パナケイアダンガンロンパ2   作:ろぜ。

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Chapter1 真実の涙はしとどに香る
(非)日常編


提案がある。と雨生から告げられたのはとある昼下がりだった。

いつになく真剣な表情の雨生に俺達は緊張の面持ち。

 

「提案ってなんだ?」

俺の問いかけに雨生はニヤッと笑う。

何が言われるのだろうと皆の視線が集まりきったところで、耳を疑うようなことを口にしたのだ。

 

「女子風呂覗こうぜ」

 

「うん?」

「なんて…?」

「え〜と…」

俺の聞き間違いだろうか。…いや、周りの反応から見て聞き間違いではなさそうだ。

 

「じょ、女子風呂…?またどうして…」

幸応は何を言ってるんだというような顔。

「据え膳食わぬは男の恥!そこに女子風呂があるから覗く!」

「…えっ、と…あんまり、よくないんじゃないかな…?ばれたら……怒られるよ…」

 

「…僕も、あまり良いとは思えないけどね」

囚は苦笑い。否定に寄りつつも中立のつもりらしい。

「そんな事したらダメだよぉ」

また、やんわりと緒丑が否定するものの、確固たるその野望を止めることはできない。

 

「俺はやらないっすよ〜!まぁ、程々にするんすよ?」

優成の方はというと、軽く止める程度で、あとは干渉しないつもりらしい。

 

「うーん…女の子達からしてみればあまり良くないことだけど。皆思春期だもんね。人生に一度くらい、そういった経験をしておいてもいいんじゃないかな」

意外なところからの意外な意見だっだ。

 

「まさか、オルカセンセー行くんすか!」

「僕?僕は遠慮しておくよ。生憎だけど、その手の事への興味は薄くてね」

だが薫はある程度節制のある人物だ。他人には寛容だが、己は行く気はないらしい。

 

「でも女の子の嫌がることは程々にね。いくら思春期でも、他人の私物は盗まないように」

「は〜〜〜い!」

…元気がいいだけに不安な返事だ。

 

「水蜜くんは?」

興味がないといえば嘘になるが、覗きはいけないことだ。俺は首を振った。

「じゃあ行かない人達でお茶でもどうかな」

薫は周りを見渡すとニコニコと笑った。

 

 

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「ほ、本当に、行っちゃったの、かなぁ………」

両手でカップを持ちながら、幸応は不安げに言う。4人のことが気になるらしい。

「安心院くんは兎も角、ディランくんと童部くんと六瀬くんもいるし…」

「参加してる時点で不安だけどぉ……」

 

まさかな、と俺はこの場にいない4人のことを思いつつも温かな茶を飲み干していくのだった。

 

〜No side〜

 

コソコソと忍ぶ4つの影。

「まさか月玖くんと慎一くんもくるなんてね。ちょっと意外だったかも」

ディランはこしょばゆい声でクスクスと笑う。

 

「楽しいことはすき。…でも覗きってはじめて」

どうやら慎一は、覗きたい欲よりも騒ぎたい欲でこっちに来たらしい。

「まぁ、中々する機会なんてないよね」

 

「ボクは童部の方が意外だったけどな」

「うーん…覗くのが目的ってより、どんな反応を見せるのか気になったかな」

月玖も覗き目的ではないらしい。楽しそうな面々を見るために同行したようだ。

 

「へえ、反対すると思ってたよ」

「別に〜、楽しいなら反対はしないよ。それをすると君たちは楽しいの?」

「女の裸体!湯煙に混じった匂い!サイコーだろ!1番乳でっけえのは誰なんだろ〜なぁ!ちっさいのは予想つくけど!」

 

「どんな曲線も綺麗には変わりないんじゃないかな…あ、着いたよ」

気づけば一行は女子風呂の前まで来ていた。

 

湯気の向こうに聞こえる楽しそうな声。

 

「髪下ろしてるから誰かわからなかったよ!」

「ちょっと伸ばしすぎたかしら?」

「い!いい、い、え!かっ、か…可愛らしいです…!」

 

「ねえそれ痛そう!大丈夫?」

「ああ、心配ない!アクション映画でできてしまってね…」

 

「わ〜!お風呂あったか〜い!最高〜!」

「みてみて!小さいアヒル!もってきちゃった!」

 

 

いざ行かん!魅惑の世界!

