これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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6話 角砂糖

学科が終わり、トレーニングが始まる。

ある意味、ここからがウマ娘たちの日常だ。

 

クラブハウスで着替えたウマ娘たちがそこかしこで忙しげにトレーニングを始めている。

ダイユウサクは復帰初日のため、自室で着替えてから来たので少し遅れてしまったようだ。

これからはクラブハウスに荷物が置けるので始動は早くなるだろう。

 

『スイーツ! スイーツ! スイーツ! スイーツ!』

 

不思議なかけ声でランニングをしているのはトレセン最強チームの一角、スピカだ。

ダイユウサクは「スイーツってなんだろう」と首をかしげながらアルビレオのクラブハウスを探して歩く。

 

「ユウサクさん、こちらですわ!」

 

並んだクラブハウスの隅、トレーニング器具置き場の真横でジャージ姿のメジロワースが手を振っている。

注目を集めて少し気恥ずかしいが、友達のいないダイユウサクは少し嬉しかった。

 

クラブハウスに入ると、トレーナーとスペインランドが座って角砂糖をなめていた。

ウマ娘は糖分が大好きだ。ニンジンやリンゴが好きなのも甘いからである。

角砂糖はウマ娘の大好物ではあるが、人間も好きなのだろうかとダイユウサクは少し疑問に思った。

 

「角砂糖ですわ! これだけあれば勝ちですわ!」

「おせーよユウサク。早く始めようぜ」

 

なぜかメジロワースが角砂糖に反応しているが、スペインランドもトレーナーも気にした様子はない。

いつものことなのだろうか。

 

ダイユウサクは「遅くなりました」と簡単に挨拶をした。

 

「おーし、揃ったな」

 

トレーナーがガリガリと角砂糖を噛み砕き、クラブハウスの隅から白い板を引っ張り出してきた。

これはホワイトボードといい、黒板より便利だが、光を反射するのでダイユウサクはちょっと苦手だ。ウマ娘はカメラのフラッシュが苦手な者も多い。

 

「互いの顔見せは済んだな? 今年からスタートしたアルビレオは現在、この3人がメンバーとなる」

 

なるほど、とダイユウサクは頷く。少人数だが新規チームと考えれば納得である。

夏に選抜レースが始まれば新入生も入るかもしれない。

 

「目標だが、ランドは来週の帆柱山特別だ。前走は不甲斐なかったからな、あんな調子じゃ休養いれて調整に時間をかける必要があるぞ」

「うっせ、分かってるよ。ちょっとスタートでつまづいただけじゃねえか」

 

スペインランドは前走16着だったそうだ。

時の運や体調もあるし、たくさん走れば不本意なレースもあるだろう。

だが、トレーナーはいわゆる『負けぐせ』がつくのを嫌い、こうしたハッパをかけているらしい。

スペインランドとの信頼関係もしっかりできているようだ。

 

「メジロワースの障害レース転向は6月ごろを考えている。走力やカンを維持するためにもトゥインクルのレースで何走か叩くつもりだ。だが捨てレースじゃないぞ、しっかり調整していこう」

 

トレーナーは障害転向までのローテーションをホワイトボードに書き込んでいく。

だが、当のメジロワースは角砂糖を必死でペロペロとなめている。

何度か頷いているから聞いてはいるのだろうが、これを許すトレーナーはなかなかガマン強い気質のようだ。

 

「ダイユウサクは中央で出られるレースがない」

 

トレーナーの言葉を聞き、ついダイユウサクの口から「は?」と変な声がもれた。

レースに出れなければ復帰した意味がないではないか。

 

「最後まで聞け。あくまで『中央で』出られるレースがないだけだ。地方のレースで1勝を目指す必要がある」

 

トレーナーはローテーションをホワイトボードに書き込んでいくが、中京で2戦、新潟で2戦、かなりの過密スケジュールだ。

中には連闘まであるが本気だろうか。

 

「オイオイ、連闘はまずくねえか?」

 

スペインランドが口を挟むがダイユウサクも同感である。

体調を考えれば自信がない。

 

「これには理由がある。今のダイユウサクにはレースでの経験や勘が圧倒的に不足している。足に負担が少ないダート、短い距離でレースになれてもらう」

「なるほどな。実戦トレーニングってわけか」

 

トレーナーにビジョンがあると知り、ダイユウサクはホッとした。

スペインランドは「にし」と奇妙な笑いを見せダイユウサクに視線を向ける。

どうやら安心させるために質問してくれたらしい。面倒見がよい性格のようだ。

 

「だが負けるために出るわけじゃない。厳しい中でも勝利のために最善を尽くしていくからそのつもりで。1つ勝てば中央のレースがある、がんばろう」

 

トレーナーの言葉にダイユウサクは「はい」と小さく応えた。

自信はないが、ダメで元々という気持ちもある。

良い意味で『やれるだけやってやる』と落ち着いていた。

担当のヒラタトレーナーがついたことや、スペインランドやメジロワースなどダイユウサクが『群れ』と認識できる仲間ができたことで精神的にも安定したのかもしれない。

 

「今からトレーニングを開始する。遅くなったが検温は忘れるな。時間も少ないしアップとランニングで体を暖めてから基礎トレを行う。ダイユウサクはブランクがあるから異常や違和感を感じたらすぐに申し出るように」

 

体温計と記入用紙を手渡され、検温する。

ダイユウサクは何となくメジロワースの記入用紙を見て驚いた。

なんと毎日、朝とトレーニング前に検温し記録をとっているようだ。

他にも体重の欄まであり、体重の増減が一目で分かる。

 

「体調管理はしっかり行う。ウチじゃ熱発したまま出走なんてバカな真似はさせないからな」

 

トレーナーは角砂糖を取り上げ、なぜか鍵つきのロッカーにしまい込む。

メジロワースが「ああっ」と小さな悲鳴をあげているがお構いなしだ。

 

「エネルギーの補給はしただろう? 食べすぎると節食が無駄になるぞ」

 

そう告げるトレーナーを恨めしげにひと睨みし、メジロワースはクラブハウスを出る。

ランニング中に「スイーツ! スイーツ!」と雄叫びをあげる彼女を見て『なるほど、あれは甘味を我慢している減量中のウマ娘なのか』とダイユウサクは納得した。

 




このころはまだホワイトボード珍しかった気がします。

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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