ライスのお兄さまがトレセン学園で働くお話 作:お兄さま第0号
ハルウララ……ライスシャワーの友人
才能がないウマ娘と言われていたが
あるトレーナーによる指導の下、短距離
ダートにて才能を発揮し、有馬記念にも出走
現在も飛躍を続けている
底抜けの明るさで周囲を笑顔にするムードメーカー
熱血漢……ライスシャワーのトレーナーの先輩にあたる
ハルウララの負けても挫けない姿勢に感動して
彼女の担当トレーナーとなる
某テニス界の有名人のような熱い漢、晴れ男
ライスシャワーからはちょっと怖がられている
「おはようライスちゃん!!」
「お、おはようウララちゃん」
開口一番、朝練を終えて教室に入ってきたライスシャワーを出迎えたのは小柄なウマ娘。
トレセン学園でもっとも周りから愛されるウマ娘、地方ウマ娘達の英雄ハルウララ。
ハルウララは椅子から飛び跳ねるように立ち上がって、ライスシャワーの下へ駆け寄った。
「今朝もトレーニングお疲れさま!今日も楽しかった?眠くならない?」
「う、うん…平気だよ。お姉さまとたくさんお話出来たから……」
「そっかー!ウララもね、朝はトレーナーと一緒にご飯食べたんだよ!」
ハルウララのトレーナーはライスシャワーのトレーナーの一個上の先輩である。
レースの才能がないと言われても挫けることなく挑み続けるハルウララを、短距離では負けなしの差しウマ娘として中央で名を轟かせた。
米食をやけに推してくる事、熱血漢過ぎて居る場所の天候を左右する等の逸話を持っている。
「ウララちゃん、次はオープンレースに出るんだよね?」
「うんっ!トレーナーがね、頑張れ頑張れ出来る出来るウララなら絶対出来る!もっとやれる気持ちの問題だ同期のライスシャワーだって頑張ってるんだから!って言ってくれて、朝ごはん食べた後にデザートのバナナまで買ってくれてすっごく嬉しかったの!」
「あ、朝から元気だよね……ウララちゃんのトレーナーさん」
ライスシャワーも何度か会ったことはあるが、見えない炎のオーラでも纏っているような男のトレーナーに怯えてしまい、いつも女トレーナーの背中に隠れてしまっていた。
情に厚く、涙脆い、何事にも全力で取り組む彼とハルウララの相性は抜群なのだろうが……
ちなみにハルウララが出走予定のオープンレースは襷ステークス。
一番人気ハルウララ、二番人気タイキシャトル、三番人気スマートファルコン。
タイキシャトルもスマートファルコン両名共に実力ではハルウララに引けを取らない。
それでも…とライスシャワーは心の中で確信している。
「絶対に……ウララちゃんは絶対に勝つよ」
「ありがとう、ライスちゃん!
「ね、ネバーギブアップ?」
普段は難しい言葉を使わない彼女から横文字言葉が出てきたことに面食らうライスシャワー。
いつまでも教室の入り口で固まっている訳にもいかず、ライスシャワーは自分の席に座る。
彼女の席は窓際から2番目の列の後ろ側。ハルウララはその隣、窓際に座った。
「トレーナーがウララに教えてくれたんだよ!諦めない気持ちの合言葉だって!」
余談だが教えた時は丁度朝ごはんのタイミング。
ハルウララとそのトレーナーは朝ごはんに納豆を食していた。
近くで食事を取っていたトレセン学園の生徒会長シンボリルドルフが「納豆の感触であるねばぁとNever give upの
それから暫くの間、担任教師がやって来るまで二人のお喋りは続いた。
ライスシャワーとハルウララ、3年近くの付き合いがある2人は大の仲良しである。
*
時を同じくしてトレセン学園の事務所受付前では―――
「そ、それでは此方にお名前記入と……此処に来た理由を簡潔にお願いします」
「ウッス」
受付をやっていた女性は涙目で同僚達にヘルプサインを送っていた。
しかし同僚達も目の前のとんでもない来客に対応するのは嫌だと無言でサインを受け流す。
顔に傷のある巨漢は荷物を足元に下ろして、紙に自分の名前とトレセン学園に来た目的を書いた。
沈黙の間、受付嬢は呼吸をするのもやっとな様子で男が書き終わるのを待っている。
「―――っし、これでいいっスか……ですかね?」
「は、はひっ。確認致しますので少々お待ちをっ」
言葉遣いが見るからに年上の受付嬢相手にマズいものかと思い口調を変える。
しかしそんな事を気にする余裕もなく、受付嬢は差し出された用紙に目を通す。
そして…男の名前の欄を見て思わず心の中で突っ込んでしまう。
(その見た目でこの名前はねーよ!!)
