これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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作中にややダーティなレース描写がでてきます。
苦手な方、フェアプレーしか認めないという方はご承知おきの上で読み進めていただきますようお願いします。
また、作者は『どんな手段を使おうが勝ちたい』という姿勢は美徳だと思っておりますので、当該のキャラクターを貶める意図は寸毫もありません。


(マックイーンが使うキン肉マンの必殺技から着想しました)





16話 裏メジロ

『ここでインからダイユウサク追い上げてきた! バンブーメモリーも頑張っている! 粘れるかメジロアルダン、メジロアルダン依然先頭!』

 

最終コーナーを回り、最後の直線。ついにダイユウサクが先頭を捉えた。

バ群を切り裂く鋭い差し足。芝を捲りあげ土を撒き散らすパワー。雄叫びを上げて駆けるダイユウサクの姿にスタンドがワアーッと揺れた。

 

「いっけえーっ!! ブッちぎれーっ!!」

「先パーイッ!! 先パァーイッ!!」

 

スペインランドとツキノコガネが声を枯らして絶叫している。

無理もない、と平田は思う。

 

ゲート割れに滑り込んだ場違いな3等チームのウマ娘がG1を獲るかもしれない――実現すればそれは紛れもなく奇跡だ。

平田もトレーナーでなければ……いや、タイムを測定してなければ並んで声を張り上げていただろう。

 

そこでふと、気がついた。

いつも大騒ぎしているメジロワースが大人しいことに。

 

(気分でも悪くなったのか?)

 

なにしろこの大歓声だ。

人間よりも耳の良いウマ娘が音に酔うことは珍しくない。

 

ほんの一瞬、1秒にも満たない時間。平田はレースから目を離した。

その瞬間、スタンドの大歓声は悲鳴じみたどよめきに変わる。

 

先頭のメジロアルダンに迫ろうとしていたダイユウサクが何かに弾かれたように顔を上げたのだ。

そのままバランスを崩し、左右に大きくふらつきながらバ群に沈んでいく。

 

「まずいっ! 故障か!?」

 

スパート時のことであり、バランスを欠いたまま内ラチに接触でもすれば大惨事に繋がる。平田の脳裏に最悪の事態がチラついた。

不幸中の幸いか、ゴール手前のことでありバ群に誘導されるようにダイユウサクは入線。

掲示板には審議のランプが青く灯った。

 

平田はすぐさま駆け寄り、ダイユウサクを抱えるようにして体を支える。

レース中、ウマ娘の事故は命に関わるものも多い。共に走ったウマ娘たちも心配そうに様子を窺っている。

 

「ダイユウサクっ! どこだっ!? どこを痛めた!?」

「……トレーナー、ごめんなさい」

 

平田が確認すると痛みからか、それとも悔しさからか、ダイユウサクの顔が涙に濡れている。

 

(いや、これは違う! 顔ムチか!)

 

平田はダイユウサクのまぶたが腫れているのを確認した。

目へのダメージで涙が止まらないのだろう。

 

顔ムチとは、レース中に対戦者の顔を殴りつける悪質な妨害行為だ。

 

(メジロアルダンと接触したか)

 

当のメジロアルダンは無表情にこちらを見つめている。

その表情からは感情が読みとれない。

 

故意か事故かは分からないが、重大な事故を引き起こしかねない。審議の対象は間違いなくコレだ。

 

「歩けるか? いや、背中に乗れ。今から病院に向かうぞ」

 

ダイユウサクは少し躊躇しながらも平田の背に身を任せた。

競バ場にも事故に備えたスタッフはいるが、もちろんウマ娘専門の医療機関には及ばない。

平田はダイユウサクを控え室まで運び、すぐさま緊急搬送の手配をした。ウマ娘の体は未知の部分が多く、念を入れるに越したことはない。

 

「いつもなら目薬で洗眼するところだが、下手に触れないからな。悪いけど少し我慢してくれ。みんなは後からタクシーで合流するよ」

 

