「5度目の裁判だねぇ」
「ああ。一切気を抜くなよ」
「さぁ、真実解明の時間だよ」
「さっさと終わらせる。ここで負けてなんかられないんだから」
「まずは死因を確認したいな!きっと近くの包丁で刺されちゃったんだよね…」
「ああ。現場を見る限り失血死だろうな」
春子と優成が死因を提示すると、周りの皆は頷く。死因と凶器は間違ってないだろう。
「げ、現場はとても散らかってましたよね…?争いとか………起きちゃったんでしょうか…」
長い睫毛を震わせ、らいあは現場を思い出しながら発言した。
「犯人と揉み合ったみたいだねぇ。だから六瀬さんが自分から殺されに行った、とかはないと思うけどぉ」
と緒丑。
「犯人と鉢合わせしたのか、それとも呼び出されたのか…」
「厨房に呼び出すくらいならもっと別の場所があるんじゃないかな。厨房って殺しますよ!って言ってるようなもんだよね」
俺の言葉に月玖は若干の否定を交えながら答える。
どうやら慎一は朝、ばったり殺人に遭遇してしまったらしい。
「でしたら……犯人は誰でもよかったんでしょうか…」
「怨恨のセンはなさそうね」
実花は相変わらず裁判は真面目に取り組んでいる。そして付け加えるように言った。
「それに厨房には大量のトマトジュースがあった。飲み過ぎ」
「仕方ないじゃない。集中にはトマトジュースが必須なんだから」
実花のドン引きと言っても良い顔に、膨れっ面で視は言い返す。
…日常も今は非日常だ。
「うーん…六瀬さんの今日の動向が分かれば…なんとか………」
とらいあ。
手がかりは少しでもあった方がいい。
「そうだわ!…前に聞いたの。慎一クンは朝にカプチーノを飲む習慣があるって。だけど、事件当日はいつもより早く起床していたのを見たわ」
「それじゃあ、あの冷えたカップは慎一くんが使うものだったのかな?」
「にしては数が多いんじゃない?」
「そ、そっか…!」
春子と実花の間は少しぎごちない。実花の方は淡々としているが、春子が実花をちらちらと気にしている感じがする。
…あの2人も裁判が無事終わって分かり合えるといいのだが。
「捨てられていた瓶は睡眠薬だったよな。あれを混ぜるために試行錯誤していたんじゃないのか」
優成は証拠品の睡眠薬を引っ張り、それと交えて推理をする。
「何故犯人は睡眠薬を捨てたんだ?」
「う〜ん……難しいことはよくわからないけどぉ…その試行錯誤の途中に六瀬さんが来ちゃったんじゃないかなぁ?陰明寺さんが言ってたよねぇ、今日は六瀬さんの起床が早かったって」
なるほど。優成と緒丑の推理が正しければ、犯人は計画的殺人が失敗しそうになり、咄嗟に側にあった包丁で首を掻き切る手に出たようだ。
慎一は比較的小柄だし、いきなり襲われて抵抗も虚しく殺されてしまったのだろう。
「それで要らなくなった睡眠薬は流して、瓶をトラッシュルームに捨てたってわけか」
「他に怪しいことといえば、春子チャンが夜に厨房の方へ向かうのを見たわよ」
何か答えに繋がるものはないかと視は頭を捻っているようだ。
「喉が渇いたからお茶を飲みに…だから、わたしが用があったのは厨房っていうか、食料保管庫だよ!それに事件は朝に起きたはず!種も仕掛けもあるんじゃない…?」
「現場に落ちたままの凶器、雑に捨てられた睡眠薬の瓶、置きっぱなしの冷えたカップ、朝の7時という目撃されやすい時刻に殺害されたことから察するに、突発的な犯行なんじゃないか?深夜に細工する必要はないだろう」
「その意見に賛同しよう」
俺は今までの推理を繋げて、春子を庇う意見を並べた。それに賛同してくれたのが優成だ。
「ああ、僕もそれなら怪しいものを見たよ」
月玖は緊迫した裁判場に面白げに証言を投げた。まるで玩具を見つけたかのような、軽やかで楽しげな声。
「ランドリーに落ちていた水晶とそこから慌てて出てくる陰明寺さん」
「…ワタシ?」
「朝早くから洗濯するようなタイプだったかなぁくらいだったんだけど。六瀬くんは包丁で首を掻っ切られたんだよね。なら返り血を浴びててもおかしくはないんじゃないかなぁ」
「…大量のトマトジュースも殺人に集中していたなら、納得ね」
実花の冷たい声が響き渡った。
【理論武装開始!】
「確かにランドリーの方へは向かったわ!お茶をこぼしちゃったから洗いに行ったのよ!」
「ちゅ、厨房にあったカップには、どれも飲み物がギリギリまで入れられてました……もっもしこぼしたのであれば………中に入っている飲み物はもっと減っているはずなんです…っ!ごめんなさい…!」
「ワ、ワタシは朝が苦手なの。犯行が起きた時間も、自室で寝ていたんだから!」
「寝ていたのなら、六瀬さんが起きていたっていうあの証言はできないんじゃないかなぁ」
「さて投票のお時間でございますよ皆様」
丁度、モノクターが投票を促す。当の視はずっと青ざめたままで。
ーーー
「エクセレント!六瀬慎一クンを殺したのは陰明寺視サンでした!」
「…っ………そんな…」