転生は好きな『物語』でした 二世代目   作:二世代目シャトス

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CHAPTER4 能面
最終章に突入だぜ!


 

 

「ただいま戻りました〜…って、ふがぁ!?」

 

コンビニで大爆死してきた俺は、部屋へ入るならいきなりクッションを投げつけられた。いきなりのことで体勢を崩し尻餅をついてしまう。

あ、なんか優しい香り…

 

「ちょっっっと引道?あなたこの非常事態に好き勝手が過ぎるんじゃない?あまり私達を心配させないでよ!」

 

ダン!と仁王立ちしてきた神代さん。すみませんと謝ろうとするよりも早く胸ぐらを掴まれ無理やり立たされた俺は左頬に強いビンタをもらった。

 

「…言っとくけど、悪いだなんて思ってないからね。むしろみんなの気持ちを込めて打った一撃だから、ちゃんと反省して」

 

「は、はいぃ。ずみばぜんでした」

 

左頬がジンジンと痛む。恐らく少し赤くなっていることだろう。だが何故だか、俺の新しい世界が広がったようにも思える。神代さんが自分のために手を上げて、こんなにも近くで話してくれるなんて…やだ嬉しい!

 

素直な気持ちが表情に出てしまったためか、氷室さんと加賀さんが引き攣った笑みを浮かべていた。ははは、冗談やって〜!

 

「まぁ、そう言うことだ。神代くんが言ってくれたのだから、俺からは何も言わない」

 

「ありがとうございます氷室さん。あ、お詫びと言っては何ですが飲み物買ってきたので皆さんで飲んで下さい」

 

手に持っていたビニール袋から様々な種類のドリンクをテーブルに並べる。中には、廊下にある自販機からは手に入らない物まであるから、きっと飲みたくなるはずだろう。

 

「では、ありがたく頂きますね」

 

我先にと、小野さんがカフェラテを瞬時に掻っ攫っていった。夕方の時はブラックぽかったけど、苦くて口直しでもしたいとかなのだろうか…。

 

それから氷室さん、加賀ちゃん、桐崎さん、姫野さん、神代さん。各々にドリンクが行き渡ったところで、最後にビニール袋から塩を取り出した。

 

「それは…塩か。見たところ一般家庭で使われる、ただの食塩だろうけど」

 

「さっきコンビニに行ったのって、コイツが目当てだったんですよ。姫野さん、ちょっといいですか」

 

「うん、なにかな?」

 

姫野さんを前まで呼ぶと神代さんまで付いてきた。いや、あなたはソファでゆっくりしておいて下さい。まだ病み上がりだろうに。

 

「この塩に、魔除けの力を付与って出来ますか」

 

「っ…おい引道、それってまさか」

 

加賀ちゃんが椅子から立ち上がり、こちらへと歩いてくる。恐らくだが加賀ちゃんが考えていることは合っているはずだ。何せ姫野さんは呪術の家系の血が流れている。

そして先の怪異でその力に目覚め、圧倒した。

 

「ふむ、参考までに君の考えを聞かせてもらおうか」

 

「簡単ですよ霧崎さん。今回の怪異症候群。正直警察署にいるだけではまた襲われてしまうと思うんです。特に夜なんかはヤツらの支配領域みたいな物なはず。何で怖くなった俺はコンビニで塩を買い、その塩に魔除けの効果をつけてバリアを作ろうぜって魂胆です!」

 

「考えなかったわけではないが…そうか、塩か」

 

塩。神道にて『塩』とは、死の穢れを祓う目的で使われている。元々塩には腐敗を遅らせる効果がある為、昔の人は穢れを祓い、清いままで故人をあの世へ送っていたのだと言う。

 

当然、死の穢れを祓う程の力がある塩は悪霊の類にも効くとされている。有名な都市伝説『八尺様』の話では、八尺様に魅入られた少年が一夜を過ごす際、部屋の四方に盛り塩をした事により生きて翌日を迎えることができたそうだ。

 

「ただの食塩なんかでは、清め塩よりも期待が出来ません。と言うことで、怪異キラーと化した姫野さんの力で特別な清め塩を作ろうってことです!」

 

むふー!っと自信ありげに胸を張る俺。かーっくいー!!!

