どうも。前回とても気になる雰囲気で締めた男、愛が重すぎるんジャーイエローの異名を持つ姫野さんたちのヒーローこと引道新聖君です。え、イエローは似合わないって?仕方ないじゃん黄色好きなんだもん!うげえ…いつもやった後に後悔すんのな、俺。めちゃくちゃ気持ち悪いです。
「怪異の倒し方を探そうかと思ったが、とんだ掘り出し物が見つかったな」
「こんな状況じゃなけりゃ、無視なんかしたくなかったぜぇ」
加賀ちゃんが悔しそうな顔をしながらスクロールを繰り返している。一緒にすると機嫌を悪くするかもしれないが、氷室さんも大概加賀ちゃんと似ているところがある。絶対に言わないけどさ。
姫野さんは、部屋の隅に置いてある芳香剤を嗅いでいる神代さんを引きはがそうとしていた。元気通り越して漫才してますねありゃ。
そんな中俺はというと、前回見つけた懐中電灯を手に資料室を散策していた。なんでトイレにあるはずの芳香剤が置いてあるなんて野暮なことを突っ込むのはやめよう。言い方ミスれば顔面に芳香剤の香りが染み着きかねん。それで怪異を引き付けたとかなると笑えないからな。
「しっかし役に立ちそうなもんがないな。ほんとにあの資料だけなのか…」
そういいながら次々と職員の引き出しを開けていくと、希望がたんまりと詰まった革袋があった。音をたてないようにそろりとそれを取り出して―――。
「なに火事場泥棒みたいな真似してんだ」
「エンダーーイヤーーー!!」
「「「うるさい!」」」
「す、すみません…」
こ、この筋肉単細胞め驚かせやがって!勢い余って有名な歌の歌詞出ちゃったじゃないか!!皆には怒鳴られるしで最悪だよ。
「お前がしていることと比べればわけないだろ」
「……い、いやーこれはですね?自分無一文なんで助けてもらおうかと…」
「何があったかは知らないが、好きな奴に嫌われるようなことはしないほうがいいぞ」
「…まず自分優先ですから」
それだけ言うと、すぐにそれをポケットにしまう。剛力は少しだけため息をつくと俺から離れていった。しかし驚いたものだ。ボスの命令第一の機械野郎があんな臭いことを言うのだから、背筋がピーンと伸びたよ。
にしても…。
「好きな人に嫌われたくないなら、ねえ…」
随分と似合わないことを言うってことは、過去に何かがあったのだろうか。剛力も佐藤さんと同じような死亡フラグになりえるものを抱えているのか、変なとこで謎が生まれてしまった。
「見張り替わりますんで、中で休んでください」
「おっ、すまない。ありがとう!」
あれからいろいろと探してみたが、目立っていいものがなかったので見張りの番を交代することにした。田中さんも見張りで疲れたことだし休ませてあげたい。佐藤さん?鼻歌歌うぐらい余裕そうなので付き合ってもらうことにした。別に姫野さんと恋愛話してたのを嫉妬して嫌がらせをしているわけではない。
「引道君。ちょっと話さないスか」
室内以外からは怖いほど何も聞こえてこない廊下を眺め続けるのが怖くなってきたのか、佐藤さんからお話の誘いが来た。
「いいですけど、どうしたんですか」
なんだろう。ここでまた惚気話なんかされたら奇声あげちゃいそうだぜ。
「いやな、こんなことを言うのもなんなんスけど…俺はここを好かないんスよ」
「誰だってここを好きになんかならないと思いますけど、同感です」
冷たい空気が廊下に充満している。昨日はあんなに暑かったのに熱はどこへやら、湿度すらそこまでない乾いている空間で立ち尽くすってのはなかなかにしんどく、体力を奪われる。今までは気持ち的にも余裕がなかったためそこまで意識はしていなかったが、落ち着いてくると体は覚え始めてきた。
目の前に続く廊下を見れば、壁や床の至る所に血が飛び散っている。壁についている血はどこかへと続いており、深い傷を負っていたと考えることが出来る。
そんなどこを見ても休める状況でないここにいたくはない。
「引道君は前に怪異?の事件に巻き込まれたみたいじゃないスか」
「よく知ってましたね。氷室さんから聞いたんですか?」
「いえ、引道君たちが部屋に閉じ込められているときに盗み聞きしていました」
これはまたとんだイレギュラーな人がいたもんだな。大人組が気づかなかったとすると、佐藤さんは俺以上のステルスを秘めているだろう。今度ゆっくり話し合ってみたいもんだね。
なんて答えようかと考えてみるが、大雑把でいいよね?
