教室の窓から外を見遣れば、空はただ蒼く、眇々としてそこに在った。更に彩歌らが通う虹ヶ咲学園は東京湾湾岸に位置している事もあって、視線を下に移せば青々と広がる海原が見える。蒼と青。それらは文字通りただそこに在るだけのものでそれ以上の意味はないけれど、彩歌はこの光景が好きだった。
それは彩歌の裡に少なからず
過去を懐かしみ故人を悼むというのは、人として当然の行いではある。しかし咎人にその権利はあるまい。過去に罪を犯した彼らに許されているのはきっと己の罪業と向き合い、その責任を死ぬまで果たし続ける事のみ。そう己に言い聞かせ、彩歌は視線を机の上に移した。そこにあるのは、書きかけの楽譜である。それは数日前には全く進んでいなかったそれと同一のものだ。未だ完成してはいないが、0と1の間にある隔たりが無限大までの道程にも等しいように、彼の進捗も大幅に改善したと言えよう。
シャーペンを執り、楽譜と向き合う。未だに完成してこそいないが、ある程度のイメージはできている。或いはそれは侑や歩夢との出会いの影響だろうか、元は漠然としていて全くの不明であった自らの進むべき道程が、今は手探りではあるものの進めている感覚がある。だがまだ何かが足りないような気がしてシャーペンの頭をこめかみの辺りに押し付けながら小さく唸っていると、割り込んでくる声があった。
「真野、ちょっといいか?」
「ん?」
声をかけてきたのは彩歌と同じクラスの男子生徒であった。特筆する程交友関係が広くない彩歌だが、人並みに友人はいる。彼はそのひとりであり、それなのに何処か様子を探るような調子の彼に、彩歌は首を傾げる。
「どうしたの? 随分と挙動不審だけど」
「挙動不審言うなっ。……あー、お前に客だ」
客? と、そう彩歌が問いを返すと、男子生徒は何も言わずに親指で教室の出入り口の方を指し示した。それにつられるようにして彩歌は男子生徒が指した方に視線を移し、そこにいた人物と目が合う。
果たして、そこにいた客とは普通科の生徒でありこの場にはいない筈の侑であった。彼女は教室内の様子を伺うかのように出入り口から半身を覗かせており、彩歌と目が合うと微笑を浮かべながらひらひらと小さく手を振るなどした。その挨拶めいた仕草に彩歌も手を振り返す。
それから取り次いでくれた友人に一言礼を言うと、彩歌は机上に広がっていた物品を片付けてから席を立った。態々他人の机に散らばっているものを観察するような酔狂もそういないだろうが、注意を払っておくに超した事はあるまい。そうして教室を出た彩歌に、侑が笑みを投げる。
「おはよ、彩歌くん」
「おはよう、高咲さん。どうしたんだい、こんな早くに? 俺に用事があるなら、普通に連絡をくれても……あ」
言葉を途中で区切り間抜けな声を漏らしてしまったのは、己の失態に気付いたから。そんな彩歌を前にして侑は何を思ったのか、口許に手を遣って苦笑めいた笑声を漏らしている。
普通に連絡をくれても良かったのに、とそう言いかけた彩歌だが、それは不可能な相談だ。昨日の昼にあのような、ともすれば歯の浮くようなと形容されてもおかしくない事を宣った彼だが、昼休みの時間自体がそう長くはない事もあってその後まもなくして解散してしまったため、互いに連絡先を知らないのである。
であれば、成る程相手に用があるならば当人の許を訪れなければならないのも道理である。だがそれはどうしても不便で、その不便を招いたのは彩歌の失態だ。尤も、いくら半ば同志と言える相手だとしても出会って間もない少女らに対して連絡先を問える程、彩歌は軽薄、或いは社交的ではないつもりだが。
しかし奇妙な意地を張りこの期に及んで連絡先を教えないというのは愚鈍というものだ。何より彩歌の目前では侑が既にメッセージアプリのQRコードを表示していて、彩歌は無言のままそれに応えるようにスマホを操作してそれを読み取る。ただそれだけの動作で、ふたりは離れた場所でも遣り取りができるようになった。
