零れ落ちた美麗の雫   作:たけのこの里派

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第九話 フィオレ・フォルヴェッジの回顧

 ミレニア城塞の一室。

 ユグドミレニアの長であるダーニックの私室である。

 その場に、部屋の主であるダーニック自身と彼のサーヴァントである黒のランサーが居た。

 しかし本来の従者と主という関係が逆転しており、ランサーは寛ぎながらワインを楽しんでいた。

 

 それはダーニックが臣下として振る舞っているからだろう。

王として在ったヴラド三世との円滑なコミュニケーションの為である。

 そしてその部屋には、セレニケの工房を後にしたアラヤと、ダーニックと共に大聖杯の不備の有無を確認しに行ったルーラーが招かれていた。

 尤も、残念ながらそこに和やかな空気は決して流れていなかったのだが。

 

「────と、云う訳で。彼女の持つライダーの令呪残り二画は、此方が預からせて貰う。これは我々の自衛と、何よりこれ以上のセレニケ女史の暴走、その抑止のためだ。事後報告になって悪いけど、了承して貰うよ」

「………………………………」

 

 大聖杯の点検に行っていたルーラーとダーニックが、共に顔を顰めて頭を抱えていた。

 ルーラーは、巻き込んでしまった『護ると誓ったマスター』を危険に晒してしまった、自責の念によって。

 しかしそんな聖女の苦悩が目に入らぬ程、激情を抑え込んでいる者がいた。

 

 ダーニックの顔は、彼を臣下として扱うヴラド三世でさえ憐憫を向けるほどだった。

 

 特に彼は生前、売国貴族という使えない部下に苦しめられた過去を持つ。

 それが結果として12年もの幽閉生活を余儀なくされ、挙句幽閉中に妻を失ったのだから、部下の裏切りとも言える暴挙で去来している感情への共感は一際である。

 即座にセレニケを殺しに行かなかったのを、逆に称賛するかもしれない。

 それほどに、彼は激情を必死に抑え込もうとしていた。

 無論、そんな者をマスターに選んだことに関しては、失望を禁じ得ないが。

 

「とまぁマスターの方は兎も角、黒のライダーに関しては何の問題も無かったよ。

 ────ルーラー、大聖杯の方は?」

「えっ、……ええ。此方も不備はありませんでした。万能の願望器、大聖杯の威光に不足無しです」

 

 そんなダーニックを尻目に、アラヤとルーラーは己の仕事の確認をし合う。

 結果として、最も簡単で楽観的な候補は外れであった。

 舞台装置である大聖杯に問題無し。

 であるならば、尚更候補は参加者に絞られた。

 このミレニア城塞で行うべき事は、黒の陣営のマスターとサーヴァントの参戦動機や、問題になりうる宝具などの確認になるのだが────

 

「……アラヤよ。我が陣営の者が失礼した」

「何、気にする程のものじゃない。こうしてペナルティを与えた以上、もう何も言うことはないさ」

「……ッ!」

 

 これにて手打ち。

 事実上ルーラー陣営を敵に回す程の事態を手打ちとする。

 しかしそれの引き換えとするのが黒のライダーの令呪というのは、かなり大きな痛手である。

 

「ダーニック。厳しい措置かもしれないが、この程度のトラブルは多発するだろう。少なくとも、今後このユグドミレニアを新たな魔術協会とするならば、もっと厳しい道程が待っている筈だからね」

「……その通りです」

 

 魔術協会三大部門の一つ、時計塔。

 たかが零落した一族の寄せ集めにとって強大過ぎる敵だが、その答えが大聖杯だ。

 時計塔がかつて、その地下で眠る『霊墓』から発掘される様々な成果でもってその勢力を伸ばしたように。

 ユクドミレニアは、大聖杯によって時計塔を上回る。

『霊墓』が危険な発掘作業と、そもそも『霊墓』自体が「巨大極まる竜の遺骸」というモノである以上、発掘できる資材には限度が付き纏う。

 だが完成された大聖杯は、そんな生還するだけで讃えられる様な危険性など有りはしない。

 万能の願望器、その名に偽りは無いのだから。

 

 ルーラーが既に確認済みなのだが、ダーニックの大聖杯への願望は無い。

 本来大聖杯を手に入れた魔術師ならば、その願望は「根源への到達」である筈なのだが、最早ダーニックには『ダーニック・プレストーン』としての人格は殆んど残っていない。

 複数の魂を喰らい、肉体的全盛期を維持する為に彼は『ユグドミレニアの長』としての己以外を犠牲にしている。

 

