛行手段を持たない人間は、空中では碌に身動きが取れないと早々に決めつけて。無意識下の中で、相対する少女を人間と同じ枠にしてしまったのだ。
必ず当たる。避けられる筈がない。
その短慮な思い込みこそが、生死を別つ一手になるとも知らず。
「それはもう見たよ」
誤算があるとすれば、それは先入観。
蛇は、地を這いながら得物を捕食する習性を持つが。
―――時として、
―蛇境滅閃牙
紫電一閃。
巨大な蛇の口へと転じた少女は何も無い筈の中空を蹴り、加速。掠るだけで絶命に至る死の光線をすり抜け……音を置き去りにする速度でアンデッドの頭部を食い破った。
「ひとぉつ」
そして、蹂躙はまだ終わらない。
頭部の消失に伴い音を立てて崩れ落ちるアンデッドには目もくれず、地面へ着弾と同時に反転。踵を返しもう一方のアンデッドの懐へ潜り、両の足を同じように抉り取った。
「オオッ、ォォォオオオオッ!!」
狼狽えるような声をあげたアンデッドが重力に従い、ゆっくりと前方へ倒れ込む。巨体を支えるのに欠かせない両足を失ったのであれば、如何に強大な存在であろうとバランスを保つことは叶わない。そのまま真下に居る少女を下敷きにするかという瀬戸際、刹那の間に。
―轟牙双天刃
人間離れした膂力により放たれた蹴り上げで以て、再び宙を舞う。
核となる心臓部分を蹴り抜かれたことにより、この時点でアンデッドの消滅は免れないものとなっていた。何もせずとも、今しがた倒された片割れのようにバラバラに崩れ去ったことだろう。
けれど、そんな事情は少女にとってはどうでもよいことである。
今、少女の脳内を占めているのは“如何にして自分が楽しめるか”という一点のみ。
どうせ壊れるのなら、思い切り粉々にしよう。
そんな破壊衝動に駆られた人間が、ただ黙って消滅を見届ける筈が無く―――
「ふたぁつ」
不必要なとどめの踵落としにより地面へと叩き落され…最後の巨大アンデッドは辺りに響く破壊音を伴いながら爆散した。
音も無く優雅に降り立った少女は、首を回して周囲を…己の手で作り上げた破壊の惨状を目にする。段々と消えてゆく頭部の無い白骨死体や、首をあらぬ方向に曲げられた五体の足りぬバラバラ死体。目を背けたくなるような残酷な惨状が辺り一面を彩っていた。
それを見た少女は―――
「…………っはぁ~~~♥」
激しく身悶えた。
自分の腕で身体を抱くようにして、恍惚に頬を染めながら。
破壊により得た多大な快感と、日頃溜めていたストレスと欲望解放のカタルシスは少女を悦に浸らせるには十分な麻薬であった。抑圧されていた破壊衝動も同時に満たせたことにより、周りに目が向かない程の天にも昇る多幸感が少女を襲っていた。
無論、抑えつけはしない。
元来我慢弱い少女に、雪崩れ込む快楽の波を抑えられる理性は残ってなどいないのだから。
だからこそ、
「―――ぁぁぁあああああああああッ!!」
ドス、と腸を食い破るように突き出された包丁。
立ち込める煙の死角から現れたのは、息を潜め隠れていたるしあであった。
るしあは、ただ怯えて隠れていたのではない。
待っていたのだ。少女が気を緩め油断する、この瞬間を。
アンデッドと繋がる【死魂の術】を解き精密な動作と引き換えに痛覚同調を切ったのも、あえて制御を弱めてアンデッド達の凶暴性を増幅させ、少女の注意をアンデッド達に逸らさせたのも。全てがこの一瞬の為だけに用意された布石。理解の及ばない力を振るう
分の悪い選択の連続だった、とるしあは包丁押し込みながら心の中で独り言ちる。
対象の
しかし、それでも尚るしあは賭けに勝った。吹けば飛ぶような
あぁ、なんて清々しい気分だろうか。
親愛なる友人達の仇を、やっとの思いで討てたのだ。多大な苦労と時間を掛けた分、その喜びも一入だった。
「…………?」
異変に気が付いたのは、その直後。
刺しこんだ包丁から伝わる妙な感触と、不意に感じた嫌な予感に触発され手元を見る。るしあの目には、女の脇腹に深く刺しこまれた
……綺麗な包丁?
