セラフィナイト ~最強世代6人目のウマ娘~   作:背水 陣

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11話『同期の眼差し』

「あの、セラフィナイト先輩」

 

一通り介抱が終わった後、まだ余力のあるカルミアボタンが口を開いた。

 

「みんなを休憩させている間、一緒に走りませんか?」

 

「え? うぅん……でも、この子たちを放っておくわけにも……」

 

「わたしが見ておくから、走っておいで」

 

声のする方向を見ると、呆れ顔のトレーナーが歩いてきていた。

ため息混じりで、注意をする。

 

「お医者さんには、絶対に無理しないようにって言われてたでしょ。

 怪我自体は治ってるけど、再発の可能性は十分あるんだから」

 

「……ごめんなさい。でも、無理してるわけじゃなくて……」

 

しゅんとするセラフィナイト。

久しぶりで、体のセーブが利かないのだろう。

 

有り余る才能と、体の状態の均衡が取れていない。

 

 

「セラ、わたしのプランは頭に入ってるよね」

 

「もちろんです」

 

「言ってごらん」

 

 

脳内にインプットされている、スケジュールをセラフィナイトは細かく口に出していった。

 

 

 

「4月から6月の時期は、主に基礎トレとレースへの勘を思い出す期間。

 7月8月は合宿を利用して、肉体面の仕上げを行う。

 9月から11月、オールカマー、アルゼンチン共和国杯、ジャパンカップに出場して全勝する。

 実績と人気をそこで集めて……

 12月、有記念でみんなと勝負! ですよね」

 

「うんうん。完璧だね。

 ちゃんと目標が定められている以上、無理は絶対禁止。わかった?」

 

「わ、わかってますってばー!」

 

「絶対わかってない。

 ……ボタン、悪いけどペース配分を管理して一緒にランニングしてくれる?」

 

「わかりました」

 

大きく頷く赤髪のウマ娘。

何が悪かったのか、いまいち実感できず

先輩ウマ娘は、首をかしげながらコース上へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「あー! ホントにセラちゃん走ってるー!」

 

コースの上方から元気な声が飛んできた。

そこに居たのはスペシャルウィーク。

隣にはグラスワンダーとエルコンドルパサーも居た。

 

三人とも練習着を纏っている。

汗が引いていないところを見るに、トレーニング中だったのだろう。

 

「ブエナスタルデス、セラちゃんのトレーナーさん!

 セラちゃん、もう走れるんデスか?」

 

「オラ~、エルちゃん。みんなもお揃いで。

 うん。元々足の状態は戻ってたから。

 後は本人の気持ち次第って所だったんだ」

 

「では、心配無用でしたね」

 

「おー。グラスちゃん、今年も当然有記念出るでしょ?

 セラのプラン、有が目標だから。絶対来てよね!」

 

「ええ。もちろん。

 ですが、まずは安田記念でキングちゃんと、ですけど」

 

「ふふ。スプリンター路線にシフトしたキングは強いよー?

 舐めてかからないように!」

 

「あらあら。そんなこと、一度もしたことないですよ~」

 

「おー、怖い怖い。お手柔らかにね。

 ……ん? スペちゃん?」

 

遠く、ターフを駆けるセラフィナイトをスペシャルウィークは目で追っていた。

愛しむように見た後、眉間にキッと力を込めて踵を返す。

 

「私、トレーニングに戻ります! お邪魔しました!

 トレーナーさん! 私も もちろん、今年の有記念目指しますから!」

 

手を振り去っていくスペを、残った二人はあきれ顔で見送る。

 

「スペちゃんってば、セラちゃんがトレーニング再開したって聞いて

 一番最初に飛んでいったのに。もう行っちゃうんデスね」

 

「敵情視察は十分、といったところでしょうか。

 私たちも、戻りましょう。失礼します、トレーナーさん」

 

「そうデスね! ライバルが復帰したとなれば、エルも うかうかしていられません!

 それじゃあ、トレーナーさん。チャオ!」

 

「チャオー。またねー」

 

 

風のように去っていくみんなを見送り、トレーナーは目線を戻す。

 

(……みんなも意識してくれてる。

 セラ、あなた本当にいい時代に生まれたね)

 

 

同じチームで支えてくれた、セイウンスカイとキングヘイロー。

今日、駆けつけてくれた三人。

 

セラフィナイトが再起するには、誰一人も欠かせなかっただろう。

お互いがお互いを認め合っているライバルだから。

 

 

走ることが大好きなセラフィナイト。

 

でも、走るだけじゃない。

 

 

走って、勝つことが彼女は好きなのだ。

 

 

だから、そこに立ちふさがる壁が大きければ大きいほど

乗り越えた時の喜びは一入(ひとしお)大きい。

 

キングヘイローが、菊花賞で敗れた時、立ちふさがる同期(ライバル)という

運命に対し、不満と不遇を漏らしたこともあったが……。

 

でも、だからこそ。彼女は自分だけの道を見つけることが出来たのだ。

今となっては、もうそんな不安もいらないだろう。

 

 

(……頑張ろうね、セラ)

 

 

真っすぐな目で芝を蹴るセラフィナイトを見つめた後

トレーナーは、隅で座り込んでいる新人ウマ娘達の元へと歩いていった。

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