 そしてダーニックの目的は、大聖杯を旗印にした一族の繁栄そのもの。

 それは願望器で願う類いのものではなく、精々が自分の後継達の一助と思う程度。

 

 であれば成る程、この程度の不利は跳ね退けられねばこの大戦に勝利した後がない。

 逆に考えれば、爆弾を予め発見できたと思えば随分マシである。

 少なくとも黒のライダーが消滅した訳でも、赤の陣営に寝返った訳でも無い。

 少し考えるだけで湧いて出る最悪に比べれば、随分とマシだ。

 

 その程度に事を収めてくれたアラヤに、ダーニックは小さく会釈した。

 それは、一族の長としての冷静さを取り戻す冷水を浴びせてくれたアラヤへの感謝だ。

 その感謝を受け取ったアラヤは、改めて黒のランサーに向き直る。

 

「では───ヴラド三世。貴方の願いを聞かせて貰おう」

「無論、我が名に被せられた汚名の払拭。ただそれのみよ」

 

 ヴラド三世に着せられた汚名───即ち、『吸血鬼(ドラキュラ)』である。

 彼の父の呼び名から派生した小竜公(ドラクル)と呼び讃えられ、基督教最大の護国の英雄の一人とされる。

 

 そんな彼の風評を貶めたのは、一つの創作。

 ブラム・ストーカー作の、ヴラド三世をモデルにしたとされる『吸血鬼ドラキュラ』。

 全世界に大ヒットし、現在の吸血鬼のイメージを作り上げた作品である。

 それこそ、経済対策ではあるもののルーマニアでも吸血鬼を前面に出した商業アピールさえ成されている。

 

「余の生涯に悔いは無いとは言わん。だが、その行いを後世にどのように評されようと文句は無いのだ」

 

 確かに、ヴラド三世の生涯は悲劇的なものだった。

 幼少期から不遇な扱いを受け、王となってからも強大な隣国と売国貴族達に苛まれた。

 それを覆し、領地を護るため悪魔と揶揄される行いもした。

 故に、その行いに恐怖した味方に背中を刺され幽閉の果ての最後であったが────全ては己が行った事なのだから。

 その結果の悪評や汚名は自業自得。ヴラド三世は受け入れるだろう。

 

だが、()()は到底我慢ならん

 

 ミシリ、と彼の手が添えられた椅子が軋みを上げる。

 全く自身に関係の無い、基督教徒としては最も嫌悪すべきものの一つである死体の怪物。

 そんな存在として自分が描かれ、挙句それが全世界に広まっている。

 それこそヴラド三世本人の影さえ歪ませる程に。

 

 意味が分からない。

 執筆者が眼前に現れれば、彼は英霊として持ちうる全てを以て拷問の果てに凄惨な死を与えるだろう。

 しかしそれでも彼の怒りは収まらないのだ。

 身勝手に、理不尽に着せられた汚名を完全に払拭し、人類の歴史上から完全に消滅させる。

 それこそが、ヴラド三世の聖杯に捧げる願いなのだ。

 

 ヴラド三世の怒りに対し、同じく時計塔で風評被害故に通常のアプローチを経て根源へと至る道を閉ざされたダーニックは、深い共感を。

 同じく魔女というレッテルを長年着せられ、しかし全ては承知の上。加えて現代において名誉挽回されたジャンヌは憐憫を。

 そりゃそうだ、と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、当たり前に理解を示した。

 

「黒のランサー。君の第二宝具は禁断の、そして諸刃の剣だ」

「……ッ!」

 

 故にアラヤの口から告げられたそれは、正しくヴラド三世にとっての逆鱗である。

 

「ダーニックも聞いてくれ。その宝具を発動すればランサーの尊厳と君の命を引き換えに、このルーマニアの知名度補正を超える強大な力を齎すだろう。だがもし……万に一つの可能性によってそれが発動され、挙句暴走した場合────僕達ルーラー陣営はソレを討伐対象にする」

 

 ヴラド三世の禁断の第二宝具────『鮮血の伝承(レジェンド・オブ・ドラキュリア)』。

 後の口伝によるドラキュラ像を具現化させ、吸血鬼へ変貌する宝具である。

 その戦闘能力は全世界に波及する規格外の知名度補正と怪物のポテンシャルによって、超級サーヴァントにさえ匹敵する。

 無論、ランサーはこの宝具の発動を何より嫌悪しており、ダーニックにとって令呪による強制は死を意味する。

 だが、世の中何が起こるか分からない。

 