え、きつい?すまそんぬ。

 

姫野さんは少し考えた後、出来るよと答えた。

手に持っていた塩を姫野さんに渡すと、ぶつぶつと念仏?俺には分からない言葉で何かを唱え始めた。

 

「はい。これでいいのかな?」

 

ありがとうございますとお礼を言うと、部屋の片隅に盛り塩をする。

原作通りならここで猿夢が来ると思うので、どうにかして払い除けたい。まぁコトノエルのマジカルパワーなら簡単に跳ね除けられると思うけどガハハ!

 

「……引道。急で悪いが、明日の朝に旧神代家へ向かう事になった」

 

「分かりました。ではもう寝た方がいいですよね……盛り塩も終わりましたし、毛布を他の部屋から拝借してきます」

 

「あぁ、分かった。みんなも明日は早い。俺と加賀、霧崎が交代で起きておくから安心して身体を休めておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日

 

「「………」」

 

神代さんと氷室さんが難しい顔をして盛り塩を見ている。逆に霧崎さんは興味深そうに、四方に置かれている『黒くなった盛り塩』を観察していた。

 

「本当に怪異が襲ってきたんだな。いやはや、これは面白い」

 

「でしょう???」

 

あのクソピエロ共の悔し泣きしてる姿がありありと目に浮かぶぜ!どうせなら俺が電車から突き落としてやりたかったなぁ…夢の中なら犯罪にならないし。

 

互いの安全を確認し終えたとこで、『氷室 等』『加賀 剛』『霧崎 翔太』『小野 鈴美香』『姫野 美琴』『神代 由香』。

そしてこの俺『引道 新聖』の計7名により結成されたチーム。

 

最終決戦の場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…由香のお婆ちゃんのお家って、結構遠いんだね」

 

「人里離れた山の中にあるからね。知る人ぞ知る有名旅館!って言われてるみたい。露天風呂からの眺めが絶景だとか」

 

「へ〜…じゃあ今度一緒に行ってみようよ!」

 

「それはダメです!!!!」

 

旧神代家へと向かう車の中、かれこれもう1時間弱が経とうとしている頃。全世界の純愛派が死ぬであろう会話が隣でされていた。

 

先も言ったが、旧神代家はボンボン御用達の高級ラブホテルの面を持っている。勿論、純粋に旅館を楽しみたいと言う人もいるだろうが、そんなのはごく少数派。夜遅くに露天風呂を覗き見してみろ。腰振りアンアンがきっとあるはずだ。

 

「どうしたぁ引道?」

 

加賀ちゃんがニヤニヤしながらこちらを見てくる。くっそ、分かってて揶揄ってるだろいい性格してんな!

俺が強めにダメだと言ったのに対して、気まずそうに姫野さんが聞いてきた。

 

「あの、どうしてダメなの…?」

 

「いや、あの…えぇ。ちょ、神代さん本当に分からないんですか?自分のお婆ちゃんが働いてる旅館の特徴」

 

「んなもん知らないって昨日言ったでしょ。何?あんたは知ってるわけ」

 

あー、これはまずい。NTR絶対許すまじ派の俺は姫野さんと神代さんが旅館で太ったおじさんに寝取られると言う最悪のシナリオを思い描いてしまった。

じゃなくて、墓穴掘ってしまってるわこれ。

 

「いや、その…か、加賀さんなら知ってるかもですよ!ほらっ、加賀さんってジャーナリストだし、きっとサーチ済みですよ!っっね!?」

 

「はぁ!?ちょ、俺は何もし……らぁねぇなあ〜。霧崎が1番詳しいんじゃねぇのか」

 

旧にバトンを渡された加賀ちゃん。華麗に霧崎さんへとパスをした。

 

「ふむ、彼女たちにはいくらか刺激が強い話かもしれないが…いいのか氷室?」

 

