「──、──」
荒いながらも一定のリズムで刻まれる呼吸。滴る汗が建物の間から顔を出した朝日を受けて煌めいて、肌を撫でるそよ風が心地良い。時間帯故か都内のそれなりに大きな道路であるにも関わらず人の姿は殆ど皆無と言って良く、その中を駆けてゆくというのは一種の征服感すらもある行為であった。
だがそのうち彩歌は赤信号に行く手を阻まれて、それでもペースを崩すまいとその場で足踏みを繰り返す。腕時計を見てみれば、時刻は午前5時になろうかという頃合であった。いつも通りの、何の変哲もない時刻。信号の切り替わりと共に、彩歌は再び走り出した。
登校前、早朝のジョギング。それが彩歌の日課であった。始めたのが中学校入学前後辺りであるから、4、5年程度は続けている事になろう。尤もコースまで同一という訳ではなく彩歌の体力向上に伴って年々長くなり続けているが。
彩歌は何も体形維持を目指していたりスポーツを嗜んでいる訳ではないが、歌にも演奏にもそれなりに体力がいる。早朝のジョギングはそのために始めて、今では就寝前の筋力トレーニングも併せて半ばルーチンワークと化していた。
家を出発して住宅街を抜け、もぬけの殻と化した都心のビル街の間を抜けていく。この時間だけは、彩歌は過不足なく完全に独りだ。彼は何も孤独を好んでいたり逆に独りを嫌っている訳ではないけれど、それでもこの静謐が嫌いではなかった。孤独の時間とは即ち、余人に介入されずに自身の裡へと埋没できる時間だ。有効利用しない手はないだろう。
だが万物には終わりがあるように、その静謐にも終焉は必ずやってくる。街並みは少しずつビル群からマンションや家屋が立ち並ぶ住宅街へと変わっていって、やがて彩歌はとある家の前で足を止めた。その門にある表札には〝真野〟の文字。即ち、その一軒家こそが彩歌の自宅であった。
火照った身体を冷ますように襟元で扇ぎながら片手で門を開けてみれば、視界に飛び込んできたのは見慣れた庭。隅々まで手入れが行き届いたその様は、この庭の管理を行っている者の几帳面さがよく表れていると言えよう。その庭を抜け、玄関扉を開錠してノブに手を掛ける。
「ただいま」
「おう、おかえり。彩歌」
「あれっ」
少なからぬ驚きを孕んだ、間抜けな声。態々挨拶を返してもらったというのにかなり失礼な反応であるが、しかし彩歌がジョギングから帰ってくる時間には彼の唯一の家族は既に仕事に出ている事が多いのだから、半ば致し方ない事であろう。
そんな彼の内心を知ってか知らずか、リビングと廊下を繋ぐ出入り口から現したのはひとりの男性であった。年を重ねているが故の含蓄の色こそあるものの顔の造作は彩歌とよく似ているが、髪の色は彩歌の亜麻色と異なり深い漆黒だ。身長は彩歌より高く、180㎝程はあるだろう。実年齢を考えれば非常に大柄な方で、そのせいか無断で拝借している彩歌のエプロンとの組み合わせは何処か妙な不格好さを漂わせている。だが本人が纏う異様な存在感のせいか、まるでその不格好さすらエッセンスとしてひとつの衣装としているかのようですらあった。
総じて只者ではないと言える雰囲気を纏うその男性の名は〝
「今日はまだ仕事じゃなかったんだね、父さん」
「あぁ。今日のスケジュールは、いつもより多少余裕があってな」
「そうなんだ。だからって態々自分で朝食を作らなくても、俺が作ったのに」
「オイオイ、その言い方はないだろ? ただでさえいつもオマエに任せきりになってるんだから、たまには俺に作らせてくれてもいいじゃないか」
「ふふ、そうだね。ごめんごめん」
