転生は好きな『物語』でした 二世代目   作:二世代目シャトス

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長期間開けての一発目。でも続きだから32話です。

どうぞ


CHAPTER3表情のない女    続き
利害の一致


電気システムがイカれている真っ暗闇のなか、5本の光が長い廊下を射していた。そう、縄張りを作っていた集団と手を組み、怪異を倒すため結成した俺たちチーム『怪異症候群』である。え、いつからそんな名前になったって?今です。

 

バリケードをどかす音が鳴り響く。音で怪異が寄ってくるかもと思ったが、連中が言うには大丈夫なみたいである。さっきまで敵対していたために、こいつらのことを信用することはできない。が、怪異から生き延びた俺たちをわざわざ殺すような真似はしないとも思っている。

 

「バリケードをどかした。先頭は俺が行こう」

 

そう言ったのは筋肉野郎だった。しかし意外だな。危険な役割は俺たちに任せると思っていたのに…。嫌いのことは嫌いな奴に任せるのがセオリーの俺にとっては、イマイチ連中の考えていることがよくわからん。大方、戦闘面で使うとかだろう。

 

俺はどかされたバリケードを見て呟く。

 

「しっかしまぁ随分と雑なバリケードだな」

 

ガムテープが剥がれている後があったり机とイスが乱暴に置かれていてりと、とにかく適当に作りましたよ感がにじみ出ている。

これに反論したのは筋肉野郎の取り巻きだった。

 

「そこのバーサーカー女がぶち壊したからな。修理がまだ追いついてないんだよ。せっかく頑丈なの作ったのによう」

 

「そ、それはすみませんでした…。急いでいたものなので、結構手荒にしてしまいました」

 

「あんたのせいでバリケードの一部がいかれてしまったぜ…」

 

えなにそれ怖い。確かに上からはものすごい音が聞こえてきたけどさ、まさかそんなことになっていたなんて…。しかもこれよりももっと丈夫なやつだって?小野さん強すぎん?これから出る怪異全部小野さんがしたほうがいい気がしてきましてよ、僕…。

 

小野さんが取り巻きの顔を凝視する。取り巻きよ、たとえそれが正しくても言ってはいけないことがあるのだぞ?特に小野さんには。俺?とっくの前にアイアンクローを食らいましたね。あれはとても痛かった。

 

「………そういえば、まだあなた達の名前を聞いていなかったわね」

 

およ、まさかのそっち?いや確かに名前が分からなくてモヤモヤするのも分かるけど…。俺はてっきりあの男にも天誅を下すのかと思っていたよ。

 

というか、実のこと俺もそこについて同じこと考えてたわ。色々と衝撃的なことが起こりすぎて結構重要なこと見逃してました。でも仕方ないよね。ここに閉じ込められて5か月は経っている気がするぐらいだもんな、忘れることぐらいあるある。

 

「……それもそうだな。名前が分からないのは面倒だし、軽く紹介しよう。まず俺からだ。俺の名は剛力武蔵、ボスの右腕だ」

 

時間を無駄にしたくないのか、はたまた目立ちたいのか(おそらくないだろうけど)先に自己紹介をしてきた。その次に、取り巻き二人がそれぞれ口を開く。

 

「俺の名前は佐藤健っす」

 

え、語尾にッスをつけるタイプの人なのか。今そのこと初めて知ったよ。

 

「俺の名前は田中利弥だ。さっきは失礼なこと言ってすまんな、看護師さん」

 

頭こそ下げなかったが、今までの非礼を詫びたいようだ。力の差を見せつけられて勝てないと思うのは自然な流れ。カッコつけて挙げてる右手が若干震えてますよ。

 

「田中利弥さん、ですか…覚えておきます」

 

小野さんが小声で素早く言った。小野さんの後ろにいた俺にだけ聞こえたのか、他は気にしていない様子。小野さんがそのうち闇討ちでもしそうな気がして怖いです。

 

 

 

 

 

「っ…」

 

怪異を探しにエントランスへと足を運んだ俺たちだが、あまりの光景に息をのみ立ちすくんでいた。

 

