ホロライブラバーズ ~難易度【オーディション】を脳筋でクリアしたい実況~ 作:てらバイト
不用意に近づかないで?
惨たらしく殺したくなるじゃない
大鎌を横薙ぎに振るう。
――――当たらない。紙一重で回避される。
振った勢いをそのままに身体を回転させ、胴に回し蹴りを放つ。
――――当たらない。バックステップで距離を取られる。
【鎌鼬・纏衣】で周囲に鎌鼬を撒きつつ距離を詰めながら、足を薙ぐ一閃。
――――当たらない。私の頭上を宙で回転しながら飛び越えられる。…まずっ背後を、反撃が来る…!咄嗟に力を込めて衝撃に備えるが、
……何も、来ない。振り返ると、両手をポケットに入れゆったりとした姿勢で退屈そうな視線を向けるハザマさんが居た。
「ふむ…身のこなしに問題は無さそうですねぇ。私の記憶にある
「そういうハザマさんは相変わらず回避が上手いねぇ。私の攻撃ぜーんぶ紙一重で躱されて当たらないし。……でも、避けてばかりだと勝てないよ?」
重心を低くして構えなおす。いつでも駆け出せるように脚に力を溜めながら様子を窺ってみても、まるで隙が無い。ただその場に構えを取らず立っているだけの自然体でありながら、いざ攻撃しても全く当たらない。いや…命中するビジョンがまるで見えない…!
…わかっていたけど、今のままじゃ全然届かないや。力任せに鎌を振り回すだけじゃ、ダメなんだ。相手は格上、出し惜しみして敵う相手じゃない…それなら…
私は、
心の中で覚悟を決めて目線を合わせると、胡散臭い顔がニヤリと笑った。どうやら、準備運動は済んだみたいだ。
「ねぇ、そろそろ本気を出してよ。私も、全力で行くからさ」
「奇遇ですねぇ、ちょうどこちらもそろそろ動こうかなと思ってたんですよ!こう言うの、以心伝心って言うんでしたっけ?どうやら退屈してたのはお互い様だったようですねぇ」
そう言ってハザマさんは懐からバタフライナイフを取り出して手で弄びはじめる。それと同時に何も無い空間から禍々しいオーラを纏った鎖が音を立てながら現れた。
…来た。アレを出したって事は、ハザマさんがやる気になった証であり、本気の所作だ。良かった、このまま本気を引き出せずに有耶無耶にされてお開き、なんて可能性もあったからとりあえず一安心かな。ハザマさん、何かと理由つけてすぐサボろうとするからなぁ。油断も隙も無いよまったく。
……ああ、でも。いざ目の当たりにするとやっぱり怖いな。アレには昔から痛い思い出しかないから、どうしても嫌な汗が身体から噴き出す。何度も肌を裂かれて血塗れになったり脇腹を抉られたりもしたっけ…あれは痛かったなぁ。あの時はおばあさまが治してくれたから助かったけど、今は私しかいない。……なら、私一人の力で何とかするしかないよね。
一度目を閉じて深呼吸をする…よし、落ち着いた。弱気な私はここまで。あとは、あのスカしたニヤケ面に蹴りを叩き込むだけだね。待っててねハザマさん?一泡吹かせてあげるから。
「久々に見た気がするなぁ、ウロボロス。それを見る度に何故か肌が粟立つんだよねぇ。…ゾクゾクしちゃう」
「そりゃそうでしょう?貴方を嬲…もとい、鍛える為に何度も使ったんですから。身体が拒絶反応を起こしたとしてもなんら不思議じゃあない。…あぁ、安心して下さいクロエさん。今回ウロボロスは補助程度にしか使いませんから、そう身構えなくても結構ですよ?」
「……何それ。結局手加減するってこと?私には本気であたるまでも無いって、そう言いたいの?」
「いいや?本気で行きますよ、少しだけね。それでも不満に思うのなら、是非全力を引き出させてみて下さい」
まぁ、今の貴方には難しいでしょうがね
そう言った瞬間、蛇の形を模した鎖の先端が口を開けながら私に迫る。
緊張と高揚と、ほんの少しの恐怖を自覚しながら、地面を駆ける。
さぁ…挑戦だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クロエは駆け出すのと同時に首をほんの少しだけ横にずらして迫るウロボロスの先端を躱す。通り過ぎていく鎖を横目にハザマとの距離を一気に詰め、技を放つ。それは以前、クロエが夜の公園で行った魔族の男との戦闘の際、決め手の一撃に用いたクロエの得意技であった。
