パナケイアダンガンロンパ2   作:ろぜ。

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非日常編

「ぁ…やく…逃げ……」

薫の苦しそうな声が聞こえた。

「薫!?どうしたんだ……!!何が…何が………」

 

「ぼクが、抑えてるうち、に、…向こうに行けや!」

語調が強くなり、またもや別人のような薫に戻る。

 

「ホントに大丈夫なの?アナタを置いて……」

「コイツの言うことなんざ聞くんじゃねェ」

視の問いかけに薫は冷たい声を浴びせる。

 

「………逃げ………て」

「で、でも!」

と実花は食い下がった。

 

「煩ェんだよクソガキ共ォ!」

 

あまりの大声に驚いたのか、その場にいた女子がびくりと身体を震わせた。

 

すっかり別の何かに成ったような薫に、俺は判断を下す。

確かに普段通りだったあの薫の言葉を信じるしかない。

 

「今は離れよう、皆」

「…うん、わかったよ!」

俺の言葉に頷いた実花は、座り込んだままの視に手を差し出すと、引っ張り上げ走る。

優成もそのまま続き、俺はらいあが車椅子に乗るのを確認してから共に逃げ出した。

 

後ろは振り向かなかった。

 

「さ、逆叉さんは……どうしちゃったんでしょうか………」

不安そうな顔のままのらいあがぽつりと俺の隣でつぶやく。

 

「別人みたいだったよな…………。何があったのか本人に今は聞けないようだし」

「へ、変身とか?……わたしじゃないですし………ない、ですかね…」

らいあは事故死してしまってから、「相棒」のおかげで生き返り、変身効果で日々敵と戦っているのだという。

あまりに信じ難い話だが、真剣な顔をするのでそのまま飲まれていた。

 

しかし、先程のらいあを見たら疑惑などは全て吹っ飛んでしまった。

 

「それから、お前、あの時かっこよかったな」

「へ?ぇっ、ええ!わ、わ、わたしがですか?」

目をぱちくりして己を指さすらいあに俺は頷いた。

 

視を守ろうと間に入ったらいあは本当にかっこよかったと思う。

「それでも……魔法少女と、とか、いい歳して恥ずかしいですよねあはは……あは…」

 

「信じるよ、俺は」  

 

「お前が認められた才能とらいあ自身を」

 

「…ありがとうございます……っ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

そう言って魔法少女は笑顔を咲かせてみせた。

 

ーーー

 

翌日はやけに静かだった。

 

薫の豹変の話をそこにいなかったメンバーも聞いたのか、皆心なしか不安そうだった。

「今日一日姿を見てないよ」

と月玖が言う。

食事の時間も薫の姿を見ることはなかった。

 

皆が風呂へ入ったり、部屋に戻り始める時間帯、俺も部屋に戻ろうと食堂を出た。

その時、少し遠くの方で春子の声が聞こえる。

「ま、まって!ねえ、どこにいくの!」

 

揉め事だろうか?

俺は嫌な胸騒ぎがして、春子の声をたどってみることにした。

 

春子も話しながら移動をしているらしい。いや寧ろ走っているようだ。

俺は階段を登り追いかけるが、なかなか追いつかない。

 

3階の長い廊下を曲がった時、やっと春子の後ろ姿が見えた。

 

そして、杖も持たずにふらつきながら歩く薫も。

 

2人はプールへと入っていく。

 

昨日の今日だ。

俺は慌てて2人を追いかけた。

 

「………その先は……」

春子の呆然とした声が響く。

 

間に合え。

 

間に合ってくれよ。

 

どうか、

 

救わせて欲しい_______!

 

願いは水底へと。

(画像サイズの為か掲載不可でしたので、詳しくは公式Twitterをご覧ください)

 

貝のヘアピンだけがぷかりと浮かび上がった。

 

「………………」

俺と春子は言葉を失い、その残酷な水の音をただ聞くしかできなかった。

 

「あれ……なに……?」

おぞましい何かが確実に薫を喰らっていた。

あまりにショッキングな光景で、俺達は会話もやっとだ。

 

「と、とにかく…皆を集めなきゃだな。俺はここで見張っているから、春子は皆を集めてきてくれるか?」

「わかった…けど、ごめんね1人にして!」

 

しばらくして全員が集まり、薫の死体を確認した。

といっても確認できるほど綺麗な状態では残っていないので、確認できるメンバーだけが、だが。

「……そうか、彼は」

と月玖は水辺へ手を合わせた。

 

「何か変な薬を飲まされちゃったのかなぁ」

「最近変だったよね…」

「うん、不気味なくらい」

 

「はいはいちょっと失礼しますよ」

と皆の間を縫いモノクターが前に現れる。

 

ふんふんとない鼻を鳴らし、薫の死体を眺める。

「彼は病気の進行での死亡でしょうね」

 

その一言だけ。

 

病死。

初めから前提として約束されていたはずのもの。

俺達はどこかでそれを見ないようにしてきた。

 

「よって捜査アンド裁判は必要なし!さ、ワタクシ彼のお友達を処理しなくてはなりませんので散ってくださいね!うっかり死にたくなければ!ハイさよならさよなら!」

と、モノクターは雑に俺達を追い出そうとする。

 

風に吹かれた水の音はどこか寂しい。

 

あの時、薫が本当は何を言おうとしていたのか。

何故それをやめたのか。

何故代わりにありもしない本を探して欲しいと言ったのか。

 

全てが繋がり、やっと分かった。

 

「…ごめん、薫」

気づけなくて、救えなくて、ごめん。

 

待てば海路の日和あり、とは誰が言ったものか。

 

タイムリミットは刻一刻と迫っている。

 

Chapter 5

鞭声粛粛、三途を過る

 

【挿絵表示】

 

 

 

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