パナケイアダンガンロンパ2   作:ろぜ。

18 / 30
Chapter4 お先真っ赤の夢物語 旅のお供にラベンダー
(非)日常編


「…お楽しみ会?」

モノクターに告げられたイベントに、俺達は思わず首を傾げる。

「またどうして…急だねえ?」

「うん、いつものことといえばそうだけどさ」

緒丑と囚も同じような気持ちらしい。

 

「お楽しみ会、って………ど、どんなことをすればいいのでしょうか?」

「文化祭的な?昔やらなかったっけ?」

「エンターテイナーになって周りの人をたのしませるの!」

いのりと春子の言葉に、小さく息を漏らしながららいあは頷いた。

 

たしかに小学校の時に、それぞれが「出し物」として何かを披露した記憶がある。

少し子供じみたように思えるものを、モノクターに提案されるとは…。

俺はモノクターを見やった。

 

「こんな雰囲気でやるなんてアナタ変よ」

「だからこそですよッ!どうせなら楽しみましょ〜〜よ!!」

視の指摘に子供が駄々をこねるように、モノクターは言う。

視の呆れ顔にモノクターはキョロキョロと周りを見渡す。

 

…目が合う。

 

_______ああロックオンされてしまった。

 

「水蜜クンはやりますよね!?!?」

「え?」

「ネ!?!?!?!?」

目があってしまったら最後だ。並々ならぬ圧を感じる。

 

心なしかもやが俺に近づくのを察知しながら、俺はモノクターの中の闇に思考を溶かす。

ここ最近雰囲気も暗いし、やることがないのなら悪くはないのかもしれない。

 

「…まぁ、やってもいいんじゃないか?」

「なぁ?」と周りを見ると、殆どが頷きを見せた。

 

優成は「見るだけなら参加してやらないこともない」と不機嫌顔になりつつも参加を了承し、紗環はお茶菓子を用意することで参加とすることにしたらしい。

 

「どうせなら腕によりをかけるわ」と紗環は早々と厨房に消えていく。

 

それぞれが何をするか話し合っている中、

「僕は少し体調が優れないから、残念だけど自室で休んでもいいかな?」

と言ったのは薫で。

 

「先生、大丈夫?」

「うん。少し休めばまた良くなると思う。僕のことは気にせず楽しんでね」

「…1人で問題ないか?」

「ありがとうローマンくん。大丈夫、…それじゃ先におやすみなさい」

薫は月玖と優成の心配の声を優しく返すと、杖をつきながら食堂を出て行ってしまった。

 

日が経つほどに、体調の悪そうな者が増えている気がする。

早いうちに特効薬が手に入れば良いのだが…なかなか良い方法は思いつかない。

 

「逆叉ちゃん、心配だね…!」

「まぁ、医師の類だし…自分の体調管理もしっかりしてるみたいだから」

実花と月玖は薫の出て行った道を見つめ、そんなふうに話す。

 

「さ!1時間半後ッ!体育館に集合しましょう!!!!!」

空気の読めない院長は急かすように言う。

俺達はそれぞれの出し物を用意しようと、自然と解散する流れとなった。

 

_______1時間半後

 

「集まったようですね!!」

何故か今日は機嫌がいいのか、モノクターは嬉々としている。

気まぐれな院長にはたまのエンターテイメントがツボなのだ、と先程語っていた。

 

「ワタクシ演目もまとめてみましたから!いや〜〜楽しみですねぇ!」

「い、いつの間に…」

ふと舞台横の柱を見ると、それぞれの演目が順番に張り出されていた。

優成と紗環と薫の名前はないが、1人足りない。

 

「童部の名前がないけれど…」

紗環の呟きで気づく。

名前が出ていないのは月玖だった。

 

「…何も出し物しないの?」

と慎一は首を傾げる。

「飾りつけとか、ライブの音響とか。今日は裏方に回るんだ〜」

ニコニコと月玖は体育館の花飾りを指さした。

 

小綺麗に飾られた体育館は月玖とモノクターが手がけたものらしい。

なるほど、それも月玖らしい選択かもしれない。と俺は勝手に頷く。

 

テーブルには、沢山のお菓子やジュースやお茶が並んでいる。これは紗環が用意したもののようだ。既に視はトマトジュースを手に取っている。

 

「つか、あんたは何もしてくれないワケ?」

「ワタクシですか?」

いのりは腕を組みながらモノクターを指す。確かに、今日のモノクターは俺達に指図してばかりだ。

 

「ふーむ、では千変万化!ワタクシも本日は姿を変えますかね!よーく見てなさいッ!」

「一体何を…!」

俺がそう呟いて身を乗り出した途端、ボム!という小さな効果音と共にもくもくと煙が上がり、思わず目を擦る。

 

現れたのは、今までのモノクターとは似てもつかない男だった。

 

【挿絵表示】

 

 

「人間…になってる?」

慎一も驚いた様子で目を開く。

優成はモノクターであろう男に鼻を鳴らす。

「これには超高校級のマジシャンもビックリですかねぇ!」

宣戦布告か、モノクターは春子を指差した。

 

「わたしもとっておきのマジック披露するからね!まけないよっ!」

「それは楽しみです…では、早速披露してもらいましょうか!1番手には田中春子サンと夢鳥姫らいあサンのマジックショー!!!!!!!」

 

