これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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11話 春だから

土曜日、中京競バ場までの移動。

 

トレーナーがレンタルしたハイエース、その車内にアルビレオのメンバーはいた。

本日の中京競バ場、第7レースにダイユウサクが、第10レース知多特別にスペインランドが出走するのだ。

メジロワースは応援である。

 

今回、車での移動になったのはスペインランドが増えたぶん、新幹線より自動車で移動したほうが安上がりだというなんとも庶民的な理由だ。

弱小3等星のチームは予算に余裕がない。

 

「あー、長距離運転、思ったよりダルいな」

 

運転手がぼやくトレーナーなのは当然として、助手席にダイユウサクが乗っているのは車酔い対策である。

それほど車酔いの経験はないが、幼い頃のバス旅行で盛大にやらかした記憶がある。集団行動が苦手なダイユウサクなのだ。

 

「ユウサクはダート1000Mか。こりゃ1つもミスできねえスプリント勝負だな! んで、どいつが強いんだよ!?」

「まず、リキアイフジオー。2勝に加えて入着も多い。この中じゃ間違いなく実績上位だ」

 

資料を読みながらスペインランドがトレーナーに質問している。

走行中の車内のため、妙に声が大きい。

 

(ランドさん、酔わないのかな)

 

車の中でよく資料が読めるなと感心するが、運転しながらいちいち答えるトレーナーもすごい。

毎回レースの相手を調べるだけで大変だろうな、とダイユウサクは思う。

 

「ユウサクさんに1000Mはちょっと忙しいのではなくて?」

「まあな。もっと言えばダートも向いてないが、軽い負担でレースの経験を積ませたい。これに尽きる」

 

メジロワースは距離を、トレーナーはコース適正に不安を感じているようだが、このあたりダイユウサクはあまり心配していない。

自分は3戦未勝利。勝率0%は同世代の最下位だ。

 

(少しでも追いつきたい、私はまだ出しきってない)

 

先週のレースを経て、自分が成長したのを感じる。不得意な条件でもレースに出たい。

体調は不思議なくらい良い。トレーナーが経験を積ませてくれるのなら、ハードなローテーションはのぞむところだ。

 

「うおー、燃えてんなあ。俺も負けてらんねえわ」

「すばらしいですわ。2人ともファイトですわよ!」

 

一瞬『思考を読まれた!?』と驚いたが、そんなはずはない。

どうやらダイユウサクの思考は口に出ていたようだ。

ボッチが長かったために独り言の癖がついてしまっているのである。

 

「え、どこから口に出てました……?」

「トレーナーすごい、くらいからですわ」

 

どうやら、かなり長いこと垂れ流し状態だったらしい。

ダイユウサクは耳をペタンと伏せて頭を抱えてしまう。

 

(あー、これは恥ずかしいよ。どうにかしないと……)

 

トレーナーが「重症だな」と呟き、スペインランドが「ぎゃはは」と大笑いをしている。

 

「ひょっとしてこれも出てました?」

「わたくしはかわいらしいと思いますわ」

 

無情にもメジロワースの答えはYESだ。

ダイユウサクは「うう……無よ、無になるの」と助手席で縮こまっていく。

 

その様子を見た3人は追い討ちをやめ、無言で苦笑いするのであった。

 

 

 

 

 

 

「あーっ、もうっ! そこをおどきなさいっ! ユウサクさんが通れないでしょう! ああっ、そっちじゃありませんわ! 外ですっ! そーとーかーらー!」

 

平田とメジロワースは観客席からレースを見守っていたが、ダイユウサクはバ群に揉まれて8着に終わる(16人立て)。

後ろからの競バを試してみたが展開を読めずに上手く抜け出ることができなかったようだ。

 

「ま、これは初めての試みだからな。この経験こそが必要だとダイユウサク自身も分かってるさ」

「それとこれとは別ですわ! わたくしはユウサクさんの勝利を願っていたのです!」

 

負けず嫌いのメジロワースは「メジロにきますわっ!」と意味不明なことを口走りながらプリプリと怒っている。

 

だが、平田としては『ある程度』納得のいく結果である。

タイムオーバーを食らったウマ娘が復帰後まもなく5着と8着である。トレーナーとして手応えを感じるには十分な成果であった(今回はパドックを無難にこなしてくれてホッとしたのもある)。

 

「ま、そんなに怒るなよ。ランドの出走までは間があるし、ダイユウサクが出てきたら中京名物の『いっぱち』できしめんでも手繰ろうや」

「串カツもつけるなら許してあげますわっ!」

 

どうやらメジロワースは腹が減っているらしい。

しかし、なぜ平田が彼女に許しを乞わねばならないのかは謎だ。おそらく本人もよく分かっていないだろう。

 

「……すいません、ダメでした」

 

ほどなくして出てきたダイユウサクはさすがに耳を垂らして凹んでいたが、競バを覚えていけば勝てるようになるだろう。

最近の彼女は見るからにバ体が大きくなってきているし(どことは言わないが)、健康そうだ。

まさに成長期なのだろう。

 

「結果は着外だが、伸び代を感じさせる内容だった」

「……物は言いようですよね」

 

ダイユウサクは賢いだけに口先だけの慰めはイマイチ響かないタイプだ。レースやトレーニングを重ねて自信をつけさせるしかないだろう。

 

「お疲れ様でした。さ、ユウサクさん。ランドが走る前にきしめんと串カツ食べますわよ。味噌ダレひたひたの串カツですわ」

「え、レース直後に揚げ物って……」

 

平田は「ランドが戻ってきても食べるんだろ?」と呆れるしかないが、ある意味メジロワースはウマ娘らしい愛嬌がある。

スペインランドがリーダーなら、さしずめムードメーカーだろうか。

 

そして、そのリーダーは……

 

「くあーっ! 負けた負けたあ! 験担ぎに『うまかつ』でカチウマサンド食おうぜ!」

 

12着の大敗であったが、やけ食いで機嫌を直したようである。

平田は『験担ぎなら先に食べるべきでは?』と疑問に感じたが、突っ込むとややこしそうなのでやめておいた。

 

(もう少しローテーションを緩めて疲労を抜けば変わるのだろうが)

 

わざわざ遠征して結果が出なかったのは平田としても残念ではある。

だが、スペインランドの『家庭の事情』を理解しているだけに平田もとやかくは言わない。

むしろ年間最多出走賞(正式な賞ではないがトレセン学園内で表彰される。皆勤賞とかと同じ扱い)を狙おうかと考えているくらいだ。

 

「ランドもダイユウサクも頑張ったし、たまには帰りに焼き肉でもおごってやるとするか」

「そりゃないぜっ! 食う前に言えよ! 食う前に!」

 

ギャーギャーとさわぐスペインランドを無理やり詰め込み、出発する。

中京からトレセン学園は遠い、焼き肉は後日である。

 

(中京までの日帰り運転はキツいか……交代要員で兼任サブトレーナーでも引っ張ってこなきゃ身がもたんな)

 

そう、平田も新米トレーナーなのだ。

こうした小さな失敗を重ねて成長する。それは担当する彼女らとなんら違いはない。

 

暴れていたスペインランドだが、ダイユウサクが「トレーナーってランドさんだけ愛称で呼ぶみたい」とつぶやいた独り言で大人しくなった。

尻尾を持ち上げているのは、たぶん春だからだ。




掲示板

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8着 ダイユウサク

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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