「ふぁああ~」
日付も変わって、今日は半年記念だし、配信も終わったし、そろそろ寝よっかなぁ。
「眠いし」
PCの電源を落として、ベッドに横になる。
このベッドは魔界から持ってきた特別性だ。おっきくてふかふかのお布団に包まれて眠るのは、最高の睡眠だ。……そのせいで、お部屋はちょっと手狭になっちゃったけど。
とりあえず、歯も磨いたし、電気消して寝るかぁ。
……もしかしたら、起きたらファンアートなんかあったりして。
んふふ、楽しみだなぁ。
「あれ?」
ふと目を覚ますと、ベッドの上じゃなかった。周囲を見渡すと、壁も床もコンクリートでできた、正方形の部屋の真ん中の床に座り込んでいたみたいだ。四方には扉があることが分かるけど、まったく見覚えがない。
私の着ていた寝巻は、白いローブのようなぼろきれに変わっていて、すぐ横には長机と椅子、そして木製の皿に赤い無臭のスープが置いてあった。
「ここはどこなんだろう……というか、どういう状況?」
天井の豆電球だけが薄暗い部屋を照らしている。何か、少しでも情報が無いかと目を凝らすと、椅子の上に紙きれが落ちていることに気が付いた。
『帰りたいなら 一時間以内に 毒入りスープを飲め。 飲むまでは 君じゃあここから 出られない。 一時間以内に 飲めなかったら お迎えが来るぞ』
「何なの、これ?」
拾い上げた紙きれの文字を読んで、背筋が震えた気がした。何か、得体の知れない出来事に巻き込まれたんじゃないか。そんな、突拍子もないけれども、ある意味信じられるような考えが脳裏をよぎる。
くらり、とふらついた気がした。立ち眩みのような、何か、気が抜けるかのように地べたにへたり込む。
そして、紙きれはもう一枚あることに気が付いた。
豆電球のわずかな明かりに照らして読んでみると、地図であろうことが分かった。
『真ん中の部屋はスープの部屋。北の部屋は調理室。南の部屋は礼拝室。西の部屋は書庫。東の部屋は下僕の部屋』
中心の正方形から四方に伸びる扉とその先の小さな小部屋。おそらく、私がいるのはこのスープの部屋ってところなんだろう。おあつらえ向きに、真っ赤なスープらしきものも置いてあるし。
豆電球の明かりに透かして眺めていたら、裏面にも何か文字が書いてあることに気が付いた。
『暖かい 人間の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ』
その文字列の内容を脳が処理しきれないまま、茫然と赤いスープを見つめると、どこか鉄さびのような悪臭が鼻についた。この赤いスープは本当に人間の血で作られたんだ……。そんなことを確信してしまう。
どこかの幼龍のことをサイコだなんてからかっていたけれど、実際に目の当たりにしたら、そんなこと言っている余裕なんかない。
言いようもない吐き気と、頭痛、めまいを感じ、立ち上がる気力すら湧きあがらない。
私は、しばらくの間、コンクリートの床に座りこんだままだった。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。それは数分であったかもしれないし、数時間だったかもしれない。
けれど、目を向けた例のスープをまだ湯気を上げていたし、一時間後のお迎えも来てないみたいだから、実際はそんなに時間が経ったわけではないんだろう。
ここには居られない。解毒薬を飲んで、毒入りスープも飲んで、早くここから出なきゃ。私は意を決して、一歩を踏み出した。
扉を開けると、部屋の中央に小さな四足の古びた机と、燭台にのせられたろうそくがあった。大きな本棚にぎっしりと詰められた書物が部屋の四方を囲んでいて、誰か、人影がその一つに寄り添って立っているのが見える。
「あ、あのっ!」
私が声をかけようとしたその時、人影は扉の開く音に気が付いたかのように振り向いた。
ミルクティー色の髪に紫色のジャケットを羽織り、その頭には大きな獣の耳。
彼女は私が誰なのか気が付いたかと思うと、満面の笑みを浮かべ、近づいてきた。
「あれ、うにさーもんさんじゃん!」
「やっぱり! ハティちゃん! どうしてここに?」
「いや、私もわかんないんだよね。配信前に仮眠を取ろうと思って布団に入ったところまでは覚えてるんだけど、起きたらこの部屋でさぁ。困っちゃうよね? また、ハティ配信すっぽかしたとか思われるじゃん」
「え、私、ハティちゃんの配信待機してたけど、1時間経っても始まらなかったから、自分の配信をしてから寝たよ?」
「え゛っ!? ホントに? またポンだなんだって言われるじゃん。どうしよ……」
いやいや、大事なことだけどさ、今はそういう問題じゃないんじゃない、ハティちゃん……。
「ま、まぁ、とにかく? ここから出ないことには、始まらないでしょ? ハティちゃん、ここで何か分かったことある?」
「ん? とりあえず、『スープの夢について』って真っ黒な本見つけたよ。なんかベタベタしてるから、うにさーもんさんは触らない方がいいぞ」
「え、じゃあハティちゃんなんでそんな本を抱えてるの?」
「いや、なんかさ、この本の表面がベタベタするんだよね」
ええっ!? なおさら捨てた方がいいんじゃ……?
