「…私、天才のはずなんだけどなぁ。バレちゃったかー」
目をきゅっと細めて笑う姿はまるで、悪戯が見つかった子供のようだ。
「………」
その姿に、一同は何も言わなかった。いや、言えなかったんだと思う。
でも、
「…お前らに何があったのか、俺は聞かなきゃいけないと、俺自身に思ってる。……だから、聞かせてくれないか?冴香」
冴香は名前を呼ばれて、瞳孔を開いた。
「いいよ」と呟くと、そのままボソリと言う。
「….…許せなかったの」
「…え?」
「私よりも………注目されていることが!!許せなかったの!!!」
「な、何を……言ってる、んです、か……」
らいあは恐ろしげに冴香を見る。
誰にでも友好的な冴香がそんな風に千年を見ていたなんて、信じられなかった。
「話すよ、ぜーんぶ。だから、最後までその視線、外さないでね?」
〜燈庵冴香side〜
私ね、皆が思ってるほどいい子じゃないの。
千年ちゃんって瞬く間に人の視線を奪っていくでしょ?………それが嫌だった。
だから、殺してやろうと思った。
それだけだよ。
嫉妬とか不安とか。
…それだけ?
私にとっては何より大事なこと。
…まぁいいや。
私は千年ちゃんに、相談があると教会に呼び出した。お人好しって損だよね。そして人を簡単に信じちゃうような性格も。
「ごめんね?急に呼び出して!」
「構わないさ!!少女のためになるのならな!しかし…話とは一体なんだ?」
「まあまあ急かさないでよ!話も長くなりそうだし、ミルクティーを作ってきたんだよ!飲んで飲んで!」
「おお!!有り難く頂くとしよう!燈庵少女は優しいな!!」
優しいだって。
私、今から千年ちゃんを殺そうとしてるのに。
……馬鹿みたい。
千年ちゃんは疑いもせず、睡眠薬入りのミルクティーを飲んだ。
「うむ!とても美味しいぞ!ありが…と……ぅ……ぁ…れ…….」
カップが割れる音がする。
千年ちゃんの力はガクンと抜け、抗えない眠りについていく。これが永い眠りになるなんて思ってもいなかったでしょう?
私は予め用意しておいたロープを吊るすと、千年ちゃんを引っ張ってなんとかして首にかけた。私と千年ちゃんって身長が同じくらいだから大変だったよ………。
ロープはゆっくりと千年ちゃんの細い首を絞めていく。
その時何か聞こえたんだ。
絞められていく苦しさで意識は若干戻ってたんだろうね。
「…く………」
初めはなんて言ってるのか、はっきりと聞こえなかった。
「るく…………月玖…」
あーあ、そんな風に呼ぶなら最初から伝えておけば良かったのに!もう遅いのになぁって私が悲しくなっちゃった!
私は目の前で息を失くしていく千年ちゃんにニッコリと笑いかけてあげた。
最期に見たのがこんな美少女なんて……幸せ者だね、千年ちゃん!
〜水蜜優side〜
「そう、彼女が………」
月玖は表情を変えることはないものの、声がうわずったように聞こえた。
「どう?納得した?」
「納得なんて……する訳ないじゃない…」
「キミの恨みごとばっかじゃんか」
紗環と慎一は冴香を厳しい目で見る。俺も、冴香を肯定はできないと思った。
「そうかもね」
しかし冴香は2人の言葉を一言で嘲笑った。
「最後まで見てくれて、ありがと!ではでは!次回をお楽しみに!」
よく見るクイズ番組の最後のようだ。
初めて手にした敗北はないかのように、王者はただメディアの好む笑顔を浮かべたまま。
▼トウアンさんがクロに決まりました。オシオキを開始します。
(動画はTwitterを参照下さい)
「親しい人ほど、抱えてるものは大きいんだね」
いのりはそれまで見ていた処刑から目を逸らしながら言う。
「……大丈夫か、いのり」
いのりが特に親しくしていたであろう人間は悉くこの場からいなくなってしまっている。
「あーしは平気」
俺の心配もどこ吹く風だ。……良いことなのだろうか。
平気だと言い残すと、いのりは長い髪を揺らし裁判場を後にしていく。
俺はその後ろ姿を見送りつつ、千年の言葉を思い出す。
彼女が優しい心を持って遺したものは、記憶から消えたりしない。
「…水蜜さん?どうかしたのぉ?」
「……緒丑、なんでもないよ」
気付けば隣にいた緒丑に、ゆっくりと首を振る。
大丈夫。
明日が来る限り、進んでやるさ。
Chapter2
即興劇 スカシユリは散る
▼時任千年の遺品【ヘアピン】が童部月玖に譲渡されました。
(裏シートはTwitterのいいね欄を参照下さい)