「ひ、ひどい......」

 

姫野さんが俺の袖を強く握っている。俺は思い切って姫野さんの手を握った。いつもなら顔を赤らめて軽く振りほどこうとするのに、今は震えしか伝わってこなかい。

無理もないだろう、目の前には怪異がしたとしか思えない非情と元は人であったものがあちこちに散乱していた。

 

「う...臭い……」

 

「何なのよ、これ...」

 

あたり一面は赤で染まっており、密閉された空間に漂うのはものすごい刺激臭。腐敗臭なんてほとんど嗅いだことなんてなかったので、大げさに顔を覆ってしまう。どうやらそれは俺だけではなく、ほかの皆も同じことをしていた。怪異の事件を長く担当してきた氷室さんや加賀ちゃんですら、このざまである。吐かなかっただけでもよく我慢したほうだろう。

 

何とか気持ちを落ち着かせ、照らされている光景を注意深く観察する。見ているだけで吐き気を蒸し返してくるが、なんとか我慢する。

 

「これは…生存者は絶望的だな」

 

「そんなことはない!……と思います」

 

姫野さんがあきらめたくないという顔で金城の顔をにらみつける。しかしこの光景を目にして自信があまりないのだろう。目を伏せてしまったのが物語っている。

 

しかし俺も剛力に同感だ。人間だったものだとしか判断がつかない残骸がひどく散乱しているのだから、ここで起きた殺戮は相当なものだっただろう。生きろというほうが難しい話である。

 

「すみません氷室さん、懐中電灯を少しの間だけ貸してもらえませんか」

 

「少しの間だけなら構わないが…何をするつもりなんだ?」

 

「少し探すものがあるんですよ。大丈夫です、一人で無茶したりするとかどっか行くとかじゃないんで」

 

そういうと氷室さんは顔を顰めた。俺には前科があるので仕方がないが、ここは納得してほしい。そう言おうとすると、思わぬとこから助け舟が出た。姫野さんである。

 

「氷室さん。ここは引道くんを信じてみてはどうですか?」

 

「姫野君…」

 

「確信はありません。ですが、私は彼がすることをどうしても間違ってはいないと思えてしまうんです。心配なら私が付いていきますし、私たちの後ろを照らして観察するのでもいいです」

 

「美琴…私も着いていくわ、氷室さん。美琴をこんな変態と一緒するほうがよっぽど心配だもの」

 

姫野さんが何やら意味深なことを話していると、それに付け加えて神代さんが加わってきた。表向きは姫野さんを俺と一緒にしたくないと言っているが、本当は俺のことも心配してくれているんだろう。そうだろう?そうであってほしい。

 

「神代君まで…。分かった、引道君を信じよう。方法は先ほど言った、姫野君のを採用する」

 

「っ……あ、ありがとうございます氷室さん、姫野さん。それと神代さんも」

 

「私がついでみたいな扱いをあんたから受けるのは癪だけど、別にいいわ。美琴と一緒にいるのが私のすることだもん」

 

これがツンデレなのか?多分そうなのだろうが、こちらを見つめてくる目線が怪異のそれとよく似ている。ごめんなさい神代さん、めちゃくちゃ怖いです。

恐らく俺たちはここいらの遺体から流れ出る血液を踏み荒らしているんだろう。足元の感触がとても気持ち悪く、歩きづらい。

 

「んで引道。あんたはいったい何を探しているわけ?」

 

「え、ええと…懐中電灯だよ。できれば二本欲しいな」

 

ぴちゃぴちゃと不快な音を立てながらこちらを見てくる神代由香さん。本人は普通にしているつもりなのだろうが、開ききった眼光で見られれば当然委縮してしまう。あれおかしい。神代由香ってこんな感じのキャラだっけ?ホラー要素詰め込みすぎじゃないすかおしっこ行きたくなってきたよ。

 

神代さんは俺の考えを聞くと相槌を打ち、突然そこらの遺体、残骸を捜索し始めた。肝っ玉座ってんなあ最近のJKは…。お兄さん今でも恐怖してるのに。…年下だけど。

 

