ライスのお兄さまがトレセン学園で働くお話   作:お兄さま第0号

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 勢いだけで作った第一話、後の展開とか何も考えていない。
この作品のライスシャワーはURAシナリオ後となっております。
アニメ版のトレーナー達もちょいちょい登場する予定です。



お帰りなさい、お兄さま

 

 ライスシャワーのトレーナーはお姉さまと呼ばれている。

それはトレセン学園のウマ娘なら誰もが知っていた。

しかし…彼女には、血のつながった本物の「お兄さま」がいるのだ。

これはそんなお兄さまが、トレセン学園で働く話である。

 

 

「お姉さま、おはようございます!」

「おはようライス。今朝は一段と張り切ってるね」

 

 トレセン学園のレース場にて、一人の女トレーナーとウマ娘が話していた。

漆黒の髪を靡かせた小柄なウマ娘、その名は「ライスシャワー」

女トレーナーに走りの才能を見出され、数年前にメイクデビューを果たし多くのレースで勝利を取ってきた人気のウマ娘である。

普段は臆病で弱気な彼女が上機嫌で朝練をしていた。

 

 準備運動を終えて、動きやすい体操服に着替えたライスシャワーが小走りで女トレーナーの近くに駆け寄ってきた。頬を緩ませて微笑を浮かべ、上目遣いで何かを訴えかけるライスシャワー。

上機嫌の理由を察して欲しいのだろうと、数年の付き合いで彼女の声に出さない言葉を察した女トレーナーは、スキンシップの一環でライスシャワーの頭を優しく撫でながら聞いた。

 

「何か良いことがあったのかな?」

「うんっ!あのねあのね、お姉さま。数年ぶりに()()()()から手紙が届いたの!」

 

 ()()()()―――初めて聞いたその単語に女トレーナーは首を傾げる。

一言補足すると、お姉さまと呼ばれている女トレーナーとライスシャワーの間に血の繋がりはない。彼女がお姉さまと呼ばれているのは、ライスシャワーが幼い頃に読んでいた絵本「しあわせの青いバラ」に登場するお姉さまと呼ばれる人のようだったから。

 

 自分に関わる人を不幸にしてしまうと思い込んでるライスシャワーが変わるきっかけをくれた女トレーナーを、ライスシャワーはお姉さまと慕って、女トレーナーも彼女を年の離れた妹のように可愛がりながら、育てるべき大事なウマ娘として接してきた。

 

「そういえばお姉さまにお兄さまの話をするのは初めてだったかな……?お兄さまはね、ライスがトレセン学園に来るよりずっと前に、お父さんとお母さんの前からいなくなっちゃったの。時々手紙はくれるけど、何処で何をしてるか知らなくて……お姉さまみたいに優しくて、とってもカッコいい、自慢のお兄さまなの!」

 

(ライスのお兄さまってことは……私と同じ年か、年下かな?)

 

 女トレーナーが初めて会った時のライスシャワーは中等部、今は高等部でトレセン学園に在籍している。雑な計算だが、2~3歳の年の差と仮定すれば大学生か高卒の社会人ということになるのだろうか?

 

 ちなみに女トレーナーは大学卒業と同時にトレセン学園のトレーナーになった。

研修期間を経て新人トレーナーだった彼女がライスシャワーと出会い、三年間のあいだにPre-OPからG1まで賞を取り、トレセン学園の理事長が開いたURAファイナルズの初優勝まで手にした時は、関係者全員の度肝を抜いた。

数年の出来事に思いを馳せつつ、会話を続ける女トレーナー。

 

「手紙にはなんて書いてあったの?」

「うんっ、あのね……お兄さま海外にいってたみたいで日本に帰ってきてから新聞とかでライスがレースで沢山賞を取ってるって知ったみたいで、お祝いがしたいから近いうちに顔を出すって!お父さまとお母さまのところにもおんなじ内容の手紙が届いたんだって!」

 

 女トレーナーの同期で担当ウマ娘共々交友関係のある「桐生院葵」から聞いた話なのだが、いつの間にか女トレーナーはトレセン学園でも優れた指導者の一人として認知されているらしい。

 

 かの有名なウマ娘のチーム・リギル、そのリギルにも劣らぬ個性的な実力派揃いのチーム・スピカ、二つのチームそれぞれを受け持つ先輩トレーナー達にも実力は引けを取らないとまで言われていると聞かされた女トレーナーは驚きのあまりその場でひっくり返った。

トレーナーになって4,5年の内に担当ウマ娘一人をあっという間にレジェンド級と呼ばれるまでの領域に育て上げたのだから、妥当な評価なのだろうが……。

 

 笑みを浮かべるライスシャワーのウマ耳と尻尾を眺める女トレーナー。

ウマ娘の感情表現は、表情よりも尻尾と耳に出やすい。数年の付き合いでライスシャワーをはじめとする切磋琢磨してきた他のウマ娘も観察して分かったことだが、喜んでいる時は尻尾が左右に大きく振られ、耳がピンと立つ。

 

「早く会えるといいね」

「うんっ!……それじゃあお姉さま、朝練続けるね!」

「授業には遅れないようにね」

「分かったっ!いってきまーす!」

 

 頭を撫でられて更に機嫌のよくなったライスシャワー。

笑顔で手を振りながらレース場の芝を駆けていく彼女を見送った女トレーナーは、ふと先ほどの会話の中で感じた違和感を引っ張り出して思考する。

 

(ライスが小さい頃に家を出てから……時期はどれくらいかまでは分からないけれど、海外で生活していた……?パスポートとかそこら辺の手続きには保護者の協力が不可欠とするなら、ライスの両親は家を出て行った理由を知っている。……何でライスにその話をしなかったのかしら……?)