便利なものだ、と、それは当たり前になった時代の人でありながら彩歌は思う。感慨にも満たない、些細な思索。スリープモードに戻したスマホをポケットに入れて、ひとつ溜め息を吐く。
「ごめんね。俺の方から協力するって言ったのに、キミに余計な手間を掛けさせてしまった。面目ない」
「そんなに気にしないで! 忘れてたのは、私もだからさ」
心底から申し訳なさそうに謝罪を口にする彩歌を前に何を思ったのか、慌てた様子で侑はそう言う。そこに建前の気配は無く侑が彩歌に責を問うていないのは明白で、けれどやはり彩歌の笑みは何処か済まなそうだ。
だが相手が気にしていないと言っているのに自分だけが申し訳なさそうにしているというのもひどく失礼だろうと、彩歌は脳裡に張り付く自罰を頭を振って払い落とす。次いで彼の表情に浮かんだのは、常の柔和で人当たりの良い微笑だ。
「分かったよ。気にしない事にする。
ところで……俺に用事というのは?」
「そうそう、そのコトなんだけど……今日の放課後、中庭に来てくれないかな?」
「中庭? 放課後は特に用事もないし、構わないけど……」
そう答えを返す彩歌の表情から侑は彼の疑念を察したのだろうか、彼の方から視線を外し、廊下の壁に背中を預けながらその経緯について語り始める。曰く、昨日の放課後、侑と歩夢のふたりはスクールアイドル同好会のメンバーのひとりと出会い、親交を持ったそうであった。それから学園にほど近い公園を一応の活動場所に設定し、自己紹介動画を撮ると決定した時点で昨日分の活動は終了となったようであった。
簡単に言うのならば、何という事はない、偶然にも旧同好会メンバーとうまく合流する事ができたというだけの、ただそれだけの話だ。無論彩歌にとっても喜ばしい報であるに違いはないが、それ以上の関係があるようにも思えない。
勿論協力すると言ったのだから、何らかの活動に力を貸せと言うのであればそれに協力するに彩歌は一切の不服はない。だが今まで侑が語った内容の中にそれらしい事柄はないように彼には思えた。それが顔に出ていたのだろうか、侑が先んじて答える。
「今日は何か手伝って欲しいってワケじゃあないんだ。ただ……昨日も彩歌くん、悩んでるみたいだったから。何か力になれないかなって、思ったんだ」
「っ──!!」
彩歌が僅かに目を見開き息を詰まらせたのは、侑の言葉が全くの予想外であったから。同時にそれは驚嘆でもある。侑と彩歌はまだ出会って間もないというのに既に見抜かれているというのは、恐らく侑がそれだけ他人をよく見ているという事だろう。或いは洞察力が優れているのだろうか。
だが、不思議と不快には感じていない自分を彩歌は自覚している。それは彼が他人からの善意を受け取れない程に落ちぶれてはいないという事でもあり、高咲侑という少女の人柄の為せる業でもあろう。
しかしその真っ直ぐな善意を受けて、少なからぬ恐怖を彩歌が抱いているのもまた事実であった。ただ、その恐怖の対象は侑ではない。彼は彼自身とその他限られた者らしか知らぬ過去のために人は裏切るものであると知っていて、だからこそ自らが人を裏切ってしまう事、そして、誰かと親しくなる事を怖がっている。
それでも、今ここで侑の善意を無下にするというのは、それこそ人間として最低の行為だ。それはきっと自身の恐怖と過去に酔った道化の愚昧でしかない。初めに力を貸すと言い出した自身が先に助けられるというのは情けなくはあるけれど、彩歌は差し伸べられた手を執る事に迷いはなかった。ふふ、と不敵な笑み。それは昨日と同じ所作で、きっとこれが彼の癖なのだろうと、侑は思った。
「キミは優しい人だね」
「えっ!? そ、そうかな……」
唐突な彩歌からの賞賛に、照れたように頭を掻く侑。そんな少女の何でもない所作に彩歌は眩しそうに、或いは憧憬に暗むように目を細めて、更に言葉を続ける。
「うん、きっとそうだ。
……あぁ、キミの厚意に甘えさせてもらうよ。放課後に、中庭で良いんだよね?」
「──! うん!