「あ…なんかあったよ」

 

しばらくして、神代さんが何かを見つけたみたいだ。目を凝らしながら手元のものを見つめている。

 

「何がありました?」

 

「んー…、鍵と紙。鍵は資料室みたいので、紙には番号が書かれているわ」

 

どうやらこれは結構な収穫みたいだ。この世界はゲームから発生した次元であり、神代さんが見つけた手掛かりは、決して意味がないわけない。資料室に紙の番号…俺が苦手とする感じの謎解きになってきたかも。

 

「資料室かー。……念のために、持ち主の名前教えてくれませんか?」

 

「ならちゃんと照らして…あった。『真司誠也』だって」

 

「ありがとうございます」

 

この名前が何に使えるかは分からない。でも足りなくなってまたここに戻ってくるのは危険なので、できるだけの収穫はしたい。やることが増えたな…、早く見つけて資料室に行くか。

 

前を見れば俺たちの影が長く揺れている。後ろで姫野さんたちが照らしていてくれているお陰だ、すごく見やすい。仲間が待っていると思うと早く戻りたくなってくる。俺だって好きで神代さんと一緒にいるわけじゃない。…じゃなくて、散策してるんじゃない。早く見つけて戻ろう。

 

「ねえ引道くん」

 

「どわひゃああ!?」

 

突然かけられた声に驚いた俺はまた情けない声を出した。忘れてたぜヒロイン。ごめんなさい、失礼でした出直してきたいです。今まで神代さんと会話してたもんだから、姫野さんが完全に空気と化していた。

 

「ちょっと失礼でしょ!美琴を忘れるなんてどんな神経してるの!?」

 

「す、すみません姫野さん…」

 

「う、ううん。集中してたんだから仕方ないよ」

 

ああ、こんな俺でも許してくれるなんて…あなたは聖女ですか!?いや、人間超えてもはや天使だな。大天使コトミエルがいる限り俺あり!

 

「間違えたことを都合のいいように考えるのって私嫌い」

 

「急に現実に戻すなよ。もう少しで大天使コトミエルとあんやこんや出来そうだったのに―――ぐはっ!」

 

「そういうの気色悪いんだよ!あんたなんかが考えることじゃないでしょ。気になる子の振り向かせ方でも考えときなさいよ」

 

「好きな子は今ここにいるじゃないですか。でも安心してください、追いかける股は一つだけですから」

 

「それがダメなんでしょうがぁ!?」

 

「げぼばぁ!」

 

素晴らしい御託を並べていたら、小野さんには劣るものの結構痛い拳が腹を襲った。こみ上げてくる汚物を喉の奥で塞き止めながら神代さんに抗議の目を送る。

 

しかし私は悪くないと雰囲気で主張している神代さん。この後どう仕返ししてやろうかと考えてると、姫野さんが急に後ろに倒れた。

 

「っ!美琴!!」

 

これにいち早く対処したのは悔しいが神代さんだった。俺は彼女のせいで動けなかったので仕方ない。…いややっぱり不甲斐ないか。言い訳してごめんなさい。

 

「ううん、私は大丈夫。たまたまクッションみたいなのがあったから何とも――」

 

そこまで言葉を発した姫野さんが、急に怯えるかのように神代さんに抱き着いた。声が出ないほど怖いことがあったのか、体は震えており強く目を瞑っている。

 

何に怯えたのか、それを言うよりも早くに理解することは簡単だった。別に怪異が出たからではない。もしそうだったとしても、ひとりかくれんぼやくねくねを倒してきた姫野さんにとっては、皮肉な話だが耐えられると思う。だが、そこを掘り返してみれば似たような場面はいくつかあった。うち一つが、『他人の死』である。

 

「っ……ほらやっぱり。こんなん俺でも驚くわ」

 

神代さんに姫野さんを介抱させ、原因をゆっくりどかす。気持ち悪い感覚が体の芯を刺激し、臭いで退散してしまいそうだ。

 

下半身だけしかない判別不可能な遺体を少し隣にずらすと、遺体のポケットから固い何かが落ちる音がした。姫野さんがこれに驚き体をビクつかせる。うーむ可愛い…今すぐ神代さんと変わってほしいぐらいだ。くそ羨ましい奴め!