そんなことを口にしてしまえばどうなるか…考えただけで恐ろしいそれを心の中にしまう。
理由のところにおかしな点はなく、受付嬢は男に行き先を促す。
「面接の予定時間は10時半からとなっておりますので、そちらを右へ進んで2階へと上がり、目の前にある応接室でお待ちください。お荷物等は室内に無料貸し出しのロッカーがありますのでそちらをご自由にお使い下さい」
「どもっす。そんじゃこれにて―――」
男が荷物を持ち直し、階段へと上がって姿が見えなくなるまで受付嬢は固まっていた。
やがて足音も聞こえなくなった途端に受付嬢は背もたれに深く沈みこんだ。同僚達が憐れむような視線を向けて来るが、助けに来なかったことを恨んで受付嬢はジト目で睨み返す。
机に置かれたままの用紙を再度見つめてぽつりと一人呟いた。
「これから何度もさっきの顔を見るのかぁ……」
トレセン学園にも一風変わった人、ウマ娘は沢山いる。
事務所受付をやっている彼女達は大抵のことでは驚かないつもりだった。
強面で言えばライスシャワーのライバルと目されるウマ娘のトレーナーが、服装や声のトーンから本物のヤクザと間違われるくらいには強烈だったからだ。
……さっきの男は更にその上をいく恐ろしい存在だったが……
(あの顔も何週間かしたら見慣れちゃうんだろうなぁ……)
事務所の受付という職業故に、或いは中央のトレセン学園という日本屈指の魔境故に―――
慣れという現象に最も親しみを覚えているのは彼女達だった。
そして受付嬢に促されて応接室に向かっている男はどう思っているかと思えば―――
(すっげぇ~……改めて見ると日本の学校て床も壁も綺麗なもんだなぁ……。そらお国のお偉いさんも教育に金が掛かり過ぎるって嘆くわけだ……)
廊下を歩きながら、洋風チックな校舎内の造りを見て感心していた。
ある理由で海外を飛び回っていた男にとって、久しぶりの故郷は再発見と驚きの連続だった。
電車の発車時刻が数分遅れたら謝罪のアナウンスが流れ、喫茶店に入っても人種で座る場所を区分けされることはなく、道端の公園で蛇口を捻ったら出て来る水は飲んでも腹を壊さない。
…事情が特殊な国なら昼夜問わず銃声やら爆発音やら聞こえるところもあった。
久しぶりの日本をゆっくり見て回りたい気持ちが男にはあった。
しかし……それよりも真っ先に、男の脳裏に過ぎったのは幼い妹の姿。
『おにいさま、絵本よんで!』
『今日ね、おかあさまと一緒にレース見にいったの!』
『おやすみなさい、おにいさま』
彼が家を出るという話をした時は、泣きながら妹は兄を引き止めた。
最終的にはしっかりとお別れを言うことが出来ず、置手紙を残して家を出た。
それから5,6年間……何度か生死の境を彷徨いはしたが、彼は日本に帰ってきた。
妹が学園の何処かにいるのなら、大声を上げて探し出すのも面白いかも知れない。
…等と若干危ない考えを頭の片隅に追いやって男は階段を上っていく。
教室の方から元気のよい挨拶の声が聞こえてくる。
男はスマホに映る時間を見て納得の声を漏らす。
朝の8時半、学生達の朝のホームルーム活動が始まる時間である。
ハルウララのURAファイナルズようやく優勝したので登場
名前だけチラっと出ましたがブルボンのトレーナーはアニメ基準です