これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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ついに怪物との対決、ダイユウサクに勝機はあるのか


10話 怪物オグリキャップの猛威

「よお、いろいろ呼び出されたんだってな! 不良ウマ娘じゃねえか」

 

レースの翌日、カフェテリアで嬉しそうに「ぎゃはは」と笑っているのはスペインランドだ。隣ではメジロワースも上品にニコニコと笑っている。

いまはランチタイムではないが、ちょっとした休憩中に自動販売機の前で雑談するくらいには仲が良くなってきた3人である。まあ、クラスにダイユウサクの友達がいないという事情もあるが……それはそれだろう。

 

「派手にやらかしたらしいからなあ。くぅー、乱闘なんて見たかったぜ」

「あら、パドックでのパフォーマンスの件で注意を受けたのではありませんの?」

 

そうなのだ。

よく分からないが、レース結果に不満があったウマ娘が騒ぎを起こし、なぜかダイユウサクの名前が出たらしい。

結局ダイユウサクは直接的には無関係だったわけだが、派手なパフォーマンスなどで他ウマ娘の集中力を乱さないようにと注意を受けてしまった。

どうもパドックでのパフォーマンス(?)が出走者をイラつかせたようで乱闘の原因の1つと思われたらしい。

 

復帰レースで入着は嬉しいが、乱闘騒ぎでウイニングライブも中止。

1着と4着がキャンセルとなり、ひょっとしたらダイユウサクが繰り上がりでメインステージにあがるかもと言われた時には肝が冷えた。そんなことにならなくて本当に良かったと思う。

 

「誰に叱られたんですの?」

「うーん、知らない? 見たことある、ような人たち……理事長と緑の人もいたかな……?」

 

これはダイユウサクが不真面目なのではなく、ウマ娘という種そのものが人間の判別が苦手なのだ。

 

学園の職員が常に似たような服装をし、毎日同じ香りの香水をつけ、同じ飴をなめているのは、服装や匂いが変わるとなれていないウマ娘が混乱するからである。

おそらく緑の人こと駿川たづな女史がイメージチェンジで服装を変えたら多くのウマ娘が『どこかで見た人だな』と首を傾げるはずだ。

 

こうしたこともあり、特別親しい存在でもないかぎりウマ娘は人間を名前で呼ばない(彼女らも名前を間違えたら失礼だとは思っているのだ)。

とは言え、もちろん個体差はありシンボリルドルフなどは人の顔を覚えるのが得意だという。ウマ娘も色々だ。

 

「緑の人って怒ると怖いんだぜ。ウマ娘に走って追いつくんだってよ」

「まあ、ランドったら。そんな風に噂話をするものではありませんわよ」

 

スペインランドは冗談交じりに話すが『確かに緑の人は他の人間と受ける感じが違うかも』とダイユウサクは考えた。

かといってウマ娘かと問われれば、それもまた違うような不思議な人なのだ。

 

「トラブルはあったにせよユウサクは初入着したし、よかったじゃねえか」

「ええ、カッコよかったですわ。パドックでは上着を観客に投げてビシッとポーズを決めたんですのよ」

 

メジロワースがなにやら不思議なカッコいいポーズをとっているが、ダイユウサクは絶対そんなことしていない。

それを見てスペインランドが「ぎゃはは、ジョジョはやベーだろ」とゲラゲラ笑っている。たぶんマンガとかアニメのキャラクターだろう。

 

「週末はまたレースですわね。体調はいかがです?」

「あ、うん。それが不思議なくらい良くて……」

 

この2人といると話題がコロコロ変わるのでダイユウサクはついていくのが大変だ。

だが、それも不快ではない。

 

「やべっ、時間だな」

「ユウサクさん、それではまた後ほど」

 

スペインランドが「初賞金、なんに使うんだーぁー」と軽いドップラー現象を起こしながら去っていく。ウマ娘の足は速い。

 

(初賞金、か)

 

ダイユウサクもクラスに戻り、席に着く。

ジュニアのころは『昨日レースだったんでしょ?』『どうだったの?』みたいなキャピキャピした会話もあったが、シニアになると誰も話題にしない。良くも悪しくも慣れてしまっているのだ。

 

(5着で自分にごほうびってのもおかしいし、やっぱ実家に何か送ろうかな)

 

クラスには相談相手もいないので、ダイユウサクは授業中にぼんやりと賞金について考えた。

実家に何か送ろうとは思うのだが、その『何か』のイメージが湧かない。

 

(ランドさんみたいに現金を仕送りってのも変かな。そもそも学費から考えたら大赤字だし)

 

ダイユウサクが得た賞金は条件戦、しかも5着。微々たるものだ。

両親に学費を負担してもらっているのに、大きな顔で賞金を実家に送るのは違う気がした。

 

