今でも考える事がある。多由也を音隠れの里から拾ってきたのは本当に良かったのだろうかと思ってしまう。彼女に取ってあそこは故郷であり、生まれ育った場所だった。そこをボクの一存で彼女を連れだしてしまった。もしかしたら彼女はあそこに居たかったのかもしれない。
そこを無理矢理連れ出してしまったのは間違いだったのではないかと……だからいつかは多由也を元の居場所に戻してやるのも彼女を連れだしたものとしての責任だと考えている。それを彼女が望んでいるのかは未だ定かじゃないが…多分望んでいるだろうからね。
--------
今日は珍しくお互いに休暇だったので二人で買い物に来ている。多由也は人との付き合いがお世辞にも上手とは言えない。すぐに口が悪くなってしまうし、好んで誰かと仲良くしようと多由也も思っていない。いつかはその性格は直して欲しいと思っているけど……すぐに治るものではないので徐々に治って行けば良いけどね。
「今日は何を買うんだっけ?」
ボクの左隣を歩いている多由也の方を見つめながら言った。
「もう忘れたのかよ!!クソ野郎!ウチらが買い物に来たのは食事の買い出しと昨日、クソ野郎が壊した皿を買いに来たんだろうが!そのついでに新しい雑貨を見て行こうかって、言ったんじゃねぇか!!」
「あ…そうだったね。ごめんね。それで最初はどこに行く?」
「食材は最後に回した方が良いだろ。まずは雑貨でも見に行くか」
「そうだね。それじゃ行こうか!」
ボクは左隣にいる多由也の右手を掴んでボクは歩き出した。だけど…一向にボクは前に進めない。何故ならば、多由也が立ち尽くしたまま動こうとしない。
「どうしたんだい?具合が悪いか?もし、体調が優れないのならまた買い物は次の機会にしようか」
彼女の顔は見る感じ、いつもより少し赤いかもしれない。もしかしたら、熱があるのかもしれない。
「帰ろうか!!まずは家で休もう」
「………いや、別に大丈夫だ、てめぇが急に手なんか繋ぐからだろうが」
「そうかい…ダメそうになったらすぐに言うんだよ!ボクは君を無理させてまで買い物を続ける気はないからね」
「大丈夫だって言ってだろ!!早く行くぞ!!」
「分かったよ…」
雑貨屋に着くと…皿や家具など色々なものがあり本来の目的を忘れそうになってしまうほどだ。ボクが他の物に目移りしそうになっていると…耳を引っ張られた。ボクの耳を引っ張る人物は見なくても誰だが分かる。絶対に多由也だ。
「てめぇが皿を壊したんだから、てめぇが代わりの物を見つけるんだよ!!ノミ虫」
「わ、わかったから、耳を放してくれないかな?」
ボクは多由也に耳を引っ張られながら目的の場所へと連れてかれた。
「え…これも…良いね。いや、こっちも良いね。やっぱりこういうのはボクに向かないよ。多由也も知ってるだろう?ボクはこういうのを決めるのに凄い時間が掛かるって」
「はぁ……仕方ねぇな」
そう言うと多由也は棚の中に置かれているお皿を一通り見ると決めたようだった。彼女はボクと違って何事も好き、嫌いがはっきりしているし、決めるのもとても早い。
「これが良いんじゃねぇか?前のとは少し違うがてめぇはこういうデザイン好きだったろ?」
「よくボクの好みが分かるね?確かにこういうデザインが好きなんだよ」
「てめぇとどれだけ一緒に暮らしてきたと思っているんだよ!」
「まあ、そう言われればそうだね。それじゃこれを買う事にしようか」
中途半端な終わり方になってしまってスミマセン。