ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~    作:てらバイト

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あのお侍さん、マジで美人だったな…。


……また殺しに来ないかねぇ…なんつって。






幕間:日陰者共の暗躍

 

 

 

 

 

「―――それで、どうよ。あのヘドロ擬きは使えそうか?」

 

 

「微妙ですね。メイン機能である電波妨害術式は問題無く作動してましたが…いくら戦闘用じゃないにしても、たかが学生二人に抑えられてるようじゃあねぇ……」

 

 

「要改良の余地アリって事か。チッ、めんどくせぇ……。失敗作のゴミを有効活用しようってのに、そのゴミに手間をかけちまったら本末転倒じゃねぇかよ」

 

 

「それを踏まえての実験でしょう。まだ始まったばかりなんだ、匙を投げる前にもう少し粘ってみては?」

 

 

 

薄暗い一室で語らう二人の男。

片や袈裟にかけて浅くない刀傷を負い、片や全身の至る所に火傷を負っている。

しかし、互いに痛痒などないかのように言葉を交わす。

この程度の負傷は慣れているのだろうか。

或いは、痛みを感じてすらいないのか。

 

 

 

「そういえば、クロエさんの様子はどうでしたか? 此処への道中で出くわしたと聞きましたが」

 

 

 

笑みを張り付けたままに男は問う。

身じろいだ拍子に、千切れかけたスーツの袖口がポトリと落ちる。

焦げついた匂いがより強まった。

 

 

 

「あぁ、あのガキか? どうもこうも、いつもの如く死にかけてやがったぜ。全身血塗れでなぁ」

 

 

「またですか? やれやれ、死に急ぐのは相変わらずですねぇ。何度も忠告してあげた上で繰り返すとは。やはり凶暴な獣は手に負えない…」

 

 

「まったくだ。…なぁ、信じられるか? あのバカ、そんな状態で殺気ダダ漏れのクソガキをわざと懐に入れやがったんだぜ? …クソがっ、思い出しただけで苛ついてきやがる…! 仕置き無しで帰したのは間違いだったぜ」

 

 

 

ローブ姿の男の怒りは至極真っ当なものだ。

与えた仕事はこなさず、言い付けも碌に守らない。

飼い犬に手を噛まれた飼い主のような気分であった。

腹立たしい事この上無い。

 

 

 

「……へぇ、それはそれは。任務失敗に独断専行を何のお咎めも無く見逃すとは、あなたらしくもない。明日は槍でも降りそうだ」

 

 

「―――キヒッ。単純な話だ。そんなミスをチャラにするくらいの“収穫”があったから見逃しただけだ。そうでもなきゃタダで帰さねぇよ」

 

 

 

けれども、溢れんばかりの悪意を携え嗤う。

その面貌の裏に他者を気遣う慈しみの情念が無い事は、誰の目から見ても明らかで。

 

 

 

「―――ハハッ、ですよねぇ。あなたはそういうお人だ。…それで? そんなあなたが折檻を取り止めになる程の“収穫”とは?」

 

 

 

だからこそ、対面の男も釣られて嗤った。

愉しそうに、おかしそうに。

魂ごと消滅させられても一切変わらない、そんな男の本質が心底面白くて堪らないかのように。

 

 

 

「…俺はクソ鬼(・・)に斬られた傷をいち早く治すために、あのガキの影に潜った。一か八かの賭け(・・・・・・・)でな」

 

 

「はっ――…正気ですか? いくら日が昇っているとはいえ、影の向こうはアレ(・・)のテリトリーだ。迂闊に跳び込んだところで、只の自殺行為…………あぁ、そういう事ですか」

 

 

「キヒッ気づいたかぁ? そう、この通り五体満足だ。あのバケモノ(・・・・・・)から蛇蝎の如く嫌われてる俺様が、奴の領域に踏み込んだにも拘らずな」

 

 

「気に入らない外敵の排除すら儘ならない。つまり、それ程にまで弱体化している(・・・・・・・)、と。……なるほど、“収穫”と銘打っただけはある。これは確かに値千金の情報だ」

 

 

 

少女の影に潜む何者か(・・・)