「ふ、実はですね...俺と姫野さんはひとりかくれんぼのときか」
「ぎゃーーーーーー!!??」
「うわぁーーーー!?」
俺が話している最中に何叫んでんすか年甲斐もなく!おかげで俺も叫んだじゃないすか年甲斐もなく!初めてではないけどさ…。
佐藤さんは開いた口を塞ごうとはせず、ただ俺の後ろを指さしている。お、おいやめろよ。そんなべたな展開で俺をビビらせようってかか??
しかし佐藤さんの顔はとても冗談を言っているように見えない。と、というか、俺の後ろから足音が心なしか聞こえてくるんですけど…。
年季の入った機械が動くときに出す音が俺からも出ているのか。そんな錯覚を感じるほど緊張しながら振り返る。
「お兄さんたちは大丈夫な人ですか…?」
「ああああああああああああ!!??」
「きゃああああああああああ!!??」
「どうした引道君!大丈夫か!?」
「お、お前は香織じゃないか!どうしてこんなところに…!」
珍しく剛力が取り乱している。強面な面構えしているだけあって、ギャップが少し強い。いやまあ笑えはしないんだけどね。
香織と呼ばれる少女は姫野さんの後ろから離れようとせずにこちらを窺っている。よし、ここは俺の出番だな。否定はするが俺はこれでもロリコンと呼ばれるほどの男。数多くの恋愛シュミレーションゲームをこなしてきた技法、見せてやる!
「ねえ君、お兄さんとお話しよ?」
「氷室さん今のうちに罪状つけといてください」
「任せた」
俺の言葉を思いっきり遮ってまさかの逮捕案件。やめてよマジ、高校生が逮捕されるとか将来暗すぎるんですけど。みんな俺に対してフィルター強すぎない?こんなの数の暴力に屈しちゃうよ理不尽め!
香織と呼ばれた女の子は姫野さんの後ろから動こうとせずにこちらをずっと眺めている。心なしか、怯えられているように見える。ここに来るまでいろいろあったのだろう。廊下であれなのだから、途中でエグイもん見ても不思議ではない。
とりあえず、香織ちゃんの保護は大人の人たちに任せることとなり、俺と佐藤さんは引き続き見張りをすることになった。
しかしどうしても彼女のことが気になり、警戒を強めながら佐藤さんに聞いて見ることにした。
「剛力は知ってたみたいですけど、佐藤さんも面識あるんですか?」
質問を受けた佐藤さんは目を細め微妙な顔をした。言わなくても察せてしまうのが面白いところだ。
「……香織ちゃんはボスの妹なんス。なんでボスとよく面会してる剛力はよく知っているはずっスね。俺たちは見かけることぐらいしかなかったし、気にすることもなかったスよ」
「ほーん…。あんなに可愛いのにですか?」
「さっきも言ったっスけど、俺には帰りを待ってくれている彼女がいるんでね。元から興味はないっスよ。そもそもの話、ボスんとこに行くこと自体があまりないから、顔を合わせることも少なかったんスよ」
おんや?これは意外とボスは人見知りかもしれませぬな。それともただ人とあまりかかわりたくない系なのでしょうか。意味もなく上に立ちたいとは思はないしな。
というか佐藤さん、ナチュラルにフラグ立てるからさっきから体の震えが止まらんよ。俺には分かる。佐藤さんの命はもう長くないと。建築者1級の私が言うんだから間違いない。むしろ強すぎて俺まで巻き込まれてしまう可能性がある。そんなのはまっぴらごめんだね。
窓から射す薄い光は外界が夜なのを表しているのか、それとも怪異が雰囲気を出してきているのか。会話が途絶えれば不気味さはます一方である。部屋の中を見ればもう馴染んだのか、香織ちゃんは氷室さんたちと普通におしゃべりできるようになっていた。いいなあ、俺も混ざりたい。
「っ!!??」
刹那、恐ろしく生ぬるい風が背中を撫で、臓器がギュッと掴まれる感覚に陥った。それは息をするのも忘れるほどのもので、うまく呼吸をすることが出来ないでいた。膝をつくことはなかったが、白いタイルとご対面のままでいる。そして恐ろしいのは中にいるみんながこのことに気づかないでいること。そして奴がすぐそこまで来ていることだ。