……あっ、もうすぐホームルーム始まっちゃう! じゃあ、また!」
それだけ言い残し、笑顔で手を振りながらその場を後にする侑。彩歌はその姿が見えなくなるまで手を振り返して、やがて少女の背が廊下の陰に消えていくと自嘲めいた吐息をひとつ漏らした。
まだ彩歌は侑と出会ってからさして経っていないし対面したのも数える程しかないが、それでも確信できる程に高咲侑という少女は善意の人であった。だがその善性は何も不可解なものではなく極めて人間的なもので、だからこそ彩歌には彼女の在り方がひどく眩しい。
だが、故にこそ彩歌は侑に希望を見出したのだ。己にとっての希望ではない。侑はきっと
踵を返す。彩歌はきっと希望として在れないけれど、それでも為すべきを為す意志は変わらないのだから。
──その後、教室に戻った彩歌が先の友人も含めた複数の男子生徒から異様な質問攻めに遭ったのは、また別の話である。
「えーっと……」
「あっ」
放課後、侑と交わした約束通りにSHRが終わってから可能な限り速やかに中庭を訪れた彩歌だが、そんな彼を待ち受けていたのはある種の戸惑いであった。それでも辛うじて笑顔を崩していないのは流石の冷静さであると言えよう。
確かに早朝に約束した通り中庭、その中にある噴水の傍に侑はいた。だが彼女と共にいたのは歩夢ではなく柔らかな栗色のボブカットと人懐こそうな赤色の瞳が印象的な少女であり、そこまでは何という事はない。その少女が侑の言う旧同好会のメンバーであろう事も、リボンの色から1年生である事も、彩歌にはすぐに分かった。
だが、問題はその状況だ。彩歌がその場を訪れた時には侑は涙目のその少女に半ば押し倒されたかのような体勢になっていて、丁度そのタイミングで彩歌が来てしまったものだから、三者共に黙ってしまう形となったのであった。
まるで会話の最中、互いに同時に言葉を発しようとしてしまった時のような間隙、そして居心地の悪い感触。その空気を打ち破り先に口を開いたのは彩歌であった。
「ご、ごゆっくり……?」
「何か誤解してない!?」
明らかに何か勘違いをしている様子で張り付けたような笑みを浮かべたまま引き返そうとする彩歌に抗議の声をあげる侑。しかしそんな状況であっても自らに圧し掛かっている少女を一切引き剥がそうとしないのは彼女の善性故だろうか。
その抗議を受けた彩歌は足を止めて再び侑の方に視線を戻したものの、その表情はやはり何処かばつが悪そうだ。或いは悪戯を咎められた子供のようなその様子に侑はどうしたものかと悩みつつ、その手は彼女の上にいる少女──かすみの頭を撫でている。
それから会話もなく、どれほどの時間が経ったのだろうか。不意に侑に抱き着いていたかすみが動きを見せる。侑の視界の中央で輝くその大きな赤い瞳は未だ涙目であるが、先程よりは平静のようであった。
「落ち着いた、かすみちゃん?」
「はい……あれっ?」
些か気の抜けた疑問符である。その様子からしてかすみは事ここに至るまで彩歌の存在に気付いていなかったようで、しかし気づいてからの行動は凄まじく早く、そして速かった。乱れた髪と服を治すその動作は手慣れていて、傍で見守っていた彩歌も思わず感心してしまう。
そうして、僅か数拍。そこにいたのは先程まで半べそをかいていたとは思えないほど輝く気配に満ちたひとりの少女であり、彩歌はその名を知っていた。嘗てスクールアイドル同好会が廃部になる前、投稿されていた自己紹介動画を、彼は見ていたのだ。
「キミは確か……〝中須かすみ〟さんだよね?」
「その通り! 何を隠そう、世界一可愛いスクールアイドルにしてスクールアイドル同好会二代目部長のかすみんこと中須かすみとは、このかすみんなのです!」
