これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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アンケートの結果、ダイユウサクが出走したG2高松宮杯(2000M)はG1高松宮記念(1200M)として扱います。
出走者、距離、開催時期に違和感もでていますが、ここではこういうものとして扱います。
2000じゃなくて1200だったらバンブーメモリーが勝ちそうだなあ。




2章 重賞戦線異常アリ!
13話 高松宮記念


ダイユウサクの初勝利から約3ヶ月後。

7月、とあるクラブハウスにて年配のチームトレーナーとウマ娘がミーティングを行っていた。

ウマ娘の名はメジロアルダン。次走にG1高松宮記念を控えた一線級のウマ娘である。

 

「ダイユウサクさん? クラスメートです。あまり話したことはありませんけど」

 

トレーナーから渡された次走の資料を眺めながらメジロアルダンは首を傾げた。

ダイユウサクはたしかにクラスメートだ。

だが、何と言うか……トレセン学園のウマ娘に優劣をつけるなら間違いなく劣の部類だ、とメジロアルダンは思う。

 

「たしか……体が弱くてお休みの多い方ですね。私もケガが多いから同情してしまいます」

「そうか、ならば急に成績を上げたのは体調の問題だろうな。次のページを見てくれ」

 

トレーナーの指示に従い、ページをめくる。すると意外なデータが記載されていた。

 

「ここ6戦で3勝、2着2回、6戦全てに入着している。条件戦だがモノが違う、と言ったところだ」

「ふうん、彼女も出るんですね、高松宮記念」

 

本来なら格下も格下。G1に出走などできるウマ娘ではない。

トレーナーの説明によるとゲート割れにもぐりこんできたらしい。

 

ティアラ三冠を達成したレジェンドウマ娘を姉にもつメジロアルダンは相応にプライドも高い。

ルールの隙間をぬった格下と競争するなど不愉快な話だった。

 

「こう言ってはなんですけど、条件戦で勝ち負けしているようなウマ娘をチェックするくらいならコチラではないですか? 安田記念の勝ちウマ娘バンブーメモリーさん」

 

バンブーメモリー、G1安田記念に勝ったウマ娘だ。

他にも出バ表にはティアラ路線の強豪シヨノロマンや、オークスウマ娘のコスモドリームもいる。

いずれも実力者ぞろい、油断をして勝てる相手ではない。

 

「そもそもダイユウサクさんは名門の生まれでもなさそうですし、チームも3等星ですよね」

 

ウマ娘の名門名家となれば自前のトレーナーにトレーニング施設があるものだ。幼い頃から家付きのトレーナーに年相応のトレーニングを受けてからトレセン学園に入学するため能力が高い。

一般家庭で生まれ育ったウマ娘と比べれば、単純に重ねたトレーニングの質と量で上回っているのだ。

 

トレセン学園でも親戚が活躍したチームは「あいつの身内なら走るだろう」と積極的にスカウトをしてくれるため、レースにも出やすい環境が与えられる。

名家のウマ娘は一般家庭のウマ娘よりも結果を残す。これはメジロアルダンの偏見ではなく常識なのだ。

 

もっとも、その差を才能だけでひっくり返すオグリキャップのようなモンスターも中にはいるが、それはあくまで例外。

メジロアルダンにはダイユウサクがその例外だとは思えなかった。

 

「そうだな。そうやって理屈を並べれば警戒するほどではない……が、これを見てほしい」

 

そう言ってトレーナーが取り出したのは数本のビデオテープだ。

一流のチームともなればクラブハウスにビデオデッキもある。

 

「ダイユウサクのレース録画だ。彼女は前からの競バもするが、今回は特に追い上げを見せたレースを見てもらう……話はそれからだ」

 

気は進まないが、トレーナーに逆らうのはメジロアルダンの流儀ではない。

大人しく映像に注目した。つまらないレベルのダート戦だ。

 

「……ここだ、オレンジのゼッケン」

 

トレーナーが指摘した瞬間、ダイユウサクの動きが明らかに変化した。

爆発的な加速と信じられないコースどり。どれだけ視野が広いのか、あっという間にバ群を切り裂いて先頭に迫る。

このシーンだけを切り取ればG1クラスの名ウマ娘と言われても納得してしまいそうになる走りだ。

 

「固有スキル……ですね」

「ああ、そうとしか思えん」

 