―
この技は、自身が空中にいる時に踵落としで相手を地面に叩き落とす為の、言わば連携技の〆や牽制などに使用する技である。クロエのように地面から跳んで直接相手の頭部を狙う使い方は防御や回避された後の隙が大きい為、本来推奨される使い方ではない。…そう、
クロエが生まれ持つ超人体質による人間離れした筋力と敏捷性を乗せた飛錬突は、もはや元来のそれとは別物。間合い内で放たれる蹴撃は並大抵の動体視力で追うことは適わず。武器や盾で防御をしようものなら防御ごと相手を粉砕する、正真正銘の必殺である。故にクロエがこの技を初手に出したのは技の選択を誤った訳でも、ハザマが先程のように空中に逃げることを先読みした訳でもない。
ガチン
クロエが自身の背後でその音を聞いた瞬間、目の前にいたハザマの姿がブレて消え去った。飛錬突が虚空を切り一体何処へ、とクロエが思う間もなく、背中に走る激痛。思わずたたらを踏み背後を睨むと、クロエの血が付着したバタフライナイフを片手に着地するハザマがいた。
「いや~危ない危ない!もう少しで当たるかと思いましたよ。あぁそうそう、避けるついでに背中、斬っておきましたよ?あまりにも隙だらけだったものですからねぇ」
(…やっぱり厄介だなぁウロボロス。動きがまるで読めない…!)
ハザマが持つ鎖、ウロボロスの性能は単なる遠距離用武器ではない。その真価は、先端の口を閉じることによってその空間を固定できる能力を有することである。ハザマがクロエの飛錬突を躱せたのもこのウロボロスの能力によるものだ。仕組みは単純。クロエの背後で伸ばしていたウロボロスの口を閉じて空間を固定し、鎖を縮める。その後引っ張られる鎖と一緒に山なりに飛ぶことによりハザマはクロエの頭上を軽々と飛び越えて回避を成功させたのである。
(ウロボロスがある限り、こっちから攻めて攻撃を当てるのは難しい…なら、やり方を変えよう)
攻めあぐねたクロエは戦法を変えることにした。ウロボロスを使った立体起動の動きに翻弄され攻めきれないのならば、
―
蛇刹とは、ハザマ曰くどのような攻撃にも瞬時に対応できるよう編み出された攻防一体の構えである。姿勢を半身に、片足を半歩退いて右手を腰の位置まで下げる構えで、
相手が姿勢を下げて足元を狙ってきたら、跳んで回転しながら拳を振り下ろす裂閃牙を。
相手が空中から攻めてきたら、鋭い蹴り上げで迎撃する牙昇脚を。
相手が足元への注意が散漫な時は、右手で足を掬い上げるように刈る残影牙を。
これら3つを状況に合わせて使い分ける構えが蛇刹である。
(唯一怖いのはウロボロスの射出攻撃だけど…牙昇脚の蹴り上げでウロボロスが当たる前に弾けば問題ない。弾いた後ならすぐにはウロボロスも出せない。これならハザマさんにも攻撃が届く!)
クロエが脳内で戦術を組み立てている最中、一方のハザマはクロエの蛇刹の構えを見て、一人感心していた。
(存外冷静ですねぇ。昔のクロエさんなら傷を負った時点で怒り狂いながら突貫して来たんですが……意外な成長だ。
(技の仕上がり自体も悪くは無い…いや、むしろ良い。想定していたレベルは軽く超えている。これなら
ハザマはかつての教え子の精神的な成長と想像以上の技の冴えを認めつつも、クロエがこの状況において致命的な悪手をしたことに嘆息した。その様子を自身の構えが未熟であることを侮られたと勘違いしたクロエがムッとした顔で口を開く。
「そんなあからさまに溜息つかないでよ…しょうがないでしょ?最近はずっと大鎌で戦ってたんだから、少しくらい鈍るって」
「うん?…あぁ、違いますよ。技の精度に関しては文句なしです。ただね…技の使い方に関しては全然ダメだ。まるでなっちゃいない」
「…?使い方?」
「ここまで言われてもピンときませんか?やれやれ…それならしょうがないですねぇ」
では身体に直接教え込んで差し上げますよ。昔のようにね
その刹那、再びウロボロスがクロエに向かって射出された。クロエはその突然の攻撃に僅かに驚きながらも、すぐに冷静となってウロボロスを迎え撃つ。ウロボロスが目の前まで迫り口を閉じようとした一瞬を、クロエは見逃さなかった。
―牙昇脚ッ!
