灼炎の皇女と紡がれし未来   作:咲野 皐月

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 皆さん、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 今回は久しぶりにヴァンガードの小説を書いてみる事にしました。投稿頻度は不定期になりますが、ボチボチと投稿して行きたいと思いますので、どうか宜しくお願いします。

 この小説は、僕の中で初の試みをしていますので、そこも合わせてお楽しみに。


 それでは本編スタートです。


スタンドアップ・ヴァンガード!

「……来たわね、ここが東京」

 

 

 そんな呟きと共に、羽田空港国内線ターミナルから出て来る少女が一人居た。桃色の髪を後ろでひとつに纏めていて……ルビーの様な紅い瞳と、目元が少し吊り上がっているのが特徴だった。

 

 彼女の名は……【進導(しんどう) 優依(ゆい)】、今度の4月から高校二年生になる少女で、故郷である長崎県から上京し……この地で初めての一人暮らしをするのだ。

 

 

「さて……先ずは新居に行って、荷解きと行きたいのだけれど、タクシーに乗らないとね」

 

 

 そう言って優依はタクシーを途中で拾い、観光もしたかったので……都心まで乗って行く事にした。彼女自身、東京に来たのは中学生の頃に家族旅行で来て以来だったので……目に映る物全てが新しく見えてしまったのは言うまでも無い。

 

 

「……おや、お客さん。東京は初めてですかい?」

「いいえ。数年前に一度、東京に家族旅行で来た事がありまして。それでもかなり前ですから、忘れてる所もあるかもしれません」

「そうかい。しっかしまあ、こんな都会に一人で遥々なんてねぇ……親御さんは心配しなかったのかい?」

「……父も母も、常日頃から口癖の様に言ってました。なんでも『私の決めた道を思う通りに進んで欲しい』と」

 

 

 優依がそう答えると、タクシーの運転手は一つ溜め息を吐いたかと思えば、右手で自身の頭の裏を掻き始めた。何やら思い当たる節でもあるのか……それとも、何故か親目線の表情で見てしまったのかは伺い知れなかったのだが。

 

 そんなやり取りがありつつ、優依の乗るタクシーは多少の混雑に巻き込まれるも……目的地である東京都都心へと辿り着いた。

 

 

「はい、ここまでね」

「ありがとうございます。お会計『いや、必要ねぇよ』どうしてです?」

「あんたみてぇな若いのを見てるとよ、昔の自分を思い出しちまうんだ。だからこれは俺の気持ちだっつう事で」

「……わかりました。お気遣いありがとうございます」

 

 

 彼女は運転手にそうお礼を告げると、トランクに積んである荷物を取り出して手に持った。そして先程まで乗っていたタクシーを見送り、賑やかな喧騒の中へと足を進めて行った。

 

 

「しかし、少し来ない間に変わったわね……昔よりもさらに発展したんじゃないかしら」

 

 

 そう呟きながら優依は街中を歩いて行く。

 

 彼女が最初に来た時も高層ビル等が並び立っており、初見の人は数分で眩暈を起こしそうな所だったのだが……数年来ない間に、さらにその感覚が強くなったのではと見受けられた。

 

 

「何処も彼処も賑やかね……今まではずっと田舎暮らしだったから、こう言うのは新鮮味があって良いかも」

 

 

 そんな風に周りの人たちを見て、彼女が一言ポツリと零していた……その時。

 

 

「ねぇねぇカノジョ〜、今暇〜? 良ければオレと一緒に遊ばなぁい?」

「……お断りします。私は今道を急いでいますので」

「そんな連れねぇ事言うなよ〜。オレと二人っきりで遊ぼうぜ〜? ……た〜っぷりキモチイイ事してやっから、さ」

「……!」

 

 

 突如として絡んで来た不良に誘われるも、優依は言葉を変えて冷静に対応し始めた。それを見た男は、彼女の人一倍に育ったモノに手を伸ばし……感触を確かめようとしたのだが、それは優依の叩きを受けて実現できずとなった。

 

 

