女傑とヒモトレーナー 作:ヒモアマゾン
出るまで続きます。多分。
持ってないからまだヒシアマ姐さんのキャラしっかり掴めてないけど許してネ!!
それは、彼女と歩む最後の有マ記念だった。
「あー、なんかやる気出ねぇなぁ……」
「って、アタシのレースでトレーナーのアンタが沈んでてどうすんのさ!」
「えー、だってよー。これで勝っても負けても終わりだぜ?やる気出ねぇだろ」
あとはURAファイナルだっけか。まあなんにせよ、有マは最後なのだ。
気は進まないもんだ。
「……トレ公。いや、トレーナー」
「んぁ?どうしたよ、急に改まって」
彼女の真っ直ぐな紅い瞳が此方を見据えてくる。
その真剣な表情に俺は覚悟を決めるように、聞き落とすまいと耳を澄ます。
「……アタシをここまで来てくれてありがとなって。そう言いたかったのさ。
勝っても負けても、アタシの有マはここで終わる。だから、感謝の気持ちを示したかったんだ」
「……ああ……なんだ、そのことかよ。改まって呼ぶからなんかとんでもないこと暴露されるとばかり……」
「アタシをなんだと思ってんだ!?」
「ん?寮長、姐御、オカン、タイマンバ鹿」
「タイマンバカってなにさ!!!」
「他はいいのかよ」
「お、オカンも良くないぞ!?そ、そういうのはもっと段階を踏んで……だな……」
モジモジと少し恥ずかしそうに頬を赤らめる彼女。
普段は豪快な癖に、こういう所はウブなんだよなぁ。なんて苦笑いを浮かべて
彼女の蒼い髪にポスン、と手を置く。
「と、トレ公?」
「あー、なんだ。俺の方こそありがとよ。お前さんに、夢を見させて貰った。
焚き付けて貰った。憧れを貰った。あの日、腑抜けて燻ってた俺の手を取って貰った。……俺はお前に沢山貰ったよ。忘れてた熱も、想いも。
全部お前が思い出させてくれた。
……だから、ありがとう。俺の担当になってくれて。
ありがとう、あの日俺の手を取ってくれて。ありがとう、俺に夢をくれて。
……まあ、そんだけだよ」
素直に気持ちを表す。それがどれだけ難しいのか今こうして言っているだけでも理解できる。あー、やばい、めっちゃ恥ずかしい。
そんな羞恥心を抑えるために、わしゃわしゃと彼女の蒼い髪を撫でる
「ちょ、恥ずかしいからやめろ!やーめーろー!トレ公!聞いてんのか!?」
「…………やっぱお前の髪撫で心地いいなぁ」
「そういう感想は今要らないぞ!!」
わーぎゃーわーぎゃー、と年末最後のG1レースだというのに緊張感もへったくれもない 俺たちらしいやり取り。
「もういいだろー!」と恥ずかしくなったであろう彼女が俺の手を止めさせてくる。
レース前なのにやり過ぎたかね。
「……そうか、トレ公もアタシと会えて良かったって思ってんのか」
「当然だろ、じゃなきゃもうトレーナークビになってるっての。
……実際ギリギリだったしなぁ」
「懐かしいねぇ〜……アンタと出会った頃か」
ふと二人で思い返す。ギリギリだった俺とこれからだった彼女。
立場はほとんど逆に居たくせに、妙にウマが合うのが面白かったもんだ。
「そうだぞ、担当数年持ってなかったからクビ直前だったンだよなぁ……
今考えても無職のヒモ一直線だったの笑えるぜ。今もヒモみたいなもんだから笑えるけどなァ!」
「いやそれは笑えないだろ」
「ハッハッハー!」
呆れた様子で此方を見る彼女にすっとぼけるように笑い飛ばす。
「まあ、そんな昔のことは置いといてだ。
……勝っても負けても最後の有マだ。全力でいってこい。
お前の出せる力全部出し切って、最後の有マを飾ってこい」
「……勝ってこいとは言わないんだな」
「は?アホかお前は?俺の女傑サマが、愛バが負けるわけねェだろ。
いいからさっさとトロフィー貰ってセンターで踊ってこい」
ションボリとした彼女に鼻で笑いながら返す。
当然だ、誰のウマ娘だ?俺のウマ娘だ。
彼女はここで負けるようなウマ娘か?
女傑と呼ばれた彼女が、俺のウマ娘が負けるわけないだろ。
俺が信じる。だから全力でライバルとぶつかっていけ。お前の走りを魅せてこい。
「っ……トレ公!」
「なんだ?」
「アタシはアホじゃないぞ!」
「…………………ああ、うん。やっぱバカだな」
「なんだとーっ!タイマンだぞトレ公!!」
「抜かせ、寝技決められてえか。しねえけど。したら俺が社会的に死ぬしな!
てかレース相手とタイマンしろや」
いつものようなバカみたいなやり取り。ただそれも少なくなるのかもしれないと思うと寂しい。
いやまあ、それはそれとして感極まったみたいな顔してたから嬉しい事言ってくれるのかと期待した俺の気持ちを返して欲しいのはあるが。
「……さて、と。じゃあ行ってくるよ、トレーナー。
アタシの走り、魅せつけてくるから。一瞬たりとも見逃さないでくれよ?」
「アホ言え、お前のレースを見逃す気はねえよ。今日の有マも録画してきたわ」
「そうか!さすがはアタシのトレーナーだな!ちゃんと応援しててくれよ?」
「特等席で応援するさ。ほれ、行ってこい」
彼女の背中をトンと押して、俺は笑う。
彼女はあえてであろうか、何も言わず背を向けてレース場へ向かう。
遠くなっていく背中、それを見て俺は──
「ヒシアマゾン!!」
「!」
「纏めてタイマン張ってこい!!」
「ああ、アイツら纏めてタイマン張らせてもらうよ!」
拳をお互いに突き出して、ニカッと笑い合うのだ。
それ以上の言葉はもう要らない。あとは、彼女を信じるだけだ。
そう、これは俺と女傑と呼ばれたウマ娘 ヒシアマゾンが
駆け抜けた三年間の軌跡。その物語だ。多分な。
みんなもヒシアマ姐さんを推そうぜ!!(爆死済み)