クロエの脚先と鎖の先端が衝突し、ガギンと大きな金属音をたてる。牙昇脚によって弾かれたウロボロスは宙に舞い上がった。ハザマの下にウロボロスが戻るまで、距離を考慮しておよそ3秒ほど。
(それだけあれば、十分ッ!)
地面に着地して一瞬の間も置かずに疾走する。この絶好の機会を逃してなるものかと、クロエは一陣の風となってハザマに接近していく。そしてついに、ウロボロスの無いハザマを間合いに捉えた。クロエは一瞬ハザマの顔に目線を当てたが、見上げたハザマの顔は俯いていているのか、黒いハットに隠されてどのような表情をしているかは見えなかった。
まさか、諦めた?
そんな考えが過るがすぐに思考の片隅へと追いやる。今この瞬間に於いては邪魔でしかないからだ。クロエは右足に渾身の力を込めて技を放つ。ハザマとは別の
―
大きく脚を振り上げ、ハザマの顔面に叩き込もうとしたその刹那。
クロエの全身に、生涯で感じたことのない程の悪寒が走った。
咄嗟に身を捩じらせようとも、その判断は余りにも遅すぎた。
―
凄まじい衝撃が、クロエの腹を貫いた。
「~~~~~ッ!!??」
地上から5mほどの高さまで打ち上げられたクロエは、今の一瞬で自分の身に何が起きたのかを必死に考えた。まるで腹部を貫通されたと錯覚するほどの衝撃。数秒前、こちらの脚が当たる直前に一瞬で態勢を下げたハザマの姿。これらから導き出せる答えは―
(蹴り上げ、られたんだ……
クロエがそう結論付けたと同時に、重力によりクロエの身体はグシャっと音を立てて地面に叩きつけられる。幸いにして地面は土だったため落ちた時の衝撃は抑えられたが、それでも落下のダメージは決して低くは無かった。
早く立ち上がらないと。
そう思いクロエが足に力を籠めるが、身体がいう事を聞かない。足はガクガクと震え一向に動く気配がない。ハザマが繰り出した痛烈な一撃は、早くもクロエの身体機能に影響を及ぼしていた。そんな息も絶え絶えなクロエの下へゆったりと歩いてきたハザマは、すぐ傍にしゃがみこんでから声をかけた。
「あらら、今にも死にそうですねぇ。いや~すみませんクロエさん。貴方にはもっと手加減が必要でしたね!」
「ガフッ……さっきの、言葉…の意味って…こういう事だったんだ、ね。ハザマさん…」
「うん?何のことでしょう?」
「”技の使い方がなってない”って…それってさぁ、ゴホッ……技の使いどころを見誤ったら、自分が不利になるってことを、言いたかったんでしょ…?飛錬突を外した時も、蛇刹で安易に待ちに入った時も…今思えば迂闊だったなぁって、思って…」
「…」
「近づいた後に、大技当てようとしたのもそう…一撃で決める、だなんて思ったから、不用意に近づきすぎて…結果はこのザマ……ふふっバカみたいだね、わたし」
「…馬鹿みたい、じゃなくて実際馬鹿なんですよ貴方は。前にもしっかり言いましたよね?”身体能力に感けた戦い方はせずに技の強みを活かせ”と。今の貴方は適当に近づいてご自慢の怪力でゴリ押して、たま~に技振って当たったラッキー!てのを繰り返しているに過ぎない。だから格上の相手には簡単に動きを見切られて手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。再三言ってきたつもりでしたが、脳みそスッカラカンのクロエさんには難しかったようですねぇ…もしも~し、入ってますか~?」
「いや言いすぎでしょ…あと頭ノックしながら中身確認するのやめて?入ってるにきまってるでしょ…」
「えぇ!脳みそ入ってたんですかぁ!?これは驚いた…精々メロンパンが関の山だと思ってましたが、不思議なこともあるもんですね~」
「……フンッ!!」
「うわっと!急に殴りかからないでくださいよ危ないなぁ。……さて、おふざけはここまでにしておいて。
「うん、どこかの誰かさんが煽ってきたお蔭で元気いっぱいだよ…今すぐにでも殴り飛ばしたい気分かなぁ…!」
「それは重畳。こちらとしても次の予定があるのでそろそろお開きにしたいと思っていましてね……クロエさん。私は今から
「…‟誤った対応は即、死。故に出す技を間違えるな”ってことだね?」
「分かっているならよろしい。では……往け、ウロボロス」
ハザマの宣言通りに放たれたウロボロスは、先程クロエに放った射出速度を大きく上回っていた。身体に少なくないダメージを負ったクロエでは満足に反応すら出来ないであろう速さでウロボロスは胴体目掛けて腸を食い破らんと直進した。
クロエはウロボロスが向かってくるのをしっかりと確認し
そして、目を閉じた
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ねぇテルミさん。前から思ってたんだけどさ、この技って使い道あるの?