落ち着け引道新聖、お前はここで終わるような男ではないだろう?頭の中を限界まで冷静にし、呼吸を落ち着かせる。少しめまいがしたが、壁にもたれかかることで何とか我慢できた。
「…そうだ佐藤さん。さ、佐藤さん!?大丈夫ですか!?」
先ほどフラグを乱立させていた今一番危ない人物の名を呼ぶ。しかしそこに彼の姿はなく、俺の声だけが廊下に木霊していた。
「やばいぞこれ…佐藤さんどこですか!?」
元は俺たちを監禁していた一味の人だが、ここまで背中を預けてきた仲間だった。そう、俺はきっとフラグを乱立する佐藤さんに呆れながらも、友達だと思っていた。それなのに急にいなくなってしまったことに酷く焦りを感じ、あろうことか佐藤さんがいた方角の通路を歩き始めていた。
俺が持ち場を離れれば誰があの部屋を守るのだろうか、そんなことも忘れて…。
「っ!?佐藤さん!」
少し進んだところに、トボトボ歩く男の後ろ姿を見つけた。佐藤さんだ。
「佐藤さん!単独行動はめっちゃ危険です!早く戻ってきてください!!」
歩みを止めない佐藤さんに切れ気味の声を浴びせ、彼はやっと止まってくれた。が、それと同時に部屋の中にいる方々も飛び出してきた。
「引道くん、どうした!?」
資料室からはそこまで離れてはいないが、氷室さんの呼ぶ声が小さく感じてしまう。懐中電灯を佐藤さんに向けながら氷室さんの方に体を向け、急いで答えた。
「氷室さん気を付けてください!怪異が近くにいます!!」
「なんだと!?みんな気をつけろ!」
言葉はすぐに届き、氷室さんは警戒を強めた。姫野さん、神代さんは香織ちゃんを守るように囲っており、主に男性陣と小野さんが参戦している。
「そこに誰かいるのか!?」
「はい!佐藤さんが急にいなくなって…でも見つけました!」
俺はそう言い佐藤さんに歩み寄ろうとする。瞬間、疑うべき言葉が耳にずるっと入ってきた。
「佐藤ぉ!?佐藤なら俺っちの前にいるぞ!!」
何だって?そんなことがあるはずがない。確かに彼はおれの目の前にいる。けどこんな時に冗談を加賀ちゃんが言うはずがない。俺はゆっくりと振り返り、加賀ちゃんの先…佐藤さんを見た。
いる。佐藤さんは確かにそこにいる。加賀ちゃんから少し離れたところに棒立ちで佇んでいる。顔は見えないが、少なくとも俺たちのとこに戻る気配はない。
じゃあ今俺の前にいるのは?
氷室さんと神代さんが走ってこっちに向かってくるのが見える。
なぜか?理由を探すには遅すぎた。すでに俺の脳内メモリーは容量を超えており、考えることを放棄していた。ただ思うこと…悟ることは出来た。
(俺、もしかしたら死ぬかも)
氷室さんが何かを叫びながら拳銃を俺に向け、発砲。弾は音を置き去りにし俺の頬をかすめ通り過ぎて行った。瞬間、背中に何かが持たれるような感じがした。
それが何なのか考えもせず、振り返る。
「あ、あぁ……あ…あ」
そこには前面が無くなっている体が横たわっていた。
佐藤健の体の半分である。
「あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″!!!!!!!!!」
「大丈夫か引道くん!?落ち着くんだ!」
氷室さんがそういうが、この時の俺には届かなかった。
怖かったんだ。今までの怪異は、死線はあったが対処法を知っていたため俺たちが有利だった。死んだ人間を見ても、他人事でいられるほど余裕も持ち合わせていた。
だけど今は違う。相手のことなんかほとんど知らない。いつも後手に回ってばかりでいる。今まで有利な展開だったため不利な場面に慣れておらず、こんなにも簡単に死に怯えることとなった。
「引道くん落ちt」
バチン!!
「…ッカハ」
鋭い衝撃は頬から脳まで浸透し、やがて体全体に広まっていく。神代さんの思い一撃が、沈んだ思考を消し去ってくれた。
氷室さんもこれには驚いたのか、あぜんとした表情で神代さんを見ている。
直後、胸倉を掴まれた俺は初めて、彼女の怒声を受けることとなる。
「このバカ引道!!!!!!」
今回も読んでくださり、誠にありがとうございます!
それでは、また次回でお会いしましょう!ではではー