それが著しく力を落としたという。

それは、男たちにとって望外且つ有益な情報。

計画を円滑に進めるにあたって、思いもよらぬ追い風であった。

 

 

 

「一番の障害と懸念が消えて万々歳。結構な事ですねぇ」

 

 

「違いねぇ。これで心置きなく()の調整を進められるってもんだ。…悟られんじゃねぇぞ」

 

 

「委細承知。しばらくは影に徹しますよ。…そちらはどうするので?」

 

 

ネズミ駆除(・・・・・)。コソコソ嗅ぎ回れるのは趣味じゃねぇんだよ」

 

 

 

おもむろに立ち上がりながら男は告げる。

余人が見れば、一瞥で震えあがる剣呑な眼光で以て。

 

 

 

「―――視界の隅でうろちょろされたら殺したくなるってもんだろ、なぁ?」

 

 

 

ドス黒い悪意。邪悪な嗜虐心。

狡猾で悪逆非道な蛇が、次の得物に目を付けた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「沙花叉ぁ、まだ生きてるでござるかぁ!? あともう少しの辛抱でござるよ、気を確かに!」

 

 

「……いろはちゃん、うっさい。大丈夫だからもうちょいボリューム下げて…お腹に響く…」

 

 

 

走るいろはちゃんの背に揺られながら、私は苦言を呈した。

運んでもらって文句を言うのは自分でもおかしいとは思うけど、こればっかりは言わせてほしい。もうちょい声の音量設定をどうにかして。割とマジで。

いろはちゃんが喋る度にお腹の傷口がイタイイタイで死にそうなんだって。助けに来てくれた味方に殺されるとか…ハハッ、マジ笑えね~。

 

あっ、でも…いろはちゃんに殺されるって考えたら…それもアリかな? …って痛ぁ!?

 

 

 

「ねえええぇ、なぁ~んで足抓んのぉ!?」

 

 

「いや、背後から邪な気配を感じ取ったからつい…。あまり変な事ばかり考えるようならその辺に置いてくでござるよ」

 

 

「やぁ~だぁ~置いてかないで~。……ん?」

 

 

 

ふと、何気なくいろはちゃんの後ろ顔を見る。

何故か不自然に右耳だけが赤かった(・・・・・・・・・)。火照ってるのかな?

……いや違う。火照りなんかじゃない。それよりもずっと紅くて、朱い色。

血だ。右耳から真っ赤な血が滴ってるんだ。

 

ほぼ無意識に生唾を飲んだ。

…我ながら見境が無さすぎるとは思う。

流石に自重しなくちゃね。

 

 

 

「いろはちゃん。どしたの、その右耳のそれ」

 

 

「え? …あ~、これはその…風真の“不覚”の致すところというか、なんというか…」

 

 

「…それを言うなら“不徳”じゃね?」

 

 

「あ、あ~そうでござったな、うっかりうっかり―――」

 

 

「―――敵にやられたんだぁ?」

 

 

「うぐっ…ま、まぁ有り体に言えばそうでござる…」

 

 

 

正直、結構驚いてる。

仕事モードのいろはちゃんが血を流すなんて、あまりにも稀な事だから。

剣の達人に傷を負わせるという意味と、その難しさは、いろはちゃんの実力を知ってる私には手に取るようにわかった。

 

だからこそ、俄然気になる。

holox(ウチ)一番の武闘派に傷をつけたのは、一体何者なのかが。

 

 

 

「…入り口に居た御仁(・・・・・・・・)、大層強かったでござる。熟練した身のこなしに、音を用いた奇怪な術…あの狩人協会の門番を務めるだけはある。道半ばの剣が相手取るには、少々荷が勝ちすぎた……」

 

 

「…え? 入り口の、って…まさか、あの冴えないおじさん? …ウソでしょ?」

 

 

「む、見た目で判断しては駄目でござるよ沙花叉。ああいう手合いは、相手の油断を誘う為にわざと己を弱く見せているのでござる。能ある鷹は爪を隠すのが常。油断大敵でござる」

 

 

 

いや、言いたい事はわかるけど…意外な相手すぎて全然受け止められないよ。

だって、あの気怠げでやる気無さそうなおじさんだよ? 