 

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「おー」

慎一は目撃したのかしてないのかは分からないが、淡白な声をあげる。

月玖は顔は出しているものの見るつもりはないようだった。

 

ディランはそれを見る前に、頭の上にぽたぽたと何かが落ちるのを感じた。

「…え?」

ふと顔を上げると、雨生が鼻血を流していたのだ。

 

「ちょ、ちょっと雨生くん?」

「ボクティッシュ取ってくる…」

「鼻つまんで上向いておきなよ」

この騒ぎは、勿論女子に聞こえていたわけで。

 

「何をしているの?」

 

「….…あ」

 

そこに広がっていたのは魅惑の世界ではなく、怒りに満ちた女子の面々。

 

「きゃあああああ!!!最低!!!」

みのりは叫びながら自らを隠す。

「…最低ね、見損なったわ」

同調して頷くと、蔑むような声で冷たい視線を送る紗環。

 

「……趣味わりィな」

特に何も言わないまま、やっと口を開いたかと思えばその一言だけの哀哭。珍しく真顔だ。

 

「ぇ、ぇ、え…ぇぇぇぇ!!!!????はっははは、犯罪、犯罪です!えぇぇっと、せ、さしてぃぶ?えっち!!!よよよよよくないとおもいますわたし!よくないとおもいます〜!!!!!!!!!!!!!」

バスタオルを巻いているものの、顔を誰よりも真っ赤にしているらいあ。

 

そんならいあを咄嗟に背に隠したのは視。恥ずかしさはないものの、友達は守るつもりらしい。

「はー?何してんの?ちょっと男子ー!ってやつ〜?」

いのりは怒ってはいないようだ。自分のスタイルに自信もある上に少しは理解があるらしいので、周りほど激しい反応は見せない。

 

「男子だけずるーい!男子も裸見せろー!」

「三上を見ろ!!!!!」

反応のおかしい者が2名ほどいるが……。冴香と千年に恥じらいはゼロのようだ。

 

「……ぶっこ……」 

「実花チャン?」

「きゃー!最低…!アイドルの裸は高いのよ!」

実花は首元のタオルに顔を埋めながら、恥じらいを表した。…先ほど聞こえたのは空耳だったのかもしれない。アイドルが怒るわけ……ないだろう。

 

「男に見せるものなんてないんだから!出てけ〜〜〜!!!!!!」

小さな体で実花を隠そうとしながら、周りの女子のためを思ってか、次々と物が投げる春子。どうやら怒っているようだ。

 

一目散に月玖と慎一は駆け出す。雨生とディランもそれに続こうとするが、春子の投げた桶がディランの頭にクリーンヒット!

「グエ!」 

情けない声をあげて、ディランは倒れた。

 

「おっおいディラン!」

「俺の屍を越えていくんだ雨生くん……」

「そんな!オレはディランを置いてくことなんてできないぜ!」

2人がやかましい茶番を繰り広げる中、彼らの頭上に人影が。

 

「………おい貴様ら、何をしている!!!」

「…げ!ローマン!」

心配になった優成が探しに来たことで、やっと2人は回収されたようで、女子はまた安心して風呂に入ることができた。今後しあわせ病棟では女子風呂を覗いた場合、「廊下掃除の刑」がつくこととなった。しあわせ病棟はとても広い。…当然の罰だろう。

 

 

〜水蜜優side〜

 