 

手に残る不快感をズボンでふきふきしながら懐中電灯の光を音の発生源に向ける。

 

「おっと、まさかこんな形で見つけるとは。運が良いんだか悪いんだか分かりませんね」

 

「…何よ、こっち見て」

 

「いえなんでも」

 

正確には二人を見ていたが…思ったことを素直に言うとめんどくさい展開になるのでひとまず胸にとどめておこう。しかしお目当てのものは見つかった。欲を言えばもう一本欲しいところだが、深追いするとロクなことにならないことは分かりきっている。目当てのものが出なくて金をつぎ込むガチャラーを俺はたくさん見てきた。むろん俺もそのうちの一人で、推しキャラのストラップが出るまで回し続けたのだが、やっぱり300円は高いよ…。

それに早く戻らないと氷室さんたちが心配するからな。あのイケメンの眼光は出来れば見たくない。怖いもん。

 

懐中電灯を拾い上げると、神代さんたちに伝え戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり。どうだ、見つかったか?」

 

「はい。待ってくれてありがとうございます」

 

「礼は不要だ。君たちを守るのが俺の仕事だからな」

 

くそ、かっこいいじゃーねえか。なに?イケメンスマイルは男子にも効くの?今度俺にも教えてよ、クラスに気になる子がいるからさ。…まあ戻れないんだけどねハハッ!

 

姫野さんも調子を取り戻してきたらしく、一人で歩けるようになっていた。声を掛けようかと思ったが、あまり気にしすぎるのも負担だと思いやめた。

 

「しっかし懐中電灯かぁ。確かにこれなら危険は減るなぁ」

 

「でしょう?これは自分が持っていていいですか?」

 

「変なことに使わないなら構わない」

 

へ、変なことね…。別にこけた拍子に姫野さんのパンツを見ようとか、神代さんのパンツを見ようとか、小野さんの破れている隙間から見えるパンツを見ようとかしないのなぜこうも疑われるのか、全くの疑問ですね。

 

まるでパンツに支配されているかのような俺の脳みそはお花畑と化し、赤い液体で染め上げるところだった。その寸前で蓋をしてくれたのは神代さん。さっき見つけた暗号っぽいのを皆に見せろと胸倉を掴まれましたね。ありがとう、おかげで俺の名誉は守られたよ。

 

「引道君どうしたのかな…。どこか具合でも悪いの?」

 

「美琴は気にしなくていいことだよ」

 

姫野さんに心配されてるのを愉悦に感じながら、先ほど見つけた鍵と紙を皆に見せる。

 

「小野さん。資料室がどこにあるか分かりますか?」

 

「はい。エントランスの左をまっすぐ行くとあります」

 

わーお…。まただいぶ歩くのかよ。安全地帯からも結構離れることになるし、もし逃げることになったら何人か死にそうな気がするんだが。早くもおうちに帰りたいです。

 

「引道君、だっけか?」

 

「はい、そうですが…どうしました?」

 

氷室さんや剛力に次の目的地を話していると、小野さんに喧嘩を吹っかけていた佐藤さんが話しかけてきた。金髪が輝いて見えるぜ半端ボーイ!...俺よりも年上なんだけどね。

 

「俺たちの目的はバケモンを倒すことっス。資料室に行く意味が分らないっスよ」

 

話し方に好感の持てる佐藤さんが肩を上げる。んまあ言いたいことは分かるし、そっちのほうが手っ取り早くて楽だろう。でも…

 

「出来るだけ障害なく勝ちたい。そういうことだろぉ」

 

「だな。何分相手は未知数だ。調べられることがあるなら知るに越したことはない」

 

俺の言葉を代弁したのは加賀ちゃんだった。それに同意したのが田中さんだった。彼らも俺と同じ考えなのだろう、紙に書いてある暗号の使い道に予測が経っていると見える。

 

