これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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この辺はささっと行きます


2話 棒に振ったクラシック

(とうとう私、ここに来たんだ)

 

ここはトゥインクルシリーズを目指すウマ娘たちが集うトレセン学園。

日本中から選りすぐりのエリートが集まるマンモス校だ。

 

(大きな校舎にたくさんのウマ娘……この子たちも新入生かな?)

 

美しい桜並木、立派な校舎、校門の前では友人同士で記念撮影をしているウマ娘がいる。

田舎から出てきたダイユウサクにとって、なにもかもが新鮮な光景だ。

 

「おはようございます。入学おめでとうございます」

「お、おはようございます!」

 

校門で全身緑の女性に挨拶され、少し驚きながらダイユウサクは挨拶を返す。

周囲には真新しい制服で身を包む新入生の姿、皆が少し浮かれたような、晴れがましい笑顔を見せている。

 

(私の地元じゃ中央に入学できたのは私だけだったけど、こんなにも新入生がいるんだ)

 

田舎から出てきたダイユウサクは見たこともないウマ娘の数に圧倒されつつも『友達できるかな』などと未来への不安と希望で胸を膨らませていた。

 

「――新入生の皆は堅忍不抜の精神で目標に一意専心とりくんでいただきたい。そのために我々生徒会は――」

 

入学式、シンボリルドルフ生徒会長が在校生代表として新入生に言葉を贈る。

彼女は日本一有名なウマ娘であり、ダイユウサクの、いや、新入生全員の目標ともいえる存在だ。

総理大臣の名前を知らずとも、シンボリルドルフの名前を知らないウマ娘はいない。

 

(私もここで鍛えて、トゥインクルシリーズでG1とって、シンボリルドルフさんみたいに強いスターウマ娘になるんだ!)

 

シンボリルドルフの雄姿に目を輝かせたダイユウサクの決意を笑えるウマ娘はいまい。

誰もが勝利への本能に胸を焦がし、大志を抱いてトレセン学園の門をくぐるのだから。

 

だが、ここは過酷な優勝劣敗の世界だ。

きらびやかな夢の影では1勝すらできず――いや、何割かはメイクデビューすらできずに退学するのだ。

 

ここにいる誰もが地元ではナンバーワン。もちろんダイユウサクとて幼少から期待を集めたウマ娘である。

だが、そうした才能の中でも理不尽な差があるのが現実だ。

 

この現実にダイユウサクは気づくのはもう少し先のことであった。

 

 

ウマ娘たちはクラスの教官から全体トレーニングをうけ、選抜レースに臨む。

そこでよい結果が出たものはスカウトされ、基本的にはトレーナーが率いるチームに所属し、研鑽を重ねてレースに出バをする。

マンツーマンで指導を行う個人トレーナーも中にはいるがトレセン学園では慢性的にトレーナーが不足しており、それは例外中の例外だ。

 

トレーナーは限りあるリソースを優れたウマ娘に注ぐため、選抜レースの結果を注視する。

そこでトレセン学園の双璧と呼ばれるリギルやスピカ、G1戦線の常連であるカノープスやシリウスといった強豪チームの目に止まり迎えられればウマ娘の未来は高い確率で拓けるだろう。

 

だが、レースの世界は残酷だ。

強豪チームにスカウトされた才気あふれるウマ娘とて、ケガや何らかの事情でターフを離れることも多い。

 

一方で思うような結果が出ない新人は選別レースを続け、トレーナーからのスカウトを待つ。

およそ3割のウマ娘がトレーナーを見つけることもできず、デビューにも届かず退学する現実がある。

3度4度と選抜レースを重ねるうちに焦りから無理な自己流のトレーニングを行い体を壊す者も珍しくない。

 

だが、この制度が批判されることはあれども見直されたことはない。

この生存競争こそがトゥインクルシリーズの質を維持し、人々を引きつける真剣勝負に繋がるとも言えるからだ。

トゥインクルシリーズを目指すウマ娘たちは、入学直後から容赦なく厳しい選別を繰り返し受け、勝ち続けるしか道はない。

 

スターウマ娘を目指して入学し、スカウトを受けなんとかG1を、重賞を、と夢を持ち続けられるのは一握りの強者だけ。

 

10人出バすれば9人負けるのがレースだ。

多くのウマ娘はなんとかスカウトを、1勝をと願いつつも学園を去る。

 

そんな中、ダイユウサクも選抜レースで入着し、スカウトを受けた。

ミラと呼ばれる2等星のチームだった。

 

トレセン学園におけるレーシングチームは全て星の名が冠される。

スピカやカノープスといった、名のしれた1等星(G1クラス)でなくとも2等星のチームであれば重賞戦線も夢ではない。

 

「キミの末足は見るべきものがある。まずはオープンクラス、そして三冠トライアル出バを視野に入れ頑張ろう」

 

この誘いにダイユウサクは飛びついた。

選抜レースでスカウトされたのだ。名家出身でもない身とすれば快挙と言って良い。

 

評価されたことが嬉しかった。

クラスメイトたちの羨望を受け、誇らしかった。

なにより、夢への一歩に心が弾んだ。

 

だが、ダイユウサクの喜びはここまでだった。

トゥインクルシリーズ登録後、体調を崩し入院してしまったのだ。

 

「病気はだれでもある。しっかりと治してレースに挑もう」

 

トレーナーはこう励ましたがタイミングが悪かった。

登録前であればデビューを1年遅らせることもできたのだ。

だが、トゥインクルシリーズには厳正な規約があり、登録した後の変更は不可能である。

 

ロクなトレーニングもできず、ジュニアを棒に振った。

 

こんなはずじゃない、ダイユウサクの心に焦りが生まれた。

 

その焦りから無理をしては体調を崩す。

完全な悪循環だった。

 

ダイユウサクのデビューは遅れに遅れてクラシック級の秋。

新バ戦はおろか未勝利戦などとっくに終わり、1勝クラスでのデビューである。悪目立ちし、ある意味で話題になったほどだ。

 

だが、まともなトレーニングも調整もできず、レースの経験もないダイユウサクが勝てるほどトゥインクルシリーズは甘くない。

 

2度出走し、いずれも大差での敗北。

 

2戦0勝、大差負け2回。

これがダイユウサクにとって『ウマ娘の夢』クラシックでの全てとなった。

 

そしてトレーナーから受けた言葉は『放牧、実家での無期休養』つまり戦力外通告であった。

 

他に移籍しようにも結果のないダイユウサクを受け入れるチームなど、いまさら見つかるはずもない。

チームを離れ、学年が変わるころに退学――落伍者お決まりのコースだ。珍しい話でもない。

 

かくして一人のウマ娘が失意の中で学園を離れた。

この成績では地方のトレセンも厳しいだろう。

 

世間はオグリキャップブームの真っ只中。その影でひっそりと無名のウマ娘が引退する。

誰もが、ダイユウサクですらそう諦めていた。

 

 

あの電話までは

 

 

 

 

 




ミラは時期によって輝きが変わる星だそうです。
ダイユウサクにとっても輝いて見えたチームが変化していったのかもしれません。

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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