これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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ダイユウサクと活躍時期をあわせるため、メジロワースの障害転向の時期やスペインランドの戦績など史実とズレます。
ウマ娘時空だとご理解ください。


5話 チームメイト

カフェテリア、いわゆる食堂だ。

だが、カフェテリアと呼ぶ方がオシャレで素敵である。だからウマ娘たちは食堂とは呼ばない。

 

(うーん、ランチはニンジンハンバーグか……半分でもちょっと多いなあ)

 

ダイユウサクはあまり他人とーー他ウマ娘と食事するのが得意ではない。

その理由は食事量だ。

 

ダイユウサクは非常に食が細く、幼い頃はウマ娘用の高カロリーメニューを食べただけで体調を崩すほどだった。

 

そしてここはウマ娘専用のカフェテリア。もともと量が半端ではない上に、地方から来た怪物オグリキャップが規格外に食べるので『強いウマ娘はカイ食いが良い』といった雰囲気が蔓延していた。

ダイユウサクはその流れに乗れず、他ウマ娘ととる食事はいつも憂鬱だった。

 

「うーん、ミックスサンドイッチとニンジンジュースください」

 

ダイユウサクが選んだのはサンドイッチ。残しても包んでおけば夕飯にできる、そんな消去法でメニューを選んだのだ。

カフェテリアは食べ放題ではあるが、残すのはやはり気がひける(サンドイッチも人間サイズと比べればかなり立派な大きさだが)。

 

「オレはニンジンハンバーグ、ライスは特大山盛り!」

「私はニンジン天そばお願いします」

 

やはりというか、スペインランドのご飯はとんでもない高さに盛られおり、ボリューム満点のメニューだ。

ダイユウサクは見るだけで圧倒され、ただえさえ控えめな食欲がガリガリと削られるような気分がした。

 

「あら? ダイユウサクさんも減量ですの?」

「へ? いや、えーと私は普段から少なくて……」

 

ダイユウサクのサンドイッチを見たメジロワースがなぜか少し嬉しそうにした。

 

「コイツな、ダイエット中なんだよ」

「ええ、不本意ですけどその通りですわ。わたくし、今年から障害レースに転向しますの。障害レースは距離も長いし、文字通り障害を飛び越えねばなりませんから足に負担をかけぬよう心がけております」

 

これを聞き、ダイユウサクは「障害レース」と小さく声をだして驚いた。

 

障害レースとは、文字通りコースに設置された障害物を飛越し、ゴールに到達する早さを競うウマ娘レースの一種だ。

だが、基本的にはトゥインクルシリーズと比べ障害レースは一段下に見られがちであり、不人気競技である。メジロ家の令嬢が挑戦するのは正直意外だった。

 

「意外そうですわね。障害レースに転向なんて無様かしら」

 

この言葉にはドキリとしたが、メジロワースはイタズラっぽく笑うのみで気分を害した様子はない。

 

「わたくしはケガもあり、トゥインクルシリーズでの活躍に見きりをつけました。しかし、勝利はメジロ家の誇り。勝利のためには障害だろうがばんえいだろうが戦場を選びませんわ」

「へへっ、ワースはトゥインクルでG2勝ってるからな。周りの期待も大きくてさ、応えるためにチームを移籍して障害レース転向を決めたんだぜ」

 

衝撃だった。

ダイユウサクは2連続で大敗し、放牧に出され、あっさりレースを諦めて退学しようと思っていたのだ。

G2をとった名ウマ娘が競技を変えてまで挑戦し続ける。メジロワースと自分では、レースに対する心構えが根本的に違う気がした。

 

「んで、ついでに言うと俺は前のチームで元々トレーナーの担当だったからスライドで移籍したんだ。俺の事情を理解してくれて、ガンガンレースに出してくれるからよ」

「ランドはもう20戦以上してるんですのよ。戦績は2勝ですが」

 

スペインランドの戦績をメジロワースが茶化しながら紹介し、その言葉にダイユウサクは仰天した。

ダイユウサクはまだ2戦、10倍の戦歴である。

スペインランドの20戦はいかにも多い。

だが当人は「2勝で悪いかよ」などと肘でメジロワースをつついている。

 

「ウチは親父が早くに死んじまってさ。金がいるんだ。レースに出れば出走手当がでるからな。ガンガン稼いで実家に送って家族を養ってやらなきゃよ」

 

トゥインクルシリーズは賞金以外にもレースに出バすれば出走奨励金としてURAから数十万円交付される。

もちろんこれは経費の補助といった面もあるので全てがウマ娘の取り分ではない。決められた割合でトレセン学園やトレーナーと分配するのだが、彼女ほど走ればレースの本賞金も加え大した額になるだろう。