「そう、その宝具の発動は決してあり得ないことじゃないんだ。例えばダーニックが操られたり、令呪が奪われる────なんて状況もあり得る。

 そしてそれが暴走した場合の脅威は、聖杯大戦の枠組みを容易に飛び越えるだろう」

 

 吸血鬼は、人の血を吸うことで眷属を増やす。

 ポピュラーでさえある吸血鬼の危険性であり、同時にバイオハザードを意味する。万が一暴走した吸血鬼が野に放たれれば、どれだけの人間が犠牲者になるか想像出来ない。

 一人でも逃してはいけないし、その吸血対象はサーヴァントにも及ぶだろう。その危険性は計り知れない。

 

「二人とも、本当に気を付けてくれ」

 

 令呪の奪取。

 それは考えて居なかったのだろう。

 アラヤの言葉に頷いた黒のランサーは、自らの口に手を当て思案に耽っていた。

 

 だからこそ、アラヤがダーニックに視線を一瞬向けたことに気付かない。

 そうしてダーニックは一連の忠告の意味を知る。

 

 ─────これは警告だ。

 ヴラド三世に対してではない。彼は死んでも第二宝具を発動することは無いのだから。

 この警告は追い詰められた場合、恐らく躊躇せずに強制するだろうダーニックに対してである。

 つまりアラヤはダーニックにのみ告げられている。

 ────『発動させるのなら、後先を考えて発動しろ』と。

 もし警告通りに、聖杯大戦の枠組みを超えて暴走した場合、ルーラーは全サーヴァントに討伐命令をその特権によって行使するだろうと。

 

 然して、この忠告は特別な意味を持たなかった。

 この大戦の結末を変えることは出来ず、大した変化をもたらすことは無かったのだ。

 しかし、無意味では無かった。

 ダーニックの選択によって、この大戦最後の戦いが一族に有利に関わってくるのだが────。

 とはいえ、彼には関係の無い事柄でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第九話 フィオレ・フォルヴェッジの回顧

 

 

 

 

 

 

 

 ──────フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは魔術師として欠陥品である。

 

 ダーニックの後継者、つまりユグドミレニアの次期当主と目され、一族の中で最も有望視されている才女。

 ユグドミレニアのマスター達の中でも実質的なナンバー2に位置し、その美しい外見に相応しい柔らかさを持ち、そして凛とした物腰はまさに貴人。

 

 そんな彼女には、生まれつき欠陥があった。

 類稀れな魔術の才を有していながら、その歪んだ魔術回路を持つが故に両足は機能しない。

 時に耐えがたい苦痛に襲われ続け、車椅子による生活を強いられていた。

 

 彼女の魔術回路は両足に存在し、足を治療するためには魔術回路そのものを切除しなければならない。

 逆に言えばそれだけで彼女は健全な両足を取り戻せるのだが、逆に言えば両足を取り戻すには魔術師としての才を棄てなければならない。

 そして魔術師の将来を熱望する一族や両親の期待と長子としてのその義務から、フォルヴェッジ家の後継者として魔術を捨てることは許されなかった。

 

 そもそも()()()()()()()()()()()()で、彼女に魔術師としての資質など無かったのだろう。

 彼女は魔術を行使する才に恵まれはしても、魔術師としての資質(非人間性)を持ち合わせてはいなかった。

 彼女の不幸は、そんな非人間性を持ち得ていなかったにも拘わらず、魔術師として自身を取り繕い、時計塔でやっていくことが出来た事だろう。

 例えそれが血の滲む努力によって成され、しかしそれが周囲の魔術師達からは「当たり前のこと」として受け入れられてしまったとしても。

 

 そんな彼女は日々、当然のように心を擦り減らしていった。

 フィオレ自身、その事に気が付かずにいながら。

 

『──────おや、大丈夫かい?』

 

 そんな中、彼女はアラヤと出会った。

 弟や知り合いがいない一人の状態で、車椅子が溝に嵌まってしまい往生してしまったのだ。

 