味方である田中さんにまで言われたなら、もう言い返すことはない。佐藤さんは不本意そうな顔をしてケータイを見始めた。気になった俺はそろりと背後に回り込みケータイを盗み見る。

そこにはド派手なギャルと佐藤さんが仲良く肩を組んでいる画面が開かれていた。

 

「ちょちょ!?なに勝手に見てんスか!」

 

俺が見ていることに気が付きいた佐藤さんは、あたふたとしながらも急いで画面を落とした。

 

「お似合いな感じでしたよ。彼女さんですか?」

 

「ま、まあそんなとこっス。…俺が怪我して一番心配してくれたのはこいつだけなんスよね。だから早くここを出てあいつに会いたいんス!」

 

おい待て。今なんて言った?彼女に会いたいだと?

俺の胸を荒らす焦燥感を知ってか知らずか、佐藤さんはこれでもかというほど彼女自慢?をかましてきた。

 

「ちょっと前に足を怪我しちゃって、それで彼女との結婚日時が伸びたんスよ。なんで今か今かと待ってるんス」

 

「へ、へー…」

 

「すごくロマンチックですね!愛人の帰りを待つのってカッコいいじゃないですか!」

 

先ほど起こったことはもう気にしてないのか、気の変わりようが早い姫野さん。前に健司から女は恋の話になると止められないと愚痴っていたが、まさにこのことだろう。姫野さんが嬉しそうに胸の前で両手を繋いでいる。

 

マズい。これは非常にマズい。どれくらいマズいかっていうと、一人ぐらい死んでもおかしくない気がするほどにマズい。

 

氷室さんに早く向かいたいと言おうとすると、氷室さんも悩ましい顔をしていた。いや、氷室さんだけではなく、他の人を見ると大体の人が同じ顔をしていた。

 

「佐藤の彼女さんは見た目こそ悪だが良いやつだ」

 

「あ、おいこら利弥!そこまで言わなくてもいいじゃねえか!」

 

「お二人とも仲がよろしいんですね。けれど由香との仲の深さなら負けてないかな?ね、由香!」

 

「そ、そうね、美琴…」

 

盛り上がっている姫野さんとは違い、神代さんはお世辞にもいい笑顔とは言えないほど引きつっている。彼女には今の現状が見えてるに違いない。話に積極的じゃないのが何よりの証拠。

 

俺はこそっと神代さんに近づき耳打ちする。

 

「これ、止めないとまずいんじゃないですか?」

 

「引道。私、あんたのこと嫌いだけど今考えてることだけは一緒でもいいわ。…早くこの場を離れたい…」

 

やはり神代さんは理解していた。死亡フラグがすでに建てられていたことに…!

 

氷室さんや加賀ちゃんが浮かない顔をしているのは、こういったことをしだすとロクな目に合わないと考えているのだと思う。今まで怪異の事件を担当してきた彼らには感じるのか。急に迫ってきた死神の鎌が俺達の誰かを刈るのだということを。

 

「はいはーい!!時間が迫っているので早く移動しますよー!静かにして小野さんについてきてくださいね」

 

結構危険だが、大声を出してこの場を収めることに成功した。流石にこれは仕方ないと思ってくれているのか、氷室さんたちは何も言わないでくれている。姫野さんは少しむすっとした顔で睨まれました超理不尽。でも可愛いから許します!