そう言って微笑む彩歌を前にして、陽彩もまた笑みを見せる。そこに仕事を取った取られたの険悪さはなく、むしろ親子としての確かな情があった。或いはいつもは早くに仕事に出てしまう父とこうして話ができている事を彩歌が嬉しく思っているという事もあるのだろう。
とある大手芸能事務所にてプロデューサーとして働いている陽彩は、その業務故に朝早くに家を出てしまう事が多いのだ。これがもしも大した能力もないのであればもう少し余裕もあったのだろうが、陽彩自身が若い頃にアイドルとして活躍していた経験があるのもあって高い成績を出しており、それ故に陽彩のスケジュールはかなり多忙なのである。
そのため、陽彩が彩歌と共に過ごせる時間はそれなほどある訳ではなく、しかし彩歌はそれを不満には思わない。例えあまり一緒にいられずとも彼は父を尊敬しているし、多くの人に必要とされる父というのが、彼には誇らしく思えるのだ。
「じゃ、お言葉に甘えて朝食は父さんに任せて、俺はシャワーを浴びてきちゃおうかな。……あぁ、もう気づいてるかもだけど、冷蔵庫の中に昨日の夕飯の残りがあるから、弁当にはそれ入れてね」
「了解。じゃ、ゆっくりシャワー浴びてこい。出てきた頃には出来上がってるだろうしな」
何処か得意な表情のままそう言う陽彩に彩歌はそうするよ、と言って風呂場の方へと歩を進めていく。彼の自宅はその外観に違わずかなり広く、最も奥まった場所に位置する風呂場に辿り着くまでにもいくつかの部屋に繋がる出入り口を無視して行く事になる。それだけの部屋数なら当然と言うべきか、その中にも和室はあって。その横を通り過ぎた瞬間──
──嗅ぎ慣れた線香の臭いが、彩歌の鼻腔を突いた。
透き通るような静寂であった。開け放たれた窓から見える空は青く、吹き込んでくる風が心地よい。未だ夏と言うには早い時期であるため湿度もそこまで高くはなく、総じて過ごしやすい陽気であると言えよう。そんな中で、読書日和だね、と彩歌は内心で独り言ちる。
虹ヶ咲学園、その図書室。学園自体の規模と生徒数の多さからその蔵書数は膨大であり、それ故に部屋自体の大きさも学校のそれとしては異質な程だ。彩歌がいるのはその一角、主に小説、中でも純文学と呼称されるジャンルが並んでいる本棚の前であった。
彩歌は特筆する程読書家という訳ではないにせよ、昔から読書というものが嫌いではなかった。小説、図鑑、雑誌、伝記、そのジャンルは多岐に渡り、特に選り好みはしない。今、純文学のコーナーにいるのも、今日はそういう気分だったというだけの極めて単純な話だ。
特に深い事を考えず、ただ漫然と本棚を眺めて気になった本を手に取る。そんな益体のない時間ですら娯楽とでも言うかのように、彩歌の表情は楽し気だ。此処が私語禁止の場でなければ鼻歌のひとつでも歌ってしまいそうな程に。
それから彩歌は何度か本棚の前を往復し、興味を引かれた本を何冊か手に取ってカウンター付近のパソコンから貸出処理を済ませた。そうして本を鞄へと入れ、用は済んだとばかりに図書室を後にする。既に放課を迎えてそれなりの時間が経過しているからだろうか、廊下を行き交う人影は日中に比べるとひどく疎らだ。
人気の絶えた廊下に、自分ひとり。それはまるで世界に自分だけが独りで取り残されているかのようで、しかし同時に外からは運動部の生徒らの鬨が聴こえてくるのは、どこか倒錯めいてすらいる。
そんな、どこか相反する要素を内包した中を、彩歌は今度こそ上機嫌に鼻歌など漏らしながら歩いている。今まで読んだことがなかった本を見つけたというだけで聊か大袈裟なようであるが、彩歌にとって新たな本との度合いは未知との遭遇にも等しい。俗物的な表現をするならば〝ワクワク〟というものだ。心底から今すぐにでも読みたいと思うものの、歩きながらの読書というのも危険だろう。