「……はぁ。姫野くん、神代くん。旧神代家、神代 伊織さんが勤めていらっしゃる旅館は、少し表では話せないようなことがあるんだ」

 

「表に出来ない話ですか?」

 

「あぁ。あの旅館にはあらゆるジャンルの有名人や社長。代表取締役に議員の方まで、幅広く使われている。人様に話せないような重要な会議の場として使われてると思っていい」

 

おぉ〜。思わず拍手をしてしまった。いやだってさ、上手い交わし方だと思ったわけよ。確かにその面もあるだろうし間違ったことは言ってない。学生相手にドロっとした話を聞かせたがらなかっただろう、と加賀ちゃんが言い淀んでいたのも勝手にそう解釈してもらえる。

 

「こーんなドロっとした話よりも、俺っちが担当した怪異の中で過去一やばかったヤツの話をさせてクレェ!」

 

微妙な空気に耐えきれなくなったのか、加賀ちゃんが過去の武勇伝を語ろうとしている。ナイスだ加賀ちゃん。

 

「この怪異は『ヒサルカ』って言ってな。ある幼稚園で起こった奇妙な出来事から始まるんーーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うげぇ…気持ち悪い」

 

「うん。強烈、だったね」

 

「私、もう結構キツイんだけど?」

 

あれからさらに数時間が経過し、目的地である旅館へと辿り着いた。車から降りた高校生ズ。俺含めみんなの顔色は優れない。と言うのも、加賀ちゃんが話した『ヒサルキ』が思った以上にえげつなく怖かったからである。

 

いやいや、加賀ちゃんの話し方もまた凄かった。読み聞かせ絶対向いてるよあれ。

 

話のウケに満足したらしく、悪い悪いと笑いながら車から降りてきた。

……あっ。氷室さんにちょっと怒られてる。草にゃ。

 

「皆様、ようこそ……。わざわざ遠くからご苦労様です」

 

ジャリジャリと、小石が擦れる音が聞こえてくる。視線を向けると、そこには神代 伊織であろうお婆さんがいた。

 

代表として氷室さんが一歩前へ出た。

 

「先日の息子さんの事件につきましては…お悔やみ申し上げます。ただ今、全力で調査中ですので、調査報告書が出来上がり次第、機会を改めて再びこちらへ伺います」

 

息子さん…神代さんのお父さんが亡くなってだいぶやられているのだろう。伊織さんの目元には濃い隈ができていた。

 

「事前にご連絡した通り……今回の事件はとても複雑化しています。一刻も早く事件を解決する為に、こちらに関する資料や文書などをお見せして頂きたいのですが…」

 

「どうぞどうぞ…。遠慮なくお調べ下さい。そちらの都合が宜しければ…今日は無償でお泊まりして頂いても構いません」

 

伊織さんはスッと道を開けると、旅館の玄関が目に入る。改めて思う。本当にこの旅館は大きい。遠目からでは木に隠れててよく分からなかったが、いざ間近で見てみるとその大きさに圧倒される。

 

「この旅館に客人が来られるのは大変珍しいのです。まずここが人里離れた山奥であること。そして、テレビや雑誌などの取材は一切お断りしている為、一般の方はまず知りません」

 

はえ〜。やっぱ普通の人には来れないような場所なんだな。今は伊織さん1人しか見えていないが、庭の手入れがしっかりとされている。外装にも目を凝らしてみると、お高そうな凝った形の飾りまである。

 

「私は長年のんびり経営してただけですが…いつの間にか、『知る人ぞ知る秘境』とお偉い様方々の御用達となりまして……」

 

とここで、伊織さんは一呼吸を置き言葉を溜めた。

 

「その分、警察の方には目を瞑って頂かねばならぬような事も多少ありますゆえ……」

 

政治家やエロ豚共のことかな。まぁ世間に広まれば大問題だし。ここで掘り下げようもんなら伊織さんは旅館入れてくれないだろう。

 

「そこは問題ありません。私が何をしようが、手の及ばぬことです」

 