「たださぁ、地図と部屋の説明みたいなのが書いてあってさ、忘れたら困るから持っていこうかなって」
ハティちゃんの情報を纏めると、
・真ん中の部屋:ちゃんとしたスープを飲まないと出られない。メモの裏にはスープの正体が記されている。
・北の部屋:調味料や食器が卓さん置いてある。ちょっとだけスープの予備が鍋に入っている。
・南の部屋:神様が眠ってる。毒の資料がある。番人は活きのいいものを食べなきゃいなくならない。
・西の部屋:本はとっても大事だから持ち出したらダメ。ろうそくは持っていける。
・東の部屋:とってもいい子が待っている。いいものを持ってるよ。
・大事な事:死を覚悟して飲むように。
ってことらしい。
「ハティちゃん、私が覚えておくから、本は置いていこう?」
「んー、うにさーもんさんがそういうなら置いていくかー」
ハティちゃんに本を棚に戻している間に、私もいくつか見て回ったけど、他にめぼしいものは見当たらなかった。燭台を一緒に持っていくかどうか悩んで、ハティちゃんをチラリとみると、ベタベタになった手を、違う本の背で拭っていた。
……ハティちゃんばっちぃよ?
結局、ハティちゃんが燭台ごとろうそくを握り、私が入ってきた扉を通り抜け、ずんずんと進むと、ちょうど向かい側にある扉を蹴り開けて入っていった。
なんか、ハティちゃんがちょっと頼もしく見える。
少し後ろを追いかけて部屋に入ると、ハティちゃんは部屋の真ん中に棒立ちしていた。
「どうしたの? なんかあった?」
「ん、いや、ろうそくの火があるから見えるかなって思ってたんだけどさ、なんか、ろたんが見知らぬ女の子と一緒に寝てるんだけど……」
「え……ろたんちゃん?」
「うん、ろたん。とりあえず、起こすか?」
「うん、まぁ、そうね」
おい、ろたん! 起きろ! って言ってるハティちゃんを横目に、もう一人の見知らぬ少女を見る。
十代後半くらいだろうか、少しやつれた感じの少女が、私と同じぼろきれを纏っている。けれども、その細い右腕には、血にまみれた拳銃を握っていた。
色白の……アルビノの少女は、自身の背後を見やる。それに合わせて視線を向けると、そこには頭のない男性と思しき遺体が、身を横たえていた。うっっと声を漏らすだけで済んだのは僥倖だったかもしれない。
これは、ハティちゃんやろたんちゃんには見せられない。
眠たげに目をこすってるろたんちゃんを横目に、遺体が握っていた紙きれを回収して、ろたんちゃんに近寄る。大きなあくびをしているろたんちゃんを、ハティちゃんはやれやれって顔で見てるけど、ハティちゃんもさっきまではとぼけたことやってたでしょ。
とりあえず、先ほど見つけた紙に書かれていることを確認して、ハティちゃんとろたんちゃんにも共有する。
『それは 名前もない あなたの 下僕です。 言われたことは いやでも 絶対に 従います。 無口だけど 人懐っこい 良い子なので 可愛がって あげてください』
もちろん、ろたんちゃんもハティちゃん同様で、どうしてここにいるのかも分からないみたいだったし、アルビノの少女のことも知ってはいないみたい。
「とりあえず、ここにいても仕方ないし、真ん中の部屋に戻ろう」
そういって、ろたんちゃんの手を引いて歩きだすハティちゃん。右手には燭台に乗った蝋燭、左手にろたんちゃんの手を携えて扉に向かう。
私も後に続くと、私の一歩後ろを、例の少女が着いてきた。
真ん中の部屋に戻ると、小さな豆電球が私たちを迎えてくれた。
赤いスープは、少し冷めてしまったみたいで、最初ほどは湯気が少なくなっている。
もしかしたら、一時間というタイムリミットまで、あまり時間がないのかもしれない。
「ねぇ、あなたのお名前は? ろたんはねー、ろたんって言うんだよ」
「おう、私はハティ。ハティ・マーナガルムだ。いくら無口って言ったって、名前くらいは教えてくれてもいいんじゃないか?」
私がタイムリミットに想いを馳せていると、ハティちゃんとろたんちゃんが少女に話しかけていた。
それでも、彼女は首を横に振るだけで、何も答えない。
「んー……じゃあ、あなたはお肌が真っ白だから、しろちゃんって呼んでいい?」