固有スキル、ゾーン、無念無想……言い方は様々ではあるが、ウマ娘がレース中に極限まで集中力を高めると発現する競争力の急上昇のことだ。

発現したウマ娘によれば……シンボリルドルフであれば玉座、マルゼンスキーであればハイウェイでの疾走など、自身のもつ『勝利へのイメージ』と共に身体的精神的なリミッターが外れたような全能感がもたらされるという。

 

ウマ娘がレースに入り込む……その条件はウマ娘によって変わるためトレーニングによる習得は困難。超一流のウマ娘しか知り得ぬ、メジロアルダンも到達できないレースの高みだ。

 

「なんで、こんなレベルのレースで……」

「分からない。だが、他のレースを見てみると明らかに使えていない。条件が厳しいタイプなのかもしれない」

 

トレーナーはビデオテープを入れ替え、他のレースを映す。

そこに映るのは地力と思われる走りで条件戦に勝つダイユウサク……好走だとは思うが平凡だ。特別見るべきところはない。

 

「成長、というよりも元々オープンウマ娘級の資質はあったらしいな。コンディション次第ではさらに上積みもあるかもしれんぞ」

「油断はできませんが、現時点では負けない相手ですね……あれが無ければ、ですけれど」

 

なんで『こんなレベルで走るウマ娘に』できて『私には』できないのか。

考えるだけでイラだちがつのる。

 

「私は勝ちます。私はメジロラモーヌの妹ですから」

 

発奮したメジロアルダンの宣言にトレーナーは満足げにうなずき「では次のページへ行こう」と促した。

 

 

 

 

 

 

「わあっ、それがユウサク先輩の勝負服なんですかっ? 素敵ですねえ」

「ギリギリになったけど間に合って良かった、間に合わなかったらとヒヤヒヤしたよ」

 

アルビレオのクラブハウスではしゃいでいるのはトレーナーと、新人のツキノコガネだ。

 

ツキノコガネはおっとりとしたウマ娘で、スペインランドがどこからか拾ってきて、いつの間にかクラブハウスに居着いた。

顔つきが幼く、小柄のわりに女性らしい体つきが目だつ鹿毛のウマ娘だ。

ダイユウサクたちから見て2才年下になる。

 

本来ならトレセン学園のレーシングチームは原則5人以上のウマ娘の登録が求められるのだが、アルビレオは発足間もないために特例として少人数が許されていたらしい。

トレーナーも渡りに船とツキノコガネをスカウトして今に至る(まだ足りないが猶予期間はあるそうだ)。

愛称はキノコ、トレーナーいわく素質は悪くないとのこと。

 

「まったく、ムチャすんなよ。いきなりG1にでることになったって聞いた時にはたまげたぜ」

「本当ですわ。普通エントリーします? あたま大バクシンですわね」

 

スペインランドとメジロワースが苦笑いしているが、条件戦のウマ娘がG1に出るなど異例も異例の事態だ。

 

「いやな、トレーナー間でゲート割れしそうって話はあったんだ。いまの勢いのダイユウサクが上のランクで通じるか試してみたかったし、チャンスだと思ってな」

 

トレーナーから「袖を通してサイズを確認してくれ」とダイユウサクに勝負服が手渡された。

赤と黒のドレスに黄色のスカート。これしかない、とウマソウルが示したデザイン。

ダイユウサクが触れた瞬間、ドクンと心音が高くなった。

 

「じゃあ、その、着替えてみます」

 

ダイユウサクは平静を装いながら受けとり、パーテーションで作られた一角で自分の勝負服と向き合った。

不思議だ、と思う。

 

明らかに走りに向いていないドレスなのに、触れただけで活力が自分にみなぎるのを感じる。

袖を通すと『走りたい』と本能がうずいた。

 

(まるでパーティーに行くみたい)

 

姿見の鏡で自分の姿を確認すると『まるで名家のお嬢様だ』と嬉しくなった。

つい、ダイユウサクの口元もゆるんでしまう。

 

着替え終わり、はたと気がついた。

平日昼間のトレセン学園でドレス姿、ちょっと浮かれすぎのイタいウマ娘みたいではなかろうか。

 

「あの、着替えてみました……けど、その」

 

気恥ずかしさから半分だけ姿を見せたダイユウサク。

 