 

「トレーナーはよ、もっと狙いを絞って調整に時間をかければ勝率があがるって言ってくれるけどさ。俺の取り柄はケガしねえ身体だからよ」

 

そう言いながら、スペインランドは刺激的な匂いのする調味料を自らのバッグから取り出し、量の減った白飯にドロリと乗せる。

調味味噌のようだが、独特の香りだ。

 

「これ? ニンニク味噌。キくぜ」

 

なんでも赤味噌にニンニクやハチミツ、黒砂糖、白ゴマ、リンゴ、朝鮮ニンジン、その他いろいろを練り合わせた特製スタミナ食らしい。

たしかに利きそうな気はするが、とにかく離れていても匂いが強烈だ。

 

(そういえば、母さんからマムシの話を聞いたっけ。あれと似た感じかな)

 

ダイユウサクの母が現役だったころ、担当トレーナーがレースが近いウマ娘の栄養補給のためにマムシの粉を練り固めて与えていたと言っていた。

今はトレセン学園のカフェテリアが充実したし、各種サプリメントで栄養は賄えるため姿を消したと聞いたが、こうした形で先人の知恵は生き残っていたようだ。

 

「またですの? お好きですわね」

「おう、来週レースだからスタミナつけねえとな」

 

メジロワースは少しうんざりとした顔をしているが、ニンニク味噌が苦手なのだろう。

たしかにこの刺激臭は好みの別れそうなところだ。

 

「んで、オメエはどうなんだよ?」

 

突然、スペインランドがダイユウサクに質問してきた。

言葉が少ないのでイマイチ意味が分からない。

 

「えっと、私はそこまで嫌いな匂いじゃないですよ?」

「ちげーよ。アルビレオに移る理由だよ。俺はレースに出るため、ワースは障害転向、オメエもなんかあんだろ?」

 

ダイユウサクは言葉に詰まった。

メジロワースの勝負にかける思い、守るものがあるスペインランド、それに比べたら自分が走る理由はなんだろうか。

 

(スカウトされたから? 違う。重賞とりたいから? 違う)

 

黙り込んでしまったダイユウサクをメジロワースが心配そうに見つめている。

対照的にスペインランドは気にしないふりをしてガツガツと食事を続けているようだ。

表現の違いはあるが、いずれもダイユウサクを気づかっているのが見てとれる。優しい性格なのだろう。

 

「……私は、悔しかった」

 

ポツリ、と自分の口から言葉が漏れた。

 

「体が弱くて、トレーニングも調整もできなくて、当日に熱発して、タイムオーバー」

 

しゃべりながら驚いた。

自分はこんなに悔しかったのか。

気がついたら涙がポロリとこぼれた。

 

「まだ何も出してない、そんな時に『お前は走れる』ってスカウトされた。私は、出しきりたい」

 

勝利はウマ娘の本能だとされる。

自分にもこんな熱があったのだ。

 

「やっぱアルビレオだな」

「そうですわね」

 

この二人のやりとりに、どんな意味があるのかダイユウサクには分からない。

だが、笑顔を向ける二人を見て『仲間だ』と本能が告げた。

ウマ娘は群れで生きる。理屈ではない。

仲間を見つけた喜びがダイユウサクを満たしていく。

 

「俺たちのことはランド、ワースって呼べよ、ユウサク」

「ええ、それぞれの場所で輝けるように、互いに切磋琢磨しましょう」

 

スペインランドはニッと歯を見せ、メジロワースは上品に目を細め、個性を見せながら笑いかけてくれる。

自分も笑っているのだろうか、と思いダイユウサクは自らのほほをなでてみた。

 

「……ところでユウサクさん、そのサンドイッチは食べないんですの?」

「あ、これは半分とっておいて夕飯にしようかなって」

 

ダイユウサクの言葉を聞いて、メジロワースが「なんてストイックな」と驚いていた。

なにかしら誤解を与えたようだが、何やらショックを受けたようで、彼女はブツブツと呟きながら教室に帰っていった。

 

 

 

 

 

【史実馬の紹介】

スペインランド

85年生まれ。生涯成績103戦5勝

103戦は誤記ではない。

 

9才まで走り続け賞金1億4千万円を稼いだタフさが自慢。

百戦錬磨と呼ばれ、成績のわりに人気のある馬だった。

年季のいった競馬ファンに「たくさん走った馬といえば?」と訊ねればハルウララより、ミスタートウジンやスペインランドの名が出ることも多い。

引退後は馬事公苑で乗馬となった。




スペインランドの家庭環境などは、ひたすらレースに出る理由を作者なりに考えた完全な創作です。

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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