これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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15話 メジロの秘密兵器

高松宮記念、パドック。

 

『続いて5枠8番メジロアルダン。本日の1番人気、すごい声援です』

『ダービーでの怪我もありましたが前走で見事な復活を見せました。踏み込みも力強いですよ』

 

メジロアルダンがパドックで軽く手を振った瞬間、歓声が湧き起こった。

G1の大観衆、その多数に支持された1番人気ともなれば声援も凄いものがある。

 

「メジロアルダンか。史上初トリプルティアラを達成したメジロラモーヌを姉にもつメジロの秘密兵器だ」

「どうした? 急に」

 

パドックを見つめていた二人組の競馬ファン、その片割れが唐突に解説を始めた。

雰囲気からしてかなり慣れたわけしりの古参のようだ。

 

「メジロアルダンは脚部不安がありデビュー戦が遅れたこと、ダービーで怪我をしたことでこれが6戦目となる。だが、5戦3勝2着2回。連対率は驚異の100パーセントだ」

「満を持してG1制覇に乗り出してきたってわけか。対抗バはどのウマ娘になるんだ?」

 

細身の男性から質問を受けたメガネの男はじっとパドックを見つめる。

目で見てウマ娘の状態が把握できるとするならば、この男はかなりの相バ眼の持ち主だ。

 

「2番人気はシヨノロマンだが、俺はバンブーメモリーを推すよ。気性難や裂蹄グセ(この場合は爪先のケガだろうか?)は気になるが、スピードはピカイチだろう」

「なるほど、安田記念の勝ちウマ娘だな」

 

メガネはチラリと7枠11番のウマ娘に視線を移す。

ダイユウサク、気合いのノリも良く仕上がりは万全のようだが……あまりに実績がない。少し気にはなったが『これはないな』と頭のすみに追いやった。

 

「瞬きも許さぬ電撃6ハロン、しっかりと見届けようぜ」

「……だな」

 

2人の興味はパドックから離れ、ターフに移る。

G1高松宮記念、決戦の火蓋が切られようとしていた。

 

 

 

 

 

 

ゲート入り前の返しウマ。

メジロアルダンは軽いステップを踏み体をほぐしながらライバルたちの様子を確認していく。

 

コスモドリームは明らかに調子を落としているようだ。少なくとも今日はマークから消していいだろう。

注意すべきはシヨノロマン、もしくはバンブーメモリーだ。距離を考えれば、よりバンブーメモリーの危険度が高そうではある。

 

(あとは……彼女ですね)

 

ダイユウサク。このレースで唯一、過去に固有スキルを使ってみせたウマ娘。

マークするには不安定、だが無視をするわけにはいかない存在だ。

 

(位置を下げてバンブーメモリーさんをマークするべき……? でも後方からのダイユウサクさんに備えるなら動けるポジションにいなくては……だけど彼女の固有スキルが発動するかは分からない。やはりバンブーメモリーさんかしら)

 

トレーナーからの指示は前での競バ。できれば先行だが、今回は逃げウマ娘がいない。前に行けばメジロアルダンが逃げる形になる可能性が高いだろう。

マークはシヨノロマン、バンブーメモリー、コスモドリーム、ダイユウサクまでトレーナーが絞り、この中から誰を警戒するかはメジロアルダンに任されている。

 

作戦とも呼べない雑な指示。

だが、メジロアルダンのトレーナーはオカルトじみたウマ娘の第六感を否定せず『全身で感じた危険に備えろ』と作戦に取り入れるタイプだった。

 

(バンブーメモリーさんか、ダイユウサクさんですね。しかし2人を同じように警戒するのは難しい)

 

メジロアルダンはバンブーメモリーとダイユウサクに危険を感じている。迷っているのだ。

 

ダイユウサクは準備運動と言うには念入りに強めのランニングを行っている。恐らく1200Mという距離が短いのだろう。

チラリと視線を送ると目が合った。あちらもメジロアルダンを意識していたらしい。

 

ぞくり、と悪寒が背中を伝った。

 

(こっちだ、間違いない)

 

適正距離や実績で考えればバンブーメモリーだ。だが本能がダイユウサクに警戒信号を発している。

 

「全力で行きますよ、あなたも全力を見せてくださいね」

 

返事を聞く必要はない。

メジロアルダンは踵を返し、ゲートへ向かった。

 

『大外のコスモドリームが入り、各ウマ娘14人ゲートイン完了しました』

 

スタートの前はなぜか唇が乾く。

ペロリと舐めると、メジロアルダンは自分の口角が上がっているのに気がついた。

たまらなく楽しみなのだ。強い敵と戦うことが。

 