「女風呂を本当に覗き見る馬鹿がおるか!!申し訳なかった!ウチの馬鹿どもがどうも御迷惑を…!」 

「もう〜!」

「次はないわよ!」

優成は女子に頭を下げると、「馬鹿ども」を引っ叩く。女子は腕を組み、膨れっ面だが、優成の顔に免じて許す方向のようだ。

 

「本当にやったんだぁ…」

そんな光景を見つめて緒丑は呆れたように苦笑い。

 

「でっでもオレ達約束は守ったぜ!」

盗みをはたらかないという薫との約束の話らしい。

「そもそも、覗きはよくないだろ」

俺は雨生の頭を軽くこづいた。

 

〜時任千年side〜

 

「ホント男子って下品だよねー!」

プンプンと頬を膨らましながら田中少女は言う。

先程の覗き事件が余程腹ただしいらしい。

「まぁまぁ。これでも食べて落ち着きなよ」

しかしながら、周防少女が差し出すチョコレートの棒をぱくっと咥えると、「おいし〜〜!」と笑顔を浮かべた。

 

うん、田中少女には笑顔がよく似合う。

 

「でも何故急に女性専用スペースに布団を持ち込みパジャマパーティを?」

大樹寺少女はふわふわのパジャマに身を包みながらも、まだ疑問が残るようで首を傾げた。

「女子だけで親睦を深めよう!ってやつ!」

燈庵少女はそう言いながら、ポテトチップスなるものを口に放り込む。

 

「でっ、でもわたし…こ、こんなことはじめてでっ!な、何をしたらいいのか…」

壁にもたれながら言うのは夢鳥姫少女だ。メットは脱ぎ、車椅子も外に置いてきたようだ。中に入るまでは三上と弔宮少女が肩を貸した。少女の役に立つのなら、いくらでも肩なんて貸してやろうと思う。

 

「うーーーん、私もわかんなーい!」

「こういう時こそ恋バナじゃない?理想の男性像とか!よくドラマで見るよ、ねっ時任ちゃん!」

「西園寺少女!むむ…確かに…言われてみればそうだな!三上はこの手の話題に弱いのだが……」

恋愛とやらにはどうも疎く、着いていけるかは少し不安だった。

 

「なるほど、理想の男性像かあ〜!私なら明るくて趣味が合って、よく褒めてくれる人かな!」

「へえ、意外とフツウなこと言うんだ?」

「まあ1番重要なのは私を天才だって認めてくれる人だけど!」

「…あんたって期待を裏切らないね」

 

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意外といってはなんだが、燈庵少女は真っ当な理想像をあげている気がする。趣味が合うことや自己肯定感をあげてくれること、己を認めてくれる人間は確かに理想的かもしれない。

 

「じゃあいのりちゃんは〜?」

「喜怒哀楽がしっかりしていて、自分の意思があり、周りに流されない人」

周防少女は悩むことなく述べてみせた。燈庵少女とはまた違うが、なるほど、確かにいい男性像だ。

 

「周防ちゃんこそ意外だなぁ〜!思ったよりも詳しく言ってくれるんだね!」

「ねえねえそれって雨生くんのこと!?」

「さぁね」

田中少女の言葉をさらりと流すと、周防少女はオレンジジュースを口にする。

どうやら安心院少年と周防少女の間には何かあるらしい。

 

「あんたは?…理想像とかありそうには見えないけど…」

「うーーん…やさしいひと!!!」

田中少女は2人とは打って変わってざっくりとした内容だったが、優しさとは多種多様。必要な項目には間違い無いだろう。

話は逸れるが、田中少女が抱いている肉のクッション。……一度触ってみたい。

 

「実花チャンも理想像ってあったりするの?」

「私より輝いている人かな!」

西園寺少女は、陰明寺少女の問いかけに明るく答えた。アイドルをしているから、理想は高いのかと思っていたが…。否、西園寺少女より輝いているとなると………男性では中々見つからないかもしれない。三上なら負けないのだがな。

 