漸く引いてきた冷汗がぶり返すように頬を伝う。
そしてその異常に気が付いた時、それとは別の疑惑も降って湧いてくる。
包丁を刺しこんだ瞬間、人体を刺したにしては妙に軽い感触ではなかったか?
奇襲をかけた時は興奮でそれどころではなかったが、刺した瞬間に感じたあの水に手を突き入れるような柔らかさは、今思えばあまりにも不自然ではなかったか?
煙に乗じた奇襲の時もそうだ。
自身が呼べる死者の中で最も強いアンデッド二体を軽くあしらえるような化け物が、気配を満足に消せない死霊術師の隠形をどうして悟れない?もし本当に油断していたとしてもあの身体能力だ、直前に反応できない方がおかしい。
であるならば、この状況が意味するところは……
まさか。
まさか、まさか、まさか―――!
「みぃ~つっ」
全身が総毛立つ。
その答えにたどり着くのと、背後から声が掛けられたのは全くの同時だった。
弾かれるように振り向き…否、振り向こうとした。けれど、それは叶わなかった。巻き付くようにして絡まる鎖状の闇が、るしあの全身を捕らえていたからだ。
精々動かせたのは、首をほんの少し。その僅かに広げた視界の先で、るしあは確かに見た。
―――自身の後方で佇む女の姿を。
「刺したのは
幼子が親に自慢するような楽し気な口調で語る少女に、るしあは残酷な現実を受け入れざるを得なかった。
自分は、一瞬の隙を突いて攻撃したのではなく。張られた罠にまんまと飛び込んだだけの、哀れな獲物でしかなかったという事実を。
「お礼を言わせて。予定していたパーティとは違ったけれど、貴女は十分に役目を果たしてくれた。
「ありがとう、るしあちゃん。私の為に命を張ってくれて、本当にありがとう」
だから、と少女は目を伏せて。
手に持った鎖を
その鎖が繋がる先は、言うまでもなく―――
「苦痛は与えない」
名残惜しいような、別れを惜しむような。
悲しみの籠った声音から、るしあは自分の死を悟った。
―
獲物に絡んだ鎖は、急速に引き絞られ収縮。
ギチギチと音を鳴らすそれは、その最後の一押しによって一気に締め上げられ…
グチャッ
圧壊。
肉の潰れる音と共に、鮮血をぶち撒けた。
魔が差した没ネタその2
メンヘラ少女クロエ 完結編
クロエ「チクショオオオオ!くらえるしあ!新必殺皇蛇懺牢牙!」
るしあ「さあ来いクロエェェ!るしは実は一回殴られただけで死ぬぞオオ!」
(ボコッ)
るしあ「グアアアア!こ、このザ・メンヘラと呼ばれる四天王のるしが…こんなぽっと出のメンヘラに…バ…バカなアアアア」
(ドドドドド)
るしあ「グアアアア!」
すいちゃん「るしあがやられたようだな…」
シオン「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」
まつり「オリ主ごときに負けるとはホロメンの面汚しよ…」
クロエ「くらえええ!」
(ボコッ)
3人「グアアアアアアア!」
クロエ「やった…ついに四天王を倒したぞ…これでAちゃんのいるカバー株式会社の扉が開かれる!!」
Aちゃん「よく来たなメンヘラ少女クロエ…待っていたぞ…」
(ギイイイイイイ)
クロエ「こ…ここがカバーだったのか…!感じる…Aちゃんの社畜力を…」
Aちゃん「クロエよ…戦う前に一つ言っておくことがある お前は私を倒すのに『そら』が必要だと思っているようだが…別になくても倒せる」
クロエ「な 何だって!?」
Aちゃん「そしてお前の両親は死にかけていたので治療して最寄りの町へ解放しておいた。あとは私を倒すだけだなクックック…」
(ゴゴゴゴ)
クロエ「フ…上等だ…私も一つ言っておくことがある。この私に後ろめたい悲しい過去があるような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」
Aちゃん「そうか」
クロエ「ウオオオいくぞオオオ!」
Aちゃん「さあ来いクロエ!」
クロエの勇気が世界を救うと信じて…!
注:人選に他意はありません。