途端にかかる音楽。

春子はらいあの手を取ると舞台へとあがっていく。

「えっ!?も、もう?!!!わっわ、わたしこころの準備が〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」

 

「今から皆さんにお見せするのは、少々スリリング!ですが世界でと〜っても人気な人体切断マジックでございます!」

舞台を踊るように動き、喋りだけで俺たちを魅了していく彼女はさすが…政府から支援されるエンターテイナーだ。

 

「助手の少女にはここに寝てもらって……」

あっという間に箱の中にらいあをとじこめ、大きなナイフを取り出す。

「ひゃあ!?!!!!」

切れ味の良さそうなその光にらいあは暴れはしないものの、怖がったリアクションを見せた。

 

「それではナイフを一刺し!二刺し!」

グサ、と音を立てて、ナイフは箱を貫通していく。

「きゃあ〜〜〜〜!!!!!!!!!」

「少女がバラバラになってしまうと思うでしょう?」

 

「3、2、1!」

カウントと共に開けられた箱の中のらいあは傷一つなく。

「い…生きて…………………ましたぁ………っ」

誰よりも驚いてるらいあと、拍手を叩く俺達にニコニコと笑いながら、春子は頭を下げた。

 

「続いて2番手には周防いのりサンのアクロバットです!!!」

「…意外だな」

「なんか、って言われたから…こんなんしか出来ないけど」

と申し訳なさそうにしながらも、ゴムで髪をお団子にくくり、舞台にあがっていく。

 

体全身を使って、大胆な動きを魅せてはスルスルとかかった縄を登っていく。

「こんなん」と言う割にはかなりのハイクオリティで、俺は圧巻してしまった。

 

「めっちゃ久々だったけど…体動かすのも悪くないっしょ」

 

「3番手!六瀬慎一クンのゲーム実況!」

ゾンビを倒すシューティングゲームとやらの実況らしい。慣れないながらも、的確な解説をしつつゾンビを倒していく。

超高校級のゲーマーの実況を聞くなんて、ファンからしたら奇跡的な体験なのだろう。

 

「………こんなんでよかったかな」

 

「4番手!緒環囚クンのコレクション紹介!」

スクリーンに映される、囚のコレクションの数々。高そうな壺や絵画、一見価値のなさそうなガラス破片などが出てきたが、そのどれもが囚を魅了させるらしく、珍しく囚の口調は熱を帯びていた。

「…ハハ、つい、我を失ってしまったよ」

 

「5番手には神戸緒丑クンの酪農プレゼンでございます!」

緒丑は舞台に上がると、酪農の歴史や酪農と畜産農家の違いなどをうきうきした顔で語り出す。

こんなに嬉しそうな緒丑を見ることは中々ないし、俺達も真剣に聞いていたのだが………

 

止まらない_______!

 

そう、止まらないのだ。

…あろうことか、細かすぎて誰にも伝わらないであろう『酪農あるある』を始めようとしている。

 

「はいもう次!!次行きますからね!!!ええい、続いては西園寺実花さんのアイドルライブです!!!!!!」

ついに、緒丑が強制終了をくらってしまった。

 

「あ、あれ〜…おしまい?」

「ふふ!そうみたい!次は私ね!」

 

空気を入れ替えるように、どこかで聞いた覚えのあるアップテンポな曲が流れる。

スポットライトに照らされて、輝くアイドルが現れる。

いつの間にやら、舞台前には春子がハッピを着て、ペンライトを持って陣取っていた。

 

「実花ちゃ〜〜〜ん!!!!」

音楽に合わせて、歌って踊り出す実花に春子はコールをする。

周りも(特にモノクターが)それに合わせてコールをした。

 

「そしてそして!お次は陰明寺視サンの占いでございます!!!」

 

「…普段はお金を取るんだけど、今日だけは特別サービス。なんでも1つ占ってあげるわ」

視は舞台には立たず、テーブル上に水晶を置いて指を組みながら言う。

 

仕事運や恋愛運、勝負運などを聞かれては、視は真剣な様子で水晶玉を見つめ答えていく。

 

「アナタは?何を視る?」

「……俺は、」

何を視てもらっていいのか分からず、言葉に詰まってしまう。

見かねた視は「近い未来とかでいいかしら?」と言った。

 

「………そうね、大切なものは大事にしなさい」

「…どういうことだ?」

「さあ?よく視えなかったのよ」

 

「ラストの大トリには水蜜優クンのサックス演奏でございます!!!」

視との会話を切るようにモノクターが、俺の出番を告げる。

「いってらっしゃい」と水晶玉やテーブルクロスを片付けながら視は軽く手を振った。

 

俺は舞台裏に置いていたサックスを持ち、皆の前に立った。

顔がよく見える。

瞳の色、表情、眼差し……全てが見える。

 

俺は息を吸って音を吹き込む。

 

俺の手で創り出した世界で一つの音。

何も裏切られることのない、確かな音が、空間を包み込む。

この感覚はいつになっても何にも変えられない気がする。

 

無我夢中で演奏をしていたが、ふと顔を上げると大きな拍手が鳴り響いていた。

「…ありがとう」

1人で練習しているよりも、誰かに聴いてもらうことはもっと喜ばしいことだから。

 

いつかまた、大きな舞台で。

そんなことを思いながら、俺は目の前のサックスをそっと撫でるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。