氷室さんが関与しないことを露わにした。いや、恐らく上層部に伝えても問題として処理されないんだろうな。きっと警察のトップもここで腰を振っているんだろう多分。

 

そしてこの会話が何を指しているのか分かっていないキャワイイ女の子達がいた。

 

「あの……、何の話でしょうか」

 

姫野さんが隣にいる霧崎さんにそっと尋ねる。ちくしょう、俺が隣にいたかった!神代さんの隣でもいいけど、行けば必ず何かしらされるからな。くわばらくわばら…。

 

霧崎さんは俺と加賀ちゃんをチラッと見ると、はぁ、と軽くため息を吐く。ごめんね言えなくて。

 

「つまりここは、金と暇を持て余した爺さん達の遊び場ってことだ」

 

「遊び場…?」

 

「それって……っ!」

 

姫野さんはよく分かっていないようだが、神代さんは理解してくれたらしい。プシューとでも聞こえそうな感じで顔を赤らめている、オモロ。

 

神代さんは顔を赤くしながらこちらへとやってきた。

 

そして俺の腕を引っ張って耳打ちをする。

 

「ちょっと引道!あんたもしかしてこの事知ってたの!?」

 

「は、はい。なのでずっとはぐらかしてたんです」

 

やばいやばいやばい。神代さんの温かい息が耳を掛かってる!自分でも分かるほどに赤くなってるはずだ。

 

「なら早く私に教えなさいよ!美琴が行きたいって予約してきたんだけど!?」

 

「NTRは阻止するんでそこは安心して下さい。と言うか神代さんに伝えたら変態とかの言い掛かりされるかもしれないですし……。それに神代さん、ずっと姫野さんと一緒にいたじゃないですか。タイミングないですよ」

 

ヤバい。神代さんの良い匂いが鼻腔をくすぐってる!すげぇ!姫野さんとはまた違った、ちょっっとばかしきつめの香水?みたいな香りだ!

 

「念力で伝えてたら良かったじゃん!」

 

「んな無茶な……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「由香のお婆さん1人でここを切り盛りしているの?」

 

「ううん。さっき聞いて見たら他にも従業員はいるみたい。数は少ないけどって言ってた」

 

へー、と頷きながら目の前の煎餅に手を伸ばす。姫野さんはさっきからずっと神代さんに質問していた。よっぽどこの旅館が気になるのだろう。

 

『姫野くん達はここでゆっくりしててくれ。俺と加賀、霧崎は別でやることがあるから少し離れる。晩御飯の時には戻ってくるから』

 

と言い、どこかへと言ってしまった3人。学生のみでは危ないので、保護者的な感じで小野さんがこの場に残ってくれている。

はいハーレム完成しました。甘い匂いがプンプンするぜぇ!

 

「小野さんはやっぱり冷静ですね。この間までの看護師とは違う環境にいるのにすごいや」

 

「…これでも驚いている方ですよ。私は昔から感情を表すのが苦手なのでお気になさらないでください」

 

そっと目を伏せる小野さん。手元には少し大きめの鞄がある。中には様々な治療道具が入っている。医療に携わっていた能力を買われ、氷室さんからもしもの時の為を任されたらしい。

 

「引道さ、煎餅なんか食べてたらこの後の夕食、食べられなくなるよ」

 

「この煎餅ちっさいし大丈夫ですよ」

 

「あんたさっきからずっと食べてるじゃん…」

 

あれ、そうだっけ?そうだったのかも。とりまこの煎餅が美味いのがいけない。微かな醤油とのり塩がヤベェくらいに美味いんだもん。流石、高級旅館なだけあるわ。

 

姫野さんはバリバリ煎餅を食べる俺を見ている。かわいい。神代さんは『うわぁ』な感じの顔をしている。小野さんは我関せずを貫いていた。

 

この平和な時間も、あと少し頑張ればまた続けられる。

頑張らないとな…。

 

どっこいしょとジジ臭く立ち上がる。正直能面に関してはあまり記憶がないので不安ではあるがやるしかない。

 

「皆さん、旅館の中を探検しませんか?」

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