チャイムが鳴り、クラスメイトが移動を始めた。次は体育だ。

ウマ娘を長時間ジッとさせるとストレスが溜まるので、わりと体育の授業はある。今日は体育館でバレーボールをするそうだ。

 

前日レースだったダイユウサクは休養のため見学。

制服のまま間食用にと渡されていたカロリーバーをもそもそとかじる……妙に人工的な味は美味しくもないが、薬みたいなものだとダイユウサクは割りきっていた。

ノルマ1日2本と言われているソレはウマ娘用だけに大きく、こうしてマメにかじらなければなくならない。

 

ふと、視線を感じた。

振り向くと自分と同じく観客席にいるオグリキャップがこちらを凝視している。すごい迫力だ。

怪我をしている彼女も見学なのだろう。

 

(うわっ、何か気にさわることしたかな……? あ、コレか)

 

ダイユウサクはカロリーバーをカバンにしまうことにした。

たしかに観客席とはいえ授業中にモノを食べていれば気にさわるだろう。

 

するとオグリキャップは「あぁ」と小さくうめき、しゅんと耳を垂らしてしまった。

同時にゴロゴロ(決して『ぐうー』というようなかわいい音ではない)と轟く雷鳴のような異音……オグリキャップが恥ずかしそうに腹部を押さえているが空腹なのだろうか。

 

(まさか、ね)

 

ダイユウサクがカロリーバーを取り出すと、オグリキャップの耳がピンと立った。無表情ながらどことなく嬉しそうだ。

カロリーバーをしまう。すると先ほどのように耳が垂れた。

サッ、ぴんっ。サッ、しゅん。

試しに何度か繰り返したが、どうやら間違いなくカロリーバーが目当てらしい。

 

「あの、良かったら1つどうですか?」

「……いいのか?」

 

勇気をだして話しかけると、無表情だったオグリキャップにパアッと笑顔が広がった。

未開封のカロリーバーを1本渡すと待ちきれないと言わんばかりに包装を破り捨て、一気にヒョイと口に放り込む。

 

「ひ、一口で……!」

 

ダイユウサクが苦労しながら食べているそれは、オグリキャップにとって物の数ではないらしい。

それどころか「もうなくなってしまった」と悲しげに包装を見つめている。

その様子があまりに憐れっぽく、ダイユウサクはつい食べさしのカロリーバーを取り出した。

 

「あの、これは私の食べかけだけど」

「ありがとう……! ありがとう……!」

 

本来は自分が食べねばならないカロリーバーをオグリキャップに与えるのは気が引けるが、この状況で断れるほどダイユウサクは豪胆ではない。

食べかけでも気にせず、オグリキャップは一気に口に放り込んでぼりぼりと咀嚼している。

 

まだ物欲しげにしているが、もう持ち合わせがないので「それが最後なんです」と伝えるとオグリキャップは「ごちそうさまでした」と丁寧に手を合わせてくれた。

なんだか気恥ずかしい。

 

「すまなかった。こんなに美味しいものを分けてくれるなんて……ダイユウサク、ありがとう」

「あ、どういたしまして」

 

見学中の交流、これだけのことだ。

だが、ダイユウサクは『自分の名前を覚えていてくれたのか』と軽い衝撃を受けた。

 

(まあ、クラスメイトだけどさ)

 

理屈で考えれば不思議ではないのだが、それでも国民的アイドルに名前を呼ばれるのは不思議な感じがする。

ダイユウサクはオグリキャップとは全く交流がなかったのだ。

 

当のオグリキャップはもうダイユウサクに興味を失った様子だ。隣で無表情にバレーボールを眺めている。

その思考はダイユウサクには全く読むことはできない。

 

(でも食べ物か。それもいいかもね)

 

カロリーバーを喜んで食べてくれたオグリキャップを見て、ダイユウサクはひらめくものがあった。

 

「……母さんが好きそうなお菓子でも送ろう。うん、それがいい」

 

甘いものが好きなメジロワースや、面倒見のいいスペインランドに相談してみよう。

ひょっとしたら美味しいお菓子屋さんを教えてくれるかもしれない。東京でしか買えないお菓子を送れば両親は喜んでくれるだろうか。

少し照れ臭いが近況報告の手紙を添えてもいいかもしれない。

 

「……お菓子?」

 

何に反応したのか、先ほどからゴロゴロと異音が鳴り響き、オグリキャップがこちらを凝視している。

本当にもう食べ物もってないから許してほしいとダイユウサクは願うのであった。




先日、日間ランキングに引っ掛かっていたそうです。
メインキャラがほぼ出ない作品を読んでいただき感謝しております。

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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