転生は好きな『物語』でした 二世代目   作:二世代目シャトス

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『赤い女』

〈???の過去〉

 

 

『どうして?私はこんなにも君のことを思っているんだよ?冷たい性格も直した、苦手なおしゃれも頑張った。君に振り向いてほしくてずっと頑張ってきたのに…こんなのってあんまりじゃない!!』

 

手に握られていた写真が音を上げてクシャっとなる。

 

ああ、あいつとの楽しかった思い出の記録も、色を失ったかのように薄くなっていく。なのに好きという感情は一向に消える気配がなかった。

 

『...ごめん。君の気持ちに応えることは出来ない』

 

綺麗な夕焼けを背に受け、ロマンチックな情景からは想像もできないほどの重りのついた言葉。いったいどれだけ私を傷つければいいのだろうと思ってしまう。

 

『君も勘づいてるとは思うけど、もう彼女がいるんだ。だから俺は、彼女を』

 

『ッ...』

 

その先から出てくる言葉を聞けば、きっと私は狂人となるだろう。それほどまでに、心臓の鼓動は激しく熱かった。

見晴らしのいい景色で有名な遊園地から逃げ出した私は、泣きじゃくりながら、でも声は決して上げないで走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラン

 

家に転がり込んだ私は、すぐに洗面所へ駆けた。これまで溜めてきたストレスも一緒に吐き出そうとしたけど、気持ち悪いものは残ったままだった。

 

大好きだったお母さんは他界した。大好きだった飼い猫は車にひかれてこの前死んだ。今度は私の番なのかと思った。でも違った。私に待っていたのは死ではなく絶望という名の地獄。

 

大好きな彼はもういない。もう手に入らない。時間が戻るなら、昔のあたしを殴ってでも付き合わせてやりたい。何度もそう思った。

 

『...一人は嫌だなぁ。好きな人が変えられていくのも嫌だなぁ』

 

鏡の自分を見つめてくる虚ろな自分。その目の濁りは以前、どこかで見たことがあった。

 

『...あっ、あの時だ』

 

私が彼の告白を断った日。彼が告白された日。

 

そして、私が初めて恋を知った日。

 

あの時、お母さんが私を優しく受け止めてくれて何とか持ち直した。

そうだ。あの日から私は変わったんだ。大好きな彼に振り向いてもらえるように。

 

幸いにも、彼は新しく彼女を作ったことを言いふらしたりなどはしていなかった。だからこれは牽制。あの女から彼を奪い返すための。

 

 

 

『なのに!!!』

 

 

 

鏡をたたき割る。破片やら衝撃やらで平が切れたらしく、血がぽたぽたと垂れているが、知ったことではない。私の濁った眼に映るのは、大好きな彼と雌豚のみ。

私は小さな果物ナイフを携えると、走って雌豚の住処へ向かった。

 

そこからはあんまり覚えてない。

 

大嫌いだった雌豚を殺し、大好きだった彼も殺してしまった私は、持っていたナイフで首を切り自殺した。

お母さんも他界している。私に残されたものは何もなかった。

 

だけど。死ぬ前に誰かの声を聴いたんだ。

 

『アイニイケルヨ』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

それは突然の出来事だった。赤い女が指揮する死人の群れがもうそこまで迫ってきていて絶体絶命のピンチになったとき、私の大好きな人が現れた。

 

今目の前には、床に見えないナニカで押さえつけられている赤い女と、ただの人間である私にさえうっすらと見える、不思議なオーラをまとった美琴がいた。

 

私は堪らず美琴に飛びついた。

 

「美琴!!!」

 

「ちょっと由香!?急に飛び込まれてくると受け止めるのに焦っちゃうよ!?…でもよかった、生きてくれていて」

 

私も美琴も、お互いの体温を確かめ合うように強く抱き合う。美琴のよりも少し大きいあれで複雑そうにしてるがお構いなしだ。むしろ私たちを心配にさせたことのお仕置きはこんなものじゃすまされない。

 

でもそれでも、やっぱりこうして生きて再会できたことが、私には一番うれしかった。

 

「姫野君、生きてくれていてよかったよ。そしてすまない...助けが遅れてしまって」

 

「俺っちからも礼を言わせてくれ。助かったぜ、ありがとなぁ!」

 

この部屋を埋め尽くすほどのゾンビがいなくなったことによって解放された二人は、氷室さんを筆頭に感謝の意を示していた。

あれ、そういえば小野さんは...