「あー、痛てぇな〜。慰謝料を請求するわ〜」

「貴方の様な外道に支払うお金などこれっぽっちもありませんが」

「んなこたァ聞いてねぇんだよ。テメェがオレに手を出した、オレの誘いを受けなかったテメェが全部悪ぃの。だから慰謝料と手術代請求したって良いんだぜ」

「そんな支離滅裂な発言、私は聞いた事ありません」

「だから、テメェが全部悪ぃつってんだろうがこのクソアマァ! 見た目が可愛ければなんでも許されると思ったら、大間違いだからな! 有り金全部支払った後は、オマエのカラダ……オレ好みに調教してやっからさ!」

 

 

 不良の男からの言葉に、暫し優依は呆然となってしまった。

 

 ……が、その沈黙はすぐ破られる事になる。そう、他でも無い……彼女の手に寄って。

 

 

「……言いたい事はそれだけかしら?」

「あ?!」

「嫌がる女の子に手を出して置きながら……私が拒絶したら慰謝料の請求? 挙句の果てには調教すると言い出す辺り、アナタは寂しい人なのね」

「どういう意味だゴルァ!」

 

 

 優依に起こった突然の変化に、その場に居る人たちは状況を飲み込めていなかったが……次第に理解が追い付いて来たのか、男の方に罵倒や暴言を浴びせて来た。

 

 

「くっ、くそったれがぁ……!」

「さあ、これでも言い訳をするのかしら?」

「なら、これで決めようぜ……オレとヴァンガードファイトだ! オレが勝ったら、大人しく言う事を何でも聞いてもらうぜ!」

『おい、アイツ無謀な事をしてるんじゃね?』

『あの子の事、何も知らないのかな……』

 

 

 男がデッキケースを優依に突き付けると、それを見た周りの人の眼が哀れに思うような視線となって来た。

 

 

「さあ、どうすんだよ! ビビッて声も出ねぇか? ……はっ、口ほどにもねぇな『良いわよ、受けてあげる』威勢だけは良いようだな……デッキを抜けよ!」

「ただし、悪く思わないでね……」

 

 

 彼女が懐からデッキケースを取り出した時、地面が丸く刳り抜かれ……そこからファイトテーブルが競り上がってきた。そして二人はケースの中から50枚以上のカードで構築されたカードの束ーーーデッキを取り出し、デッキスペースへと置いて、その中から1枚を抜き取って互いに向かい合わさる様にセットした。

 

 その場には言い様の無い緊張感が漂っていて、その場から動こうものなら……身体に絶対癒えぬ傷がつけられてしまうほどだった。

 

 

「今日の私は……ちょっと虫の居所が悪いわよ!」

「ぬかせ! 始めるぞ!」

 

 

スタンドアップ・(THE)ヴァンガード‼‼‼

 

 

「《メカ・トレーナー》!」

「《リザードランナー・アンドゥー》!」

 

 

 そして数分後。その場に残った物は……残酷なまでの現実だった。

 

 男が先ほどまで持っていたであろう手札は、力なく盤面の上へと落ち……使用者はと言うと、現実を夢だと思う様に真っ白な姿へとなっていた。そして男のすぐ近くにあったダメージゾーンには、既に6枚目のカードである、男の分身と思しきユニット《将軍 ザイフリート》が置かれていた。

 

 

「口ほどにも無かったわね。それじゃあ、ごきげんよう」

 

 

 優依は目の前の相手に向かって一言告げると、荷物を持ってその場を歩き始めた。ここに長居するつもりは鼻から無かったのだが、余計な時間を割いてしまったと後に後悔してしまう事になった。

 

────────────────────────

 

「ふぅ……引越し初日にあんなのに絡まれるなんて、ツイてないわね私って」

 

 

 私は先程の通りから抜け出し、繁華街の方へと姿を見せていた。周りにはスーパーやら何やらと連なって建っており、目から入る情報が止む事無く続いていた。

 

 

「はぁ……ここからどうしようかしら『あ、あの……少し、良いですか?』?」

 

 

 私が先程まで歩いていた……道の傍にある建物の間にある影から、自分へと声を掛けて来る者が居た。その人物は優依からの返事を受けると、ゆっくりとその姿を現した。

 

 髪色は茶髪をショートカットにしていて、モノトーンの色合いをした服を着ている……可愛らしい女の子だった。

 

 

