ライスのお兄さまがトレセン学園で働くお話   作:お兄さま第0号

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真志場 御幸……とりあえずお兄さまの本名(仮)
        女トレーナーさんとの年齢差は一年くらい?

秋川 やよい……トレセン学園の理事長
        喋り方が独特なので書くのが一番大変なヒト(ウマ娘)
        頭の猫を鳴かせたりとかはない
        お兄さまを見ても驚かない数少ない人物



兄妹再会

 

 一時間目の授業は教室での座学を中心に、ゆっくりと進んで終わりを告げようとしていた。

ライスシャワーは机のうえで広げた教科書を閉じて机の中にしまう。シャープペンの芯を替えて、黒板に書かれた内容を書き写したノートに漏れがないか確かめる。

 

 隣に座るハルウララは授業が終わったにも関わらず、教科書を読み続けていた。

彼女は真面目に授業を受けていても、難しい言葉が羅列する問題を前にすると頭を抱えて小刻みに首を回す癖がある。今回の授業でもそれがあって、彼女なりに問題を解こうとしているのだろう。

トレセン学園に入ったばかりの頃の彼女であったなら問題に対する正しい答えを出すことなく、彼女なりの分かり易い解釈で噛み砕いて納得していただろう。

そうしなくなったのは、勤勉にしてバカがつくほど真面目な熱血漢トレーナーのお陰である。

 

 ライスシャワーは微笑み、敢えてハルウララに声をかけなかった。

彼女が必死になって問題を解こうとしているのを邪魔したくなかったから。

ハルウララから視線を外し、窓の外に吹く風に揺れる桜の並木を見つめる。

晴れ渡る青空と太陽の下に……お兄さまも立っているのだと。

 

「お兄さまに早く会えたらいいなぁ……」

 

 ライスシャワーはまだ知らないだろう。

この後の授業が終わって移動教室の際に、その口にした願いが叶うことを。

結局、ハルウララが問題を解いて答えを出す前に二時間目の授業は始まった。

 

「ライスちゃん!次の移動教室まで一緒に行こう!」

「うんっ。………ねぇウララちゃん。アレって、たづなさんだよね?」

 

 移動教室の前の休憩時間、二階の廊下を歩いていたハルウララとライスシャワー。

ライスシャワーが視線を向けた先にいたのは、段ボールを三箱抱えるたづなの姿。

鼻先が少し赤くなっており、表情に何時ものような明るさがない。

気になった二人は顔を見合わせて、ささっと近づいて声をかける。

 

「たづなさん。お荷物運ぶの…ご迷惑でなければお手伝いしますよ…?」

「あっ、ライスシャワーさんにハルウララさん。…いえ!大丈夫ですよ、これくらいの荷物っとと―――」

 

 明るく振る舞おうとするたづなだったが、逆に足元がふらついてしまう。

咄嗟に回り込んだハルウララが段ボールを一つ抱える。

ずっしりとした両手で抱えきれない程の段ボールには相当重いものが入っているようだ。

 

「ウララ、お手伝いするよっ!」

「……すいません、少し先の応接室まで…お願い出来ますか?」

「はいっ」

 

 ライスシャワーがその手に箱を一つ抱えて、ハルウララが先頭を歩き出す。

傍らを歩くたづなが落ち込んだ様子でため息を吐いたのをじっと見るライスシャワー。

ハッとした彼女は申し訳なさそうに笑みを浮かべて訳を話した。

 

「実は今朝、とても大柄な男性の方に声をかけられて……。ただ大柄というだけじゃなく、顔に大きな切り傷のある、なんというかその……大変な強面の方だったので、驚いてしまって…それからも顔を直視し辛くて、頼まれたのにしっかりと事務所まで案内出来なかったので、秘書である自分に不甲斐なさを感じてしまって……」

 

「体の大きな……男の人?」

 

 パっと思いつくのはライバル、ミホノブルボンの黒沼トレーナーである。

サングラスに黒い帽子と、ドスの利いた低い声が特徴的な黒沼トレーナーだが実際に面と向かって話をしてみると面倒見の良い優しい人であると分かった。

たづなの話を聞いたハルウララは、顔に傷と聞いて「痛そうだね!もしウララが会ったら絆創膏あげなきゃ!」と言っていた。

 

 しかしたづなは黒沼トレーナーとも普通に話が出来ている。

そんな彼女が驚くくらいなのだから、相当な人物なのだろう。

 

 

 

「歓迎ッ!私がこの学園の理事長を務めている、秋川やよいである!」

「……あッ、こいつぁご丁寧に……どうも」

 

 応接室で暫く待っていると、勢いよく扉を開けて入ってきた者がいた。

幼い日の妹くらいに小さな体で、頭に被った帽子のうえに猫を乗っけた子供。

秋川理事長がソファーに腰かける前に「自己紹介!」と書かれた扇子をバサッと開いた。

 

「確認ッ!君が学園の用務員応募枠に募集した者で合っているかね!」

「送付した書類と、そこに映る写真の顔が俺であるなら。間違いないかと」

「ふむっ……」

 

 言われるな否や秋川理事長は机の上に置かれた茶封筒を開く。

それは予め応接室に準備してあった、今回の面接試験を受ける者の提出書類だ。

 

「真志場 御幸君ッ!二十四歳・男性!身長・体重プライバシーの為秘匿ッ!都内の公立高校卒業と同時に国連が推奨していた国際ボランティア活動に参加ッ、以降五年近く世界中を転々としていたと経歴に書いてあるな!志望動機、特に無しとっ!?」

 

「ん、合ってますよ。マシバでもミユキでも、好きに呼んで下さい」

「ではマシバ君に敢えてこの質問しよう!志望動機がないのは何故かッ!」

 

