これはびっくり大穴ウマ娘   作:キングヘイロー↙️↓↘️➡️↗️⬆️

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今回登場するパンチングボーラは史実馬のパンチホーラー号とは無関係になります。ご承知おきください。


9話 なんなのよアイツ

「4番のウマ娘パンチングボーラさん。なかなか良さそうですわね」

 

パドックを見る平田の横でメジロワースが呟いた。

4枠の青いゼッケン、パンチングボーラ。しっかり仕上げてきているようだ。

 

(今日の一番人気か。観客もよく見ているな)

 

パンチングボーラはダイユウサクと同じくいまだ未勝利だ。

実績よりも当日のコンディションを重視した人気に思わず平田はうなる。

オグリキャップが巻き起こしたトゥインクルブームから約1年、目が肥えた観客も増えたのかもしれない。

 

「あっ、ほら! ユウサクさんですわよ!」

「……俺も見てるからさ、大丈夫だよ」

 

騒ぐメジロワースに苦笑いしながらパドックに目をやると、ダイユウサクが入り口辺りで周囲を睨みつけるように仁王立ちしている。

耳は周囲を警戒するように忙しく動き、シッポは苛だたしそうに動いているようだ。

 

「緊張しているようだが、うーん……アイツ分かりづらいな」

 

あまり顔色や動作に出ていないので気合いが入っているのか、固くなって動けないのか、担当の平田にもイマイチ判断がつかない。

 

「ユウサクさーん、上着! 上着を脱いでくださいまし!」

 

動かないダイユウサクを心配してメジロワースが声を張り上げる。

すると声が届いたかダイユウサクはゆったりとした足どりで観客の前に歩を進め、勢いをつけて上着を観客の中に投げ入れた。

上着が直撃した観客は「ウワッ」と悲鳴をあげてひっくり返ったようだ。

 

「はあぁっ!? アイツなにしてんの!?」

 

平田の口から悲鳴に似た驚きの声が飛び出した。

 

当のダイユウサクはニヒルに口もとを歪め、ふいっとパドックから出ていく。

ふてぶてしいと言うか、なんと言うか。

 

「おおっ、なんかスゴいの出てきたぞ」

「半年ぶりの出走か、特訓してきたってことなのか?」

 

観客もダイユウサクのパフォーマンスにザワついている。

無理もない。平田にもどう評価していいのか全く分からない。

 

「アイツ……レースで人格が変わるタイプだったのか?」

「なんですのアレッ! か、カッコいいですわっ!」

 

メジロワースは嬉しそうにキャーキャー騒いでいるが『後で運営から怒られないかな』と考えると平田の頭は痛かった。

 

 

 

 

 

 

「なんなのよ、アイツ!」

 

今日の1番人気、パンチングボーラはイラついていた。

理由は7枠オレンジのゼッケン、ダイユウサクだ。

 

彼女はパドックにて派手なパフォーマンスで注目を集めた。

だが、それはパドックのルールを無視した悪目だちだ。

 

「ちょっと、変なパフォーマンスで目だとうとしないでくれる? 迷惑なのよ」

 

いまだに未勝利のパンチングボーラはこのレースに賭けていた。

今まで思うような結果が出ていなかったが今日は違う。

完璧な仕上がり、体調管理、気力の充実。全てが噛み合っていた。

自然とパドックではツル首(ウマ娘がアゴを引いて闘志を充実させている様子。多くの場合オーラが出ている)になり、観客は彼女を1番人気に推したのだ。

 

ゆえに、パドックのパフォーマンスだけで注目を集めようとするダイユウサクに自分の努力を否定されたようで許せなかった。

 

だが、当のダイユウサクの反応はパンチングボーラには理解できないものだった。

 

「私は逃げるだけ、かけひきはいらない」

 

こちらも見ずに告げられた一言にカッとなった。

自分の言葉がつまらないかけひきだと捉えられたことが、たまらなく腹立たしい。

 

(こうなったらレースで叩きのめしてやる!)

 

今日はパンチングボーラ得意の条件が揃っている。

ダート、マイル、左回り。

少し心が乱されたが、彼女の自信は揺らがない。気を取り直してコースへ向かった。

 

レース前の返しウマ、ダイユウサクはカニ歩きと呼ばれる斜め方向への運動を行っていた。

これは行きたがる気持ちを無理やり抑えている状態だ。

 

(……どうやら本気で逃げるみたいね)

 

これを見たパンチングボーラはダイユウサクは本気で逃げを打つと見た。

ダートはもともと前につける競バが有利だとされる。この判断は間違っていないだろう。

 

(おもしろいじゃない。私のプランも先行、マークして潰してやるわ!)

 

パンチングボーラはゲートに入り、グッと気合いを入れる。

逃げを潰すには並びかけて揺さぶることだ。スタートダッシュを決めるために集中力を高めていく。

 

『おっと、10番センチュリオン、ゲートを嫌がっています。大丈夫でしょうか……大丈夫です。各ウマ娘、ゲート入り完了しました』

 

どうやら大外のウマ娘がゲート入りに手間どったらしい。

パンチングボーラは気を削がれ「チッ」と小さく舌打ちをした。

 

その瞬間、バンッと音を立てゲートが開く。

タイミングがズレた。

 

『各ウマ娘スタートしました。ポーンと出たのはダイユウサク、これは良いダッシュ。1完歩2完歩ぐんぐん前に飛ばしていきます』

 

スタートが乱れた。

パンチングボーラはやや遅れ、前に飛び出したダイユウサクはぐいっと内ラチに刺さるようにインコースをとる。

完璧なスタートを決められた。

 

「くっそ、逃がすかぁ!」

 

パンチングボーラは苛立ちながらもこれを追う。

かなり速いペースだ。

 

(アイツ、このペースで走りきるの!?)