 

 女トレーナーの中で描かれるライスシャワーのお兄さま人物像。

血の繋がりを持つ家族なら、どこかライスシャワーと似通った点がある筈だろう。

すっかり見慣れたライスシャワーの朝練風景を見ながら、彼女の走るスピードやフォームに目を向けて、ぼんやりとお兄さま像を頭の中で描いていたのだった。

 

 

 場所は変わってトレセン学園近くの駅にて。

朝の通勤ラッシュは東京近くというだけあって人の行き来が激しい。

生半可な歩みでそこに入ろうとする者は吹き飛ばされてしまうだろう。

しかし―――ある一箇所だけ通行人たちが小走りに避けて通っていた。

駅員たちも不安そうな面持ちで、その一箇所を見守っている。

 

「―――――くぁ……ふぅ……」

 

 駅の改札口から少し離れた柱に背を預ける一人の男がいた。

日本人らしい顔立ちにも関わらず、身長2メートルの巨漢。

黒髪をオールバックにして、足元にはスポーツバッグが一つ。

そんな男に視線が集まっている理由は、その顔に刻まれた切り傷である。整った顔立ちを額の右斜め上から左下の顎まで生々しい傷跡がついていた。傷の周りが赤く腫れて、赤黒い瘡蓋があることからつい最近出来た傷だということが分かる。

 

 欠伸を噛み殺して涙目になりながら手元の携帯を眺める男。

背が高いというだけで目立つ彼の顔に、生々しい切り傷が刻まれているというだけで彼を()()()の人間ではないと勘違いする者まで出てくる始末。臆病な駅員は、警察に通報するべきか迷っているくらいだ。

 

「……日本の朝は平和だねえ……」

 

 ぽつりとそう呟いた男はようやく動き出した。

男が手に持っていた携帯に映し出された現在時刻が八時を示したからだ。

足元のスポーツバッグを片手で担いで歩き出す男。

通行人たちはバッと勢いよく道を譲り、駅員たちは固唾を飲んで見守る。

 

「……はぁ~……こんな傷一つで大袈裟じゃね?」

 

 自分が注目の的になっていることを理解していた男。

しかしその理由が男にとって()()()()()()傷一つであり、そんな傷如きで別の生き物であるかのように見られるというのは何とも肩身の狭い思いをしているわけだ。

男の独り言を通行人たちが聞く筈もなく、足早に去っていく。

そんな時だった―――――

 

「きゃっ!」

「ん、おっと」

 

 遅刻しそうな電車通学の小学生の女の子が飛び込んできた。

その手には飲みかけだった蓋の開いたジュースが握られていた為、転倒した女の子の手から離れたジュースの容器は宙で弧を描き……見事に男の服へと中身をぶちまけてしまう。

通行人たちの心臓が凍り付いた。

駅員たちは大慌てで助けに入ろうとするが、人混みが邪魔して進めない。

 

「い、てて……」

「大丈夫か嬢ちゃん?走ると危ねーぞ」

「うん、だいじょぅ……ぶ……」

 

 手を差し伸べられて、それを掴んだ女の子は立ち上がると同時に顔を上げ―――

自分がすっころんで服を汚してしまった相手が強面の巨漢であると気づく。

見る見るうちに青褪めた顔になり、目元にじわぁと涙が浮かんだ。

周りの通行人は助けの手を差し伸べたいが……怖くて声をかけられない。

 

「……ご、ごめんなさい……ッ!」

「あぁ、こんくらい平気だ」

 

 悪いのは駅の構内を走っていた女の子なのだが、絵面的に男の方が女の子を泣かせているように見えてしまい、最初の状況を分かっていない周りから非難の視線が向けられる。

男は苦笑して足元に転がったジュースの容器を拾い上げた。

その時、小刻みに震える女の子に尻尾が生えていることに気づく。

 

「……君、ウマ娘か」

「…は、はひ…」

 

 男は何か思うところがあったのか、女の子の顔をじっと見つめる。

脳裏に過ぎるのは、数年間会っていなかった妹の成長した姿。

あの弱気で臆病だった妹が、日本のウマ娘レースで数々の賞を取ったという記事を読んだ時には年甲斐もなくその場で声を上げて喜んだ男。その時も周りの人からドン引きされている。

いつまでも女の子の顔を眺めている訳にもいかず、男はさっと道を譲った。

 

「引き止めて悪いな。……学校に行くんだろ?早く行きな」

「……で、でもっ…お洋服、汚したから……」

「気にしねえよ、それより落とした容器はちゃんと捨てとけよ?」

 

 女の子に手に中身がほぼ空になった容器を渡した男。

彼が荷物を持って歩き出すと再び道が割れて人が避けて通っていく。

女の子は呆然とした様子で、男の背を見つめ続けていた。

 

「……さぁてと……俺も俺で行きますか――――――トレセン学園に」

 

 

 




 特に書くことが(以下略)
次の前書きか後書きで登場人物紹介します。
感想を沢山貰えたら、更新速度が逃げウマ娘並になるかも…?
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