もうね、次から次へと新たな話が重い浮かび上がってきて楽しいんです!!
でも話的にはあと5話6話ほど使って能面を終わらせる予定です!よろしくお願いします!!
『引道ってさ、自分の行いがどういった結果をもたらすのか考えないで動くよね』
『はぁ?んなもん容量よく対処したらいいだけだろ?』
『ならさ、今俺を待たせて夏休みの宿題してるのは何で?』
『…』
『……はぁ、いいか引道。俺はお前の行動力を尊敬してるんだ。計画性のないその脳みそをどうにかしてくれ』
『ゴメンナサイ』
中学生の頃、友達の健吾によく怒られてたっけ。計画性がない、考えて行動しろ。当時の俺はマジでその事を軽く見ていた。
だからこそ、今の状況も要領よくやれると思っていた。
「はぁ、はぁ……クソっ!」
後ろからは能面が追いかけてくる。それはいい。いやまぁ出来るなら追いかけてきて欲しくないが。
ゲームでは能面の動きはよく理解できない、所謂ガバシステムである。足も遅いし、ひとりかくれんぼ、くねくねの怪異たちよりも比較的逃げやすい部類だ。
なのに……
「なんでそんなに足が早いんだよ!!」
いい加減ゲームの能面とは切って考えるべきだろう。以前も同じ事を言っていた気がする。マジで俺ってやつは……!
しかもこの能面、意外とフットワークもよく、曲がり角でコーナーを攻めたような動きをする。そのせいで距離を開かないでいた。こちとら別館の構造なんか知らねーから動きにくいんだよちぐしょう!!
ひたすらに別館の一階をぐるぐる回る。適当な部屋に入って何もなかった時が1番危ないから下手に入れない。あまりみんなには迷惑かけたくなかったけど…
「氷室さんに助けを求めるか」
俺は別館を出ることにした。
「何か見つかったか、霧崎」
「氷室か。ちょうどここにある書物を読み終えたところだ。だが手掛かりというものは何もないな」
霧崎は手に持っている本を棚にしまうと、埃で汚れた手を払っていた。
神代伊代から聞いた別館。それをこいつに聞きに来たのだ。
「別館にはもう行ったのか」
「いや、晩御飯を食べてから行くよ。それに、先に引道を向かわせている。何か見つけてくれるかもしれない」
「そうか…」
引道君なら、きっと何かを見つけてくれるはずだろう。信頼や信用ではなく、美琴くんからのお墨付きだ。
「それに彼ももうすぐ戻ってくる。俺たちも夕食を食べに行こうか」
「そうだな」
「これめちゃくちゃ美味しくない!?何ていう魚なの!?」
「由香ちゃん、これは鮎だよ。焼いて塩を掛けただけのシンプルな作りになってるけど、旨味がそのまま引き出されるから美味しいだろう?」
「さすが由香のおばあさんですね!」
由香は楽しそうに食事をし、事あるごとに料理について褒めていた。孫に褒められるのはやはり嬉しいようで、おばあさんもよく笑っている。
そして料理を作ってくださった職人さんを立てるのも忘れない。
「由香ちゃんってば立派じゃねぇか」
そういう加賀さんは、もう何杯目かも分からないご飯を掻き込んでいた。
それを横目に粛々と食べる霧崎さん。
ここ最近、気を張って過ごしてきたからだろう。こうやってみんなで机を囲んでご飯を食べるなんて事が凄く幸せに思える。
「しっかし旅館の雰囲気といい…田舎に埋もれておくには勿体ないぜ?神代の婆ちゃん!」
「はっはっ、そりゃあ有難いねぇ」
完全に気分が乗った加賀さんは、酒はないのか酒はないのと駄々を捏ねはじめる。そして氷室さんからは頭を叩かれ、霧崎さんからはおかずを何品か取られてしまっていた。三人とも、本当に仲がいいんだなぁ。
「でも確かに剛の言う通りです。もっと大々的に宣伝しては如何ですか?」
「でもまぁ、お偉いさん方の意向もあるからねぇ…」
「きっと独占欲が強いのさ。今日泊まれるだけでも運がいい」
「かーっ。これだから金持ちってのは大嫌いなんだ!美味しいとこを全部持ってっちまう」
加賀さんが会話を盛り上げてくれるからだろう。氷室さんもそこまで咎めようとはしなかった。霧崎さんも心なしか楽しそうに食事をしている。
……でもその実、私には拭えない心配事があった。
そしてそれは私だけではなく、氷室さんも同じみたいだ。さっきからあまり箸が進んでいない。
「……彼、戻ってきませんね。何かあったのでしょうか」
小野さんが耳打ちをしてきた。小野さんも引道くんが戻ってこないことに疑問があるようだ。
心配で探しに行きたいです。そう氷室さんに声をかけようとしたその時、襖が勢いよく開かれ、引道くんがしんどそうに倒れ込んだ。
「が、はぁはぁ……も、もう無理。動きたくない」
しんと静まり返る和室。先程までの賑やかさはどこはやら、みなさん、状況をよく飲み込めないでいた。
私と氷室さん以外は。
「っ、大丈夫か引道くん!何があった!?」
「氷室さん落ち着いてください。まずは彼を休ませてあげることが大事です」
急いで引道くんの元へ駆け寄る氷室さん。小野さんも始めこそ固まっていたものの、看護師としての経験からか、引道くんの状態を確かめていた。
私も彼の事が心配になり、慌てて駆け寄る。
「見たところ、外傷はありません。ですが体がだいぶ疲弊していますね。恐らくずっと走っていたんじゃないですか」
「はぁ…はぁ……さ、さすが小野さん、頼りになります」
この人ったら、こんな時まで調子にのるんだから…!