「そ、そう……」
彩歌の方から問うたにも関わらずかすみの名乗りに対する返事の歯切れが悪くなってしまったのは、かすみの纏う雰囲気に気圧されてしまったから。真野彩歌という少年の生においてかすみのように自らの容姿が優れている事を自覚しているタイプの女性というのは、初めて出会う手合いであった。それ故に対応が一拍遅れてしまったのである。
だがそんな有様でありながら、彩歌はかすみがそれだけの少女ではない事にも気づいていた。今、彩歌の目の前で見せたかすみの所作は俗に言うぶりっ子のそれであるが、その中に隠しきれない真面目さの光がある。
恐らく中須かすみという少女は〝可愛い〟に対して誰よりも真摯なのだろう。彩歌には、それが漠然とだが分かった。であれば或いはあざといと形容されてしまうようなかすみの振る舞いは、猫かぶりではなく自身の理想に準じて己を律していると言うべきだろう。かすみん、と態々何度も口にしたのも、つまりはそう呼んで欲しいというアピールなのだ。尤もアピールされたからとてそう呼ぶかはまた別問題であるけれど。
「……うん、でも、確かに可愛いね、中須さん」
「!! ホントですかっ!!」
「嘘は言わないさ。それに、キミに世辞で可愛いと言うのは、とんでもなく失礼だろうからね」
可愛いという評価を簡単に口にしてしまうのがひどく軽薄めいているとは、彩歌自身も自覚している。更に言えばその言葉は本来的に容易に言葉にするべきではなく、繰り返し吐いていれば自身の裡から出てくるその言葉の価値を下げてしまう事にもなろう。
しかし事実として可愛いという評価に不足なく、またそう在ろうと努力している相手に対して奇妙な意地のために口にしないというのは、それこそ最悪の失礼というものだ。少なくとも彩歌という少年の価値観において、可愛いという評価とはそういうものであった。
しかし個人の価値観とは容易に他者に伝わるものではなく、傍から見れば彩歌が簡単にそう言う軟派な男と受け取られてしまいかねないのも事実だ。けれどかすみの目にはそう映らなかったのか、嬉しそうな仕草を見せている。
「むっふっふ、そりゃあかすみんは可愛いに決まってますけどぉ~。見る目ありますねぇ、えっと……」
「あぁ、まだ名乗ってなかったね。俺は真野彩歌。よろしく、中須さん」
「彩歌先輩、ですね。よろしくです! それと、かすみんのコトはかすみんって呼んでくれても構わないんですよ?」
「それはちょっと……遠慮しておこうかな……」
おずおずと、相手の機嫌を伺うかのような声音。けれどそこには何処か明確な拒否とも取れるような気配があって、だがそれですぐに引き下がるようなかすみではない。むっ、と赤く大きな目を細め、彩歌に厳しい視線を投げながら詰め寄っていく。
それを受けた彩歌は思わずかすみと距離を取ろうとして後退ってしまうが、それはかすみを怖がったからではない。意識的であるのか否か、華奢な体躯や頬を膨らませている事もあって今のかすみは小動物めいた可愛さがあり、恐怖の対象とするにはあまりにそのイメージからかけ離れている。
であればその後退はきっと、彩歌の反射的な行動であったのだろう。昨日の昼、隣に座った侑や歩夢との距離をあえて取ったのと同じだ。かすみと彩歌、ふたりの遣り取りを傍で見ていた侑はその所作に何か違和とでも言うべき感覚を抱いたが、当事者であるふたりは特に気に留めていないようであった。
「いいですか、彩歌先輩? りぴーとあふたーみー! かすみん!」
「……」
「うわーん! 侑先輩、このヒト強情すぎますーっ!」