バンッと音をたて、ゲートが開く。

メジロアルダンは一気に加速し、ハナをきった。

 

『高松宮記念、スタートしました! まずまず揃ったスタートの中からメジロアルダンが好ダッシュで前に出ます。そしてやはり内から行きましたメモリーバイス』

 

メジロアルダンが先頭。

だが1枠1番の地の利を活かしたメモリーバイスが内ラチ沿いに張りついている。

 

短距離ならば距離損を苦にするより前に出た方がいい。

メジロアルダンは先頭を譲らずペースを掌握する。

 

『先頭メジロアルダン飛ばしていきます。内からメモリーバイス、続いて前からになりましたシヨノロマン、ティエッチスーパー並んでいきます。そして2バ身ほど切れて外からバンブーメモリーが見え隠れ、コスモドリームはここにいます』

 

メジロアルダンは巧みに緩急をつけペースをコントロールする。

たかが6ハロン、されど6ハロン。この距離を休まず全力で走れるウマ娘などいない。

逃げウマ娘ではないメジロアルダンが先頭でレースを支配する。本職顔負けの高等技術である。

 

『早くも3、4コーナー中間点を過ぎ、600M標識通過。ややスローなペース。先頭は変わらずメジロアルダン。ぎっしりと各ウマ娘一団となってごった返す中だれが抜け出るか』

 

前後に揺さぶった後続はひと塊となり大きなバ群を形成する。メジロアルダンの狙いどおりだ。

 

『第4コーナーを回る! 先頭は変わらずメジロアルダン、そしてここで外からバンブーメモリー! バンブーメモリー頑張れるか!』

 

バ群から抜け出たのはバンブーメモリーだ。

そこにメジロアルダンは競りかかるようにしてインを開ける。

 

(ダンスの相手はあなたではありません、残念ですけれど!)

 

メジロアルダンはここで溜めた足を使いスパートをかけてバンブーメモリーを突き放す。

意識していつもより高く腕を上げ、スライドを伸ばして走る。

 

(さあ、あの時と同じ状況です! あの走りを見せてください、ダイユウサクさん!)

 

その瞬間、スタンドからの大歓声が『ウワアーッ』と空気を震わせた。

振り向かずとも分かる。彼女が追い上げてきたのだ。

 

『ダイナミックなフォームでメジロアルダン逃げる逃げる! しかしここでインからダイユウサク追い上げてきた! バンブーメモリーも頑張っている! 粘れるかメジロアルダン、メジロアルダン依然先頭!』

 

ぶわりと背後から総毛だつような圧を感じた。

クールな印象のダイユウサクが、雄叫びを上げながら走る。異様な迫力がたまらなく恐ろしい。

 

夜空に輝く星の気配。

『勝利へ導く星』

それが彼女の勝利のイメージなのだとメジロアルダンは本能的に理解した。

極限まで研ぎ澄まされたダイユウサクの精神力が世界に干渉し、イメージが伝播しているのだ。

 

(来ましたね、そしてあなたは空いたインを突くーーそこしか『開けて』いませんから!)

 

自分には固有スキルは使えない。

だが、積み重ねたメジロ家の歴史にはそれを打ち破る術もある。

持たざる者が勝利を得たレースは歴史上にいくつも存在しているのだ。

メジロアルダンは背後から迫る星の気配を測り、フォームを維持したまま一気に腕を振り抜いた。

 

 

 

 

【史実馬紹介】

 

メジロアルダン

85年生まれ、黒鹿毛。

生涯成績14戦4勝。主な勝鞍、GII高松宮杯

 

オグリキャップブームの中、万全ならコイツが勝つのではと思わせる実力がありながら、あまりにも怪我が多く活躍できなかった。

引退後の種牡馬成績もパッとせず中国へ輸出されたが、そこで産駒に最強馬が誕生してリーディングサイヤーになるのだから競馬とは不思議なものだ。

余談だが、ウマ娘では芦毛になっているが史実馬は黒鹿毛。漆黒の馬体である。

 






知り合いからそそのかされて書き始めた本作品ですが
ウマ娘の怪文書ってすごい勢いで量産されているんですね……検索して驚きました。

ダイユウサクのチームに加入するのは原作キャラとオリジナルのウマ娘、どちらが良いでしょうか

  • 原作メイン級のウマ娘
  • 原作モブウマ娘
  • オリジナルのウマ娘(史実馬アリ)
  • 架空のウマ娘(史実馬ナシ)
  • 新メンバーは不要
  • その他(感想などでお伝えください)
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