だがそうして彩歌が足早に歩いていると、不意に彼の耳朶を打つものがあった。
「スクールアイドル優木せつ菜──覚醒っ!!」
「……?」
微かに聴こえてきたそれは、声であった。トーンからして女子生徒のものであろうか。距離が離れているのか、或いはドアや壁を隔てているからか何を言っているかは判然としないものの、どうしてかその声は激烈な情熱を内包しているのだと、彩歌には感じられた。
しかしそれだけであるのなら、彩歌が足を止める事はなかっただろう。独りで歩いている時に誰かの声が聞こえてくるなど、そう珍しい事ではないのだから。故に彼が足を止めた原因は別にあって、けれど彼自身にすら明文化の難しい異様な感覚であった。
最も近いものを挙げるのならば、デジャヴというものであろうか。確かにその声と同じ気配を漂わせるものを彩歌は知っていて、それなのにその違和を追跡しても答えは出ない。それどころか記憶への潜航は、まるで彩歌の侵入を拒むかのように彼を思い出したくもない方へと押し流していく。
それは、言うなれば過去の残響。彩歌の魂にこびりついて離れない、今の彼の在り方を嫌が応にも定義づけるそれ。──在りし日の雨音。乱打する激流。心象に撃ち込まれた楔に彼は縛られていて、それに抗うように彼は蟀谷に手を遣りながら苦悶する。雨。衝撃。金属。視線。無垢。ぐるりぐるりと、巡り巡る。耳障りな残響が彩歌の邪魔をする。記憶の中に楽園などなく、しかし幻想の残響を断ち切るかのように、声。
「どうしたんですか!?」
「えっ……」
何の前触れもなく唐突に意識に入り込んできた現の声が夢幻を破砕し、彩歌は忘我より立ち戻る。そうして焦点は今へと合わさり、視界へと飛び込んできたのはひとりの少女の姿であった。
背丈はかなり小柄で、150㎝半ばといった所であろうか。まるで夜空を織り込んだかのような美しい黒髪を長く伸ばし、その下では大きな漆黒の瞳が気遣うような光を湛えて彩歌を見上げている。何かの練習着なのだろうか、格好は相当に
その姿。その声。その気配。彩歌は確かにそれらをよく知っている筈で、にも関わらず導き出された名は真であると同時に偽。──優木せつ菜。彼の目の前に現れた少女は、彼にとって
「ううん、何でもないんだ。ただちょっと、眩暈がしただけだから」
「そうなんですか? それも十分に大丈夫ではない気もしますけど……」
「持病みたいなものだから、いつもの事だよ。心配かけてごめんね。えぇと……優木せつ菜さんだよね? スクールアイドル同好会の」
「っ……はい! 本気系スクールアイドル優木せつ菜! ですっ!!」
そう名乗りをあげながら、まるでステージから客席へと投げかけるようにしてポーズを取ってみせるせつ菜。それを見つめる彩歌の表情はあくまでも柔和で、せつ菜が息を呑んだ意味に気付いた様子はない。
それはせつ菜の『せつ菜』たるが完全であるからなのか、或いはまた別の要因によるものか。周囲に他の生徒が現れる事も否定できないから気づいていないように振舞っている可能性は皆無ではないにせよ、気づいているならそれはそれで対処の仕様というものがあろう。故に、皆無ではなくとも可能性としては極めて低い。
せつ菜自身が意図した事だ。名は体を表す。彼女はスクールアイドルとしての活動を両親に悟られないために、自身の夢に好きな小説の登場人物を由来とする〝優木せつ菜〟という名と姿を与えた。故にせつ菜の名を与えられる前の彼女について知っている友にすら露見しないのは、目論見通りではある。だが、その事に一抹の寂しさを覚えてしまうのも、矛盾しているようではあるが致し方ないというものだ。