そのおじさんがいろはちゃんの片耳持ってくとか、普通信じられなくない?

逆だったら全然納得なんだけどさ…。

 

 

 

(…でも、アレか。裏を返せば、そう思わせるくらいおじさんの“擬態”が上手かったって事だよね……)

 

 

 

ついさっき、沙花叉の“擬態”を容易く見破ったあの子を思い出す。

……よし、もっと頑張ろう。

あの子の目を欺けるくらいに。

おじさんよりも上手く騙せるように。

負けっぱなしとか、ムカつくもんね。

 

そう内心で意気込んでいると、いろはちゃんがお返しとばかりに話を振ってくる。

 

 

 

「沙花叉の方はどうだったでござるか? その様子だと、結構コテンパンにされたみたいでござるが…」

 

 

「火の玉ストレートじゃん。まぁ事実だけど。…強かったよ。血塗れで死にかけだったのに、全然死にそうになくってさぁ。最後はちょっと邪魔が入っちゃったけど、それを差し引いてもどの道負けてたかも。完敗かんぱ~い、って感じ」

 

 

「…その割りには、やけに楽しそうでござるな」

 

 

「あ、わかる~? そりゃ負けて悔しくないって言えば噓になるけどさ…それ以上に、楽しかったんだよね。その子との戦い(ダンス)がさ」

 

 

舞踏(ダンス)…でござるか?」

 

 

「そ、ダンス。息が掛かるくらいの距離でせめぎ合って、斬り合って、最後は互いの血で真っ赤に染め合うんだぁ。はぁ…過去一で楽しかったぁ……♥」

 

 

 

クロエ.A.ラヴラック。

沙花叉とおんなじ名前の女の子。

限りなく死に近づいてて、なのに死ななくて…結局、最後まで殺せなかった不思議な子。

 

人生で初めての経験だった。

誰かを殺そうと思って殺せなかったのは。

 

血塗れになりながら楽しそうに戦う姿を見て、嬉しかった。

血の中でしか生を見いだせない同類(仲間)と、初めて出会えた気がして。

 

今まで感じたことが無いくらい刺激的で、最高の一時だった。

出来る事なら、記憶を消して何度でも味わいたいくらいには。

 

 

 

(可愛くて強くて、しかも最っ高にイカレてて。更には名前も一緒とか…。あはっ、いいねぇ。ときめいちゃう)

 

 

 

目を閉じれば、鮮明に思い出せる。

血腥い密室、舞う血飛沫、響く金属音。

そして…狂気を孕んだ壮絶な笑みを。

鮮血に染まったあの子の真っ赤な笑顔が、どうしたって忘れられない。

 

また会いたいなぁ。また踊りたいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、早くころしたい

あの子の死に顔を、紅い血化粧で彩ってみたい。

愛おしいから、好きだから。だからこそ、壊してみたい。

ちょっと歪かもだけど…でも、しょうがないよね?

 

だって、愛のカタチなんて人それぞれなんだもん!

 

 

 

「いひひっ。…ねぇいろはちゃん。また、二人でリベンジしようね」

 

 

「おぉっ、いつになくやる気でござるな沙花叉。無論近い内にまた仕切り直すつもりでござるよ。負けたままでは終われないでござるからな!」

 

 

 

いろはちゃんの溌溂な返しを愉快に思いながら、そっと後ろを振り返る。

遠ざかり、木々に隠れて、協会はほとんど見えなくなっている。

それでも、ボロボロの吹き曝しになった二階だけは、はっきりと目に映った。

 

 

 

(待っててね、クロエ。傷を癒して、力をつけて。また戻ってくるから)

 

 

 

だからそれまで…誰かに殺されないでね。

【宵狩り】の首は、沙花叉がもらうから♥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ。そういえばSAPICA返してもらってない」

 

 

「え、SAPICA? 何の話でござる?」

 

 

ま、どうでもいっか。沙花叉のじゃないし。

 

 















いろは(血だらけになる程の舞踏(ダンス)…はっ、そうか! これが音に聞く『武闘演武(ダンスバトル)』ッ……!)


意外!それは勘違いッ!
沙花叉の真意、いろはに届かずッ…!


*没ネタです。
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