「アナタは?」

「え、えっと……私は、百瀬(ももせ) 天音(あまね)と言います。さっきのファイトを……見ていまして……」

「そうだったんですね。私は進導 優依……よろしくお願いします、百瀬さん」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 

 百瀬さんがゆっくりと手を差し伸べてきたので……私は、彼女を驚かせない様に、そっとその手を取って優しく握り返した。それを見た百瀬さんはと言うと、少しだけ柔らかい微笑みを見せてくれた。

 

 

「それで、さっきのファイトを見ていた……と言う事なのですが、何処から見ていましたか?」

「先攻の第1ターンからです……アンドゥーからバーにライドする所です」

「なるほど……ほぼ最初から、と言う事ですね」

「は、はい……お邪魔をする様な真似をして、本当に申し訳ありませんでした!」

 

 

 彼女は私に向かって勢いよく頭を下げた。その勢いは本当に早くて……下手したら土下座までしてしまいそうな雰囲気を漂わせていた。

 

 

「理由はわかりましたから……どうか、本当に落ち着いて下さい……! 私は何も貴女の事を責めるつもりなどありませんから」

「……ほぇ?」

 

 

 私が百瀬さんを宥めると、それを聞いた彼女が惚けた様な顔をしました。

 

 

 ……私を追いかけて来た、という事は……少なからず私の事情は知っているはず。でもそれでも、私に会いたいと思って行動していた。そしてスカートの右ポケットには大きな膨らみがある……これはもしかして。

 

 そんな事を頭の中に置きつつ、私は百瀬さんとの会話を再開させました。

 

 

「私は先程、あのチャラチャラした殿方にナンパされていたのですが……少々癪に触ってしまったので、ヴァンガードファイトで大人しくさせただけです。貴女が責任を感じる必要は無いんですよ」

「で、でも……!」

「でもも何もありません。当事者である私が『責任を感じる必要は無い』と言っているので、貴女の責任じゃないんですよ。むしろ責任があるのは私の方ですから」

 

 

 私は彼女に向かって、自分の今思う考えの全てを伝えました。……今言える最大限の事を伝えたのですが、果たして百瀬さんには何処まで伝わるのでしょうか。

 

 そう思っていると……彼女はポケットの方に手を伸ばして、デッキケースを私の方に向けました。黒いケースの底の部分が向けられていて、余程大切にして来たのだと伺う事が出来ました。

 

 

「な、なら……私に、ヴァンガードをレクチャーしてくれませんか!? さっきのファイトが凄くカッコ良くて……私はあの時の貴女に、惚れました!」

「……えぇ?」

「なので……どうしても責任を感じてしまう、と言うのであれば……私にヴァンガードを教えてください! ちょっぴり人見知りだけど……ヴァンガードに触れれば、何かが変わると思うので!」

 

 

 私は百瀬さんからの唐突なる告白とお誘いに、その場を動く事が出来ずに居ました。彼女の顔は熟れたトマトの様に真っ赤に染まっていて……ヘタに刺激を与えたら、蒸気が上がってしまいそうなほどでした。

 

 

 ……私は、人に何かを教えるなど、あまり柄じゃないのですが……ここで彼女の確固たるその決意を無碍に返すのは、本人にとってかなり酷と言う物。

 

 で、あるならば。私が百瀬さんの支えに何処までなれるのかは分かりませんが……彼女に協力するのも、また一理あるかもしれませんね。

 

 

「……良いでしょう。そのお誘い、お受けします」

「受けてくださるんですね……本当に……あ、ありがとうございます! ご指導ご鞭撻の程……どうかよろしくお願いします!」

「ええ。……さて、そうと決まればカードショップにでも行きましょうか。ティーチングファイトをするならば、そこが良いはずですから」

 

 

 そう言って私は百瀬さんを連れて、近くにあるカードショップへと向かう事にしました。……これはお恥ずかしい話にはなりますが、カードショップまでの道のりは彼女に教えて頂いたのです……。

 

 

 来る前に場所を把握しておけばこんな事には……。

 

 そんな事を思う私を他所に、百瀬さんはある所で足を止めました。その場所は駅前広場の近くにあり、一目で見たら分からない様な場所でした。

 

 

「え、こ……ここですか?」

「はい。ついて来て下さい」

 

 