ろたんちゃんがあだ名をつけてた。アルビノの少女は頷いた。
ろたんちゃんはいい意味でマイペースだから、気付かないうちに内心で焦っていたことを理解する。
こんな異常事態に焦らない方がおかしいのかもしれないけど、そういう意味ではろたんちゃんはすごいなぁ。
「んじゃあ、しろ。とりあえず私たちに着いてくるってことでいいのか? 一緒にここから脱出しような!」
ハティちゃんが明るく笑う。
それじゃあ、と私もできるだけ明るい声で残った扉の片方を開ける。
扉を開けると、いくつもの豆電球が部屋を明るく照らしており、全体的にきれいな部屋だ。壁際には食器棚や調理台、洗い場などが設置されていて、キッチンであったことがうかがえる。
ガスコンロの上には大きな鍋が置いてあった。
「とりあえず、あの鍋は後回しにして、なんかめぼしいもんがないか探すかぁ」
ハティちゃんの声を合図に、さして広くもない部屋を見まわしてみると、部屋の片隅に、赤い何かがうずくまっていた。
その赤い何かは、プルプル震えているが、耳を塞ぎ目も瞑っているみたい。
とりあえず、近づいて肩を叩いてみる。
「いのりちゃん?」
「いやーーーーーーーーーっ!!!!!」
声をかけた瞬間に絶叫を上げるいのりちゃんに、こちらがビクっとしてしまった。
ハティちゃんもろたんちゃんも、しろちゃんもこちらに目を向けている。
「おーいのりじゃないか」
「いのりちゃんもいたんだねー」
ハティちゃんとろたんちゃんは鼓膜を破壊してくるいのりちゃんに慣れているのか、いつものように声をかけていた。
私はといえば、いのりちゃんに服の端をつままれて動けない。
「むにちゃん……ハティちゃんもろたんちゃんも! 会いたかったよぉ……!」
いのりちゃんは目から涙をこぼし、やっと生きた心地がしたとてでもいうかのように、息をついていた。
これは、いのりちゃんもどうしてここにいるのか分からないんだろうなぁ。
「とりあえず、一通り見てみたけど、銀色の食器以外は見つからなかったー」
「私が見たところも似たような感じだな」
ろたんちゃんとハティちゃんが見つけたのは銀製の食器だけか。いのりちゃんは多分、鍋の中を覗いちゃって、こんなにもおびえることになっちゃったんだろうな。ちなみにしろちゃんは、入ってきた扉の側に佇んだままだ。
私はといえば、いのりちゃんに服の裾をつままれながらも見つけたのは、一枚の紙きれ。
『大事な 調味料は 現在 在庫切れ』
うーん、これは毒入りスープを作ることもできなさそうになってきたぞ。どうしようか……
「銀食器ばっかりだね。いのりはあんまり使ったことないけど、魔除けとかに使われたり、大昔の猛毒が銀の色を変えるから毒見の代わりに使われてたりしてたみたいだよ」
ちょっと落ち着いてきたいのりちゃんから、そんな情報がもたらされる。
つまり、銀の食器を使えば、毒入りスープの最後の材料が見つかるかもしれない。
「よし、いったん作戦会議しようか」
そう言って、真ん中の部屋へと戻る。
まだ探索してない部屋は、残り一つ。
そこに最後の希望が残ってる。
真ん中の部屋に戻ってきた。いのりちゃんも、ろたんちゃんも、ハティちゃんもいる。ついでに、しろちゃんもいる。
「さて、どうする?」
ハティちゃんの問いかけに最後の部屋を探索しようって提案をしようとした、その時。
「ねぇ、この赤いスープ、冷たくなってない? まだ大丈夫なのかな……?」
ろたんちゃんの一言で、目の前が真っ暗になった気がした。
いのりちゃんにもこの状況を説明しておきたいけど、そんな時間もないかもしれない。
「ねぇねぇ、しろちゃん? なんか、みんなの探し物、どこにあるか知らない?」
いのりちゃんがしろちゃんに話しかけてるけど、その子は何も返してはくれないと思うよ。
「んー、タイムリミットが残りわずかとなると、最後の部屋を探す時間はなさそうだな。となると、ここでどうにかするしかないか……」
ハティちゃんは燭台にいつの間にか消えていた蝋燭、そして浅いフリスビーみたいなお皿を掲げて言った。
……そのポーズは何?
