パナケイアダンガンロンパ2   作:ろぜ。

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prologue おかえりなさい、しあわせ病棟
集まった超高校級


大きな爆発音。

  

男は女を抱えるようにして守るだけで必死で、奪われゆくものを取り返すことはできない。

 

「希望は何度でも…………」

 

それでも尚あなたは、希むのか。

 

問いかけには未だ答えないまま、彼等はやがて目を覚ますだろう。

 

ほらまた、あの場所で_______

 

______________

 

陽だまりの中、俺は目覚めた。

 

あたたかい光がよく体に染みる。

その陽気は生きてるって感じがする。

俺はまだ重い体を起こし、ひっついた草を剥がすように体を軽くはたいた。

 

見上げると、青い空が広がっている。

 

【挿絵表示】

 

 

「やあ少年、お目覚めかな?」

いつからそこにいたのだろう。何者かが俺に話しかける。反射というやつで、俺はビクリと体を震わせた。

「………お前は……?」

 

「驚かせてすまないね。三上は時任千年という者だ。役者を業としている。よろしく頼むよ」

 

【挿絵表示】

 

 

 

時任千年と名乗るその女は手を差し出した。俺は意図を握手だととり、その手を取った。

「俺は水蜜優だ。こちらこそよろしく頼むよ。…気づいたら俺は此処に寝ていたわけだが…。お前はどうなんだ?」

 

「三上も全く同じだよ。舞台に立っていたはずだったのだが……。いや、此処にくるまでの記憶が一瞬なくてだな」

長い髪を肩に落としながら、彼女は首を振った。

 

「千年、といったな。お前は役者をしているんだな。例えばどんなものを?」

「三上は代役といってね。都合で出れなくなった役者の代わりを演じるんだ。主演ややりたい役は身内にいつも取られてしまってね。いやー、悔しい…!……でもこのおかげで超高校級の称号を貰ったのだから、三上は才能を誇りに思っているよ」

 

千年は超高校級の代役らしい。

 

「そうか、偶然だな。俺も実は超高校級なんだ。超高校級のサックス奏者」

「おお!少年もか!」

千年が嬉しそうに手を叩いた時、放送がかかった。

 

「あーあー、聞こえてますかね…うん、大丈夫っすね!講堂ってとこに集まって欲しいっす!あ〜、講堂は1階、階段を降りてずっと奥にあるっすよ!」

 

この先は、闇だ。

前が見えない中進むのは危険にも感じる。

 

「…千年、どうする?」

「ここがどこかも、何故三上達が連れてこられたのかもわからない。勿論この先何があるかも、ね。他に三上達と同じ状況の者がいるのなら、集まっていた方がいいだろう。行こう、少年」

 

…でもまぁ、この時任千年という人間と一緒なら、少しは進めそうだ。

 

中庭にはホールへと続く道があり、中に入ることができた。左右に道が分かれていたが、千年が左だと言うので、信じて進むと偶然にも講堂が現れる。

 

講堂には既に何人かいて、5分もしないうちに20人程がそこに集まっていた。

 

「…19……20っと…これで全員ですかねェ」

「20人だって!随分多いんだね!」

長い髪の女が1人ずつ数えているのに対して、随分と小柄な女がぐるりと見渡しながらニコニコと言う。どうやらそこまで危機感を感じていないらしい。

 

「いや〜集まってくれて良かったっす!こういう時は固まってた方が安心だと思って!」

先程の放送の主だろう。やや刈り上がった頭に三つ編みを垂らし、片目を隠した男がそう言った。  

 

「何人かと話してみたけど、ここには超高校級ばかりが集められているみたいだね」

明らかに外国出身であろう顔立ちの男が「ねえ?」と相槌を求めるように視線を向けると、視線の先のヘッドフォンをつけた男が静かに頷いた。

 

「にしてもここはどこで、ボク達はどうして連れてこられちゃったのかなあ」

「此処に来るまでの記憶がさっぱりないんだよね。自分についてはわかっているんだけど…」

「考えても仕方ないし、いっそ自己紹介とかしちゃおうよ!」

2人の男が疑問を提示する中、黒と緑が基調の服を着た女が手をあげて言う。

 

「それはそうだね。うん、それじゃあ自己紹介でもしようか」

片腕のない男が答えたことから、提案した女が前へと出た。

 

「じゃあ言い出しっぺの私から!はーい!今日も皆の愛され役!ミラドリグリーン担当!笑顔は一等星!皆、私のこと好きにな〜れ♡マジョリカだよ〜♡……っていう感じのアイドルやってるよ!私は西園寺実花!皆と同じ高校生だから、仲良くしてね!」

 

「かわいい!」「ステキ!」などの言葉を先程の小柄な女が連発する。

その視線に気づいたのか、女はこちらを向くと元気いっぱいに喋り出す。

「やほやほやほー!!!!わたし、超高校級のーっ、マジシャン!田中春子!よろしくーっ!」

 

「アナタ、随分と熱烈なコールを送るのね」

「わたしは実花ちゃんのファンなの!今一緒の場所にいるのも運命なのかも!!」

ツインテールの女にそう答えると、春子は「あなたの名前は?」と続けて返した。

 

「ワタシ?ワタシは陰明寺視。超高校級の占い師よ」

「みくり…?珍しい名前だねっ!」

「ええ、視力の視とかいてみくりと読むのよ」

 

「はあい俺安心院雨生、超高校級のアロマセラピスト!アンタらの匂いと顔はもう覚えたぜ!」

春子と視の会話を縫うようにして、男は安心院雨生と名乗った。

 