彩歌から見える菜々/せつ菜。せつ菜/菜々に見える彩歌。それが相手の全てではない事は、あまりにも自明に過ぎる。だが人間は己が知る事でしか相手を見ることができないのも道理で、故にこそ、見えていないのは彩歌だけではない。せつ菜もまた、同様だ。
「わぁ、凄いなぁ。俺、本物のスクールアイドルって初めて会ったよ。何というか、キラキラしてるね」
「そうですか? へへ、ありがとうございます!」
彩歌の言葉は聊か抽象的でこそあるものの間違いなく賛辞で、そこに嘘の色は一切ない。故にせつ菜ははにかむように笑って、彩歌が目を細めた。或いはそれはただ微笑むようでもあり、決して届き得ぬ太陽を見上げる矮小なる愚者のようでもある。
キラキラ、キラキラ。その輝きは太陽か、或いは炎か。どちらであろうと発する光は周囲を照らし、受け取った者の心に火を灯すだろう。だがあまりにも強すぎる光は過剰な熱を生み、近づく者はおろか自らをもを焼いてしまう危険も孕んでいる。その在り方に、良いも悪いもない。一長一短。長所とは視点を変えれば短所でもあって、正否を問えるものではないのだ。だからこそ、誰がどのような在り方に焦がれようとも、それは全くの自由だ。たとえ焦がれて、焦がれ続けて、その果てに燃え尽きようとも。
せつ菜の浮かべる屈託のない笑顔はまるでそこにあるだけで世界を眩しく照らすかのようで、あまりにも眩しい。眩しくて眩しくて、目が眩んでしまいそうだと、彩歌は思う。だが彼は燃えない。焦がれない。燃え残った灰に、火が点かないのと同じように。
目を逸らすように空を見遣れば、広がっているのは一面の青。夏至まではまだそれなりに日数があるが日はそうとうに長くなってきていて、黄昏はまだ先だ。まるで中空に青い絵具をぶちまけたかのような青い、蒼い空。それを見上げる彩歌の瞳はあくまでも凪いでいて、何を感じているのか推し量る事は難しい。
「キミ達
聊か誤解を招きかねない言い方であった。彩歌は何もそこまでスクールアイドルに興味がないから会いたいと思っていなかった訳ではない。彩歌はそこまで熱心で執心な方ではないとはいえ、何であれスクールアイドルらにとっては観客のひとりでしかなくみだりに詰めようとしてはならない距離がある。たとえ本質的には同じ学校の一生徒でしかないのだとしても。
彩歌のその考えは正しく己の立場を弁えているようで、しかしひどく今更な話でもある。彩歌自身は気付いていないとはいえ、せつ菜は菜々で、その菜々と彩歌は友人なのだから。距離が云々などと、どの口が言っているのか、という話だ。気づいていないから仕方がない、と言い切れるものでもあるまい。
とはいえ、袖振り合うも他生の縁、という言葉もあるように偶発的な遭遇もある種の因縁というもの。それを意図的に避けるなど、まず不可能だ。少々身を屈め、まじまじ、とも表現できそうな面持ちでせつ菜を見つめる彩歌。
「それにしても……」
「な、何です……?」
「うん。……映像で見るより、本物の方か可愛いかな? いや、映像でも十分に可愛いけどね」
「へぇっ!? かっ、かわっ、可愛い!?」
全く思いもよらなかった彩歌の発言に赤面し、狼狽するせつ菜。そんなせつ菜の様子が可笑しいのか彩歌は口許に手を遣りながら笑う。その所作は或いはせつ菜を揶揄っているようで、しかし先の言葉は紛れもない本心であった。
少なくとも彩歌の認識の上では初対面である相手にこのような発言をするなど、ともすればひどく軽薄な人物と見做されても文句は言えない行動だ。そうならないのは、相手がせつ菜/菜々であるからこそとも言える。或いはスクールアイドルという相手に対するならば、そういう応対が適切なのではないか、と。そう判じたか、それとも全く打算のないただの天然か。真野彩歌という少年は、そのどちらも在り得る手合いであった。