 顔に傷のある巨漢…ミユキは困った様子で頬をポリポリと掻いた。

先ず第一に困惑する。目の前の五、六年前に離れたっきりの妹と大差ない年齢くらいの幼女が就職先の理事長を務めているということ。

次にそんな可愛らしい見た目からは想像も出来ない独特な喋り方と威風堂々な振舞いに驚かされた。

 

「正直、高卒で数年間ボランティアだからって綺麗なお題目だけでちゃらんぽらんに生きてきた俺じゃマトモな企業務めなんて難しいと思ったんで……丁度その話を海外のボランティア先で仲良くなった同僚達にしたら、日本のトレセン学園は文字通りの人外魔境な職場だから、お前みたいなのは意外に天職かもしれんぞって言われて……」

 

「心外ッ!我がトレセン学園はそんな恐ろしい人外魔境などではないッ!全てのウマ娘達に等しく夢と希望を与える安心できるアットホームな場所である!」

 

 世のブラック企業を知る者達からすれば、信用してはいけない単語のオンパレードである。

しかし…とミユキは心の中で応募条件に書かれていた内容を思い出す。

雇用形態は住み込みのアルバイト、衣食住の保障もある他賞与や長期休暇もある。

給料も大卒が貰える初任給の倍以上、昇給等もあるという。

要求される資格等は特にない。強いて重機の免許や栄養士などあれば良しというところ。

 

「俺にとっちゃマトモに働くのはこれが初なんで……スイマセンけど、やっぱ志望動機って言えるほどの建前はないっスね。強いて雇用条件がかなり良いからとしか」

 

「直球ッ!?しかしそういう裏表のない言葉の方が信用も出来るというものか……」

 

 秋川理事長は渋々納得してソファーにぽすんっと座り込む。

見た目で分かる華奢な体を簡単に受け止めるソファー。その一方でミユキの座る方のソファーは彼の体重を支えんと、柔らかいクッションが皺を伸ばして深く沈みこんでいた。

 

「では志望動機についてはこれくらいにして……今後についての話をしよう!」

 

 次に開いた扇子には「面接開始!」と大きく書かれていた。

思っていた(雑誌等に書かれている)面接の風景とは違う状況に首を傾げるミユキ。

まぁ堅苦しい会話よりはこっちの方が楽でいいかと頬を緩ませる。

……そして秋川理事長が自分を見て怯えなかったことにちょっとだけ喜んだ。

 

 その時である。

コンコンコンッと扉を叩く音が三回、秋川理事長が「入れ!」と声をかけた。

ガチャリとドアノブが周り、反射的にミユキも顔を向ける。

 

「理事長、本日の用務員試験採用の方のお荷物をお持ち……しました―――」

「わぁっ!本当にたづなさんの言った通りだ!顔におっきな傷ー!」

 

 先頭に入ってきたのはトレセン学園の正門で声をかけた女、たづなである。

彼女もまさかミユキが用務員枠で応募した人間だとは思わなかった。その強面が若干脳裏に焼き付いて、次は驚かないようにしなきゃと思った矢先に目を見開いて言葉を失ってしまった。

 

 その後ろからぴょこっと入ってきたウマ娘が二人。

ピンク色の髪を揺らしてミユキをまじまじと見つめる小柄なウマ娘ハルウララ。

そして――――――

 

 

 

「……お兄さま……?」

 

 

 

 ドクン!とミユキとライスシャワーの心臓が大きく跳ねた。

視線が交差して、互いの脳裏に幼い頃の光景が白黒映像となって蘇る。

 

 ライスシャワーの記憶、泣きじゃくって部屋の隅に蹲る自分を撫でる兄の手と笑顔。

ミユキの記憶、泣き疲れて眠った妹の額をそっと撫でて涙を押し殺して家を出た自分。

あれから五年も経った。

 

 目の前でソファーに座る男はたづなの話した通り確かに強面で顔に傷がある。

しかしどれだけ顔つきが変わっていようと、血の繋がった兄の面影がそこに残っていた。

 

 手に持っていた段ボールを落としたことにも気づかない黒髪のウマ娘。

黒い帽子と造花の青いバラ、五年前から変わらない妹の好きだったものがある。

 

「…ライス、ライスシャワー……?」

 

「~~~ッお兄さまっ!!!」

 

 一目散に駆け寄ってきたライスシャワー。

ソファーから立ち上がったミユキは両手を広げて彼女を迎える。

大きな大きな彼の両腕に、すっぽりと収まる小柄なライスシャワーの体。

ウマ耳は不規則にピコピコと跳ねて、尻尾をブンブン振り回す。

 

「ライスシャワー!!!」

「お兄さま、お兄さま、お兄さま――――うぐっ、ふええぇっ!!」

 

 力いっぱいミユキの体を抱きしめて、ライスシャワーは喜びのあまり泣き出す。

ミユキは満面の笑みで彼女の後ろ髪を優しく撫でつけ、背中をポンポンと叩いていた。

突然の兄妹の再会に、秋川理事長とたづな、ハルウララですら驚いて固まっていた。

 

「お前ッ、ライス!五年のあいだに大きくなったなぁ…!」

「お兄さまも……だよっ……!ずっと…ずっと会いたかったよぉっ……!」

 

 それから暫くのあいだ、兄妹は再会の抱擁を続けていた。

五年間の孤独を埋める作業が、掛かり気味にスタートを切ったのだった。




 お兄さまがトレセン学園に来た理由……用務員になりにきた。
今イベのエルとグラスも気になるけど、新ウマ娘を待つ今日この頃。
エイシンフラッシュとかエイシンフラッシュとかエイシンフラッシュとか
あと実装されるかは分かりませんが、ディープインパクト、オルフェーヴルも
(初期ウマ娘のPV見て一番ビビっと来たのが二人だったから)
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