レースの結果が表示され、スタンドから歓声があがる。

審議による降着はなし。順位はそのまま確定した。

 

 

 

 

 

 

「くっそお! あんなんありかよっ! ユウサクが勝ってたじゃねえか!!」

「先輩、大丈夫でしょうか」

 

ダイユウサクが搬送され、ガランとした控え室でスペインランドが荒れ、ツキノコガネは心配のあまりべそをかいてへたりこんでいる。

 

審議の結果、メジロアルダンは走行フォームのままダイユウサクと接触しており故意ではないと判断された。失格も降着もなし。

その結果もあり、チームアルビレオの怒りは治まるどころではない。

 

「……やられましたわね。あれは裏メジロ四十八手で言うところの『まくり殺し』ですわ。まだ使い手がいたとは驚きです」

「知っているのかワース!?」

 

スペインランドの驚きに、メジロワースは「ええ」と応えつつ顔をしかめた。

 

メジロ家には表芸となる勝利のための五十二のレーシングテクニックとは別に、対戦者を叩きのめすためのダーティなテクニックである四十八の闇レーシングテクニックが存在する。いや、『かつて存在した』と言うべきか。

 

過去の歴史を遡ればウマ娘がバ術で勝利することは戦場で敵を倒すことと同義であった。ゆえにメジロ流表裏百手はいにしえの実戦武術として成立したのだ。

だが時代はくだりレースはスポーツエンターテイメント化し、裏メジロは伝承されることなく絶えたとされていた……誰も知らない歴史の記録、忘れ去られた過去の記憶だ。

メジロワースの知る限り、伝承者は片手の指の数にも満たないだろう。

 

「まくり殺しは自然なフォームのまま競りかけてきた相手の急所を狙う技ですわ。ユウサクさんは何をされたかも分からないまま痛みで混乱したでしょう」

 

メジロワースは「こんな風に」と横に並んだツキノコガネの鼻柱やアゴ、みぞおちにトントンと軽く触れていく。ツキノコガネは恐怖のあまりに「ヒイッ」と悲鳴を上げた。

 

「どう考えても反則じゃねえか! 今すぐ――」

「言ってどうなるのです? 審議の結果は出たのです。ましてユウサクさんは7着、アルダンが失格したところで入着すらできませんわ」

 

メジロワースは歯を食いしばり、天を仰いだ。涙はこぼしたくない。

 

「わたくしが、もう少し伝えておけば……ユウサクさんは勝てたかもしれません」

 

レース前、何か予感のようなモノはあった。

あそこでもっと『何か』ができたような気がして、でもその『何か』が分からなくて、メジロワースは悔しくてたまらない。

 

涙の代わりに噛み破った唇から一筋の血が流れる。

それを見たスペインランドはハッと息を飲んだ。

 

「勝者は讃えられるべきですわ。メジロアルダンは使い道の限定された技術ですら完璧に習得し、使いこなし、G1を制した。その努力を讃えねば……あまりに惨めではないですか」

 

気まずい沈黙。

そのまま3人はスタッフが手配してくれたタクシーに乗り、無言でウマ娘治療センターへ向かった。

 

何かを察したタクシーの運転手が「ラジオで聞いてたよ」「7番の子、心配だね」と気づかってくれたが、まるでお通夜のようなムードだ。

ツキノコガネにいたってはしくしくと泣き出してしまっている。

 

「あっ、あれ! ユウサクじゃねえか!?」

 

タクシーが病院の正面につけると、何かを見つけたスペインランドが声を張り上げた。

メジロワースとツキノコガネもつられて視線を上げるとたしかにダイユウサクだ。勝負服のまま右目につけた眼帯が少し痛々しい。

 

「こうしちゃいられねえっ!」

「ちょっとランドっ!? 危ないですわよ!」

 

スペインランドはタクシーの停車も待たずに飛び出した。続けてメジロワースも後を追う。

 