だが打算であれ天然であれ、彩歌は決して思ってもない事は口にしていない。美醜の感覚は人それぞれと言われてしまえばそれまでだがせつ菜が客観的に見て容姿端麗と言うに相応しいのは確かで、そういう意味では彩歌の言葉は世迷言と言うには不足であろう。尤も、だからとてさして狼狽しないかと言えば、そうではないのだが。
「いっ、いきなり何を言うんですか!」
「ふふっ、そんなにびっくりするコトないじゃない。俺はただ、思った事を口にしただけだよ」
「うっ……うぅぅぅぅ……」
消え入りそうな声であった。羞恥半分照れくささ半分といった抗議を前にして、それでもなお彩歌は自らのペースを崩さない。彼はあくまでも微笑みを湛えたままで、しかしせつ菜は対照的に茹蛸のような紅潮を晒している。完全に彩歌のペースに呑まれる形で、それ故にせつ菜の脳裏からは既に、遭遇した当初に彩歌が見せていた異な様子の事など押し流されてしまっているようにも見える。
それが全くの偶然か、或いは彩歌自身が狙ってそうなるように仕向けたのかは、余人には分からない。ただひとつ確かであるのは彩歌をよく知るせつ菜/菜々の目から見ても、今の彩歌はあくまでも彼女のよく知る『真野彩歌』であるという事だ。変に素直で、時折何の抵抗もなく気障にも思える事を言い出す。彼女と知り合った時から何も変わらない、大切な友人の姿であった。
それからせつ菜は火照った頬を冷ますように顔を手で仰ぎ、彩歌はそんな少女の様子を先程から一貫して笑顔のまま見ている。それは或いはやはりせつ菜を揶揄っているようにも見え、しかし表情の変化がないためにそこから内心を読み取るのは難しい。その在り様はいっそ不気味とすら言える程で、しかし唐突に彩歌が笑顔を崩した。そして現れたのは、先の笑顔とは真逆とも捉えられるような、惑う子供を思わせるそれ。
「でも、本当に凄いよ。優木さんも、同好会の人達も。スクールアイドル……自分の大好きに一生懸命で」
「……?」
「──なんて。ごめんね! 変なコト言って」
束の間の昏迷であった。せつ菜が違和に気付いた時にはもう既に彩歌の表情は笑顔に戻っていて、しかしそこには一瞬の惑いについて言及を許さない異様な強制力を孕んでいるようにも感じられる。それ故かせつ菜はすぐに問いを発することができなくて、その間隙を縫うようにして彩歌が先手を打つ。
「さて、いつまでも引き留めているワケにもいかないし……俺はこれで帰るね。練習、頑張って! 応援してるから! それじゃ!」
笑顔。笑顔。笑顔。彩歌の声音はあくまでも明るく、せつ菜のよく知るそれだ。まるで先の異質などなかったかのような振る舞いを前にしてせつ菜はやはり何も問うことができなくて、その間に彩歌はせつ菜の許を離れてしまう。遠ざかっていく足音。校舎の片隅であるために他に生徒の姿は少なく、それでも皆無ではないというのに、嫌にその足音だけが聴覚を震わせる。取り付く島もない、とはこの事か。
「彩歌くん、貴方は……」
振り返り、彩歌が消えていった方向へと呟く。しかしその呟きが彩歌へと届くことはなく、言葉は虚空へと溶けて消える。先の彩歌が笑顔の間に垣間見せた、せつ菜が知らない表情。それは果たして実像か、或いは錯覚か。最早確かめる術はなくて、せつ菜は己が向かうべき方向へと歩を進めていく。
──虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。そのお披露目ライブまで、残り僅かなある日の事であった。