「……す、すごいね……あのえっと、その嗅覚……」

「犬よりすげ〜だろオレの嗅覚!」

雨生はいわばドヤ顔をして「アンタは?」と促す。

 

「…あ、ぼくの…こと?ぼくは黎葉幸応……、です。…お裁縫がすき、なの。その、超高校級…って呼ばれるまでには到底思えないんだけど、一応は超高校級の手芸部っていう…みたい、で。」

恐らく性別は男なのだろう。途切れ途切れに彼は話す。

 

「…あの、あなたがよかったら…で構わないんだけど、えっと……よろしくお願い、します…?」

「どうして疑問系なのよ」

「…ぇ?いや…ずっと此処に長くいるかは……わから、ないし…」

濃い緑色の髪の女が、キツイ眼光で幸応を見るが、既に慣れていたらしい。彼はまたもや途切れ途切れにだが言葉を縫った。

 

「…それもそうね。いいわ、私は大樹寺みのり、超高校級の庭師です。以後お見知り置きを。…ああ疲れた!」

みのりは大きなため息をつくと、頭を軽く掻いた。

「自己紹介にそんな疲れるもんなの?」

「疲れるわよ、自分の紹介はね!…堅苦しいのって苦手なのよ」

 

ふぅん、と声を漏らすとみのりに質問した男は続けて言う。

「ボクの名前は六瀬慎一。超高校級のゲーマー。よろしく」

ゲーマー故ヘッドフォンが手放せないのだろうか。今は何も流れていないようで、対話はこなせるようだ。

 

「じゃ、次あーしね。あーしネイリストの周防いのり、よろしくね」

淡白な挨拶だが、それで終わりらしい。そんないのりに物怖じする気配もなく、いのりよりも断然に小さい女が話しかける。

 

「ねえねえ!つ!め!もっと見せてよ!ネイリストなんでしょ?通りで綺麗だと思ったんだ〜!」

「爪?あんた見てたんだ。いいよ、見せたげる」

「うわ〜〜!すっご〜い!」

 

女の大きなリアクションに悪い気はしなかったのか、いのりは「ありがと」と呟くと少しだけ笑った。

「私は超高校級のクイズ王。燈庵冴香!巷で有名な天才美少女とは私の事!よろしくね!」

 

「ふふ、賑やかな子が多くて何よりだよ。ねぇ紗環?」

「はい、囚様」

紗環と呼ばれる女は、男を囚様と呼び、隣で頷いた。

 

「やぁ、初めまして。ぼくは緒環囚。超高校級の収集家さ」

「私は囚様に仕えるメイド、風桐紗環よ。好きに呼んで頂戴」

 

「彼女は完璧で優秀なぼくのメイドなんだ。誰より感謝しているよ。生活では彼女に頼りっぱなしだから……」

囚の言葉を聞き、紗環は謙遜しながらも軽く頬を赤らめた。

実花と春子と同じく、この2人は元から繋がりがあったようだ。

 

「どうも!俺は御宮寺優成、基礎心理学者っすよ。俺の事は気軽にローマンって呼んでくださいっす!どうも、宜しくお願いしまっす!」

放送をかけていた男は、御宮寺優成というらしい。何故ローマンと呼ばれたがるのかはわからないが…。まぁそれは機会があれば聞いてみることにしよう。

 

「僕は童部月玖。ウエディングプランナーをやってるよ」

片目前髪で隠れた男が言う。ニコニコと笑っているが、その目は一向に開かれることはない。

「そしてこちらは」

月玖は軽く一礼すると、片腕のない男へと引き継ぐようにして下がる。

 

「ありがとう月玖くん。初めまして、僕は逆叉薫。気軽に“オルカ先生”と呼んでくれたら嬉しいな。そして才能は超高校級の海獣医師」

「かいじゅういし……?怪獣…、ゴジラとか?」

「あはは…!海獣はシャチやイルカ、アザラシのような生き物の事。映画に出てくるような、そっちの怪獣ではないよ。僕は海の生き物のお医者さんなんだ」

薫は笑うと、優しく説明をする。

 

「ああ、海の、か……。漢字はちょっと苦手でね。俺は探偵のディラン・モンロー。名前は外国人だけどこの通り日本語はペラペラだからさ、仲良くしてよ。」

やはり外国出身だったようだ。ディランは少し気恥ずかしそうに頬を掻いた。

 

「弔宮哀哭……超高校級の泣き女です。宜しくお願いしまァす」

長い髪を揺らしながら哀哭はそれだけ言う。

「泣き女って初めて聞いたよぉ。」

後ろへと下がる哀哭を引き止めるように、つなぎを着たふわふわの髪の男が言う。

 

「泣きの演技をするわけですよォ。興味があればいつでも泣いてみせましょうね」

「わぁ、ありがとうねぇ。ボクは超高校級の酪農家の神戸緒丑っていうんだ。仲良くなれたら嬉しいな、よろしくねえ」

 

「それで、キミはぁ?」

「えっあっあっ、わ、わたし!?」

ずっと黙っていた車椅子の女は、急に視線を向けられ、ひどく驚いた声を出した。

 

「え、ひ、ぁ、あー…ら、らいあ、です…むむ、夢鳥姫…。ちょ、超高校級の魔法少女……なんですっ」

「ふむ、魔法少女か?」

「はっはい……!」

千年の問いかけにビクリとしながらも、らいあはしっかりと頷いた。

 

俺と千年も挨拶を済ませた頃、それは突然やってきた。

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜ん!」

 

現れたのは、もやに包まれた人のような何かだった。

 

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