 魔術を使えば簡単に解決できる小さなトラブル。

 しかし視線を上げれば、丁度フィオレを視る監視カメラの存在があった。

 神秘の隠匿は、時計塔に於ける最重要案件。

 神秘は神秘であるが故に力を持ち、その先に魔術師の到達点である『根源の渦』があるのだ。

 神秘を喪った魔術は、魔術師にとって存在意義を持たない。

 ある意味、魔術の発展以上に最優先されるのが神秘の隠匿なのだ。

 そういう意味では、科学の発展の中でもソーシャルネットワークは致命的でさえある。

 

 当時のフィオレ、というより魔術師全般は電子機器の類いを扱う事を殊更不得手にしており、自動車椅子など当然扱っていない。

 それでも監視カメラで魔術の痕跡が残ってしまうのは、相当な問題であることは理解していた。

 少なくともこの状況で、溝に車椅子の車輪が嵌まる程度で魔術を使う訳にはいかなかったことは。

 

 そんな最中に声を掛けてきたのが、彼だった。

 恐らく、他に善人が通り掛かれば手伝ってくれたかもしれない。

 故に、そこまで珍しい出会いでは無かった。

 アラヤとの出会いは、そんなありきたりなモノだった。

 後に時計塔で再会し、フィオレの足を治せる人物であるなど。

 況してや、信仰に近い思慕を向けることになるなど、思いもしなかった。

 

 それからは、彼女の学生時代に於ける絶頂期であった。

 完治した両足で、野原を駆ける喜び。

 当たり前の事が当たり前に出来る、その事の何たる幸せか。同時にそれを与えてくれた主治医、アラヤに感謝した。

 

 アラヤは魔術師というより、魔術使いであった。即ち、根源を目指していないということ。

 本来根源を目指す魔術師にとって唾棄すべき存在であったが、彼は極めて例外的であった。

 何故なら彼は()()()()。魔術師が敬う事はあっても、低劣な魔術使いと同列視などあってはならない。

 そしてフィオレの感性にとって、魔術師らしくないアラヤは砂漠に出現したオアシスそのものであった。

 話し、傍に居るだけで魔術師として振る舞わなければならない彼女のストレスや負担はどんどん癒された。

 

『それは、そうだね……魔術特性みたいなモノなんだよ。マイナスイオン発生装置だと思えば……え? あぁ、マイナスイオンとはね───』

 

 彼と傍に居るだけで、余りにも直接的な幸せを実感できた。

 魔術師的な思考を持たず、ただの少女の様に扱ってくれる。

 それだけではなく、魔術師として振る舞わなければならない時にも主治医として、あるいは魔術師として様々な助言をしてくれた。

 そんなフィオレがアラヤに対し、思慕するのは時間の問題だった。

 

『────うん、君はもう大丈夫だね』

 

 だけれど、アラヤはフィオレの恋人でもなんでも無かった。

 エルメロイ教室───ロード・エルメロイ二世が学部長を勤める現代魔術科に託した後、アラヤは彼女の傍から居なくなった。

 当然だ。あくまでフィオレの両足の主治医であり、そこから個人的に魔術の発想等の手助けをしていた教師でしかない。

 時計塔に所属していないフリーランスのアラヤが、フィオレの傍を離れるのは必然であった。

 

 未だに彼女にとって最初の『死』であった、最初から殺すために飼っていた愛犬。

 そんな事とは知らずに、飼い犬として愛してしまった時のそれとはまた、別の喪失感。

 

 ────傍に居たい。

 

 恋慕、と安直に表現して良いのか。

 そもそもフィオレには恋愛経験など無いし、身近な異性など最愛の弟だけ。最愛と表しても、あくまで姉弟としての意味合いしかない。

 余りにも強烈な感情に対して、彼女は上手く折り合いなど付けられなかった。

 だから魔術に没頭した。

 漸く両足の不随が完治したのである。

 彼女がそんな両足を使って、より自由に駆ける為の礼装を造ろうとすることは当然の帰結だった。

 

 アラヤに紹介された師の指導が、余りにも長けていたからか。

 フィオレが造った魔術礼装は、何時しかフォルヴェッジの至上礼装等と呼ばれる様になった。

 そんな噂を聴いたのか、アラヤが彼女の元を訪れた。

 フィオレはアラヤの称賛を、麻薬の様だとさえ思った。

 もう一度彼に褒められる。ただそれだけに人生を賭けたくなる程に溺れた。

 