「この赤いスープ、ちょっとおいしそう」
ろたんちゃんはやっぱりサイコパスだったんだ!?
「え、ホントにそこにあるの? 分かった!」
いのりちゃんは何かを見つけたみたいに、急に部屋の真ん中まで来て、ぴょんぴょんし始めた。
天井に向かって手を伸ばして、ジャンプしているが、手は空をつかむばかりで、ただかわいいだけだ。
「んー! 届かない!」
「いのりは何を取ろうとしてるんだ?」
ハティちゃんがいのりちゃんに話しかける。ろたんちゃんはスープの前に座って悲しげな顔でお腹を抑えている。おなかが減ったのかな……?
しろちゃんは部屋の片隅から、いのりちゃんを眺めていた。
「しろちゃんが、みんなの探し物があそこにあるよって言うから……」
そう言って指をさしたのは、天井の豆電球だ。他にめぼしいものは天井には無い……と思う。
どうせ時間もあまり残っていないのだし、最後にあれだけ調べて、ダメだったら……
「よっ! ほらよ! ジャンプするなら私に任せな」
なんて考えていたら、ハティちゃんが豆電球を引きちぎってきた。周囲は暗がりに包まれ、互いの顔も分からないくらいだ。
「は、は、ハティちゃん!?」
いのりちゃんは案の定、怖いみたいでハティちゃんのことを呼んでいる。今頃、腕あたりにしがみついているんだろうか。ろたんちゃんは気が付いたら、机に突っ伏して寝ていた。さっきまで寝ていたのに、まだ寝るって……成長期かな?
「とりあえずさぁ、光ってるの取ったけど、真っ暗で何も見えねぇ! あ、でも、なんか瓶みたいなのが入ってるわ」
手触りだけで、瓶らしきものって分かったのかな……? ろたんちゃんはおそらく寝てるし、いのりちゃんはハティちゃんの腕にくっついているでしょ。うーん、視界不良なのがよくないな。
「しろちゃん、さっき入ってきた扉を開けてもらえる?」
おそらく頷いてから動きだしたんだろう。ホントに静かな足音と、キィッって音とともに、光が差し込んでくる。しばらく暗い部屋に居たからか、少しまぶしい。
「お? この瓶に入ってる黒い液体が私らの探し物ってことか? んー、なんかの花っぽい匂いがするなぁ」
「さっきいのりちゃんが言ってたけど、銀のお皿にちょっと出してみたら? 私たちが探してる物だったら色が変わるんだっけ?」
「そういえば、そんなこと言ってたな。ちょっと出してみるか」
ちょ、いのり、腕から離れて! ちょ、瓶の蓋開けられないから! いのり!
ハティちゃんがいのりちゃんにまとわりつかれてるけど、さすがにどうにかした方がいいかな?