 

「あ、そこにいたんだ」

 

何のことはない。小野さんは引道の介抱をしていた。別に目立った外傷はなかったが、看護師からしたら心配なとこがあるのだろう。

 

美琴もそれを見て何を思ったのか、険しい顔で引道のもとに向かった。

 

「小野さん。引道君は今どうなっていますか?」

 

「…なんとも言えません。身体的には既に目を覚ましていてもおかしくないのですが...。攻撃を受けたのがあの怪異からなのでしょうか、目を覚ましません」

 

美琴はそれを聞くと、氷室さんたちに指示を出す。

 

曰く、赤い女を拘束してほしいとのこと。それも身動き一つ許さないほどの拘束を。二人はこれを承諾し、ナニカで押しつぶされる化け物の足と手首の腱を切った。すると赤い女はいた悲痛な悲鳴を上げて、腹の奥から震える声で唸った。

 

それでも美琴は恐れの一つもあらわさずに、眠っている引道に私たちでは分からないナニカを施していく。

 

「-------」

 

それは私たちに理解できるものではなく、何かの言葉であることぐらいしか分からなかった。

 

美琴が手をかざし何かの呪文を唱え始めて少ししたところ、引道が急に起きだし咳き込んだ。

 

「っぐ!?ぶふぁ!!??ごほっ、ごほっ...!......んあ”-、あ”り”がと”う”ござい”ま”す”」

 

見に涙を浮かべながら、引道はゆっくりと呼吸を整えていく。え、今何が起こったの?

私が訪ねようとするよりも早くに、美琴は引道に具合を聞く。

いや、心配なのは分かるけどさ。もうちょっと私にも気を使ってくれてもいいのにって思うわけなのよ。

 

「ごめんね引道君。本来この役目は私がするはずだったのに、あなたにさせてしまって。でももう大丈夫。私、何をすればいいか分かったから...もう、迷わない。この波を断ち切ります!」

 

過去に一度も見たことのない、強い信念を持った発言をする美琴の言葉に圧倒される私たち。赤い女の顔は怒りによってか、よりひどく歪んでいた。

 

「美琴……」

 

「姫野君......」

 

「姫野ちゃん......」

 

「姫野さん……」

 

「え、急展開過ぎてちょっと追いつけn」

 

「私、行ってくるね!!」

 

私たちが言葉を発するよりも早く、美琴は赤い女へと歩みを進めていた。

やめて、行かないで。そんな思いが胸の中で渦巻くが、声には出さない。今の私に、美琴を止めることは出来ない。仮にできたとしても、その行為は間違っていると思うから。

だから私は、この件が丸く収まったら美琴を思いっきり叱ろうと思う。きっと喧嘩して、仲直りする。そしてまた...私は親がいなくなったけど、美琴がいるならまた前を向いて歩いて行ける。

 

「だから勝って...美琴!!」

 

「まかせて由香!」

 

事件が終息に向かっていくの感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。引道です。今、俺の隣にはズボンに裂け目が入っている美人看護師小野さんがいるのですが...正直頭に入ってきません。それもそのはず、なんか俺の知らないうちに話がだいぶ進んでいるらしく、ラスボス戦が始まろうとしていたからだ。

赤い女に気絶させられている間、本当に何も記憶がないのだ。目を覚ました時にはすでに胸が苦しく、咳をしないと死ぬような感覚に襲われていて余裕もなく、起きた時のことも全く覚えていない。

とりあえずわかること言えば...

 

「ちょっと姫野さん、覚醒しすぎじゃないですか?」

 

「…そんなことはない。むしろ遅かったぐらいじゃないのかと思う」

 

氷室さんが苦笑いして目を細めているが、俺には全く理解できない。いや、おかしいでしょ普通に考えて。いくら霊的な者に強い抵抗力があるからって、ここまで圧倒的になれるものなの?もう俺いなくてもこの後のストーリー簡単に終わりそうなんだけど…。

 

「彼女、ほんとに姫野さんなのですか?私が初めて見たときと随分印象が変わっているのですが...」

 

「まぁ、姫野さんって初対面の人には猛烈なコミュ障を発生させますからね。ああ見えてインドア派なんですよ姫野さんは」

 

「なにあんたが知った口きいてんのよ。親しい友人みたいなムーブかまされていることに寒気がするわ」

 

姫野さんについて簡単に紹介したつもりだったが、美琴loveな神代さんには逆鱗に触れるような内容だったみたい。ごめんよ神代さん知り合って間もない男が姫野さんを語って。俺も君の立場なら同じこと思うから許してください。だから姫野さんに今の内容言うのはやめてくださいお願いします!!??