氷室さんは引道くんに被害がないことを確認して、ため息を吐いていた。
由香のおばあさんが慌ててタオルを取りに行ってくれている。みんなに迷惑かけたこと、ちゃんと後で謝らせないといけない。
「それで……1人で遊びすぎて疲れでもしたのか?」
「あれを人と数えていいのなら、1人で遊んでたことになりますね」
氷室さんも私も顔を顰める。それもそのはず、この館には私が力を感じると言って訪れたのだ。向こうからも何かしら動きが出てくるはず。
でもまさか、こんなに早く動いてくるなんて……。
「引道、俺はお前に別館を見てこいと言ったんだが……何があったんだ?」
「……みなさん予想している通り、怪異が現れました。お婆さん、別館の二階にお面が飾られている部屋がありますよね」
タオルを持ってきたお婆さんは引道くんの質問に対して、そうねぇと答えた。
「その中にあるお面…能面が1人でに襲ってきたんです」
「それでずっと逃げ回っていたと。しかしよくここまで連れてこなかったな」
氷室さんがそう言うと、急にキョドりだした引道くん。何か訳でもあるのだろうか。氷室さんが怪しい目で見つめはじめた。
「い、いや〜…実はあの能面、結構足が速くて中々撒けなかったんです。なので氷室さんと姫野さんに助けを求めようとここまで来たんですけど……別館を出るといつの間にかいなくなってしまいました」
「恐らく我々がいることで、向こうもここまで追ってこなかったのだろう。……今回の事件の鍵は別館にあるということか」
お婆さんは信じられないと言うような顔をして、すぐさま職人さんへと聞いていた。
「アンタ、あのお面が動いているとこ、見たことあるかい?」
「まさか………有り得ませんよ」
「私も聞いたことないよ、そんな話」
未だ状況を飲み込まないでいる職人さんは一言そう言うと、見てきましょうかと提案してきた。どうしても信じられないのだろう。
だけどそれはあまりにも……
「危険すぎる。怪異は一般人を簡単に殺めることができるんだ。あなたが行ったところで帰ってこないでしょう」
「姫野くんは何かを感じてここへ来たんだ。だったら……これまでの経緯から、再び怪異が起きても何ら不思議じゃない」
「…」
「彼女の感性が間違っていなかったとすれば、これまでの怪異を解明する『何か』もここに存在することに違いない」
霧崎さんにそう言われるも、私も実のところよく分かってはいない。私は何かに呼ばれた気がしたから、ここに来たというだけで。でも桐崎さんの言う私の『感性』は間違っていなかったということだけは立証できた。
「私自身も、何かに呼ばれた気がしただけです。本当にそれだけなので…ここで何が起きてるのかも、何があるのかも、見当がつかないんです」
「お兄ちゃんが遭ったのって、お化けなの?」
突然ハルちゃんがそんな事を聞いてくる。そう言えばハルちゃんは引道くんと会うのは初めてだっけ。
私はそうだねと頷くと、ハルちゃんは『えー!?』と驚いた声を出し震える。
「お化けが別館にいるの…?」
ハルちゃんがお化けをどのように思っているかは分からないけど、まだ小学生だ。私たちが大丈夫でもハルちゃんはとても不安に感じているのだろう。
由香がハルちゃんを安心させようと優しく抱き寄せる。これでもちゃんとしたお姉さんなのだと思わされた。
「じゃああのお姉さんも危ないよ…」
「あのお姉さん?ハル、あのお姉さんって誰のこと?」
「え、お姉ちゃん会ってないの?白い服を着たお姉さんだよ」
どういう、こと?私たち以外にもこの旅館に泊まりにきている人がいるってこと?でも氷室さんの話では、今日からこの旅館は貸切になるって…。
氷室さんはハルちゃんのその話を聞くと、血相を変えてもう一度聞き返す。
「春子くん。その白い服を着たお姉さんって、他にどんな見た目とかしていたのか、覚えてたら教えてくれないかな」
ハルちゃんは氷室さんが急に近づいてきたことにビックリしていたが、肝が座っているのか、意外と落ち着いた対応をしている。妙に大人びていた。
「う〜ん……あ、髪が白かったよ!それぐらいかな……あ、それと私が見たのはお兄ちゃんと一緒にいるとこだったかな」
氷室さんとの会話の中に、聞き捨てならないことがあった。引道くんが白い女の人と一緒にいた?けど引道くんはそんな事何も言ってなかったけど……。
加賀さんが顔を強張らせて引道くんに詰め寄っていく。
「おい引道、てめぇ俺らに何か隠し事してねぇだろうなぁ」
この時の加賀さんは誰よりも怖い。きっと暴力団の人たちだって何も出来ないさせない、そんな凄みを感じさせるほどの迫力だ。