「ほら、いのりちゃん、こっちおいでー。ハティちゃんの邪魔しちゃだめだよ」
「むにちゃん……!」
いのりちゃんを左腕に装備して、ハティちゃんの動向を見守る。ろたんちゃんは机に突っ伏して寝てるし、しろちゃんは壁際の花だ。
「ん? おお! 銀の皿が黒くなった! これが私たちの探していたONE PIECEだ!」
いのりちゃんは私の腕を抱えたまま、おーと言って拍手をしてる。
というわけで、ハティちゃんに目線で頷き、赤いスープに謎の液体をかけてもらう。
「さて、問題はここからだね」
「そうだな。いのりは選択肢から外すとして、ろたんは寝てる。残りは三択だ」
私、ハティちゃん、しろちゃん。この三択ってことなんだろう。
「迷うことはないよ。私が飲む。ハティちゃんはいのりちゃんとろたんちゃんをよろしく」
「うにさーもんさんが飲む? 私が飲もうかなって思ってたのに」
「ハティちゃんは嫁を守らなきゃでしょ!」
「……そうだったわ」
よし、とりあえず私が飲むことになった。さすがにハティちゃんにはやらせられない。
多分だけど、これは私がみんなを巻きこんじゃったことだろうし。
「よし、飲むぞ……」
お皿に近づくと、鉄錆にも似たえぐみが鼻を突く。いざ、お皿を持ち上げると、見た目も匂いも材料のことも、いろいろと考えてしまって決心が揺らぐ。
周りを見渡すと、ろたんちゃんは寝てるけど、いのりちゃんとハティちゃんはこっちを心配そうに見てる。しろちゃんはこっちをずっと見てるだけだ。
あ、そうだ。
「しろちゃん」
首をかしげるしろちゃん。
いのりちゃんたち、いろはのメンバーは無事に帰れたら会えると思うけど、しろちゃんはどうなるか分からない。だから、ここで再会の約束をして、心を決める。
「無事に帰れたら、今度はあなたの声、聴かせてね?」
そう言って、返事を待たずに一息に飲む。
味なんて感じないように、勢いよく。
飲み干したら感じる、視界がグルグルと回るかのような感覚。
どちらが天井でどちらが地面なのか、右と左はどちらなのか。
私とそれ以外の境界はどこなのか……
それすらもあやふやになるかのような、酩酊感にも似た感覚。
不思議と吐き気は感じないのが、逆に恐ろしい。
徐々に呼吸と心拍が激しくなっていく気がするが、それでも苦しさは感じない。
視界の端がだんだんと黒ずんで、狭くなってくる。
思考がまとまらなくなってきた。
ハティちゃんは、いのりちゃんはどうしてるだろうか。
一緒に帰れるのかな。
「うにさーもんさん!」
「むにちゃん!」
ハティちゃんといのりちゃんの呼びかけとともに、彼女の声も聞こえた気がした。
気が付けば、いつものベッドに寝ていた。
得体の知れない夢を見ていた気がする。
内容は全然覚えてないけど、どこか、喉がイガイガしている気がする。
「空調点けっぱなしで寝たから、喉痛めちゃったかな……」
水を飲んで、一息つく。
そうだ、今日は私の半年記念だ。
もしかしたらファンアートも上がってるかもしれない。
「そう考えると、ちょっとテンションが上がってきた! ……一枚も無かったらちょっと悲しいけど」
あはは、とから笑いをして、Twitterを開く。
――何か、大事な約束を忘れている気がした。
「お、いくつか描いてくれてる!」
うれしいなぁ……私のことをこんなにも祝ってくれている人がいる。
そのことが、私を一番元気にしてくれる気がする。
「あれ?」
私のリスナーさんでは名前を見たことが無い片からファンアートが届いてる。
どこで私を知ってくれたのかな……
「顔はすごい再現度なのに、なんで洋服が白いぼろ布なんだろ」
アカウントを確認しに行くと、プロフィール欄は空欄。IDも最近作ったのか、普通のランダム文字列だった。フォローしてるのは私一人。
「アカウント名は……しろ? 誰だろう」
どこか懐かしさを感じながら口にしたハンドルネームに、自然と口角が上がるのを感じる。
いいねを付けて、リツイートをして、リプライを送る。
フォローを返したとき、どこかで嗅いだ花の香りがした。
むにちゃんにCoCの探索者をやってもらいました。
いろはのメンバーのは出張してもらって、情報を提供してもらおうと思ってたら、ハティちゃんのダイスが3回中2回クリで、情報をめっちゃいっぱい出すことに。ロストしにくくなったし、おkってことで。
むにちゃん、半年おめでとう!