 

 

 

 

 

 

 

「…ここです」

 

俺の言いつけ通り、一言も話さなかった俺たちは難なく資料室にたどり着くことが出来た。

鍵はどうやら開いているらしく、剛力と加賀ちゃんが先行を切って部屋に入る。一通り照らし見て何もなかったので、俺たちも入ることにした。

 

「ここは…綺麗というよりも、普通ですね」

 

「ああ、血痕が一つもねえ。なんだここ…不気味だな」

 

皆がそう思うのも仕方ない。むしろ今までが酷過ぎたのだ。田中さんが不気味というのも頷ける。鍵は開いていたんだし、誰かが逃げ込んでもおかしくはない位置にある部屋だ。明らかに何かあるとみていいだろう。

 

それに見つけた鍵の意味もなくなってしまった。神代さんのことを過信しすぎたのか、それとも―――。

 

「それで、そのパソコンの持ち主は誰ですか?」

 

「ええと確か、真司誠也という名前でした」

 

「真司君、でしたか…」

 

彼の名前を聞くと小野さんは少し暗い顔をしたが、すぐに歩きだして案内してくれた。

さっきあんなことを言った手前、言い出しにくいことではあるが…気になる!もしかしたら好きな人なんじゃないかって。

 

自分の気持ちを抑えずにいられなくなった俺は、控えめな声で小野さんに聞こえるように質問した。

 

「小野さんは、その真司さんのことを知っているのですか?」

 

結構踏み込んだ質問だったのか、小野さんが珍しく動揺している。返答に数秒かかったが、素直に答えてくれた。

 

「……彼は私の後輩です。先輩である私をとても慕ってくれていました」

 

「そう、ですか…。すみません、失礼なことを聞いて」

 

「失礼ではありませんよ。むしろ男の子なら気になっても仕方ないですからね」

 

清々しそうな顔で真司さんのパソコンを起動する小野さん。慣れた手つきで次々とフォルダを開き、紙に書いてある文字――パスワードを入力をした。

くそう、こっちの考えはバレてたんかよ恥ずかしい。

 

「おい佐藤、廊下には誰もいないよな?」

 

「はい。足音一つ聞こえないっス」

 

入口の見張りは佐藤さんと田中さんに任せている中、パスワードの読み込みが完了したフォルダが開いたのは…俺たちを驚かすものだった。

 

「なっ…!!」

 

「こんなことを調べていたのか…」

 

「どうして彼が…」

 

全員が画面にくぎ付けになっているのは、『都市伝説 赤い女』について事細かに調べられている資料だった。流石にこのことは知らなかったのか、小野さんもたじろいでいる。

かくいう俺も、いやらしい事を考えるほどの余裕を今は持っていなかった。

 

「小野さん。俺たちに話してくれた『赤い女』についての事は、もしかして真司さんから…」

 

「は、はい。真司君から教えてもらいました。彼、落ち込んでいるときによくこの話をするんです」

 

「そ、それはまた不気味な...」

 

氷室さんが小野さんから聞き出した真司という男の話。急に現れた謎の人物に時間を割くにもいかないので、急いでフォルダを確認する。

 

しかし見事なもんだと褒めたいほどまでに、赤い女についての詳細が記述されてある。見るほど興味が引き付けられるほどに。

 

「「す、すごい…」」

 

姫野さんと神代さんが声をそろえて言った。画面を見つめる氷室さんと加賀ちゃんの目は開きっぱなしだ。ドライアイになりますよと言いたいが、そんなことすらいえないほど張り詰めた空気。高校の面接でもここまでではなかったろう。

 

 

赤い女の発祥については勿論。その特性や見た目、そして―――彼女の生前についてのことまでが書かれていた。

 

まるでそう…赤い女と面識があるかのように―――。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでくださり、ほんっとーに!ありがとうございます!!
え、うぷ主失踪疑惑が出ている?まあ確かに最近はあまりというかよくないことが多々ありめんどくさい日々を送っていましたが…。詳しいことは活動報告のとこに書いてあるので、そちらをお願いいたします。書き溜めをしていたのでとんとん拍子で進むと思いますゆえ、どうぞ気長に付き合ってほしいと思います。

それと、活動報告にも載せていますが、スマホが変わりもして...データがすべて吹っ飛びました。なのでこれからはPCを使っての投稿となっていきます。怪異症候群終わらせてないのに早く他の作品が書きたくなってきていますので、もしかしたら新章始まってるかもしれません...。

それだはまた次回でお会いしましょう!ではではー



とはいえ投稿が遅れてすみません。楽しみにしていただいている皆様、本当にすみませんでした。
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