YOU MAKE LIFE(夢喰らい)   作:グゥワバス

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1話

 ここで後輩達について触れておこうと思う。

 

 試験を終えトレセン学園に入学するまでの間。

 次年度からの新入生は地理的要件さえ満たせば、学園内の施設を利用することが可能となる。要するに自宅から通う足さえあれば施設を利用してもいいよ、ということである。

 

 

 またトレーナー達は有望株に内諾を得る動きも出てきたりする。

 いわゆる『青田買い』というやつも始まったりするのだ。

 

 尤もこれについては、入学試験の前段階から相手の親御さん等と協議を行ったり、綿密な調整の上で成り立つものであるため、余ほど要領のいいトレーナーか有名なトレーナーでもない限り、先ず内諾を得るのは難しい。

 

 

 難しいはずなのだが、何故か『カノープス』にはすでに3人ものウマ娘から内諾をもらってしまっていた。

 

 

 1人目が言わずと知れたトウカイテイオー。

 今年4月から入ってくる新入生の中でトップクラスの有望株である。

 

 こいつクラスに関してはマジで有名(トレーナー)が事前に手を打って、本人との相性も確認して漸く引き込めるような逸材である。本来ならエンカウントすら難しいはずなのだが、何故か向こうからこっちにやって来たらしい。

 

 Tは何度も別のチームやらトレーナやらを打診したようなのだが、

『絶対にここがいい!どこ行っても僕は速くなるんだから、だったら入りたいと思ったところがいい!』と言われてしまい仕方なく折れたのだとか。

 南坂Tの業務量が増加した。

 

 

 2人目はナイスネイチャ。

 たまたまTとテイオーの入部についてのやり取りを目撃して、なし崩し的、どさくさに紛れて入部を勝ち得たのだとか。

 

 後から理由を聞いたら

『私ら世代のトップが入りたがってる名の知れないチームと来たら、これは賭けてみる価値はあるかな』

 とのことで、まあ中々胆の据わった新人ではあると思ったわ。

『見当違いなら抜ければいいし』と言えるとこまで含めて見どころはあると思う。

 南坂Tの業務量が増加した。

 

 

 3人目はツインターボ。

 こいつに関しては『口止め』である。

 

 私がいつものようにTと練習を始めようと思ったら、すでに伸びていたこいつがいたのだ。

 仕方なく声を掛けて医務室に連れて行こうと思ったら、自力で立ち上がってまた走ろうとしていたから慌てて止めに入った。

 

 2人で無茶な練習について叱りつけたのだが『だって2人はいっつもその位やってるじゃん』と言われて返す言葉が無く、同時に練習を目撃されてしまっていたことを悟り、逆に言いくるめて入部してもらったのだ。とても悪い先輩と大人である。

 南坂Tの業務量とストレスが増加した。

 

 

 以上が後輩達の仮入部のいきさつである。

 Tの業務量が大幅に増えてしまい頭を抱えていたようだが、このTはただじゃ起きなかった。

 逆に私の練習を見てもらうための手駒としてしまったのだ。

 

 

 始めTがそんなことを宣うわけだから『ああ、疲れて頭がパぁになっちゃったんだな』と私は思っていた。

 どこのTが入学前の新人をパシらせるのか。そもそも断られるだろう。

 

 

 

 が、甘かった。

 テイオーは何故かしっかり私の練習を見てくる。

 ネイチャはメモりながらダメ出しをしてくる。

 ターボに至ってはマネしてこようとする。

 

 

 バ鹿か、バ鹿なのか。

 自分の練習だけしっかりしてろよ、と言いたい。というか言った。

 そしたら

『使えそうなとこは自分の練習に取り入れるんで。先輩は限界までイッちゃってください』

 とネイチャ談。

 ああ、逞しい後輩どもだこと。

 

 だったらこっちもとことんダメな先輩でいてやることにした。

 特に気にせず練習を続ける。それだけである。

 

 

 何故なら後輩たちはそれをお望みなのだから。

 

 

 

 と、こんないきさつがあり今の『カノープス』が動き出したのだ。

 

 

 ただ、あくまで後輩’sは入学前の仮入部の段階。学生寮への入寮はまだ先であるため、夕方になると当然自宅に帰ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんな元気で愉快な後輩達が帰った時分。

 私たちは今後の出走予定について話し合いを続けていた。

 

 

 

 緒戦はルドルフとゴールドシップ!

 なんて息巻いたはいいけど、冷静に考えたらG1はレーティング的に非常に厳しいラインにいるの忘れてたわ。

 

 というか南坂Tは初めから私のレーティングが厳しいことを分かっていたようで、すでに出走レースの算段を立ててくれていたようだ。

 

 

 

「阪神大賞典を取りに行きます。

 もとより、ここを獲らなきゃ春の天皇賞は出走すら叶いません。

 加えてここを獲りに来るのは一筋縄じゃ行かない相手ばかりです」

 

「誰が来る予定?」

 

「ほぼ確定がタマモクロスさん、ビワハヤヒデさん。

 来るかもしれないのがライスシャワーさん、ナリタブライアンさん。

 いや、ブライアンさんは来ますね。3人は間違いなく来ます」

 

 

 

 皆聞いたことのある名前。

 

 タマモクロスは在りし日の模擬レースで一着を捲ったやつ。

 いや、こいつだけじゃなくハヤヒデもタマと同世代で無茶苦茶安定感のあるやつだと聞いてる。

 ブライアンに至っては去年の三冠ウマ娘だ。ついでにハヤヒデの妹でもある。

 

 そしてライスは去年ブライアンと最後の三冠目である菊花賞を競ったステイヤー。

 

 

 っべーわー、こいつら皆後輩なんだよなー。

 というかライスも来るでしょコレ。気弱そうな印象もあったけど、ブライアンに競り負けた時に一瞬見せた憤怒の表情から推測するに、多分リベンジに来るフラグでしょ。

 

 

 

「ライスも間違いなく来るよ。あれはそういう類の種族だよ」

 

「どういう類の種族か分かりませんが、それなら強敵は4人になりましたね。

 このとんでもない後輩達を抑えない事には、あなたの同期であるお二人には挑むことすらできませんよ」

 

「しんどいレースになりそうだわ。

 でもま、()()()()()()()()()し、ここらで先輩の威厳を見せてやりますよ」

 

「無理だけは決してしないでくださいね」

 

「はいはい。ケガしたってつまらないもの」

 

 

 

 こんなとこで躓くわけにはいかないし。

 ま、いい塩梅に調整して勝ちに行くわ。

 

 旧世代のロートル、華麗に復活。ってね。

 

 

 

 

「じゃ、T、行こっか」

 

「……レースも近いので、ここからは軽めの調整にしますよ」

 

 

 

 

 今まで私がほとんどのレースに顔を出さなかった理由。

 なんて事は無い。ただレースそっちのけで自身の強化に努めていただけ。

 

--レース中心のスケジュールではなく、あいつをぶち抜くためのスケジュール

 

 なーに、私の青春なんて安いもんさ。

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