 

パンチングボーラは驚きで目を見開いた。

とにかく速い。

 

これに気づいた後方もスピードを上げたのを感じる。

あまり先に行かれてはスパートで追いつけなくなると判断したのか、それともペースを乱され掛かったのか。

 

『先手をとったのはダイユウサク。続いて1番人気パンチングボーラ、すぐ後ろにエイシンカンサイ。しんがりセンチュリオンは後ろからの競バとなりました。後方はやや遅れ縦長の展開です』

 

向こう正面、パンチングボーラがチラリと後ろを確認すると、後続集団はもうかなり離れている。

勝負は先頭集団で決まりそうだ。

 

『第3コーナーにさしかかりました。先頭は徐々に突き放して依然ダイユウサク、どこまで粘れるのか。外からエイシンカンサイ、パンチングボーラ、その1馬身後ろにタケイチキング、エイシンナカヨシと続きます』

 

そして迎えた最終コーナー。

前を走るダイユウサクがやや外にヨレた。

 

(ここだっ!)

 

パンチングボーラの勝負勘が告げた。

空いたインを衝き、一気に先頭に立てば勝てる。

 

「うおぉおぉぉっ!!」

 

雄叫びをあげ、残りの足を解放しスパートをかけた――その瞬間、前を走るダイユウサクが目前に迫る。

 

(ブロック!? こんな露骨に!?)

 

ちがう、と気づいたのはスパートが潰された後だった。

ダイユウサクは単純にスタミナが切れてタレたのだ。しかし、これが壁となって後続を巻き込んでいく。

横を走るタケイチキングも「むぅりぃ~」と悲鳴をあげながらバ群に沈没した。

 

『先頭は代わってエイシンカンサイ! これは独走になりました。大きく離れてエイシンナカヨシ! 赤いゼッケン、リアルムユースも突っ込んでくる! エイシンカンサイ、エイシンカンサイ1着でゴール! 2着はどうやらエイシンナカヨシ、赤いゼッケンのリアルムユースは3着となりました!』

 

レースは外から行ったエイシンカンサイが前崩れに巻き込まれずそのままゴール。

続いてロクに足も使えずゴチャついたまま着順が決まっていく。

まれに見る凡戦である。

 

「……なん、で? 最高の調整で、1番人気だった私が何でこんな目に遭うのよ……っ!」

 

信じられなかった。

調整も、コンディションもうまくいっていた。

それが4着では納得できるものではない。

 

(なんでアイツ――レースを荒らすのが目的だったの!?)

 

気がついてハッとした。

ダイユウサクは掲示板を見て小さくガッツポーズを見せている。

パンチングボーラは彼女よりわずかに先着したが4着、ダイユウサクは5着だ。ガッツポーズをするような着順ではない。

 

(やられた……ハメられたんだ)

 

レースの直前で気を散らされた。

ゲートで体勢を崩された。

自爆のような大逃げにペースを乱された。

進路をブロックされた。

1人だけ知っていたかのように大外からの競バをした。

 

考えれば考えるほど、自分だけ狙い打ちされたようにしか思えない。

 

「こんなのっ! 認められるはずないでしょっ!!」

 

気がついたらパンチングボーラはウイニングサークルで喜ぶエイシンカンサイに掴みかかっていた。

こいつらはグルになって、ラインを組んで1番人気の自分を潰したのだ。

そう考えたら許せなかった。

 

「おいやめないか!」

「まずいぞっ!? 引き離せっ!!」

 

職員があわててパンチングボーラを引き離そうとするが、ウマ娘のパワーで暴れれば人間に抑え込めるものではない。

観客席からも悲鳴のようなどよめきが広がっていく。

 

「卑怯者っ! ウマ娘同士で組んで――私の調子が良いからって、自分の力じゃ勝てないからって――」

 

駆けつけた彼女のトレーナーも手伝い、泣きわめくパンチングボーラは取り抑えられるようにしてコースから退場した。

後日、なんらかの処分があるかもしれない。

 

こうして初勝利を逃したパンチングボーラは、このままトゥインクルシリーズで1勝もできずターフを去った。

何かきっかけを掴みかけたウマ娘が、チャンスを逃し人知れず引退する。

これもまた、華やかなトゥインクルシリーズの一面なのだ。

 




1着エイシンカンサイ
2着エイシンナカヨシ
3着リアルムユース
4着パンチングボーラ
5着ダイユウサク
(以下略)


本気でぶつかり合うからこそ、こんなこともあるのではないでしょうか。
G1クラスのキラキラした勝負より、条件戦でサバイバルしてるウマ娘のほうがドロドロしてそうだなと。

作中の時代、大阪杯や高松宮記念はGIIでした。ウマ娘時空ということで現代風にGIに統一するのが良いか、それとも当時のままGIIにするか、どちらが良いでしょうか。よろしければ回答お願いします

  • ウマ娘時空を尊重、G1にする
  • 時代背景を尊重、G2にする
  • ややこしいので当該レースの描写は飛ばす
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