はぁ~?馬鹿かてめえは。この俺様が何の役にも立たねぇモンわざわざ教える訳ねぇだろうが!つーか前にもどんな性能なのか懇切丁寧に説明しただろうがこの単細胞筋肉馬鹿が!脳みそついてんのか!?
そこまで言う?…だって‟遠距離攻撃を無視して相手に突っ込む技”だよ?私なら大抵の攻撃は見てから避けられるし、使う事無いと思うんだよねぇ
そんなやり方通用すんのは格下か良くて同格までだボケ。今のてめえにはわかんねえだろうが一応教えてやる。この世に無駄な技なんてのは存在しねぇ、どんな技も使い方次第だ。それさえ間違えなけりゃあ大抵勝てんだよ。分かったか?メスガキ
ふ~ん……テルミさんにも?
はっ……寝言は寝て言えやクソメンヘラが
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(―――思い出した。ありがとうテルミさん。あなたがこの技を教えてくれなかったら、私きっとここで死んでた)
(今度会ったらしっかりお礼しなきゃね。その為にもまずは…ここを切り抜けよう)
クロエが過去の記憶からこの状況を打破する最適解を導き出した瞬間、
―
―あぁ、これは躱せません。これを喰らえば、さっき私が蹴り上げた分と
ハザマは迫りくる蛇を見て回避は間に合わない事を悟ると、身体の力を抜いた。漆黒の蛇はそんな無抵抗なハザマに更に口を広げ―――
ハザマの横を勢いよく通り過ぎた。
「……はい?」
まさかあの状況で外すとは夢にも思わず間の抜けた声を出すハザマ。しかしその数舜後、何かに気付いたかと思うと肩を揺らしてクツクツと笑いだす。その調子のまま振り返り自身の後ろで膝をつき肩で息をしているクロエに話しかけた。
「クロエさん。貴方…わざと外しましたね?」
「はぁっ…はぁ…だってハザマさん、
「……たったそれだけの理由で、私の攻撃を取りやめたと?あの
「……ほんっと、人を煽るときは生き生きしてるよねハザマさんって…私は何も変わってないよ。ただ。その…私に優しくしてくれた友達みたいに、私も誰かに優しくできるようになりたいって思っただけ…」
「―――」
クロエが恥ずかしそうに呟いた瞬間、ハザマの顔から笑みが消え失せた。クロエはハザマの纏う雰囲気が一瞬で愉快気なものから
「クロエさん…気をしっかり持ってください。いくら貴方が友人が作れず寂しい思いをしたとしても、私は貴方の味方です。その上で忠告します……イマジナリーフレンドを作るのはやめておいた方が」
「一遍死ね!!!」
「ぎょえへー!?」
ハザマの顎にクロエのアッパーカットが炸裂した。成人男性を打ち上げる程の威力と怒りが込められた見事な一撃だ。皮肉なことに、この一撃がクロエがハザマに当てた本日最初で最後の攻撃であった。
「痛いなぁもう、顔の形が歪んだらどうするんですかって、あらら。もうこんな時間ですか…それではクロエさん、私はそろそろお暇します。明日は入学式でしたっけ?寝坊しないように今日は早めに就寝することをお勧めしますよ?」
「うるさい!いいから早く帰って!この鬼畜!サディスト!糸目!デリカシーマイナス男!」
「おぉ怖!言われなくてもすたこらさっさってね…では、さようなら。また気が向いたら様子を見に来ますからね~」
そう言ってハザマは背中越しに手を振りながら去っていった。その背中をクロエは忌々しく睨んでいたが、いつまでも怒っていたって仕方がないと割り切り深呼吸を一つ。怒りが完全に消えたわけでは無いが大分マシになったのを自覚しながら、玄関へと戻っていった。
