「エゴサよ」
「うげぇ」と後輩が嫌そうに顔を顰める。
別にあんたのことを調べているわけでは無いんだけど、なぜか後輩は嫌そうな顔をする。
「なんであんたが嫌そうな顔をするのよ」
「だって先輩、ネットだと結構酷評されていますし」
「ちゃっかり調べてんじゃないわよ!」
「ヒエッ!練習行って来まーす」
ったく、あの子は。
自分が酷評されてんのは自分が一番分かってるってーの。
中央入りして4年目。
日本ダービー以降いいとこなし。
たまにレースに出れば復活の兆しなんて見られもしない。
--すでに終わった存在。それが世間から見た私への評価だ。
プロローグ
1月。始まりの年。
早いもので、私のシニア戦線も今年で3年目を迎える。
現在のシニア戦線は非常にレベルが高い。
クラシックのたたき上げが毎年流動的に投入され、ロートルはどんどん駆逐されていく。
逆も然りで、シニアレベルの洗礼を浴び、挫折する者も後を絶たない。
いずれも弱者が淘汰されていく仕組みとなっているのだ。
そんなシニア戦線に私は3年もしがみ付いている……ように見られているのだ。
甚だ遺憾である。
先ほども私の後輩である
指摘されんでも分かってる、と。
「南坂T、って感じ」
「エゴサは止してください。
と言いたいところですが、ほとんど話題に上がらなくなったのは僥倖です」
「だね。身体も万全だし」
「ええ。よく我慢しました」
長かった。本当に長かった。
私が周到に準備をしている間に、あいつは大出世をかましてしまい、今や様々な渾名で呼ばれる歴代最低で最高なウマ娘となってしまった。
全てをひっくり返した日本ダービー。
世界を震撼させた
あいつを象徴付てしまった2レース。
過激な言動と、行き過ぎたパフォーマンスが話題となってしまったが、それでも記録だけは燦然と輝いていていた。
まあ、
そこのところは履き違えないで欲しいと思う。
今は胸の内に留めておこうと思うけど、タイミングが来たら絶対指摘してやる。
まあそんな胸中はどうでもいい。
とにかく私は時間を賭けた。
レースなんてどうでも……いいとは言えないけど、可能な限り自分の限界を超えて鍛えた。
きっとそれは間違った方法だったかもしれないけど、南坂Tや元臨時Tに何度も止められたけど、『あんたが見てくれないと私はぶっ壊れるわよ!』と脅して続けた。
うん、正直申し訳ないとは思う。
けどそれは私の責任だから。無理だと思うけど、気にしないでほしいというのが本音だ。
だからごめん。そしてありがとう。これからもよろしく。
「改めて喧嘩を売るにしても『格と箔』っていうものはやっぱり重要になってくるもの。
先ずは天・春で『箔』付けをするわ。ついでにかつての腑抜け共とも『格』付けも済ませなくちゃね」
「おそらくギリギリのレースになると思います。
あの娘らも成長が止まっているわけではありませんから」
「上等よ。ここを超えなきゃあいつに喧嘩を売るなんて到底できないもの。やってやるわ」
栄光なんていらない。
名誉なんてクソ喰らえ。
ただ負けっ放しって言うのは性に合わない。
だから先ずは腑抜け共から
緒戦はシンボリルドルフとゴールドシップ。
相手にとって不足はない。
「トレーナー……ってげぇ!サイドテール!
な、なんだよぉ、怖い顔して。や、やるのかよぉ」
「どうしたテイオー、ってサイドテール先輩じゃん!
さっきネイチャが逃げて行ったけど、何かあったか?」
「サ・イ・ド・テ・イ・ル!
横棒で略すな!そしてテイオーはいちいちビクつかない!
ったく、あたしがあんたに何したって言うのよ」
空気の喚起にはちょうどいいだろう。
後輩’s2、3のお出ましだ。
青髪のツインテールとワンポイント白毛流し。
ツインターボとトウカイテイオーである。
片や爆逃げが売りのどこぞのヘリオスを思い起こさせるウマ娘と、片や何故うちに来た!と言わんばかりの才能超優等生。
ターボはうん、なんとなくここがあっているとは思うよ。
というか能力がピーキー過ぎて多分南坂Tや元臨時T位しか手綱を握れないと思うし。
でもってこいつ。テイオーに至ってはマジで意味が分からない。
リギル辺りで才能を伸ばし続けた方が健全ではあると思うけど、何故かうちに来た。
理由を聞いたが『秘密♡』と煽られたので、思わずアイアンクローを食らわしたのはご愛敬であろう。
もう一人。
さっき外に逃げたモフツインことナイスネイチャという後輩がいるけど、こいつはこいつでまあ斜に構えているところがあったりして、中々捻くれたやつだ。尤も、あいつと比べたら可愛いものであるが。
後輩3人と私と南坂T。
現在、チーム『カノープス』は以上の5人体制で回っている。
あ、後たまにOGの二人も遊びに来てくれたりするか。