「まあ、お似合いですわ! もっと近くで見せてくださいまし!」

「わあ、先輩かわいいですねえ」

 

ダイユウサクは自分は無表情で愛想がないと自覚しており『かわいげ』というものが欠如していると信じきっている。

素直に称賛を喜ぶことができない。

 

(……ううっ、褒め殺しってこういうやつかな)

 

つい、恥ずかしくてスカートをギュッとつかんで耐える。

その照れた姿が初々しくメジロワースにキャーキャー言われているのだが本人は知るよしもない。

 

「くあーっ、勝負服はうらやましいぜっ。G1の大舞台に俺たちの仲間が出るなんて最高だな!」

「ええ、とても誇らしいですわ。ユウサクさんなら高松宮記念もぶっちぎりですわよ。こんな風に」

 

メジロワースが手を動かしながら「ビューン」と妙なジェスチャーをしてみせた。

たぶん彼女なりのぶっちぎる動きだろう。

 

(みんな喜んでくれるけど……)

 

正直に言えば、ダイユウサクは勝てるなんて想像もしていない。

しかし、G1の大舞台は誰でも立てるわけではない。出走できるだけで感謝しなければならないのはダイユウサクも理解している。

 

G1レースはエントリー料だって安くない。

担当ウマ娘に出走のチャンスがあり、ならばG1を経験させてやろうと登録してくれたトレーナーには感謝でいっぱいだ。

 

だから、ダイユウサクは『勝てない』などとは口にしない。

 

「私は最後まで諦めない。だから応援してください」

 

そう静かに頭を下げる。

チームメイトも、トレーナーも笑っていた。

この場に無表情で愛想がないウマ娘などいないことに、ダイユウサクはまだ気づいていない。

 

「じゃあ、そろそろ脱ぎますね。汚したくないし……次は本番かな」

「何言ってんだ? 今日はそのまま記者会見だよ」

 

トレーナーの言葉にダイユウサクは「ええっ?」と驚くが、壁に貼ってあるスケジュール表にはちゃんと『合同記者会見』の記載がある。

どうやら勝負服で舞い上がっていたようだ。

 

「勝負服のお披露目ですわね」

「ガツンと勝利宣言してやれよ、『調子に乗るな』ってよ!」

 

メジロワースとスペインランドのエールにダイユウサクは曖昧に頷いた。G1初挑戦であまり派手なことは言いたくはない。

その後も「それならフランス語で『らびくとわーるえともあ』の方がカッコいいですわ」「カタコトの外国語のどこがカッコいいんだよ」などと2人で盛り上がっていたが、時間が来たので会場へ向かった。

 

会場に入ると「おおっ」「気合い入ってますね」と記者席がざわついている。

見れば出走者は皆が制服、勝負服はダイユウサクのみであった。

 

(ええっ、なにこれ? メチャクチャ恥ずかしいんだけど)

 

動揺したダイユウサクがキッとトレーナーを睨むが、トレーナーも「あれー、おかしいな」などと冷や汗をかいている。

周囲の生暖かい視線がつらい。

 

これによりダイユウサクのトレーナーへの信頼が大幅に低下したが、後に『G1初出走を決めたトレーナーに先輩トレーナーがお祝いがてらイタズラする』という慣習があり、ひっかけられたと判明。

ダイユウサクも仕方なしに許すことにはしたが、納得はできなかった。

 

 

 

【史実馬紹介】

 

ツキノコガネ

87年生まれ、鹿毛。

中央44戦6勝

地方24戦6勝

 

中央では6勝に2着8回とそこそこの善戦。

後に笠松や高知と戦場を移しながら多くのレースに出走した。

 




前走で最終回もあるかなとダイユウサクさんに強い走りをさせすぎてしまいました……そこで固有スキルの発動が厳しいという設定をたしましたがどうでしょうか。おかしくなければいいんですが。
あと、レース展開は作劇の都合で作っております。史実の展開ではありませんのでご注意ください。

ダイユウサクのチームに加入するのは原作キャラとオリジナルのウマ娘、どちらが良いでしょうか

  • 原作メイン級のウマ娘
  • 原作モブウマ娘
  • オリジナルのウマ娘(史実馬アリ)
  • 架空のウマ娘(史実馬ナシ)
  • 新メンバーは不要
  • その他(感想などでお伝えください)
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