もちろん引道くんがその迫力に耐えられるはずもなく、腰を抜かして顔を青褪めさせている。
「そ、そう言えば…能面が飾ってある部屋にその女の人がいたのを思い出しました。い、いえ覚えています」
「おう、で、何を話したんだ」
「わ、分からないです。ボソボソと独り言を言ってただけなので……ただ、能面…なのかな。怪異が俺たちを襲ってくる理由みたいなことは言ってました」
加賀さんの迫力ある質問に最初から最後まで震える引道くん。流石に行き過ぎだったのか、霧崎さんが落ち着けと引き離した。
「それで、俺たちを怪異が襲って来る訳なんだが……」
「は、はい。確か、美味しくて憎い魂があるよって。怨念だか復讐だかも言っていたと思うんですけど、逃げることで精一杯だったので断片的なことしか覚えてません……」
「いや、それだけでも大きな手掛かりだ。ありがとう」
霧崎さんは引道くんから離れると、由香のお婆さんのとこへ行く。
「今の会話を聞いて、その白い女の人に心当たりはありませんか」
「いえ、そのような方は見たことがありません。あんたはどうなん」
お婆さんも見たことはないらしく、職人さんも知らないとのことだった。やはり私たち以外にも人が入ってきているのか、それとも人の形をしている怪異なのか。
しかしこれではまるで、
「病院の時の怪異と似たようなやつなのかもな」
そう、思い返すだけでも気持ち悪くなる。私たちが生き残った菊川市総合病院であった表情のない女。人の域を超えた速さと力で虐殺の限りを尽くした最悪の怪異。
「でも襲ってこなかったんだろぉ?」
「は、はい」
「…」
氷室さんは手を顎に当てて考え込んでいた。するとお婆さんが横からぬるっと出てきてたと思えば、私たちは大人しくなるまで出ていきます。そう言ってきた。
「緊急事態なのだろう?怪異とやらはともかく、不審者は危ない」
「そうですね。念の為、旅館の方達は避難をお願いします。もう何が起きるか分からない。神代家の事件を繰り返さないためにも、我々にご協力をお願いします」
「もちろん。こちらこそよろしくお願いしますねぇ」
お婆さんはペコリとお辞儀をすると、加賀さんが車の鍵を指で回しながら襖へと向かう。食事はもういいのかと思いテーブルを見ると、あらかた綺麗に片付いていた。
「不測の事態が起きたときは、俺っちがみんなを安全な場所まで送って行く……そういう予定だったな」
「あぁ、よろしく頼む」
氷室さんがそう言うと、加賀さんは砕けた笑みで私をしっかり守れと、氷室さんたちに伝える。これからどう動いていくのか、ここに来る前から相談していたみたいだ。
私も席を立つと由香の元へ向かう。
「美琴……まさか残るつもりなの……?」
「…うん。この怪異は、私が治めなくちゃいけないから。由香はハルちゃんを1人にさせないよう、しっかりと守ってあげてね」
決してうんとは頷かない由香。私と一緒に行きたい気持ちをこれでもかと感じでいるが、ハルちゃんを1人にさせることはしない。由香は優しいお姉ちゃんなんだから。
「……絶対、絶対に生きて帰ってきてね」
「うん」
旅館入り口まで来た私たちは、これから山を降りる加賀さんたち一時的な別れを告げていた。
氷室さんが一歩前に出て、加賀さんにくどく注意を述べている。
「いいか加賀。山を降りて安全な場所まで避難しても……決して1人で戻ってくるなよ」
「そりゃあねぇぜ。俺っちもこの怪異を、最後まで追求してぇ」
食い下がる加賀さんに、氷室さんは優しく説き伏せる。
「戻ってくる最中に何が起きるか分からないだろ?どうしてもというのなら、必ず応援を連れてくるんだ」
「損な役回りだぜ……ったくよぉ」
「人命を守る………これのどこが損なんだ?お前は立派だよ、剛」
「まったく、口の上手いやつだぜ。必ず後で……事件の詳細を根こそぎ聞かせてもらうからよ。そん時は覚悟しな!」
そう捨て台詞を吐くと、加賀さんは氷室さんに背を向け由香達を連れて山を降りて行った。
時間的にも、今は20時ぐらいというところか。怪異たちが動き始めるにはいい暗さになってきていた。
「さて……それじゃあ例の場所まで案内してもらおうか、引道くん」
「わかりました」
私、氷室さん、霧崎さん、引道くんの4人で挑む、恐らく最後になるであろう怪異症候群を沈めに行くため、私たちは今一度、『神代家旅館』の門を潜った。
高評価、コメントありがとうございます!前回の話を投稿してまだ日が浅いのに多くの反響があって作者が1番びっくりしてますw
ぜひ皆様のご期待に応えられるよう頑張っていきますので、高評価とコメントよろしくお願いします!!
それじゃ!