 

「だが実際姫野君は変わった。それが多くの人の死によるものなのか、はたまた仲間を守るためなのか。それとも...」

 

「いや氷室、そこで言うのやめるなよぉ。先が気になるじゃねぇかぁ」

 

「お前も知っていることだろ、加賀」

 

「…」

 

何やら警察官と新聞記者がこそこそと話しているが...そういや俺ってば監視されているんだっけ。あまり目立たないようにしよーっと!

 

そんな腑抜けたやり取りの中でも、姫野さんと怪異の間に流れている空気は変わらない。だがやはりどう見ても、誰が見ても姫野さんが優勢としか見えなかった。

 

「…」

 

『ヤメロヨ。ソンナメデミンジャネェ!!』

 

赤い女が姫野さんに向かって怒鳴るが、姫野さんはこれを一蹴する。

 

「赤い女さん。...いいえ、違いますね。あなたにはしっかりとした名前が存在してましたね」

 

『ッ!?ナンデ、オマナンカガ...』

 

名前...はて、あの怪異に名前なんてあっただろうか。俺は一度記憶の中から関係のある資料を引っ張てくるが、関連のある『真司誠也』というワードしか出てこない。あのパソコンに名前なんてあっただろうか。

 

「私を使って”愛しの”彼を呼び戻そうとしてたみたいですね。そのために私と深くつながる必要があった...。ここまで言えば分かるんじゃないですか?」

 

『クソ!!オマエ、ワタシノキオクヲミタナアアア!!!???』

 

赤い女が獣のように叫ぶ。あまりの声の太さに神代さんがすっかり怯えてしまった。やだ可愛い!

神代さんが可愛いのは当たり前として、先ほど赤い女は記憶を見られたと言っていた。そして愛しの彼を戻したいと。

俺の中に眠るイタい考え方をすると...おそらく赤い女の目的は殺戮ではなく、恋人?を蘇らせること。その条件として、転生者の俺や特殊な家系で生まれた姫野さんを欲しがっていたのか。怪異には転生者とはバレていないと思うが、どうやら彼らには俺がこの世の鋳物ではないことが分かるみたいだし、そこを突かれたのかも。

 

姫野さんは怒っている表情から、同情するような悲しい顔をした。

 

「…あなたが彼を大切に思っていたのは理解しています。でも、だからって人を殺していい理由にはならない!頑張って彼を...メビタルさんを蘇らせようとしていますが、そんなものは本物じゃない」

 

メビタル、という単語を耳にして、何となくだがある程度考察が固まってきた。

まず、赤い女は生前に好きな人がいた。だけど何かあって愛人と死に別れた。その後、生前の彼女が強い未練を抱いたことによりこの世にとどまることが出来てしまった。そして愛人ともう一度会うために人を殺して器を探していた。

ふっ、どうかなホームズ君。じっちゃんの名に懸けて、真実はいつも一つだと証明して見せたぜ!

 

「姫野さん。その本物じゃないって、他人の体に宿ったところで魂は生前のように戻らない。そういうことですよね?」

 

「確かにそれもあるけど、そうじゃないんだよ」

 

あれ?間違えたのか。ごめんよじっちゃん。新聖くん嘘つきだったみたい。

 

「赤い女。彼女は今ではそう呼ばれているけど、本当の正体は怪異と人が混ざり合ったおぞましいナニカってこと」

 

「姫野ちゃん。俺っちさっぱりわからないんだが、どういうことなんだぁ?」

 

「…氷室さん、未練を残して蘇える怪異の実力はどのくらいですか」

 

急に質問を始めた姫野さん。それになんなく答えようとしている氷室さんはやっぱいすごいと思ってしまう。やはり何年も怪異と渡り合ったことはあるって言いたくなるよほんと。

氷室さんが答えるのに、時間は掛からなかった。

 

「そうだな、強くても人を操れる程度だ。簡単な怪奇現象ぐらいならよくやってくることぐらいだが。もしそこの怪異が未練だけでこの惨劇を起こしたというのなら、やはり信じられんな。思いは無限大、と言いたいが限度がある。この惨劇を起こすとなると、一人では負担になりすぎるし、自分の力で滅びかねん」