「風桐はどうだ?」

「…恋愛なんて私には必要ないわ」

「強いて言うなら!?」

「そうね…強いて言うのなら落ち着いた人かしら」

「らしいと言えばらしいな!!!」

風桐は「そう?」と言うと抹茶を啜った。

 

「あなたはどうかしら?」

「甲斐性のある人かしらね」

「か、甲斐性……ですか…?」

「ええ、頼りがいがあって経済力があるってこと」

陰明寺少女はお金が大好きだったはず……経済力があるとは金持ちであるということなのだろう。

 

「時任ちゃんは?理想高そう〜!」

「三上の男版だな!!!!!」

三上がそう答えると、ガクッと周りが力を抜かす。

美しく、美しく、美しい………三上の男版がいたらここにいる全員が惚れてしまうかもしれない。いやはや、美しいと言うのは罪だな。

 

「そ、それって恋愛での理想というよりかは、千年が尊敬したい男性像じゃなくて?」

「むむ…そうかもしれない。恋愛か……好きなった人がタイプというやつだな!」

「あら、それって月玖クンのこと?」

「!?!?!?童部少年!?何故……」

好きがどういうものかはわからない。跳ね上がる鼓動はさておき、三上はぶんぶんと首を振った。

 

「三上はただ彼に感心している。個人的にだが、彼と話している時間は好きだと感じるがな。人が幸せになる話は素晴らしいものだろう?……なんだその笑いは」

「ふ〜〜〜ん」

何故か陰明寺少女が含み笑いをしているが…。しかし、この感情はなんだろうか。

 

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「大樹寺少女はどうだ!!!!?」

変な空気を断ち切るため、三上は話を次に振る選択をした。いつか気づけたらそれでいいのだ。

 

「私…?包容力全開の優しい人かしら」

「包容力、ですかァ。言われてみれば持ち合わせている男性って少なそうですねェ。」

「そうかも。だから理想なのだけれど…」

 

「夢鳥姫さんは何か?」

「ぇ、え、えぇ?ぁ、えーっと、その、や、やさしいひと?おこらないひと?す、すみませんわたし、考えたこと、なくて…」

「ゆっくりでいいわよ」

 

 

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「…えっと、えーっと、い、いいひと、とか…?」

「いいひと………ふふ、そうね。いいひとがいいわね」

「はっはい……!」

夢鳥姫少女は周りが微笑むのに安心したのか、少し笑みを見せた。

 

「あっ、あの……と、とむ、弔宮さんは…」

「妾か?そうだなァ。…妾の仕事に理解があればそれでいい」

弔宮少女は硬派だ。いやわかるぞ…。仕事に理解のある人間は、三上も必要としたい。参考にすることにしよう。

 

「仕事……泣き女よね?」

「いろんな局面で、涙は必要とされるんですよ」

演技面で関しては、弔宮少女とはプロ同士。分かり合えるかもしれない。必要とされることは誇らしいことだろう。

 

「でもそんなに妾おかしいか知らん……なァんて。いや、ちょっとくらいは気にしてるんですよ?皆、妾のこと奇異の目で見るんですもの」

比較的さっぱりとした弔宮少女にも悩みはあるらしい。珍しく、本心で切なげにも見えた。

 

「三上は弔宮少女のことも三上と同じくらい魅力的だと思うぞ!!」

「あら、それは極上の褒め言葉では?」

「ええ、千年と同意見よ。泣き女についても聞いてみたいわね。経緯とか…」

「経緯についてはまた今度お話ししますよォ」

 

〜No side〜

 

何年振りだろうか。

 

この病棟での久々なあたたかい時間だった。

「賑やかでしたね。全く」

モノクターは自部屋からそんな空気を読み取ると呆れたようなため息をついた。

 

「まあいいでしょう」

 

超高校級の才能があるだとか、患者だとか、そんなことよりも、

 

彼らは高校生なのだから。

 

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