何としてでも自身をかすみんと呼ばせようとするかすみと、そんな少女の攻勢を受けて遂には押し黙ったままそっぽを向いてしまう彩歌。そんな大人げない少年の態度にかすみはぷりぷりという擬音が背後に見えてきそうな程に憤慨し、侑に泣きついてしまう。よしよし、と、後輩のベージュ色の髪を撫でながら、侑は苦笑を漏らした。
「まぁまぁ、仕方ないよ。かすみちゃんの気持ちも分かるけど、彩歌くんにも事情があるんだろうし」
「むぅ……そうなんですか?」
「事情、と言う程でもないけど……他人に気安い呼び方をするのは、どうしても苦手なんだ。ごめん」
そう謝罪を口にする彩歌の表情は本当に申し訳なさそうで、そこに偽りの色合いは見当たらない。そんな表情をされてしまってはもう怒る事もできなくて、かすみは自身の胸中に居座っていた鬱憤が急速にしぼんでしまったのを自覚する。
他人に気安い呼び方をするのが苦手、と比較的他者との距離感が近い侑やかすみにはよく実感できない感覚だが、そういう事もあろうと納得する。それにしては言い回しが馴れ馴れしいが、それが彼なりの接し方なのだろう。
しかしこの場においてはかすみのみが知らない事だが、彩歌は決して他者に気安い呼称を使わない訳ではない。特別仲の良い相手は呼び捨てにする事もあるし、アイツという三人称を使う事もある。しない、のではなく、苦手。そういう物言いからそれを察したのだろうか、かすみが左手を腰に当て、右手で彩歌を指しながら開口する。
「でも、彩歌先輩! いつか必ずかすみんって呼ばせてみせますから、覚悟しておいてくださいねっ!!」
それはまさしく、宣告であった。スクールアイドルとしてそれができると信じて疑わない、圧倒的なまでの自信に満ち溢れた声音。だがそれは決して過信などではない。何故なら彼女には、その自信を裏打ちするだけの努力があるのだから。
であれば彩歌にはかすみが纏う気配が輝いて見えるのは、きっと気のせいではないのだろう。無論実際の視覚情報としてかすみが光を放っている訳ではないけれど、その
嗚呼、また、この感覚だ。彩歌が内心で独り言ちる。ずっと暗闇の中にいた臆病者に、この光輝は目に毒だ。眩しくて、眩しくて、白んだ視界に思わず目を瞑りたくなる。だが、それは許されない。故に彩歌は光を直視し耳朶の奥に雨音を抱えたまま、それでも微笑んでみせる。
「あぁ、楽しみにしてるよ」
「フフン。……ところで、さっきから気になってたんですけど、彩歌先輩はどうしてココに? もしかして入部希望ですか?」
「私が呼んだんだ」
かすみの疑問に答えたのは問われた彩歌ではなく、先程から傍でふたりの遣り取りを聞いていた侑だ。
「侑先輩が?」
「うん。ちょっと、事情があってさ」
彩歌を呼んだ張本人である侑がその理由について言葉を濁したのは、何も彼女自身が呼んだ経緯を忘れているだとか、そういう事ではない。だが彼女は彩歌の懊悩を解決する一助としてこの場に読んだ事からも分かるように、彼の悩みが何であるかに漠然とではあるが気づいていて、故にこそ下手に説明しない方が良いと考えたのだ。
かすみを信用していないのではない。むしろその逆だ。侑は歩夢やかすみ、自らの手の届く範囲にいる人のおおよそ全員を信用していて、だからこそ
対するかすみはその事情というのが何であるか訝しみこそすれ、きっと
「とりあえず、彩歌先輩は一日体験入部ってコトですね!
なら善は急げです! さっそく活動を始めましょう!」
おー! とかすみに応えて笑顔のまま拳を天に突きあげる侑。それに倣うように、彩歌もまた慣れない動作で声を上げるのだった。