 

「そういうことです。この赤い女...もとい『スノーザン・レリア』さんは怪異と契約をしたことによりここまで強くなれたのです」

 

『ッ、ワタシノナマエヲイウナアアァァァ!!!!』

 

「ひっ…!」

 

赤い女...いいや、スノーザン・レリアさんは悲痛そうな声で叫んだ。そこまで名前を知られるのが嫌だったのだろう。身動きは取れないでいるのに、すさまじい殺気を感じる。

 

「その怪異の名は、『表情のない女』」

 

「表情のない女...あっ!真司さんが調べていた怪異だ!」

 

神代さんが手を叩く。そしてまた少し考えると、また何か分かったのか話し始めた。

 

「…ねぇ、もしかしてだけどさ。真司誠也って男の人、もしかして...」

 

そこまで神代さんが話すと、あとはもう簡単に想像がついた。おそらくこの場にいるみんなが同じことを考えただろう。

 

真司誠也とホープ・メビタルは同一人物であると。

 

「なぜ彼がそれを調べていたのかは私は知らない。でも、輪廻転生って本当にあるんだって実感した。そんな奇跡みたいなことが起きていたことにレリアさんも分かっていたはずなのに...なんでこんなひどいことがたくさんできるの...?」

 

『...好きだからよ』

 

不意に、彼女からこぼれた言葉。その言葉は先ほどの怒気や殺気を含めたものではなく、優しさに満ちたものだった。

 

『好きだから、彼を一人にするの。そして私しかいないってことにするの。もう、他の女のとこに行かないように...。今度こそは、正直な気持ちで彼と接して生きていくために!!』

 

いやお前もう死んでるだろ、なんて野暮なことは言わない。もしそんなことを言ってしまえば殺されてしまうからだ。主にレリアさんと姫野さんに。

よく見ると、姫野さんの肩が震えている。空気もピりついてきたし、激おこモードだ。

 

そして次の瞬間、雷のような怒声が響き渡った。

 

 

 

「最低です!!!!!!」

 

 

 

『ッ!?』

 

「正直な気持ち?一緒に生きていく?勝手な理想を押し付けて強制だなんて、メビタルさんも浮かばれませんね。まさかこんな身勝手女に二度も殺されることになるなんてって」

 

『あ、あなた...馬鹿にしないでちょうだい!!別に理解してもらおうだなんて考えてない。すべてが私の思い道理になるようにするため、私はこの世に存在しているの。そのために怪異にすべてを売ったの!!もう戻れないのよ。何が何でもやり遂げる‼!!』

 

レリアさんーーーいいや違う。赤い女は謎の力を使い一瞬にして体を治し、姫野さんにとびかかる。

俺を含めた皆が姫野さんへと向かうが、間に合わない。氷室さんの拳銃も弾が尽きた。

 

姫野さんが危ない。誰もがそう思った。

 

『メビタルトワタシハヒトツニナルノ!!!!』

 

 

 

 

「後悔も懺悔も、あの世でしてください。もう………許しません」

 

 

 

 

姫野さんの体が突然光った。あまりのまぶしさに目をつむってしまったが、その最中、不思議と心身が軽くなったように感じられた。殺気も何も感じられない、怪異の気配すらも感じない。

 

「もしやこれは...」

 

俺はそっと目を開けると、目の前には一人ポツンと佇んでいる姫野さんがいた。

そして氷室さんたちも徐々に理解し始めた。

 

「終わった...の?」

 

神代さんが声を震わせながら、誰かに尋ねた。それに答えたのは他の誰でもない、姫野さんだった。

 

「うん...終わったよ」

 

 

 

 

 

 CHAPTER 3 END




あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
え、前回からの更新いつからだって?
・・・すみません、サボってました。言い訳をするなら、就職活動で内定がもらえたためバイトに明け暮れていました。帰ってくるのが夜なので、執筆するもあまり起きず、ウマ娘のゲームをひたすらしていました。

こんな私ですが、今年もよろしくお願いします。失踪だけは絶対にしないので、気が向いたときにだけでもいいのでぜひ読んでみてください!

また次回でお会いしましょう!ではでは~


ちなみに推しウマ娘はゴールドシチーです。皆さんはどの娘ですか?
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