「おいっ、大丈夫なのかよっ!?」

「はい。目の表面にちょっと傷が入ったから炎症どめでステロイドの目薬もらいました。あと、ちょっと顔が腫れちゃって……」

 

アクション映画のようにタクシーから飛び降りたスペインランドと平然と会話を始めるダイユウサク。

これを見たメジロワースは『ユウサクさんもだいぶおかしいですわ。知ってましたけど』と内心で毒づく。

ただでさえ病院の入り口に勝負服のウマ娘がいるのは大変に目立っており、注目の的だが気にならないのだろうか。

 

「ほらっ、こんなになっちゃって」

「うひゃーっ、痛そー」

 

ダイユウサクが眼帯をずらすとまぶたの上側が大きく腫れ、眼窩が真っ黒に内出血している。

あまりに痛々しく、それを見たメジロワースも「あっ」と小さく言葉が漏れてしまった。

 

「……ワースさん、ごめんなさい。メジロアルダンさんに注意するように言われてたのに」

「いえ、わたくしこそ……彼女をみくびっておりました」

 

ダイユウサクがケガをして悲しい、負けてくやしい、アドバイスが中途半端で申し訳ない、いいレースだった、元気そうでよかった……どのように声をかけてよいものか分からずメジロワースは言葉につまる。

何とも言えないもじもじとした雰囲気になりかけた時、トレーナーが「検査だぞ」と声をかけてきた。

 

「大丈夫だとは思うが念のために脳も検査する。俺はツキノコガネと競バ場に戻って荷物とってくるから2人にダイユウサクのつき添いを頼むよ」

「あーん、ユウサクの着替えにイタズラすんなよ?」

 

トレーナーが「するか」とスペインランドにやり返し、空気がゆるんだ。

数秒の気まずい沈黙がやぶれ、メジロワースは心のなかでトレーナーとスペインランドに感謝をした。

 

「んで、ユウサクは何でそんなカッコで玄関にいたんだ?」

「あ、これは……競バ場の人にトレーナーが電話して、皆がタクシーで来るって聞いたから……心配させたかなって」

 

スペインランドとダイユウサクは雑談混じりに院内に向かう。先ほどの気まずいムードなど、もうどこにもない。

こうしたスペインランドの優しさにメジロワースはいつも救われてきた。思えばケガをして、移籍を勧めてくれたのも彼女だ。

 

「さすがはアルビレオのリーダーですわね」

「あーん、いきなりなんだよ」

 

スペインランドは照れたように鼻を触り、メジロワースはそれを見てニッコリとほほえんだ。

 

「困るんですよねえ、いくらウマ娘だからって走行中の車から下りるのは非常識じゃないですか?」

 

後ろではタクシーの運転手に叱られ、トレーナーとツキノコガネが頭を下げていた。

 

 

 




【掲示板】

1着 メジロアルダン
2着 バンブーメモリー
3着 シヨノロマン
4着 メモリーバイス
5着 マルブツファースト


7着 ダイユウサク




ボツネタ披露

レース後、通路にてメジロアルダンを待ち伏せするメジロワース

アルダン「抗議にみえたのですか?」
ワース「いえ。あれはユウサクさんの油断。あなたを褒めこそすれ抗議などと」

鋭い視線を交わす両者。

アルダン「それで、わざわざ私の勝利をことほぎにきたわけではないでしょう?」
ワース「ええ。ユウサクさんは私の大切なお友だちですもの。かたきを討ちにまいりましたわ」

両者少し身構える。

アルダン「あなた、メジロに叛くつもりですか……?」
ワース「レースをしましょう。闇のレースを」

……

さすがにやりすぎだと思ったので続かない。

ダイユウサクのチームに加入するのは原作キャラとオリジナルのウマ娘、どちらが良いでしょうか

  • 原作メイン級のウマ娘
  • 原作モブウマ娘
  • オリジナルのウマ娘(史実馬アリ)
  • 架空のウマ娘(史実馬ナシ)
  • 新メンバーは不要
  • その他(感想などでお伝えください)
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