 これじゃあさっきまでのやり取りが嘘の様になって来ますね……私ってば、なんて情けないのかしら……。心の中で百瀬さんへと謝罪をした後、私は彼女の後に続いて入る事にしました。

 

 そこはカードの並べられているショーケースが一面に並べられており……ファイトに使用する専用のテーブルが10台程設置されていました。

 

 

「お、いらっしゃい。ゆっくりしていきな」

「ありがとうございます」

 

 

 カウンターに居た店員さんからの気だるげな挨拶を軽く返した私たちは、テーブルの一つを借りてファイトをする事にしました。……まあ、今回来た目的は百瀬さんへのティーチングファイトなのですが。

 

 

「それでは……改めまして自己紹介を。私は進導 優依と言います。お気軽に話しかけて頂ければ嬉しいです」

「よ、よろしくお願いします……」

「さて、今から私たちはヴァンガードファイトをする訳なのですが……イメージして下さい」

 

 

 私はそう言って百瀬さんに指示を出しました。

 

 ……ヴァンガードには、殆どと言っていいほど『己が思い描くイメージ』が重要ですし、彼女にもその事を伝えておかなければ。

 

 

「私たちは『惑星クレイ』……こことよく似た世界に降り立つ、か弱い霊体です。その世界では、魔法や精霊などの非現実的な物ですらも……とある形で存在しています」

「惑星、クレイ……」

「霊体となった私たちができる事は、主に二つ程あります。それは『ライド』と『コール』」

 

 

 私は百瀬さんが頷くのを見ながら、少しずつ説明を入れていきました。デッキに関しては自作のデッキだと聞いたので、最低限のルールは心得ていると見てスルーをしました。

 

 

「私たちはそのままの状態では……自身の持つ力を使う事ができません。なので、最初にグレード0のユニットへと憑依(ライド)し、ユニットたちとの正式な契約を果たすのです。ここでは能力を持っているカードが良いでしょう。選んだら赤いサークルの上に裏向きで置いて下さい」

 

 

 百瀬さんにそう教えながら……私は《リザードランナー アンドゥー》をヴァンガードサークルに置きました。彼女も一枚伏せたのを確認すると、デッキの上から五枚を手札に取るように伝えました。

 

 

「手札を五枚揃えたら、このタイミングで一度だけ引き直しができます。理想形としては、グレード0・1・2・3のカードが一枚ずつ来ていれば大丈夫です。引き直しはしますか?」

「……だ、大丈夫です!」

「今回はティーチングファイトですので、私からの先攻で始めたいと思います」

 

 

 最後に百瀬さんの眼を見ると、目線はまっすぐ私の方を向いていたので……私は目を閉じて精神を落ち着け始めました。

 

 

「ど、どうしたんですか?」

「……百瀬さん」

「は、はい」

「最初はルールを教えながら進めるけど、ある程度まで進んだら自由に行動させるから……本気で来なさい!」

「わかりました!」

「行くわよ!」

 

 

 私と百瀬さんは……お互いに伏せられているカードへと手を添え、いつでもめくれる様に準備を整えました。掛け声の方も心得ているとの話なので、これ以上の説明はしない事にしました。

 

 

「「スタンドアップ!」」

「ザ!」

「「ヴァンガード!」」

 

 

 私たちが降り立ったのは……惑星クレイの中に存在している、ゴツゴツとした山々が連なる山道。そこに私と百瀬さんは霊体となって存在していましたが、足元に魔法陣が広がり……お互いの姿をユニットへと憑依させて行きました。

 

 

「ライド《リザードランナー アンドゥー》!」

優依の手札5/ダメージ0/ドロップ0

 

「ライド……《手当の守護天使(ファーストエイド・セレスティアル) ペヌエル》!」

天音の手札5/ダメージ0/ドロップ0




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回の更新は未定となりますが、気長にお待ち頂ければ嬉しいです。次回からはファイト描写も入ってきますので、プレイングミスなどがあるかもしれません。もし見つけられましたら、伝えて頂けると今後の執筆がスムーズに進みますのでよろしくお願いします。


 それではまた次回。今回も感想を是非。

 いつもの様に……高評価やお気に入り登録のほど、よろしくお願いします。

ファイトの描写について

  • 第2話と第3話の形式が良い
  • 第6話(最新話)の形式が良い
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