セラフィナイト ~最強世代6人目のウマ娘~   作:背水 陣

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ターフへかける思い
0話『チーム・アルタイルのマネージャー』


走るのが好きだった。

 

 

ターフを踏みしめ、風を切る。

腕を思い切り振って、足を動かす。

 

 

前へ、前へ、前へ、前へ。

 

 

ゲートが開いてから、一度も譲らない先頭の景色。

後ろから迫る、力強い足音。

 

 

全て全て、この景色も声援も自分だけの物。

 

 

誰にだって譲らない。

 

 

 

 

 

デビューから負けることなく連勝を重ね、遂に迎えた重賞最高峰のGⅠレース『皐月賞』。

 

 

 

 

 

 

私はゲートではなく、観客席に居た。

 

 

 

 

 

 

痛々しいほど硬く嵌められたギプスと共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――約一年後。

 

 

 

「みんな、お疲れ様ー!」

 

レースを終えて、地下バ道に戻ってくる選手を迎える。

 

ふんわりと肩まで伸びた金色の髪。額の付近のみ、白く染まった部分は丸い円を描いている。

緑色の瞳が見えないほど弓なりにした、いっぱいの笑顔で迎えるウマ娘が居た。

今日も元気に、銀色の輪をした耳飾りを揺らしている。

 

「いつもありがとね、セラフィナイト」

 

柔軟剤の香りが漂うタオルを手に取り、同じチームのウマ娘が礼を言った。

 

「……」

 

セラフィナイトと呼ばれたウマ娘は、そんな同僚の背を少し気まずそうに眼で追う。

 

 

「悔しくないわけないのに、気丈だよねー。あの子も」

 

「うわぁ!? スカイちゃん!?」

 

緩んだ表情で、突然背後に現れたウマ娘はセイウンスカイ。

トゥインクル・シリーズ最高格のGⅠで勝利を手にしている実力者だ。

しかも栄えあるクラシックレースの二冠。皐月賞と菊花賞である。

 

今日のレースでも、人気に恥じぬ逃げっぷりで堂々の一着。

五バ身差の二着が、先ほどのウマ娘だ。

 

「うん。でも、諦めない気持ちだけは本物だよ。

 だって、前のレースよりスカイちゃんとの差、縮まってるじゃない」

 

「確かにね~。……ま、次も負けるつもりないけど」

 

「……うん。頑張ってね」

 

「…………ところで、ラフィ?」

 

「ん? なぁに?」

 

「どう? 元気?」

 

「え? ああ。うん。元気だよ。いつも通り」

 

「ふぅ~ん……」

 

頭の後ろで手を組み、訝しそうに緑の瞳を見据えるセイウンスカイ。

 

「そうそう、今度はグラスちゃんと模擬レースするんだけどさ」

 

「あ、そうだったね。対スペちゃんを仮想したアレだよね。天皇賞・春に向けての!」

 

「うん。……だからさ、ラフィ。……ラフィが出来るんなら、一緒に……」

 

「ああ、ほらスカイちゃん! そろそろウイニングライブの準備しないと!」

 

「えー? まだ早くない?」

 

「ダメダメ。『マネージャー』の言うことは、ちゃんと聞きなさい!

 どうせちょっと息抜きしてから行くんだから。

 早めに出るぐらいが、スカイちゃんはちょうどいいの!」

 

「……はいはい。ほんと、ラフィはお母さんみたいなこと言うんだから~」

 

気だるそうにセイウンスカイは背中を押され、地下バ道を後にする。

 

飄々とした性格ながらも、内に秘めた勝負への想いは本物。

今日もしっかりと勝利を手にした彼女は、セラフィナイトにとっても誇れる友人であった。

 

 

 

 

 

――――そんな皆と私も。

 

 

 

 

 

(…………ダメダメ。そんなこと思っちゃ)

 

思わず零れた本能を制し、手に持ったレースや選手用の資料を握りしめる。

 

脚部をほとんど覆うサポーターのついた足を動かし、チーム『アルタイル』所属の彼女は

戦いを終えたウマ娘達のケアに向かうことにした。

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