その足取りは、どこか普段よりも荒々しかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハザマさんと戦っていた屋敷の裏庭から玄関へと戻る道すがら、私は自分の課題について考えを巡らせていた。ハザマさんとかつてテルミさんに指摘された『身体能力に頼りすぎない戦い方の確立』と『自分が修めた技への理解と信頼を深めること』。この二つは、次にハザマさん達と会うまでに答えを出しておかないといけない。ハザマさんが言ってたように今の戦い方じゃ格上には絶対に勝てないからだ。
だからまずは、『ハザマさん達の技をすべて覚える事』を目標にしよう。使える技が多ければ対応できる状況も増えるし、戦術の幅も広がるからね。
幸い、さっきの戦闘で
そう思いながら辿り着いた玄関のドアノブを掴んだ瞬間、私は自分の中の違和感に気が付いた。いや、違和感と言うよりはもっと別の…何か大事なことを忘れているような、喉に小骨が刺さっている、そんな気持ち悪さが…
『明日は入学式でしたっけ?寝坊しないように今日は早めに就寝することをお勧めしますよ?』
「…………あっ」
入学準備、全然終わってない。
絶望の余り、思わずその場で膝をついてしまう。そうだった、明日が入学式…!必要な筆記用具、授業に使う教材に体操服、その他諸々の準備が…これっぽっちも進んでない…!どうしよう、今から急いで買いに…いや、ダメだ。身体の傷はほとんど治ってるから動くのに支障は無いけど、今日は日曜日…!人が最も出歩く休日、そんな日に人の波を搔い潜りながら街に行って買い物をする…?無理だ、想像しただけで具合が悪くなる。当然却下。
ならハザマさんに頼む?…これも多分無理だ。さっきあの人は『これから用事がある』と言っていたし…何より、さっき別れ際に怒鳴って追っ払った人に
『ハザマさ~ん♡私、人混み嫌いだからぁ、代わりに街で買い物してきて♡』
とは流石に言えない…と言うより、言いづらい……はぁ。覚悟決めて街に行くしかないかぁ。そう思いながらふと何気なく視線を横に向けると、玄関のドアの横に見慣れない段ボール箱が置いてあった。
…宅配?何か注文した覚えは無いけど…
不審に思いながらも段ボール箱を持ち上げてから玄関を開けて中に入れ、一応警戒しながら箱を開けると…中には新品の筆記用具と教材一式、体操服が詰められていた。
全く予想していなかった箱の中身に呆気に取られていると、裏庭に行く前に靴棚の上に置いておいた携帯が震えた。確認するとついさっき別れたハザマさんからのメッセージが届いていた。
ハザマ:伝え忘れていましたが、玄関の横に教材等を入れた段ボール箱を置いといたので、後程確認してください。どうせ準備していなかったでしょう?無いとは思いますが、何かの間違いで、万が一ダブった場合は、フリマにでもどうぞ。
ハザマ:追伸。ご入学おめでとうございます。精々無駄のない3年間を健やかにお過ごしください。
………………………ふふっ
ほんと、ずるいなぁハザマさんは
いつも人を小馬鹿にするような態度で煽ってくるくせに
鍛錬の時、愉しそうに私をいじめてくるサディストのくせに
たまにこういう事してくるから、嫌いになれないんだよねぇ
ほんとうに、ずるい人
鼻唄を歌いながら、身体に付いた土汚れを落とす為に浴室へと向かう。
足取りは、自然と軽かった。
いつまで経っても学園編に行けず百合成分が補給出来ないので旅に出ます。
嘘です。代わりに百合度マシマシのホロライブ作品書きます(無謀)