 魔術師にとって、魔術とは根源の渦へと至るための道標。

 故に魔術師は魔術を道具としてしか扱わない者達を、魔術使いと蔑んだ。

 その思想は、父からフォルヴェッジの魔術刻印を受け継いだフィオレにも確り根付いていた。

 しかし、もう駄目だった。

 

 彼女にとって魔術とは、アラヤの役に立つ道具に成り下がっていた。

 

 フィオレが、ユクドミレニア一族の中でも、長であるダーニックに次ぐ能力と立場に至っていたにも関わらず。

 

 優れた魔術師になる。

 全てはアラヤに褒められる為に。

 そんな事を彼が知れば、きっと良い顔をしないだろう。

 

 そんなフィオレの執着とは裏腹に、アラヤは何処か人が自身に縛られる事を望まない節があった。

 子供が独り立ちする事を望む父のように。

 

『─────酷い男だ。人を虜にすることに関して右に出る者が居ないというのに、奴はそんな者達が自らの元を飛び起つ事を望んでいる。挙げ句他の■々の様な人でなしという訳でもない。

 奴は決して、自らに縋るものを見捨てないのだ。これほど人間に都合の良い■は居ないだろう。加えてどの様な悪人であろうと、奴の前では只人に成り下がる。

 次第に悪人は駆逐され、善良な者達だけが溢れ、健やかな環境が形成され────結果、理想郷が誕生するのだろう。外敵が居らず、奴が■として振る舞えば、の話だがな。

 だが、奴は■としてではなく人として民草に接し、外敵から民草を護る為に人として死んだ。遺された者達がどうなるか理解しながら、未来の為に自身の死を最大限利用して。

 そら、酷い男と呼ぶしかないだろう?』

 

 最も彼を望み、結果として外敵となった女はそう答えるのだろう。

 フィオレを指して、よく見た光景だと溜め息を吐くだろう。

 そんな中、聖杯大戦が起こった。

 ユグドミレニアの一員として、その能力故に黒のマスターに選ばれたのだ。

 

 そうしてフィオレは、黒のアーチャーを召喚した。

 彼女が用意した触媒は『青黒い血が付いた古びた矢』。

 場合によっては、射たれた者ではなく射った者が喚ばれていた可能性も大いにあった。

 それこそ最強の英雄であっただろうが───フィオレにとっては、射たれた者こそが最適だったのだから。

 

「こういうやり取りも久しぶりだね。元気そうで何よりだ────お邪魔するよ、フィオレ」

「はいっ、─────ようこそお越し下さいましたアラヤ先生!」

 

 全ては、彼の役に立つ者に成る為に。

 

 

 

 




ダーニック
 その場で切れ散らかすのを、何とか我慢。
 アラヤの忠告に、令呪の使い方の再考を始める。
 
ヴラド三世
 似た境遇の話友達に出会って、本気で機嫌高め。他のサーヴァント共々、本気で生前欲しかった。
 最悪、自分が吸血鬼化したらアラヤに殺して貰おうとか考え始めてたり。

アラヤ
「まぁ、追い詰められればダーニックはヴラド三世を吸血鬼化させるよね」と、現代の魔術師への理解から予想。
 その際追加する令呪如何によっては本気でルーラー案件なので、心からの忠告する。
 ヴラド三世とは本気で友達になりたい。

ジャンヌ
 そんなマスターおる? と極めて常識的にペロニケの暴走に困惑。
 今回はぶっちゃけ空気だった。

フィオレ
 原作からかなり変わった人。本作の■■■の影響をモロに受けたキャラその3
 ちなみにその2はゴルドおじさん。
 アラヤに両足の魔術回路を正常化され、趣味がランニングになった人。
 その為『接続強化型魔術礼装(ブロンズリンク・マニピュレーター)』が完全に別物に。獅子劫さんの負担が増える。
 聖杯大戦に参加した理由は「ケイローン先生に教えを受ける」ことに。
 アラヤの■■■によってストレス解消。
 いい感じに吹っ切れ、ケイローン先生の懸念である「弟と戦えるか?」という問いに、笑顔で「絶対に殺せないけど、ボコボコにして令呪を奪えば良い」と答えられる人に。
 

今回は実質フィオレの回想回に。
実は獅子劫さんという例外を除けば、アポクリファの中でも相当好きなキャラなフィオレさん。
つーかTYPEMOON作品の中でも、一番真っ当に「薄幸の美少女」やってる唯一のキャラではなかろうか。
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